復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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復讐するは我にあり

七.

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 挨拶だとかはもう前の生の時に経験した事なので、ほぼ恙なく終わらせることが出来た。
 アルバーノに対しては、前回も思ったが此方を見下しているのが丸わかりの雰囲気で、田舎貴族の名ばかりの侯爵が、と思っているだろう事がよく分かる言葉を投げかけて来るのが本当に腹立たしい。
 一度でも、第二の王都と呼ばれる程のバルディーニ領に来ればそんな考えが吹き飛び、二度と馬鹿な事を考えられなくなる筈なのだが、多分なんだかんだと理由をつけて来やしないだろう。
 ジュリオと一緒だからだろうか、それとも視察や旅行で此方に来たことがあるからか、他の貴族や大臣達は好意的に領地の話題を振ってくれるし敬意をもって接してくれている。
 アルバーノは、確かオネスティ家に婿入りした男だった。婿入りを望まれる程度には優秀だったのだろうが、そのせいか、伸し上がろうと必死なようだ。
 多分、娘のカテリーナとダリオの婚約は、その足掛かりと言うやつなのだろう。ならば余計にカルロとラウラの婚約を画策する意味が分からない。
 途中、ジュリオと別れ、グィードはひとりで王子達と会うため部屋へと向かった。
 さて、どうやって調べようか、そんな事を考えているうちにカルロが王から与えられた部屋のすぐ側迄来ていた。
 王子宮は勿論別にあるが、次代の王として現国王の仕事を学ぶと同時に、彼自身も仕事を任されている為執務室を与えられている。
 今の時間は、この部屋で割り振られた仕事をこなしているのだ。そしてこの時、関係ない上に仕事に携われない筈の宰相の息子、ラウル・ビスカルディーニが居る。
 ラウルは宰相の息子だが、三男だ。本来なら執務室に居る事も許されない筈だが、同じ年の幼馴染みで兄弟のように育ったからか、ある程度許されているのだろう。
 此方の挨拶も問題なく終わらせ、部屋を出た。ドアを閉めたグィードはそっ、とドアに凭れ、大きく溜息を吐いた。次は第二王子のダリオだ。此処から、行動を変える。
 前回と同じ行動をとる、と言うのも難しいが、運命を変えるために今までと違う行動を意識してとる、と言うのも緊張するし怖い。
 ダリオは、この時間は家庭教師と勉強している。話は通してあるから、今から行って少し待てば休憩を取るダリオと挨拶することになる。
 グィードは気を取り直してダリオが勉強している部屋へ向かった。長い廊下を歩いていると、遠く鍛錬する男達の声が聞こえてくる。此処からは少し遠いが、騎士達の修練場がこの建物と中庭を挿んでもう少し歩いた所にある。
 ダリオが終われば最後、其処で他の騎士達と鍛錬している騎士の息子オルランド・ブランツォーニと会う。
「さて・・・・・・」
 部屋に着いたグィードは、侍女の案内でダリオが勉強している隣の部屋で待たされた。
 此処までは、彼の記憶の中で覚えている通りだ。
「お待たせしました、グィード・バルディーニ卿」
「お久しぶりでございます、ダリオ・ベンディチェンティ殿下」
「ああ、堅苦しいのは抜きにして、名前で読んで下さい」
 此処までは、記憶の通りだ。軽く雑談をしながら、自分でも唐突だな、と思わずにはいられないが話題をひとつ、振ってみた。
「そう言えば殿下は大層な読書家だそうですね。うちの妹も読書を趣味にしていましてね・・・・・・特にお気に入りが《アドルフォの冒険》シリーズなんです」
 やはりと言うか、唐突に話題を振られたダリオは戸惑ったようだがラウラの事と、本のタイトルを言うと目を輝かせた。
「え、ラウラ・バルディーニ侯爵令嬢はアドルフォシリーズがお好きなんですか?」
 とても嬉しそうに話題に乗って来てくれた。《アドルフォの冒険》シリーズは、作者が自身の親友だと言う男の体験談を元に描いている、と言われている所謂児童書のひとつであった。
 ドラゴンと手を組んでオークの国と戦争したり、夜の女王に呪われ、その呪いを解くため冥府へアイテムを取りに行ったりと波乱万丈なファンタジー小説である。
「ええ、ただ・・・・・・女の子が冒険譚が好きだと中々話題が合わないと嘆いていましてね」
 ましてや、ラウラの年齢で冒険小説を好む時点ではしたない、だとか子供っぽいと言われてしまうものだ。
「そうなんですね・・・・・・僕も中々この話を一緒にしてくれる人がいないんですよね」
 そっか、ラウラ嬢が・・・・・・と呟くのを見て、お、とグィードは思った。ひょっとして脈ありなんだろうか、と。
「よろしければ、一度ラウラと会ってやってくれませんか?」
「え・・・・・・!」
 ぱあっ、と顔色が輝いた。話題が合いそうな女性と会える、と言う雰囲気ではない。
「もしかして・・・・・・殿下」
「え、あっ!いや・・・・・・その・・・・・・」
 面白いくらい顔が真っ赤だ。 
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