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終章
望まぬ○○○-2
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週末、ゼータとメリオンはシルフィーの案内により、ポトスの街中にあるとある貸衣装店を訪れた。その貸衣装店は、意外にもゼータにとっては馴染み深い場所であった。
「貸衣装店ハクジャへのご来店、真にありがとうございます」
そう言ってにこやかに頭を下げる者は、かつてゼータとレイバックをドラキス王国へと送り届けてくれたリジンだ。日に焼けた頬に、頭の上を跳ねまわる赤銅色の髪。自称屑野郎のリジンは、今はその本性を人の良い笑みで覆い隠している。先頭に立つシルフィーが、にこにことご機嫌でリジンに語り掛ける。
「リジンさん、今日は予約を優先させてくれてありがとね」
「いえいえ、シルフィー様にはいつも贔屓にしていただいておりますから。それで本日の主役である花嫁様は――」
リジンの赤銅色の瞳は一瞬ゼータを見て、それからすぐにメリオンへと移る。
「そちらの美しいお方でございますね。ささ、どうぞ奥へ。まずは衣装のご希望や予算について伺いましょう」
リジンが手のひらで指し示す先は、店の奥側に置かれたテーブル席だ。一枚板のテーブルに上品な椅子が4脚、テーブルの上には小さな花瓶と卓上カレンダー、それにメモ紙と万年筆が置かれている。リジンの背に続きテーブルへと向かう最中、ゼータは小さな声でシルフィーに問いかける。
「シルフィー。シルフィーは貸衣装店ハクジャの常連さんなんですか?」
「そうだよ。と言っても、私が頻繁にドレスを借りているわけじゃないの。リジンさんにはね、人形用のお洋服を作ってもらっているんだ」
「人形の? ああ、そういえばシルフィーは人形集めが趣味でしたね」
ゼータは借りた本を返すために夜分シルフィーの私室を訪れ、そこに置かれた大量の人形を目撃し腰を抜かしかけた経験がある。人形の中には人の背丈に及ぶサイズの物もあったから、こだわりの衣服をあつらえて着せ替えるのも楽しかろう。今度時間があるときに、リジンの作った人形用の衣服を見せてもらおう。ゼータがそんなことを考えるうちに、4人の足はテーブルの傍へと辿り着く。シルフィー、ゼータ、メリオン、リジン、と順に腰を下ろす。
「では改めまして、貸衣装店ハクジャへのご来店まことにありがとうございます。私は店主のリジン。衣装の制作から髪結い、着付けまで幅広く請け負っておりますので、要望はなんなりとお申し付けください。では初めに簡単な衣装の希望をお伺いしても?結婚式を催されるのだとの話は、予約の折にシルフィー様から聞いておりますが」
リジンの視線は真っ直ぐにメリオンへと向かう。衣装を着る者がメリオンなのだから、当然と言えば当然である。しかしメリオンは何も答えない。感情のない眼差しで、じっとリジンを見返すだけ。これも当然と言えば当然である。メリオンは端から結婚式の開催など望んではいない。純白のウェディングドレスに身を包まれる己の姿を想像してか、完全に表情が死んでいる。多分、思考も死んでいる。
沈黙を訝しんだリジンが再度口を開こうとしたとき、一足早く助け船を出す者はシルフィーだ。
「リジンさん。生々しい話から先にしちゃうとね。お予算はこれくらいなの」
シルフィーはテーブルの上に置かれた万年筆を手にとると、メモ紙にさらさらと数字を書いた。ゼータとリジン、そしてメリオンまでもがその数字を覗き見る。
「成程…それは結婚式全体のお予算ですか?それとも衣装に掛けられるお予算?」
「結婚式全体のお予算だよ。でも実際ね、衣装以外にはあまりお金がかからないの。結婚式の場所はポトス城内の園庭を予定しているし、お料理は厨房で融通を利かせてくれるって。式場の飾りつけは皆で道具を持ち寄ってするし、参列者は王宮内の人ばかりでしょう。だからこの予算内で、リジンさんの方でうまくやってほしいんだよ。メリオンのウェディングドレスと、クリスの燕尾服と、あと靴とか宝飾品のレンタル代。お化粧や髪結いのお支払いも必要かな? あ、もちろん無理そうなら無理って言ってね。『予算が足りなければ寄付するぞ』と言ってくれている人が2人いるからさ」
その2人とはレイバックとザトだ。そう確信するゼータである。
ゼータの横では、メリオンがまじまじと予算が掛かれたメモ紙を覗き込んでいる。
「シルフィー。この予算とは一体どのようにして計算されたものですか?」
「ん? これはね、結婚式の参列者から集めた出資金の総額だよ」
「し、出資金…?一体どのようにしてこれだけの額を集めたのです」
「そうそう、それについてはちゃんと説明しないとね。これからの衣装選びにも関わることだからさ」
シルフィーはワンピースのポケットを漁ると、小さく折り畳まれた1枚の紙を取り出した。少女の小さな手がその紙を開けば、そこには大きく書かれた「かわいい」「おいろけ」の2単語と、無数に書かれた「正」の文字。何だ、この謎の集計表は。皆が無言でシルフィーの説明を待つ。
「これはねぇ、結婚式の参列者を訪ねて投票してもらったんだ。メリオンのウェディングドレスは『かわいい』系が良いか、それとも『おいろけ』系が良いかってさ。銀貨一枚の出資につき1票。人によっては金貨数枚単位で出資してくれる人もいて、ギリギリまで良い勝負だったんだよ」
「…それで、結局どっちが勝ったんですか?」
ゼータはそう尋ねながらも、紙に書かれた正の字をせっせと数える。「かわいい」と「おいろけ」の投票数は、一見すれば同程度。どちらが優勢であるかはすぐには分からない。皆が固唾を飲んで見守る中、シルフィーの薄桃色の唇が開く。
「2票差で『かわいい』の勝ち。だからさ、メリオン。ウェディングドレスはうんと可愛いのを選んでね?出資してくれた皆の期待に応えなきゃならないから」
そう言われた瞬間のメリオンの表情といえば、流石のゼータも憐れと感じるほどである。日頃から己の乳肉を武器として利用するメリオンだ。「おいろけ」が勝ってくれれば、まだ救いようはあったのだけれど。しかしこのシルフィーの発言には、意外にもリジンが仲裁に入る。
「シルフィー様。結婚式の主役は花嫁様でございますから。ウェディングドレスにつきましては、花嫁様の希望を優先いたしましょう。例えシンプルなドレスをお選びになっても、髪型や小物で『かわいい』を演出することは可能です。いかがでしょう?」
リジンの提案に、シルフィーはつぶらな瞳を瞬かせて思案に耽る。
「うーん…確かに。結婚式の主役はメリオンとクリスだもんね。分かった、ドレスはメリオンの希望を優先するよ」
「それは良かった。では実際にドレスを見て回られますか?衣装が決まれば、小物や化粧のイメージもしやすくなります。具体的なご予算の話がしやすくなりますよ」
「うんうん、そうだね。じゃあ先にドレスを見てこようかな。メリオン、行こう」
特に落胆した様子もないシルフィーがそう声をかけると、いくらか機嫌が回復した様子のメリオンは席を立つ。少女と淑女。2つの背中は並んで店の壁際へと歩いていく。そこには純白のウェディングドレスを含むたくさんのドレスが掛けられているのだ。リジンの営む「ハクジャ」は、ポトスの街中で唯一とも言える貸衣装店。貸し出す衣装はウェディングドレスから男性用の燕尾服、普段使いの少し豪華なワンピースまで様々だ。
ちなみにではあるが、リジンに貸衣装店の経営を提案した者は他でもないゼータである。開店当初は提案者としての責務を果たすために、貸衣装の試着を引き受けたり、王宮内でチラシを配り歩いたりと忙しく働いたものだ。もっとも貸衣装店ハクジャの経営が軌道に乗った後は、すっかり足が遠のいてしまっていたけれど。
まさかこんなところで、またリジンとの縁が繋がろうとは。椅子に腰かけたまま懐かしい気持ちで店内を見回すゼータの肩を、後ろからぽんぽんと叩く者がある。リジンだ。
「おいゼータ。あんたは一体何をしに来たんだ。荷物持ちか?」
リジンは店内を歩くメリオンとシルフィーの様子を伺いながら、そう声を潜める。ゼータは嫌な事を思い出したというように眉を下げる。
「いえ…それが結婚式のブライズメイドをやることになっておりまして」
「ブライズメイド? あんたが? 1人で?」
「まさか…シルフィーと2人でですよ」
リジンの赤銅色の瞳はシルフィーの可憐な後ろ姿を見て、それから椅子に座るゼータの顔をまじまじと見る。「ぶふっ」と声を上げて盛大に吹き出す。
「そうかそうか、ブライズメイドか。そりゃ良いや。あっちの壁に掛けてある新作のドレスはどうだ?あんたには色々と世話になっているし、特別価格で貸し出してやる」
そう言ってリジンが指さす先には、可憐な薄桃色のドレスがかけられていた。胸元には大きなリボン、スカートには幾重にもフリルが縫い付けられ、まさに「可愛らしい」の代名詞のようなドレスである。少女の外見であるシルフィーがそのドレスを着れば、さぞかし絵になることだろう。
「確かにシルフィーが好みそうなデザインのドレスですね。良いでしょう。シルフィーがあれを着るというのなら、私にも同じ物を特別価格で貸し出してください」
「…随分と潔いじゃないか」
「そうですとも、潔いんです。私はシルフィーの笑顔のためなら、プライドを捨て丸裸にもなる覚悟です」
「シルフィー?花嫁のためではなく?」
「詳しいことは聞かないでください。色々と大変なんです、こちらも」
「はぁ…?」
ひそひそと会話を続ける2人の背後では、シルフィーとメリオンが衣装選びの真っ最中である。「ねぇねぇメリオン、あのドレスはどうかな。レースがたくさんついていて可愛いよ」「いえ、私はあっちの壁にかけてあるドレスが好きですね。真っ黒の」「えー結婚式で黒は駄目だよぉ」
「貸衣装店ハクジャへのご来店、真にありがとうございます」
そう言ってにこやかに頭を下げる者は、かつてゼータとレイバックをドラキス王国へと送り届けてくれたリジンだ。日に焼けた頬に、頭の上を跳ねまわる赤銅色の髪。自称屑野郎のリジンは、今はその本性を人の良い笑みで覆い隠している。先頭に立つシルフィーが、にこにことご機嫌でリジンに語り掛ける。
「リジンさん、今日は予約を優先させてくれてありがとね」
「いえいえ、シルフィー様にはいつも贔屓にしていただいておりますから。それで本日の主役である花嫁様は――」
リジンの赤銅色の瞳は一瞬ゼータを見て、それからすぐにメリオンへと移る。
「そちらの美しいお方でございますね。ささ、どうぞ奥へ。まずは衣装のご希望や予算について伺いましょう」
リジンが手のひらで指し示す先は、店の奥側に置かれたテーブル席だ。一枚板のテーブルに上品な椅子が4脚、テーブルの上には小さな花瓶と卓上カレンダー、それにメモ紙と万年筆が置かれている。リジンの背に続きテーブルへと向かう最中、ゼータは小さな声でシルフィーに問いかける。
「シルフィー。シルフィーは貸衣装店ハクジャの常連さんなんですか?」
「そうだよ。と言っても、私が頻繁にドレスを借りているわけじゃないの。リジンさんにはね、人形用のお洋服を作ってもらっているんだ」
「人形の? ああ、そういえばシルフィーは人形集めが趣味でしたね」
ゼータは借りた本を返すために夜分シルフィーの私室を訪れ、そこに置かれた大量の人形を目撃し腰を抜かしかけた経験がある。人形の中には人の背丈に及ぶサイズの物もあったから、こだわりの衣服をあつらえて着せ替えるのも楽しかろう。今度時間があるときに、リジンの作った人形用の衣服を見せてもらおう。ゼータがそんなことを考えるうちに、4人の足はテーブルの傍へと辿り着く。シルフィー、ゼータ、メリオン、リジン、と順に腰を下ろす。
「では改めまして、貸衣装店ハクジャへのご来店まことにありがとうございます。私は店主のリジン。衣装の制作から髪結い、着付けまで幅広く請け負っておりますので、要望はなんなりとお申し付けください。では初めに簡単な衣装の希望をお伺いしても?結婚式を催されるのだとの話は、予約の折にシルフィー様から聞いておりますが」
リジンの視線は真っ直ぐにメリオンへと向かう。衣装を着る者がメリオンなのだから、当然と言えば当然である。しかしメリオンは何も答えない。感情のない眼差しで、じっとリジンを見返すだけ。これも当然と言えば当然である。メリオンは端から結婚式の開催など望んではいない。純白のウェディングドレスに身を包まれる己の姿を想像してか、完全に表情が死んでいる。多分、思考も死んでいる。
沈黙を訝しんだリジンが再度口を開こうとしたとき、一足早く助け船を出す者はシルフィーだ。
「リジンさん。生々しい話から先にしちゃうとね。お予算はこれくらいなの」
シルフィーはテーブルの上に置かれた万年筆を手にとると、メモ紙にさらさらと数字を書いた。ゼータとリジン、そしてメリオンまでもがその数字を覗き見る。
「成程…それは結婚式全体のお予算ですか?それとも衣装に掛けられるお予算?」
「結婚式全体のお予算だよ。でも実際ね、衣装以外にはあまりお金がかからないの。結婚式の場所はポトス城内の園庭を予定しているし、お料理は厨房で融通を利かせてくれるって。式場の飾りつけは皆で道具を持ち寄ってするし、参列者は王宮内の人ばかりでしょう。だからこの予算内で、リジンさんの方でうまくやってほしいんだよ。メリオンのウェディングドレスと、クリスの燕尾服と、あと靴とか宝飾品のレンタル代。お化粧や髪結いのお支払いも必要かな? あ、もちろん無理そうなら無理って言ってね。『予算が足りなければ寄付するぞ』と言ってくれている人が2人いるからさ」
その2人とはレイバックとザトだ。そう確信するゼータである。
ゼータの横では、メリオンがまじまじと予算が掛かれたメモ紙を覗き込んでいる。
「シルフィー。この予算とは一体どのようにして計算されたものですか?」
「ん? これはね、結婚式の参列者から集めた出資金の総額だよ」
「し、出資金…?一体どのようにしてこれだけの額を集めたのです」
「そうそう、それについてはちゃんと説明しないとね。これからの衣装選びにも関わることだからさ」
シルフィーはワンピースのポケットを漁ると、小さく折り畳まれた1枚の紙を取り出した。少女の小さな手がその紙を開けば、そこには大きく書かれた「かわいい」「おいろけ」の2単語と、無数に書かれた「正」の文字。何だ、この謎の集計表は。皆が無言でシルフィーの説明を待つ。
「これはねぇ、結婚式の参列者を訪ねて投票してもらったんだ。メリオンのウェディングドレスは『かわいい』系が良いか、それとも『おいろけ』系が良いかってさ。銀貨一枚の出資につき1票。人によっては金貨数枚単位で出資してくれる人もいて、ギリギリまで良い勝負だったんだよ」
「…それで、結局どっちが勝ったんですか?」
ゼータはそう尋ねながらも、紙に書かれた正の字をせっせと数える。「かわいい」と「おいろけ」の投票数は、一見すれば同程度。どちらが優勢であるかはすぐには分からない。皆が固唾を飲んで見守る中、シルフィーの薄桃色の唇が開く。
「2票差で『かわいい』の勝ち。だからさ、メリオン。ウェディングドレスはうんと可愛いのを選んでね?出資してくれた皆の期待に応えなきゃならないから」
そう言われた瞬間のメリオンの表情といえば、流石のゼータも憐れと感じるほどである。日頃から己の乳肉を武器として利用するメリオンだ。「おいろけ」が勝ってくれれば、まだ救いようはあったのだけれど。しかしこのシルフィーの発言には、意外にもリジンが仲裁に入る。
「シルフィー様。結婚式の主役は花嫁様でございますから。ウェディングドレスにつきましては、花嫁様の希望を優先いたしましょう。例えシンプルなドレスをお選びになっても、髪型や小物で『かわいい』を演出することは可能です。いかがでしょう?」
リジンの提案に、シルフィーはつぶらな瞳を瞬かせて思案に耽る。
「うーん…確かに。結婚式の主役はメリオンとクリスだもんね。分かった、ドレスはメリオンの希望を優先するよ」
「それは良かった。では実際にドレスを見て回られますか?衣装が決まれば、小物や化粧のイメージもしやすくなります。具体的なご予算の話がしやすくなりますよ」
「うんうん、そうだね。じゃあ先にドレスを見てこようかな。メリオン、行こう」
特に落胆した様子もないシルフィーがそう声をかけると、いくらか機嫌が回復した様子のメリオンは席を立つ。少女と淑女。2つの背中は並んで店の壁際へと歩いていく。そこには純白のウェディングドレスを含むたくさんのドレスが掛けられているのだ。リジンの営む「ハクジャ」は、ポトスの街中で唯一とも言える貸衣装店。貸し出す衣装はウェディングドレスから男性用の燕尾服、普段使いの少し豪華なワンピースまで様々だ。
ちなみにではあるが、リジンに貸衣装店の経営を提案した者は他でもないゼータである。開店当初は提案者としての責務を果たすために、貸衣装の試着を引き受けたり、王宮内でチラシを配り歩いたりと忙しく働いたものだ。もっとも貸衣装店ハクジャの経営が軌道に乗った後は、すっかり足が遠のいてしまっていたけれど。
まさかこんなところで、またリジンとの縁が繋がろうとは。椅子に腰かけたまま懐かしい気持ちで店内を見回すゼータの肩を、後ろからぽんぽんと叩く者がある。リジンだ。
「おいゼータ。あんたは一体何をしに来たんだ。荷物持ちか?」
リジンは店内を歩くメリオンとシルフィーの様子を伺いながら、そう声を潜める。ゼータは嫌な事を思い出したというように眉を下げる。
「いえ…それが結婚式のブライズメイドをやることになっておりまして」
「ブライズメイド? あんたが? 1人で?」
「まさか…シルフィーと2人でですよ」
リジンの赤銅色の瞳はシルフィーの可憐な後ろ姿を見て、それから椅子に座るゼータの顔をまじまじと見る。「ぶふっ」と声を上げて盛大に吹き出す。
「そうかそうか、ブライズメイドか。そりゃ良いや。あっちの壁に掛けてある新作のドレスはどうだ?あんたには色々と世話になっているし、特別価格で貸し出してやる」
そう言ってリジンが指さす先には、可憐な薄桃色のドレスがかけられていた。胸元には大きなリボン、スカートには幾重にもフリルが縫い付けられ、まさに「可愛らしい」の代名詞のようなドレスである。少女の外見であるシルフィーがそのドレスを着れば、さぞかし絵になることだろう。
「確かにシルフィーが好みそうなデザインのドレスですね。良いでしょう。シルフィーがあれを着るというのなら、私にも同じ物を特別価格で貸し出してください」
「…随分と潔いじゃないか」
「そうですとも、潔いんです。私はシルフィーの笑顔のためなら、プライドを捨て丸裸にもなる覚悟です」
「シルフィー?花嫁のためではなく?」
「詳しいことは聞かないでください。色々と大変なんです、こちらも」
「はぁ…?」
ひそひそと会話を続ける2人の背後では、シルフィーとメリオンが衣装選びの真っ最中である。「ねぇねぇメリオン、あのドレスはどうかな。レースがたくさんついていて可愛いよ」「いえ、私はあっちの壁にかけてあるドレスが好きですね。真っ黒の」「えー結婚式で黒は駄目だよぉ」
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