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安らかに眠れ、恐ろしくも美しい緋色の龍よ
ドラゴン・トーク-2
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「ゼータさん、ドラゴンの研究をしているんだよね。私が知っていることは何でも話すから、対価としてドラゴンの新情報を披露してよ」
「新情報…ですか」
「そうそう。アタシ、ドラゴンが好きなんだよね。空を見上げるのは癖なんだ。昼夜問わず頻繁に空を見上げていれば、実は結構ドラゴンは飛んでいるんだよ。お勧めは南方の空、時刻は夕暮れ時。ずぅっと遠いところだけれど、かなりの頻度でドラゴンを見掛けるよ。2か月前に2頭のドラゴンを見たのも、いつもの癖で空を見上げていたからなんだ。そんなわけで、ドラゴン好きのアタシを満足させるような、ドラゴンの新情報を披露してよ」
そう話すバレッタの顔は笑顔だ。しかし悪意を感じるような笑みではない。純粋に、ゼータの口から語られる知識に期待を寄せている。バレッタの横では、ジンダイがはらはらと不安な表情だ。「バレッタのドラゴン好きは本当だ。ドラゴンの飛行風景を見たいがために、昼夜問わず空を見上げている変態の欲求を満たすことなどできるのか」とでも言いたげである。しかしこの場の誰も知らぬことではあるが、ゼータの真の姿こそ変態だ。それも珍しい魔獣の面影を追い、1か月山中を駆け回るほどのド変態である。マッドサイエンティストの異名に加え、現在は「ドラゴンの番」という人にあるまじき地位まで確立した。ドラゴンに関する知識なら、素人相手に無限に語ることができる。
「ドラキス王国のポトスの街から湖畔の国リーニャまで、ドラゴンに乗って移動するとしたらどれくらいの時間が掛かると思います?」
「…わかんない。6時間くらい?」
「飛行時間で言えば3時間です。旧バルトリア王国との国境付近まで2時間、そこからリーニャまでが1時間。ドラゴン単体での飛行であれば1時間半ほどでの移動が可能ですが、人が背に跨れば速度を落とさねばなりません。専用の鞍を付けていたにしても、ドラゴンが全力で飛行すれば人は振り落とされてしまいますから。また3時間連続の空の旅となれば、人は相当の疲労を抱えることになります。間に休憩を挟むのが現実的ですね。15分程度の休憩を2度。ポトスの街からリーニャまで、所要時間は3時間半というところでしょうか。」
ゼータが語り終えたとき、バレッタの口からは歓喜の声が上がった。バレッタの隣では、ジンダイが思うところのある表情だ。湖畔の街リーニャに緋色のドラゴンが飛来した、1年前の記憶を辿っているのだろう。
「それ自分で計算したの?ドラゴンの飛行速度を割り出して?面白いことを考えるね。そう、たった3時間半で行き来ができるんだ…夢みたいだねぇ」
「バレッタさんは、ドラキス王国を訪れた経験はありますか?」
「ないよ。行ってみたいとは思っているんだけどね。でも中々勇気がいるよ。魔獣討伐や盗賊規制は始まっているけれど、まだまだ道中に危険は多いもの。旅行のために必死にお金を貯めても、道中で盗賊に盗られたんじゃ何にもならないでしょ。移動時間が長いのも辛いよねぇ。せめて馬車での移動が可能になれば良いんだけど」
ポトスの街から湖畔の国リーニャまでは、馬で2日、騎獣で1日の距離であるとされている。道の整備が半ばであるため、馬車や魔獣車での移動は不可能だ。騎乗に乗れる兵士ならば良いが、日常的に騎乗機会のない一般の民が、丸一日の時を騎獣の背に跨るのは大変なことである。移動の時間が長くなれば、当然魔獣や盗賊に襲われる確率も高くなる。安寧への道を歩み始めたとは言え、旧バルトリア王国の国土にはまだまだ危険な魔獣や盗賊が出没するのだ。
旧バルトリア王国地帯一の繁栄国でありながらも、リーニャを訪れるポトスの街の民が一定数に留まっているのには、そういった理由がある。リーニャへと続く道は今も整備が進み、行くは馬車や魔獣車での通行が可能になるとされている。しかし全ての道の整備が終わるまでには、少なくとも数年と時を要する。危険な魔獣の討伐や盗賊の撲滅にも、まだ時間は掛かる。気楽な国外旅行が楽しめるのは、もう少し先という事だ。
「ね、ジンさん。馬車移動が解禁したら、一緒にドラキス王国に行こうよ。6泊7日、ドラキス王国観光旅行。アタシの分もお金出してよ」
「やなこった。一体いくら掛かると思っているんだ」
「良いじゃん。アタシ、今まで結構ジンさんのお仕事に貢献しているでしょ。ドラキス王国行きの旅費分くらい、貸しがあるんじゃないの?」
「良い情報を仕入れたって、売れなきゃ金にはならないんだ。バレッタからの借りは…精々金貨2枚分というところだ」
「うっそぉ。全然足りないじゃん」
「俺の金で旅行に行きたければ、良い情報を売り込んでくれ。金貨10枚分の借りが溜まったら、ドラキス王国旅行に連れて行ってやるよ」
精々頑張り給え、ジンダイは豪快に笑う。バレッタは紅の唇に指先を当て、真剣な表情だ。
「…アタシの好きな人の情報、とかどう?」
「お前の好い人の情報を、大金を叩いて買う物好きがいると思うのか?」
「いるかもよ。無精髭を生やした強面のおっさんが、金貨8枚で買っていくかもしれない」
「買って堪るか」
相変わらず漫才のような掛け合いだ。バレッタはけらけらと軽快な笑い声を零す。ジンダイも厳めしい顔つきを装いながらも楽しそうだ。店員と客人の間柄ながらも、2人は心地よい関係を築いている。
「ああ、ごめんね。話が逸れたね。興味深いドラゴンの新情報をありがとう。約束通り、アタシが知っていることは全部話すからね」
和やかな声音からは一変し、バレッタは表情を引き締める。ゼータとジンダイも、つられるように背筋を伸ばした。
「ドラゴンを見たのは、先々月の1日だ。時刻は…15時くらいだったと思うよ。その日は非番だったから、一日自宅でのんびりしていたんだ。ベッドに寝転がって窓から外を見ていたら、遠くの空を2頭のドラゴンが横切ったんだよね。緋色のドラゴンと、苔色のドラゴン。ドラゴンの喧嘩なんて初めて見たから、興奮してすぐに窓を開けたよ。姿が見えなくなるまで眺めていたんだ」
「2頭のドラゴンはどんな様子でした?酷く弱っていたり、傷を負ったりしている様子はありました?」
「遠目だから傷の有無はわかんない。でもどちらかが酷く弱っている、という感じはしなかったよ。互角に戦っているなぁ、という印象。強いて言うなら、苔色のドラゴンが少し優勢に見えたかな。緋色のドラゴンは逃げようとしている感じだったよ。それを苔色のドラゴンが執拗に追い回して、攻撃しているという感じかな。遠目だから確実ではないけどね」
朗報とも悲報ともとれぬ情報だ。竜体のレイバックは、慣れぬ同種との戦いに苦戦していた。戦いの場から逃げ出そうにも、執拗に追い回され距離を取ることができない。しかし決して劣勢というわけではない。度重なる攻撃を受けながらも、虚弱している様子は見られなかった。ゼータが旧バルトリア王国国土で、緋色のドラゴンの遺骸を探す可能性は低そうだ。
「十分な情報です。ありがとうございます。2頭のドラゴンが向かったのは、東の方向ですか?」
「真東ではなかったと思うよ。少し南にずれていたかな。地図があれば、正確な方向がわかるんだけど」
バレッタがそう言うが早いか、ジンダイは懐から小さく折り畳んだ厚紙を取り出した。野太い指先が、
滑らかな動きで厚紙を広げてゆく。テーブルいっぱいに広げられるそれは、手書きの地図だ。旧バルトリア王国国土の山脈や河川、目ぼしい集落や魔獣の出没状況を記した細かな地図。それとは別にもう一枚、湖畔の国リーニャ中心部の地図が、ジンダイの膝の上に広げられる。地図を眺めるゼータとバレッタは感心の表情だ。
「流石ジンさん、準備が良いねぇ」
「方角の話をするなら地図は必須だろう。情報屋七つ道具の一つだ」
残る六道具の正体を気に掛けながらも、ゼータはリーニャ中心部の地図を繁々と眺め下ろす。見事な地図だ。建物は商店から診療所に至るまで全てが細かく書き記されているし、毛細血管のように伸びる通りも同様だ。地図の至るところに紙を重ねた跡があるから、恐らくは建物が建て替わるたびに地図を書き直しているのだ。新鮮な情報を顧客に提供することがジンダイの生業なのだとしても、並の努力では成せぬ業だろう。現にドラキス王国の王宮にも、これだけ詳細な国内地図は存在しない。
バレッタの陶器のような指先が、地図の一部を指さした。大通りの南端付近にある、小さな真四角の建物だ。近くには「時計台」と記された五角形の建物がある。
「アタシの自宅がここね。それで、ドラゴンは時計台の屋根を超えて見えなくなったから…」
「バレッタ。客に自宅の情報を教えて良いのか」
「ジンさんはアタシの家に押しかけたりしないでしょ。他の客には教えないよ」
事もなげにそう言われてしまえば、ジンダイに返す言葉はない。バレッタは自宅と時計台の間を指先で何度かなぞり、それから旧バルトリア王国国土の地図に視線を移した。
「やっぱり、真東からは10度くらい南にずれているね」
「その方角だと、リーニャから騎獣で2時間ほどのところに小国ゴルダがある。だがゴルダ付近にドラゴンが着陸したのなら、俺の元に何かしらの情報は届くはずだ」
「そうだねぇ。ゴルダの先は…山があるね。多分だけど、この山は越えたと思うんだ。かなりの高度を保って飛行していたから、山間に墜落したなんてことはないと思う」
「山を越えた先には、国は一つしかない。小国ブラキスト、旧バルトリア王国東部で唯一の国家だ」
小国ブラキスト、その名にはゼータも覚えがある。旧バルトリア王国跡地にできた13の小国の一つで、ゼータとレイバックは国王の即位式典の折にブラキストの地を訪れている。旧バルトリア王国国土の東部は、高い山々に囲まれた周囲からは隔絶された土地だ。凶暴な魔獣もの出没も多く、旧土のうちでは最も生きることが難しい土地であるとされていた。しかしそうであるにも関わらず、小国ブラキストの街並みはよく整っていた。人々の身なりは小綺麗であったし、木柵の中の家畜はよく肥えていた。「かつて土地を治めた首長たる人物が非常に優秀であったのだ」と、ブラキストの新王は語った。
ゼータは記憶の中にあるブラキストの風景を辿る。規則正しく整備された街並みの向こうには、山頂の見えぬ山々が連なっていた。
「確か、ブラキストの東方は山脈地帯ですよね」
「その通りだ。それも旧バルトリア王国内部の山々とは比べ物にならない、高山地帯だ。ドラゴンとはいえども、あの山脈を超えるのは容易ではない。山脈を目前にして、行く方向を変えた可能性は十分にある。一度、ブラキストに立ち寄って情報を集めるのが良いかもな」
「リーニャからブラキストを目指すには?」
「山道がある。ゴルダとリーニャを一直線に繋ぐ道だ。獣道だが、慣れた騎獣がいれば超えられない道ではない。山道が不安なら、中央国セントラルを経由するという手段もある。回り道にはなるが、こちらの方がいくらか安全な道だ。人通りも多いし、道中にいくつかの集落がある。人通りが多いという事は盗賊に狙われやすいという事でもあるし、一口に安全とも言い難いが…」
ゼータはテーブルの上の地図をじっと見下ろす。湖畔の国リーニャと小国ゴルダの間は一本道だ。そしてゴルダの東方には薄緑色に着色された山岳地帯。山岳地帯を東西に横断するようにして、山道が描かれている。うねる山道は、単純な距離で言えばさほどの長さはない。一方で、中央国セントラルを経由するとなれば移動距離は数倍に膨れ上がる。旧バルトリア王国国土の中心部にあるセントラルの街中を通り抜け、それから先は長い長い直線路だ。走りやすい道であるとは想像ができるが、結局ブラキストの直前には低山が連なっている。ブラキスト自体が山間に位置する国家なのだから、どの道を進んでも山越えをしなければならないことに変わりはない。よし、とゼータは腹を決める。
「ゴルダ東方の山道を行きます。ジンさん、この地図は買えますか?」
「店に戻れば写しがある。地図を求める客人は多いからな。一緒に酒を飲んだ仲だ、定価の半額の銀貨2枚で販売してやろう」
「助かります」
「水と食料もある程度は持って行った方が良い。迷わなければ2日で越えられる道だが、わかれ道も多いと聞く。道を間違えれば危険な廃道に迷い込むことになる。すぐに気付いて引き返せば良いが、どん詰まりまで進んでしまうと数時間は無駄足だ。山菜や湧水は豊富と聞くが、備えておくに越したことはない。帰り道で良い店を紹介してやるよ」
「ありがとうございます。何から何まで」
「気にするな。ドラキス王国の命運は、ゼータさんの肩に掛かっているんだからな」
明朗快活なジンダイの笑い声に、バレッタはこっくりと首を傾げた。
「どういう意味?」
「物の例えだ。深い意味はない」
明確な答えを得られず少々不満げなバレッタに対し、ゼータは喜色満面だ。先行きのわからぬ旅路であったが、一先ずの目的地は定まった。旧バルトリア王国国土東部に位置する小国ブラキスト。そこで2頭のドラゴンの行方を探る。「神国ジュリに立ち寄れ」とのメリオンの指示を遂行するのはその後だ。2頭のドラゴンは高山に行く手を阻まれ向かう方角を変えたのか、争ううちに山間に墜落したのか、それとも高山地帯を超え飛び去ったのか。ドラゴンの行動次第で、今後の捜索方法も異なってくる。神国ジュリで作られているという、魔導具に似た不思議な道具。国王アメシスに協力を求めるのなら、捜索方法を固めてからの方が効率は良い。
主となる情報収集を終えた後は、1時間程度の雑談を交わしバレッタに別れを告げる。当初の宣告通り、酒代とつまみ代は全てジンダイ持ちだ。3杯のグラスと、1本の酒瓶、それにつまみが3皿。注文した飲食物はそれだけであるはずなのに、お会計は身震いするほどに高額だ。会計台にのせられる大量の銀貨を横目で眺め、ゼータはそっとジンダイに唇を寄せる。
「ジンさん。私、自分の酒代は自分で払います」
「先行きの読めない旅路だ。金は取っておけ」
「でも…」
「どうしても払いたいというのなら、無事任務を遂行した後に払いに来てくれ。利子は…そうだな。3日で銀貨一枚だ。どうだ、良心的だろう」
「驚愕の高利貸しですねぇ」
くつくつと笑い合いながら、ゼータとジンダイは店を出る。格子戸を閉め、人通りの多い裏繁華街を歩き始めたときに、背後でジンダイを呼び止める声がした。振り向けば、格子戸の隙間からバレッタが顔を出している。
「ジンさん。これ、忘れ物だよ」
バレッタは握り締めた右手を、顔の前で小さく振った。ん、ああ、と曖昧な相槌を打ったジンダイは、額を掻き掻きバレッタの元へと引き返す。銀貨でも落としていたのだろうか。少し離れたところからジンダイとバレッタの様子を見守っていたゼータは、次の瞬間驚愕の光景を目にすることになる。
高々と掲げられたバレッタの右手には、何も握られてはいなかった。空の右手はジンダイの首元を抱き寄せ、紅色の唇は髭に埋もれた頬に触れる。ちゅう、と艶めかしい吸い音。
「また来てね。待っているよ」
ひらひらと手を振るバレッタに見送られ、2人は桃色提灯輝く店を後にした。
2人は長らく無言で歩いていたが、歩みが大通りへと差し掛かった時にゼータはようやく口を開く。
「あの、ジンさん。さっきのあれって…」
「何も言うな。俺にだって夢を見る権利はある」
そう言うジンダイの顔は嬉しそうとも見え、悲しそうとも見える。良質な情報を売ることがジンダイの生業であるように、数多の男を虜にすることがバレッタの生業だ。ジンダイが店に足を運びたくさんの酒を飲めば、それがバレッタの給与へと反映されるのだ。だから店の店員は妖艶な衣服を纏い、巧みな会話で客人を楽しませ、繰り返し店に足を運ばせようとする。
バレッタの口付けは、あくまでサービスの範囲内。そう思う事ができないわけでは無いが、ゼータは何となく背中にむず痒さを覚えるのだ。バレッタとジンダイの間には、店員と客人以上の矢印が存在するような気がしてならない。しかしいくら考えたところで、真実に辿り着くことなどできやしない。ペルシャ猫の心の中は、謎のまま。
***
虎耳「まぁたわかりにくい愛情表現してさ。勤務時間中に何をしたって、常連客へのサービスと捉えられて終いだよ。いつも言っているじゃん」
バレッタ「放っておいてよ。今日は収穫があったんだから。金貨10枚分の貸しを作れば、ジンさんと一緒にドラキス王国旅行に行けるんだよ。この妄想でしばらくは食っていける」
虎耳「ジンダイさぁぁぁん。うちの奥手なペルシャ猫が、貴方の事好きで好きで堪らないって!その逞しい2本の腕で抱き留めてあげてぇぇぇ」
バレッタ「ぎゃぁぁぁ止めてぇぇぇ」
「新情報…ですか」
「そうそう。アタシ、ドラゴンが好きなんだよね。空を見上げるのは癖なんだ。昼夜問わず頻繁に空を見上げていれば、実は結構ドラゴンは飛んでいるんだよ。お勧めは南方の空、時刻は夕暮れ時。ずぅっと遠いところだけれど、かなりの頻度でドラゴンを見掛けるよ。2か月前に2頭のドラゴンを見たのも、いつもの癖で空を見上げていたからなんだ。そんなわけで、ドラゴン好きのアタシを満足させるような、ドラゴンの新情報を披露してよ」
そう話すバレッタの顔は笑顔だ。しかし悪意を感じるような笑みではない。純粋に、ゼータの口から語られる知識に期待を寄せている。バレッタの横では、ジンダイがはらはらと不安な表情だ。「バレッタのドラゴン好きは本当だ。ドラゴンの飛行風景を見たいがために、昼夜問わず空を見上げている変態の欲求を満たすことなどできるのか」とでも言いたげである。しかしこの場の誰も知らぬことではあるが、ゼータの真の姿こそ変態だ。それも珍しい魔獣の面影を追い、1か月山中を駆け回るほどのド変態である。マッドサイエンティストの異名に加え、現在は「ドラゴンの番」という人にあるまじき地位まで確立した。ドラゴンに関する知識なら、素人相手に無限に語ることができる。
「ドラキス王国のポトスの街から湖畔の国リーニャまで、ドラゴンに乗って移動するとしたらどれくらいの時間が掛かると思います?」
「…わかんない。6時間くらい?」
「飛行時間で言えば3時間です。旧バルトリア王国との国境付近まで2時間、そこからリーニャまでが1時間。ドラゴン単体での飛行であれば1時間半ほどでの移動が可能ですが、人が背に跨れば速度を落とさねばなりません。専用の鞍を付けていたにしても、ドラゴンが全力で飛行すれば人は振り落とされてしまいますから。また3時間連続の空の旅となれば、人は相当の疲労を抱えることになります。間に休憩を挟むのが現実的ですね。15分程度の休憩を2度。ポトスの街からリーニャまで、所要時間は3時間半というところでしょうか。」
ゼータが語り終えたとき、バレッタの口からは歓喜の声が上がった。バレッタの隣では、ジンダイが思うところのある表情だ。湖畔の街リーニャに緋色のドラゴンが飛来した、1年前の記憶を辿っているのだろう。
「それ自分で計算したの?ドラゴンの飛行速度を割り出して?面白いことを考えるね。そう、たった3時間半で行き来ができるんだ…夢みたいだねぇ」
「バレッタさんは、ドラキス王国を訪れた経験はありますか?」
「ないよ。行ってみたいとは思っているんだけどね。でも中々勇気がいるよ。魔獣討伐や盗賊規制は始まっているけれど、まだまだ道中に危険は多いもの。旅行のために必死にお金を貯めても、道中で盗賊に盗られたんじゃ何にもならないでしょ。移動時間が長いのも辛いよねぇ。せめて馬車での移動が可能になれば良いんだけど」
ポトスの街から湖畔の国リーニャまでは、馬で2日、騎獣で1日の距離であるとされている。道の整備が半ばであるため、馬車や魔獣車での移動は不可能だ。騎乗に乗れる兵士ならば良いが、日常的に騎乗機会のない一般の民が、丸一日の時を騎獣の背に跨るのは大変なことである。移動の時間が長くなれば、当然魔獣や盗賊に襲われる確率も高くなる。安寧への道を歩み始めたとは言え、旧バルトリア王国の国土にはまだまだ危険な魔獣や盗賊が出没するのだ。
旧バルトリア王国地帯一の繁栄国でありながらも、リーニャを訪れるポトスの街の民が一定数に留まっているのには、そういった理由がある。リーニャへと続く道は今も整備が進み、行くは馬車や魔獣車での通行が可能になるとされている。しかし全ての道の整備が終わるまでには、少なくとも数年と時を要する。危険な魔獣の討伐や盗賊の撲滅にも、まだ時間は掛かる。気楽な国外旅行が楽しめるのは、もう少し先という事だ。
「ね、ジンさん。馬車移動が解禁したら、一緒にドラキス王国に行こうよ。6泊7日、ドラキス王国観光旅行。アタシの分もお金出してよ」
「やなこった。一体いくら掛かると思っているんだ」
「良いじゃん。アタシ、今まで結構ジンさんのお仕事に貢献しているでしょ。ドラキス王国行きの旅費分くらい、貸しがあるんじゃないの?」
「良い情報を仕入れたって、売れなきゃ金にはならないんだ。バレッタからの借りは…精々金貨2枚分というところだ」
「うっそぉ。全然足りないじゃん」
「俺の金で旅行に行きたければ、良い情報を売り込んでくれ。金貨10枚分の借りが溜まったら、ドラキス王国旅行に連れて行ってやるよ」
精々頑張り給え、ジンダイは豪快に笑う。バレッタは紅の唇に指先を当て、真剣な表情だ。
「…アタシの好きな人の情報、とかどう?」
「お前の好い人の情報を、大金を叩いて買う物好きがいると思うのか?」
「いるかもよ。無精髭を生やした強面のおっさんが、金貨8枚で買っていくかもしれない」
「買って堪るか」
相変わらず漫才のような掛け合いだ。バレッタはけらけらと軽快な笑い声を零す。ジンダイも厳めしい顔つきを装いながらも楽しそうだ。店員と客人の間柄ながらも、2人は心地よい関係を築いている。
「ああ、ごめんね。話が逸れたね。興味深いドラゴンの新情報をありがとう。約束通り、アタシが知っていることは全部話すからね」
和やかな声音からは一変し、バレッタは表情を引き締める。ゼータとジンダイも、つられるように背筋を伸ばした。
「ドラゴンを見たのは、先々月の1日だ。時刻は…15時くらいだったと思うよ。その日は非番だったから、一日自宅でのんびりしていたんだ。ベッドに寝転がって窓から外を見ていたら、遠くの空を2頭のドラゴンが横切ったんだよね。緋色のドラゴンと、苔色のドラゴン。ドラゴンの喧嘩なんて初めて見たから、興奮してすぐに窓を開けたよ。姿が見えなくなるまで眺めていたんだ」
「2頭のドラゴンはどんな様子でした?酷く弱っていたり、傷を負ったりしている様子はありました?」
「遠目だから傷の有無はわかんない。でもどちらかが酷く弱っている、という感じはしなかったよ。互角に戦っているなぁ、という印象。強いて言うなら、苔色のドラゴンが少し優勢に見えたかな。緋色のドラゴンは逃げようとしている感じだったよ。それを苔色のドラゴンが執拗に追い回して、攻撃しているという感じかな。遠目だから確実ではないけどね」
朗報とも悲報ともとれぬ情報だ。竜体のレイバックは、慣れぬ同種との戦いに苦戦していた。戦いの場から逃げ出そうにも、執拗に追い回され距離を取ることができない。しかし決して劣勢というわけではない。度重なる攻撃を受けながらも、虚弱している様子は見られなかった。ゼータが旧バルトリア王国国土で、緋色のドラゴンの遺骸を探す可能性は低そうだ。
「十分な情報です。ありがとうございます。2頭のドラゴンが向かったのは、東の方向ですか?」
「真東ではなかったと思うよ。少し南にずれていたかな。地図があれば、正確な方向がわかるんだけど」
バレッタがそう言うが早いか、ジンダイは懐から小さく折り畳んだ厚紙を取り出した。野太い指先が、
滑らかな動きで厚紙を広げてゆく。テーブルいっぱいに広げられるそれは、手書きの地図だ。旧バルトリア王国国土の山脈や河川、目ぼしい集落や魔獣の出没状況を記した細かな地図。それとは別にもう一枚、湖畔の国リーニャ中心部の地図が、ジンダイの膝の上に広げられる。地図を眺めるゼータとバレッタは感心の表情だ。
「流石ジンさん、準備が良いねぇ」
「方角の話をするなら地図は必須だろう。情報屋七つ道具の一つだ」
残る六道具の正体を気に掛けながらも、ゼータはリーニャ中心部の地図を繁々と眺め下ろす。見事な地図だ。建物は商店から診療所に至るまで全てが細かく書き記されているし、毛細血管のように伸びる通りも同様だ。地図の至るところに紙を重ねた跡があるから、恐らくは建物が建て替わるたびに地図を書き直しているのだ。新鮮な情報を顧客に提供することがジンダイの生業なのだとしても、並の努力では成せぬ業だろう。現にドラキス王国の王宮にも、これだけ詳細な国内地図は存在しない。
バレッタの陶器のような指先が、地図の一部を指さした。大通りの南端付近にある、小さな真四角の建物だ。近くには「時計台」と記された五角形の建物がある。
「アタシの自宅がここね。それで、ドラゴンは時計台の屋根を超えて見えなくなったから…」
「バレッタ。客に自宅の情報を教えて良いのか」
「ジンさんはアタシの家に押しかけたりしないでしょ。他の客には教えないよ」
事もなげにそう言われてしまえば、ジンダイに返す言葉はない。バレッタは自宅と時計台の間を指先で何度かなぞり、それから旧バルトリア王国国土の地図に視線を移した。
「やっぱり、真東からは10度くらい南にずれているね」
「その方角だと、リーニャから騎獣で2時間ほどのところに小国ゴルダがある。だがゴルダ付近にドラゴンが着陸したのなら、俺の元に何かしらの情報は届くはずだ」
「そうだねぇ。ゴルダの先は…山があるね。多分だけど、この山は越えたと思うんだ。かなりの高度を保って飛行していたから、山間に墜落したなんてことはないと思う」
「山を越えた先には、国は一つしかない。小国ブラキスト、旧バルトリア王国東部で唯一の国家だ」
小国ブラキスト、その名にはゼータも覚えがある。旧バルトリア王国跡地にできた13の小国の一つで、ゼータとレイバックは国王の即位式典の折にブラキストの地を訪れている。旧バルトリア王国国土の東部は、高い山々に囲まれた周囲からは隔絶された土地だ。凶暴な魔獣もの出没も多く、旧土のうちでは最も生きることが難しい土地であるとされていた。しかしそうであるにも関わらず、小国ブラキストの街並みはよく整っていた。人々の身なりは小綺麗であったし、木柵の中の家畜はよく肥えていた。「かつて土地を治めた首長たる人物が非常に優秀であったのだ」と、ブラキストの新王は語った。
ゼータは記憶の中にあるブラキストの風景を辿る。規則正しく整備された街並みの向こうには、山頂の見えぬ山々が連なっていた。
「確か、ブラキストの東方は山脈地帯ですよね」
「その通りだ。それも旧バルトリア王国内部の山々とは比べ物にならない、高山地帯だ。ドラゴンとはいえども、あの山脈を超えるのは容易ではない。山脈を目前にして、行く方向を変えた可能性は十分にある。一度、ブラキストに立ち寄って情報を集めるのが良いかもな」
「リーニャからブラキストを目指すには?」
「山道がある。ゴルダとリーニャを一直線に繋ぐ道だ。獣道だが、慣れた騎獣がいれば超えられない道ではない。山道が不安なら、中央国セントラルを経由するという手段もある。回り道にはなるが、こちらの方がいくらか安全な道だ。人通りも多いし、道中にいくつかの集落がある。人通りが多いという事は盗賊に狙われやすいという事でもあるし、一口に安全とも言い難いが…」
ゼータはテーブルの上の地図をじっと見下ろす。湖畔の国リーニャと小国ゴルダの間は一本道だ。そしてゴルダの東方には薄緑色に着色された山岳地帯。山岳地帯を東西に横断するようにして、山道が描かれている。うねる山道は、単純な距離で言えばさほどの長さはない。一方で、中央国セントラルを経由するとなれば移動距離は数倍に膨れ上がる。旧バルトリア王国国土の中心部にあるセントラルの街中を通り抜け、それから先は長い長い直線路だ。走りやすい道であるとは想像ができるが、結局ブラキストの直前には低山が連なっている。ブラキスト自体が山間に位置する国家なのだから、どの道を進んでも山越えをしなければならないことに変わりはない。よし、とゼータは腹を決める。
「ゴルダ東方の山道を行きます。ジンさん、この地図は買えますか?」
「店に戻れば写しがある。地図を求める客人は多いからな。一緒に酒を飲んだ仲だ、定価の半額の銀貨2枚で販売してやろう」
「助かります」
「水と食料もある程度は持って行った方が良い。迷わなければ2日で越えられる道だが、わかれ道も多いと聞く。道を間違えれば危険な廃道に迷い込むことになる。すぐに気付いて引き返せば良いが、どん詰まりまで進んでしまうと数時間は無駄足だ。山菜や湧水は豊富と聞くが、備えておくに越したことはない。帰り道で良い店を紹介してやるよ」
「ありがとうございます。何から何まで」
「気にするな。ドラキス王国の命運は、ゼータさんの肩に掛かっているんだからな」
明朗快活なジンダイの笑い声に、バレッタはこっくりと首を傾げた。
「どういう意味?」
「物の例えだ。深い意味はない」
明確な答えを得られず少々不満げなバレッタに対し、ゼータは喜色満面だ。先行きのわからぬ旅路であったが、一先ずの目的地は定まった。旧バルトリア王国国土東部に位置する小国ブラキスト。そこで2頭のドラゴンの行方を探る。「神国ジュリに立ち寄れ」とのメリオンの指示を遂行するのはその後だ。2頭のドラゴンは高山に行く手を阻まれ向かう方角を変えたのか、争ううちに山間に墜落したのか、それとも高山地帯を超え飛び去ったのか。ドラゴンの行動次第で、今後の捜索方法も異なってくる。神国ジュリで作られているという、魔導具に似た不思議な道具。国王アメシスに協力を求めるのなら、捜索方法を固めてからの方が効率は良い。
主となる情報収集を終えた後は、1時間程度の雑談を交わしバレッタに別れを告げる。当初の宣告通り、酒代とつまみ代は全てジンダイ持ちだ。3杯のグラスと、1本の酒瓶、それにつまみが3皿。注文した飲食物はそれだけであるはずなのに、お会計は身震いするほどに高額だ。会計台にのせられる大量の銀貨を横目で眺め、ゼータはそっとジンダイに唇を寄せる。
「ジンさん。私、自分の酒代は自分で払います」
「先行きの読めない旅路だ。金は取っておけ」
「でも…」
「どうしても払いたいというのなら、無事任務を遂行した後に払いに来てくれ。利子は…そうだな。3日で銀貨一枚だ。どうだ、良心的だろう」
「驚愕の高利貸しですねぇ」
くつくつと笑い合いながら、ゼータとジンダイは店を出る。格子戸を閉め、人通りの多い裏繁華街を歩き始めたときに、背後でジンダイを呼び止める声がした。振り向けば、格子戸の隙間からバレッタが顔を出している。
「ジンさん。これ、忘れ物だよ」
バレッタは握り締めた右手を、顔の前で小さく振った。ん、ああ、と曖昧な相槌を打ったジンダイは、額を掻き掻きバレッタの元へと引き返す。銀貨でも落としていたのだろうか。少し離れたところからジンダイとバレッタの様子を見守っていたゼータは、次の瞬間驚愕の光景を目にすることになる。
高々と掲げられたバレッタの右手には、何も握られてはいなかった。空の右手はジンダイの首元を抱き寄せ、紅色の唇は髭に埋もれた頬に触れる。ちゅう、と艶めかしい吸い音。
「また来てね。待っているよ」
ひらひらと手を振るバレッタに見送られ、2人は桃色提灯輝く店を後にした。
2人は長らく無言で歩いていたが、歩みが大通りへと差し掛かった時にゼータはようやく口を開く。
「あの、ジンさん。さっきのあれって…」
「何も言うな。俺にだって夢を見る権利はある」
そう言うジンダイの顔は嬉しそうとも見え、悲しそうとも見える。良質な情報を売ることがジンダイの生業であるように、数多の男を虜にすることがバレッタの生業だ。ジンダイが店に足を運びたくさんの酒を飲めば、それがバレッタの給与へと反映されるのだ。だから店の店員は妖艶な衣服を纏い、巧みな会話で客人を楽しませ、繰り返し店に足を運ばせようとする。
バレッタの口付けは、あくまでサービスの範囲内。そう思う事ができないわけでは無いが、ゼータは何となく背中にむず痒さを覚えるのだ。バレッタとジンダイの間には、店員と客人以上の矢印が存在するような気がしてならない。しかしいくら考えたところで、真実に辿り着くことなどできやしない。ペルシャ猫の心の中は、謎のまま。
***
虎耳「まぁたわかりにくい愛情表現してさ。勤務時間中に何をしたって、常連客へのサービスと捉えられて終いだよ。いつも言っているじゃん」
バレッタ「放っておいてよ。今日は収穫があったんだから。金貨10枚分の貸しを作れば、ジンさんと一緒にドラキス王国旅行に行けるんだよ。この妄想でしばらくは食っていける」
虎耳「ジンダイさぁぁぁん。うちの奥手なペルシャ猫が、貴方の事好きで好きで堪らないって!その逞しい2本の腕で抱き留めてあげてぇぇぇ」
バレッタ「ぎゃぁぁぁ止めてぇぇぇ」
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