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荒城の夜半に龍が啼く
2か国対談
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対談開始予定時刻のおよそ5分前に、レイバックとゼータは南棟1階の応接室に入室した。質素な木製の扉をくぐれば、中は2脚のソファと1つの応接テーブルを備えただけの寂しい空間であった。かろうじて大きな窓には藍色のカーテンが掛かっているものの、ドラキス王国の応接室のように豪華な調度品や生花の類は飾られていない。応接室というよりは、会議室という呼び名が似合う空間である。
レイバックとゼータの入室に、先に到着していたフィビアスはソファから立ち上がり優雅な礼をした。促されるまま2人は空いたソファに腰を下ろし、続いて入室した侍女がテーブルの上に3人分の茶と菓子を置く。侍女はすぐに退出し、部屋の中は不気味に静まり返る。
「昨晩は私の家臣が無礼な言動を致しました。ユダに代わり深くお詫び申し上げます」
しばし続いた沈黙を破った者は、着座のまま深々と頭を下げたフィビアスであった。艶やかな藍色の髪が顔の横に垂れる。
「俺にも非のあってのことだ。貴女が頭を下げる必要はない」
「慈愛に満ちたお言葉痛み入ります。ユダは政務の補佐としては優秀なのですが、融通が利かない面を持ち合わせておりまして」
ブルタス前国王の後新王が立つことを認めないのだから、確かに融通は利かないのだろう。脳裏を掠める言葉を、レイバックは口元で押し止める。
「彼は七指だと名乗っていた。ブルタス前国王の崩御の後、バルトリア王国の統治を担っていた者達と聞いているが、皆存命か」
「ええ。私の臣下として黒の城に在中しております」
「昨晩のダンスパーティーにも参加していた?」
「客人や衛兵を装って会場に紛れ込んでおりました。1200年来の統治者に、反意を抱く者がいないとも限りませんから」
「…尤もだな」
バルトリア王国では、サキュバスという種族は厭われる。そのことはフィビアス本人も自覚の上だろう。黒の城内部の臣下は服従の魔法での支配が可能でも、外部の悪意に対抗するには護衛を付ける他に方法はない。
幾ばくかの会話で場は和み、さて、とフィビアスは高らかな声を上げる。
「レイバック様、本題に入らせていただいても宜しいでしょうか。2国の末長い友好のために、お話ししたい事が山ほどあります」
「ああ、始めてくれ」
三者が三様に表情を引き締め、2か国対談が始まる。
緊張感を腹に据えたまま始まった対談であったが、場は殊の外和やかであった。フィビアスはバルトリア王国の統治に当たり協力を要請したい事項をレイバックに告げ、レイバックはそれに肯否の答えを返す。レイバックの答えに圧倒的に「否」が多いにも関わらず、フィビアスは常時淑しとやかな笑みを崩すことはない。レイバックは、即位式の場でフィビアスに反抗的な態度を取っている。このような態度は予想の範疇、と言うところだろう。
「国壁の建設に付いて、俺は一片の賛同もできない。技術員の派遣要請も承けかねる。それでも建てるというのなら邪魔立てはせんが、一切の協力も望めないと心に留め置いてくれ」
「では国を通さず、私がドラキス王国の民に直接協力依頼を出すというのは?」
「国を通さぬのなら好きにすれば良い。俺は民の判断と行動には関与しない。幸いバルトリア王国とドラキス王国の国境付近にはいくつかの集落が存在する。集落の者が国壁の建設に協力的というのなら、俺はその意志には介入しない」
「…承りました。ドラキス王国内の集落地図を頂く事はできますか?」
「絵図は作っていない。辺境の集落については王宮でも正確な位置を把握していないから、必要な情報は自身の脚で集めてくれ。入国に関しても自由な国だ」
対談が開始して30分も経つと、レイバックはフィビアスに対する警戒心を解きつつあった。フィビアスの言動に目立った悪意は感じられない。統治の方法こそレイバックの賛同できるものではないが、他国に無茶な要求を押し付けたり、魔法を掛けるべく画策したりするような意志は感じられない。この対談の目的は真にドラキス王国との友好関係構築であり、レイバックを僕に下す意思があるやもしれぬというメリオンの心配は杞憂であったのだ。
レイバックが警戒を解きつつある理由はもう一つある。フィビアスが対談におけるゼータ同席の条件を飲んだことだ。フィビアスがレイバックを魔法の支配下に置きたいと望むのなら、魔法に掛けられない女性の同席は拒むはずである。直接的な言葉で拒まずとも、何かしら同席を妨害する意思を感じる瞬間はあっただろう。しかし早朝から対談開始に至るまで、わずかな妨害の意志すらも感じることはできなかった。
かろうじて事件と言えるべきは、応接室に入る直前にゼータの髪紐が切れ、化粧室で結い直しをしたということ。「だから早朝から盛るのは止めろと言ったのだ」マギと共に化粧室に消えていくゼータの瞳は、暗にそう告げていた。
「国壁建設についてご協力をいただけない事は承知致しました。しからば民の移動制限と情報統制についてはいかがお考えです。私はバルトリア王国を介する人と物資の流れを、完全に国の管理下に置くつもりでございます。例えばバルトリア王国に向かう人の流れを、国家として堰き止めていただくことは可能ですか?」
「我が国の民にとって必要不可欠な事項なら行おう。バルトリア王国への安易な入国が不可能となる旨の告知は必要になるだろうな。しかし国家として、不当に国壁を超えようとする者の取り締まりは行わんぞ。超えて来る者も、超えて行こうとする者もだ。不法出国者の引き渡しをせよと言われても応じられない。入国者の情報など管理していないからな」
ドラキス王国は人の出入りに寛容な国だ。民の出入国及び国内移住に国家が関与することはない。ドラキス王国内では比較的規律に守られているとされるポトスの街中でも、それは同様だ。異国の旅人がふらりとやってきて住み着き、思うままに暮らし、そして気が付かぬうちに居なくなる。そのような事は珍しくもないのだ。
「…なるほど。レイバック様は民に対しては放任主義なのですね。妃には片時の自由も許さぬというのに」
「ん?」
突然の妃への言及に、レイバックは首を傾げた。フィビアスは紅色の唇に指先を当て、涼やかな笑い声を零す。
「貴方とゼータ様は黒の城に到着してからというもの、片時も離れず行動を共にしていると伺っています。食事も一緒、寝床も一緒、果ては湯浴みも共にしているとか」
「…ロコとマギの密告か?」
「私が直接彼女らに聞き出したわけではございませんよ。ただ大国の王と王妃の傍仕えとして任命された事を、彼女らは大層誉れと感じているようです。ドラキス王国の王と王妃は大層仲睦まじいのだと仲間内で話す様子が、人伝に私の耳に届いたのです。黒の城に巣食うと噂の魔獣を恐れるのでなければ、随分と妃に対する束縛が強いのでいらっしゃいましょう」
行動を共にしていたのはサキュバスの魔法を警戒していたためだ、などと言えるはずもなく、レイバックは緋髪を掻く。伺い見た隣席のゼータは、レイバックの視線から逃げるように顔を背けたきりだ。
多少の雑談を交えながらも対談は滞りなく進み、開始から2時間が経とうという時には沈黙が目立ち始めた。予定されていた協議は粗方が済み、後はフィビアスの幕切りの言葉を待つばかり。
レイバックは胸のつかえが取れたような心地で、テーブルの上で揺らめく琥珀色の水面を見下ろした。城の飲食物を極力口にするなとのメリオンの助言を守り、対談中一口も減らすことのなかった紅茶。フィビアスに悪意無き事を確信した今、少しくらい飲んでも構わないだろうと、レイバックが紅茶のカップを手に取った時である。およそ2時間の間固く閉ざされていた応接室の扉が開き、6人の男女が続々と入室する。
「何者だ」
手に取りかけた紅茶のカップを再びテーブルにのせ、レイバックは突然の入室者の相貌を凝視した。フィビアスの背後に並ぶ6人の男女は体格も風貌も様々だ。レイバックの知らぬ顔が並ぶ中、一人だけ覚えのある顔がある。煌めく白髪に翡翠色の瞳、昨晩レイバックを「所詮は獣の王」となじった白髪のユダだ。ならばその横に並ぶ者は七指の面々ということか。
「レイバック様。貴女とは末長いお付き合いとなる事でしょう。国王無き暗黒の時代を支え、今は私の忠実なる家臣である7本の手指。どうぞ顔と名前を憶えてご帰還くださいませ」
双尾のリエン、剛腕のシーズイ、フィビアスに名を呼ばれ、一列に並ぶ七指は次々と腰を折る。鈴音の声に耳を傾けながら、レイバックは懐に隠した短剣の柄をゆるりと撫でた。敵意の有無の判断は、まだできない。
「6人目はすでにご存じの事でしょう。白髪のユダ、私の戴冠の最たる協力者でございます」
人の列の右端に佇む男が悠々と腰を折った。すぐさま顔を上げたユダの翡翠色の瞳は、舐めるようにレイバックを見る。6人目の紹介を最後にフィビアスは口を閉じ、レイバックは沈黙となる部屋の中を見渡した。7人目の手指はどこにいるのだ、と。レイバックの疑問を読み取ったフィビアスは淑やかに声を立てて笑う。
「失礼。最後の一人の紹介がまだでした。擬態のアリアド」
優艶と持ち上げられたフィビアスの右腕、その人差し指の差す先はレイバックの隣だ。そこにはゼータが座っている。この対談中、一度も口を開くことのなかったゼータ。レイバックは弾かれたように、その見知った横顔を凝視する。
漆黒の瞳がレイバックを見た。その瞳は確かにレイバックの知るゼータのもの、しかし見慣れた顔面に浮かぶ表情は底気味の悪い笑みだ。欺瞞は成功。弧を描く薄い唇から、けたけたと耳に触る笑い声が漏れる。
「擬態のアリアドと申す。お前は騙された」
レイバックとゼータの入室に、先に到着していたフィビアスはソファから立ち上がり優雅な礼をした。促されるまま2人は空いたソファに腰を下ろし、続いて入室した侍女がテーブルの上に3人分の茶と菓子を置く。侍女はすぐに退出し、部屋の中は不気味に静まり返る。
「昨晩は私の家臣が無礼な言動を致しました。ユダに代わり深くお詫び申し上げます」
しばし続いた沈黙を破った者は、着座のまま深々と頭を下げたフィビアスであった。艶やかな藍色の髪が顔の横に垂れる。
「俺にも非のあってのことだ。貴女が頭を下げる必要はない」
「慈愛に満ちたお言葉痛み入ります。ユダは政務の補佐としては優秀なのですが、融通が利かない面を持ち合わせておりまして」
ブルタス前国王の後新王が立つことを認めないのだから、確かに融通は利かないのだろう。脳裏を掠める言葉を、レイバックは口元で押し止める。
「彼は七指だと名乗っていた。ブルタス前国王の崩御の後、バルトリア王国の統治を担っていた者達と聞いているが、皆存命か」
「ええ。私の臣下として黒の城に在中しております」
「昨晩のダンスパーティーにも参加していた?」
「客人や衛兵を装って会場に紛れ込んでおりました。1200年来の統治者に、反意を抱く者がいないとも限りませんから」
「…尤もだな」
バルトリア王国では、サキュバスという種族は厭われる。そのことはフィビアス本人も自覚の上だろう。黒の城内部の臣下は服従の魔法での支配が可能でも、外部の悪意に対抗するには護衛を付ける他に方法はない。
幾ばくかの会話で場は和み、さて、とフィビアスは高らかな声を上げる。
「レイバック様、本題に入らせていただいても宜しいでしょうか。2国の末長い友好のために、お話ししたい事が山ほどあります」
「ああ、始めてくれ」
三者が三様に表情を引き締め、2か国対談が始まる。
緊張感を腹に据えたまま始まった対談であったが、場は殊の外和やかであった。フィビアスはバルトリア王国の統治に当たり協力を要請したい事項をレイバックに告げ、レイバックはそれに肯否の答えを返す。レイバックの答えに圧倒的に「否」が多いにも関わらず、フィビアスは常時淑しとやかな笑みを崩すことはない。レイバックは、即位式の場でフィビアスに反抗的な態度を取っている。このような態度は予想の範疇、と言うところだろう。
「国壁の建設に付いて、俺は一片の賛同もできない。技術員の派遣要請も承けかねる。それでも建てるというのなら邪魔立てはせんが、一切の協力も望めないと心に留め置いてくれ」
「では国を通さず、私がドラキス王国の民に直接協力依頼を出すというのは?」
「国を通さぬのなら好きにすれば良い。俺は民の判断と行動には関与しない。幸いバルトリア王国とドラキス王国の国境付近にはいくつかの集落が存在する。集落の者が国壁の建設に協力的というのなら、俺はその意志には介入しない」
「…承りました。ドラキス王国内の集落地図を頂く事はできますか?」
「絵図は作っていない。辺境の集落については王宮でも正確な位置を把握していないから、必要な情報は自身の脚で集めてくれ。入国に関しても自由な国だ」
対談が開始して30分も経つと、レイバックはフィビアスに対する警戒心を解きつつあった。フィビアスの言動に目立った悪意は感じられない。統治の方法こそレイバックの賛同できるものではないが、他国に無茶な要求を押し付けたり、魔法を掛けるべく画策したりするような意志は感じられない。この対談の目的は真にドラキス王国との友好関係構築であり、レイバックを僕に下す意思があるやもしれぬというメリオンの心配は杞憂であったのだ。
レイバックが警戒を解きつつある理由はもう一つある。フィビアスが対談におけるゼータ同席の条件を飲んだことだ。フィビアスがレイバックを魔法の支配下に置きたいと望むのなら、魔法に掛けられない女性の同席は拒むはずである。直接的な言葉で拒まずとも、何かしら同席を妨害する意思を感じる瞬間はあっただろう。しかし早朝から対談開始に至るまで、わずかな妨害の意志すらも感じることはできなかった。
かろうじて事件と言えるべきは、応接室に入る直前にゼータの髪紐が切れ、化粧室で結い直しをしたということ。「だから早朝から盛るのは止めろと言ったのだ」マギと共に化粧室に消えていくゼータの瞳は、暗にそう告げていた。
「国壁建設についてご協力をいただけない事は承知致しました。しからば民の移動制限と情報統制についてはいかがお考えです。私はバルトリア王国を介する人と物資の流れを、完全に国の管理下に置くつもりでございます。例えばバルトリア王国に向かう人の流れを、国家として堰き止めていただくことは可能ですか?」
「我が国の民にとって必要不可欠な事項なら行おう。バルトリア王国への安易な入国が不可能となる旨の告知は必要になるだろうな。しかし国家として、不当に国壁を超えようとする者の取り締まりは行わんぞ。超えて来る者も、超えて行こうとする者もだ。不法出国者の引き渡しをせよと言われても応じられない。入国者の情報など管理していないからな」
ドラキス王国は人の出入りに寛容な国だ。民の出入国及び国内移住に国家が関与することはない。ドラキス王国内では比較的規律に守られているとされるポトスの街中でも、それは同様だ。異国の旅人がふらりとやってきて住み着き、思うままに暮らし、そして気が付かぬうちに居なくなる。そのような事は珍しくもないのだ。
「…なるほど。レイバック様は民に対しては放任主義なのですね。妃には片時の自由も許さぬというのに」
「ん?」
突然の妃への言及に、レイバックは首を傾げた。フィビアスは紅色の唇に指先を当て、涼やかな笑い声を零す。
「貴方とゼータ様は黒の城に到着してからというもの、片時も離れず行動を共にしていると伺っています。食事も一緒、寝床も一緒、果ては湯浴みも共にしているとか」
「…ロコとマギの密告か?」
「私が直接彼女らに聞き出したわけではございませんよ。ただ大国の王と王妃の傍仕えとして任命された事を、彼女らは大層誉れと感じているようです。ドラキス王国の王と王妃は大層仲睦まじいのだと仲間内で話す様子が、人伝に私の耳に届いたのです。黒の城に巣食うと噂の魔獣を恐れるのでなければ、随分と妃に対する束縛が強いのでいらっしゃいましょう」
行動を共にしていたのはサキュバスの魔法を警戒していたためだ、などと言えるはずもなく、レイバックは緋髪を掻く。伺い見た隣席のゼータは、レイバックの視線から逃げるように顔を背けたきりだ。
多少の雑談を交えながらも対談は滞りなく進み、開始から2時間が経とうという時には沈黙が目立ち始めた。予定されていた協議は粗方が済み、後はフィビアスの幕切りの言葉を待つばかり。
レイバックは胸のつかえが取れたような心地で、テーブルの上で揺らめく琥珀色の水面を見下ろした。城の飲食物を極力口にするなとのメリオンの助言を守り、対談中一口も減らすことのなかった紅茶。フィビアスに悪意無き事を確信した今、少しくらい飲んでも構わないだろうと、レイバックが紅茶のカップを手に取った時である。およそ2時間の間固く閉ざされていた応接室の扉が開き、6人の男女が続々と入室する。
「何者だ」
手に取りかけた紅茶のカップを再びテーブルにのせ、レイバックは突然の入室者の相貌を凝視した。フィビアスの背後に並ぶ6人の男女は体格も風貌も様々だ。レイバックの知らぬ顔が並ぶ中、一人だけ覚えのある顔がある。煌めく白髪に翡翠色の瞳、昨晩レイバックを「所詮は獣の王」となじった白髪のユダだ。ならばその横に並ぶ者は七指の面々ということか。
「レイバック様。貴女とは末長いお付き合いとなる事でしょう。国王無き暗黒の時代を支え、今は私の忠実なる家臣である7本の手指。どうぞ顔と名前を憶えてご帰還くださいませ」
双尾のリエン、剛腕のシーズイ、フィビアスに名を呼ばれ、一列に並ぶ七指は次々と腰を折る。鈴音の声に耳を傾けながら、レイバックは懐に隠した短剣の柄をゆるりと撫でた。敵意の有無の判断は、まだできない。
「6人目はすでにご存じの事でしょう。白髪のユダ、私の戴冠の最たる協力者でございます」
人の列の右端に佇む男が悠々と腰を折った。すぐさま顔を上げたユダの翡翠色の瞳は、舐めるようにレイバックを見る。6人目の紹介を最後にフィビアスは口を閉じ、レイバックは沈黙となる部屋の中を見渡した。7人目の手指はどこにいるのだ、と。レイバックの疑問を読み取ったフィビアスは淑やかに声を立てて笑う。
「失礼。最後の一人の紹介がまだでした。擬態のアリアド」
優艶と持ち上げられたフィビアスの右腕、その人差し指の差す先はレイバックの隣だ。そこにはゼータが座っている。この対談中、一度も口を開くことのなかったゼータ。レイバックは弾かれたように、その見知った横顔を凝視する。
漆黒の瞳がレイバックを見た。その瞳は確かにレイバックの知るゼータのもの、しかし見慣れた顔面に浮かぶ表情は底気味の悪い笑みだ。欺瞞は成功。弧を描く薄い唇から、けたけたと耳に触る笑い声が漏れる。
「擬態のアリアドと申す。お前は騙された」
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