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荒城の夜半に龍が啼く
双子の侍女-2
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マギの言葉通り、通された客室はあまり広い部屋ではなかった。ポトス城王宮の客間に比べれば、半分程の床面積だ。窓は大きく城下の街並みを臨むことができるが、見える景色はつぎはぎだらけの屋根ばかり。窓の外を覗き込んだからといって、麗らかな気分にはなれそうもない。部屋の中央に置かれているベッドは1人で寝れば多少の余裕はあるが、2人で寝るには狭すぎる。天井や壁に装飾はなく、豪華な調度品の類も置かれていない。殺風景な部屋だ。しかし内装は綺麗である。壁は真っ白に塗られ、床に敷かれた藍色の絨毯に汚れはない。カーテンや寝具は絨毯と同じ藍色で統一され、窓際に置かれた荷物台や衣装掛けは見るからに新しい。豪華ではなくとも、数日を過ごすに不便はない空間だ。
「綺麗な部屋ですね」
客室の内部をあちこち見回し、ゼータは素直な感想を述べる。マギは窓際の物置台にゼータの鞄を載せ、それから大きな窓に薄地のカーテンを引く。城下の街並みはカーテンに遮られて、視界に入るは真新しい客室の設備だけ。2枚のカーテンの端々をきっかりと合わせながら、マギは言う。
「即位式の開催が決まった後、真っ先に客間を改修致しました。儀式棟と同じく、長く使われていなかった部屋です。元は酷い有様でした」
「城へ客人を招き入れる事はなかったんですか?」
「私が知る限りはありません。ブルタス前国王は催し事を好み、国内の来賓を招いて頻繁に晩餐会を開催していたと聞き及んでいます。しかし前王が斃れた後、盛大な催しは途絶え客間と儀式棟は蜘蛛の巣を増やすばかりでした」
「へぇ…それは準備も大変でしたね」
「大変でしたが、城の者は皆浮足立っております。1200年もの間途絶えていた客人が城を訪れるのですから。中でもドラキス王国の王と王妃の到着は皆待ちわびておりました。皆がドラゴンの到着へ立ち会いを望むものですから、他の国王方の出迎えが疎かとなる事態です。フィビアス女王のご判断で、屋上への随行者は最低限に留められたのです。傍仕えに任命された私とロコは光栄の一言でございます」
マギは頬を上気させながら、捲し立てるように話す。ゼータは毒気を抜かれる思いだ。メリオンに黒の城滞在中の心構えを伝授されてからというもの、ゼータはただただこの遠征が恐ろしかった。初めて訪れる他国の中枢部で、味方というべき味方は他にいない。例えばフィビアスの内にある悪意を悟ったとき、黒の城の侍女官吏から敵意を向けられたとき。果たして自分はどのように立ち回れば良い。いくら脳内訓練を積んだところで、明確な答えに辿り着くことはできなかった。しかし現実はどうだ。今目の前にいるマギの顔には、ゼータに対する敵意など微塵も浮かばない。身振り手振りを交え語るマギは、真にゼータの傍に置かれたことを喜んでいる。ともすればメリオンの憂慮は単なる杞憂で、急な2か国対談申し出には悪意などないのか?邪気のないマギの笑顔が、ゼータにそうとすら感じさせた。
興奮冷めやらぬ様子のマギは、頬を赤らめたまま客室内の一通りの説明をこなした。タオルや洗顔用具の置き場所、窓の開け方、浴槽への湯の貯め方。近間にある給湯室の場所から火災時の避難経路まで、思いつく限りの説明を終えたマギは、腰に付けた道具入れから巻き尺を取り出す。
「最後に採寸を行っても宜しいでしょうか。明日の衣装合わせの参考に致します」
他国の式典に参列するにも関わらず、ゼータとレイバックの荷物は手持ちの旅行鞄一つだけ。式典時に着用するドレスや燕尾服、宝飾品、寝間着や日用品の類は全て、黒の城から貸し出しを受けるということで事前に話し合いが済んでいるのだ。レイバックとゼータだけにあらず、他国の国賓も同様の待遇を受けることは事前の文のやり取りで確認済みである。国王方は皆、途方もない悪路を越えて黒の城へと赴く。道中の安全を第一に考えれば、盗賊を誘き寄せる可能性のある大量の手荷物など持ち運べるはずもない。
ゼータが申し出を快く受け入れたところで、マギは巻き尺を手にゼータの元へと歩み寄った。長く伸ばした巻き尺の片端をゼータの頭長にあて、両手を大きく伸ばして身丈を計る。袖丈、肩巾と順に採寸を済ませ、巻き尺の数字は都度小さなメモ紙へと書き込んでゆく。されるがままに採寸されるゼータは、ふとした瞬間に違和感を覚える。マギの動作の一つ一つが不自然に鈍いのだ。巻き尺を伸ばし、身体にあて、読み取った数字をメモ紙に記す。通常十秒足らずで済むはずの一連の動作に、数倍近い時間が掛かる。なぜと思い足元に座るマギの様子を眺めてみれば、その理由はすぐにわかる。マギの眼部が黒布で覆われているためだ。蛇の血が混じるメデューサは、温度で周囲の物体を感知するのだとロコは言った。しかし城内の移動に不自由はなくとも、巻き尺やメモ紙に記された文字に温度はない。採寸に当たりマギが頼るは、視界ではなく指先の感覚だ。巻き尺に書かれた数字を指先で読み、読み取った文字を慣れぬ動作でメモ紙に記す。文字が重なっては不味いと採寸のたびにメモ紙を捲るから、そこでまた余分な時間を要す。常人にとっての単純作業が、視界を付けぬマギにとっては重労働なのだ。
マギ、とゼータは呼びかける。
「目を閉じていますから、どうぞ目隠しを取ってください」
マギは微かに肩を揺らすが、巻き尺をなぞる指先の動きは止めない。
「嬉しいお言葉でございますが、大国の王妃を石にしては大事です。フィビアス女王に合わす顔がありません」
「石になると、元に戻るのにどれくらいの時間が掛かるのですか?」
「術を掛けられた者の魔力含有量によりますが、半日から一日程度は石のままでございます」
「一日…はちょっと不味いですねぇ。折角の貴重な機会ですけれど、式典を前に呑気に石になっていたのではレイにどやされます」
呟きながら、ゼータは両目を閉じる。閉ざされた視界の中では、マギが目隠しを取ったのかどうかはわからない。耳に届くは巻き尺を引き延ばす音、ペンが紙をなぞる音、そして遠慮がちなマギの声。
「ゼータ様は、メデューサの眼が怖くはありませんか」
「ドラキス王国にはメデューサはいないんです。私には、ロコとマギの眼がどんな風であるのか想像もつかないんですよ。興味深いとは思いますけれど、怖いとは思いません」
「では石になることは、恐ろしくはありませんか」
「命を奪う技でないのなら、特段恐ろしいとは感じませんよ。こんな機会でなければ、ぜひ一度石になるという感覚を体験してみたいものです。意識はあるのか、聴覚や触覚は保たれるのか。メデューサに技に係る文献は手元にいくつかありますけれど、技を掛けられた側の感覚については一切言及がされていないんです。今ここでうっかり石になれば、それだけで論文を3本は書き上げることが出来ますよ。非常に魅力的な展開なんですけどねぇ…でも王妃としてのお仕事を投げ出すわけにもいきませんし…」
後半は完全に独り言である。目を閉じたゼータが一人妄想に耽る間に、マギはすっかり採寸を終えたようだ。ご協力に感謝致しますとの言葉を聞いて、ゼータはそっと目を開ける。視界の端では、床に座り込んだマギが目隠しを結わえ直しているところである。目隠しを取ってよい、とのゼータの提案は無事受け入れられたようだ。巻き尺やメモ紙を物入れに仕舞い込み、マギは立ち上がる。
「採寸情報は、衣装担当の侍女へ引き継がせていただきます。私はこの後城内の雑務に戻りますが、ゼータ様はお部屋でお過ごしになりますか?」
「…何も考えていなかったです。他国の国王方はどうされているんですか?」
「サロンにご滞在のことと思います。南棟の5階、階段を上がってすぐの部屋でございます。24時間自由な立ち入りが可能な場所ですから、どうぞお気軽に足を運んでくださいませ。軽食と飲み物もご用意しておりますよ」
マギの提案に、ゼータは顔を輝かせた。
「他国の方々と自由に話ができる場という事ですか?」
「左様でございます。国の長が一度に会する機会など滅多にありません。新たな交易の機会ともなりましょう。夕食をサロンでお取りいただく事も可能ですから、ご希望があればおっしゃってください。もちろんお疲れでしたら客室までお運びいたします」
「画期的な仕組みですね。レイ…バック王に声を掛けて早速足を運んでみます」
ゼータは足早に客室の扉へと向かい、その途中で躓くように足を止めた。質素な麻シャツのすそを、両指でつまみ上げる。
「マギ。サロンに足を運ぶのなら、ドレスに着替えた方が良いですか?」
今のゼータは無地の麻シャツに、綿のパンツを合わせただけという王妃らしからぬ格好だ。髪は後頭部で一つに結わえただけで、化粧もしていない。ここがドラキス王国の王宮であれば、カミラに首根っこを鷲掴みにされるところである。そのような非常識な格好で、他国の国王方と対面を果たすつもりか、と。多少手間でも、せめて手持ちのワンピース程度には着替えるべきか。迷うゼータにマギは微笑みかける。
「皆様、旅路の軽装のままサロンに向かわれておりますよ。希望があればすぐに替えのドレスをお持ち致しますが、気ままな場所ですから極力軽装の方が望ましいかと」
「良かった。ではこのまま行ってきます」
行ってらっしゃいませ。マギが頭を下げるのと、ゼータが部屋の扉を閉めるのは同時であった。
一人となった部屋で、マギは目元を覆う黒布を取る。現れた物は蛇の両眼だ。瞳孔が異様に大きく、本来白であるはずの結膜は血のように赤い。見た目の恐ろしさだけにあらず、その眼は見た者を石へと変える悪魔の力を持つ。布越しでさえ、人々はこの目を見る事を厭う。
「不思議なお方」
無音の客室にマギの声が響く。
「綺麗な部屋ですね」
客室の内部をあちこち見回し、ゼータは素直な感想を述べる。マギは窓際の物置台にゼータの鞄を載せ、それから大きな窓に薄地のカーテンを引く。城下の街並みはカーテンに遮られて、視界に入るは真新しい客室の設備だけ。2枚のカーテンの端々をきっかりと合わせながら、マギは言う。
「即位式の開催が決まった後、真っ先に客間を改修致しました。儀式棟と同じく、長く使われていなかった部屋です。元は酷い有様でした」
「城へ客人を招き入れる事はなかったんですか?」
「私が知る限りはありません。ブルタス前国王は催し事を好み、国内の来賓を招いて頻繁に晩餐会を開催していたと聞き及んでいます。しかし前王が斃れた後、盛大な催しは途絶え客間と儀式棟は蜘蛛の巣を増やすばかりでした」
「へぇ…それは準備も大変でしたね」
「大変でしたが、城の者は皆浮足立っております。1200年もの間途絶えていた客人が城を訪れるのですから。中でもドラキス王国の王と王妃の到着は皆待ちわびておりました。皆がドラゴンの到着へ立ち会いを望むものですから、他の国王方の出迎えが疎かとなる事態です。フィビアス女王のご判断で、屋上への随行者は最低限に留められたのです。傍仕えに任命された私とロコは光栄の一言でございます」
マギは頬を上気させながら、捲し立てるように話す。ゼータは毒気を抜かれる思いだ。メリオンに黒の城滞在中の心構えを伝授されてからというもの、ゼータはただただこの遠征が恐ろしかった。初めて訪れる他国の中枢部で、味方というべき味方は他にいない。例えばフィビアスの内にある悪意を悟ったとき、黒の城の侍女官吏から敵意を向けられたとき。果たして自分はどのように立ち回れば良い。いくら脳内訓練を積んだところで、明確な答えに辿り着くことはできなかった。しかし現実はどうだ。今目の前にいるマギの顔には、ゼータに対する敵意など微塵も浮かばない。身振り手振りを交え語るマギは、真にゼータの傍に置かれたことを喜んでいる。ともすればメリオンの憂慮は単なる杞憂で、急な2か国対談申し出には悪意などないのか?邪気のないマギの笑顔が、ゼータにそうとすら感じさせた。
興奮冷めやらぬ様子のマギは、頬を赤らめたまま客室内の一通りの説明をこなした。タオルや洗顔用具の置き場所、窓の開け方、浴槽への湯の貯め方。近間にある給湯室の場所から火災時の避難経路まで、思いつく限りの説明を終えたマギは、腰に付けた道具入れから巻き尺を取り出す。
「最後に採寸を行っても宜しいでしょうか。明日の衣装合わせの参考に致します」
他国の式典に参列するにも関わらず、ゼータとレイバックの荷物は手持ちの旅行鞄一つだけ。式典時に着用するドレスや燕尾服、宝飾品、寝間着や日用品の類は全て、黒の城から貸し出しを受けるということで事前に話し合いが済んでいるのだ。レイバックとゼータだけにあらず、他国の国賓も同様の待遇を受けることは事前の文のやり取りで確認済みである。国王方は皆、途方もない悪路を越えて黒の城へと赴く。道中の安全を第一に考えれば、盗賊を誘き寄せる可能性のある大量の手荷物など持ち運べるはずもない。
ゼータが申し出を快く受け入れたところで、マギは巻き尺を手にゼータの元へと歩み寄った。長く伸ばした巻き尺の片端をゼータの頭長にあて、両手を大きく伸ばして身丈を計る。袖丈、肩巾と順に採寸を済ませ、巻き尺の数字は都度小さなメモ紙へと書き込んでゆく。されるがままに採寸されるゼータは、ふとした瞬間に違和感を覚える。マギの動作の一つ一つが不自然に鈍いのだ。巻き尺を伸ばし、身体にあて、読み取った数字をメモ紙に記す。通常十秒足らずで済むはずの一連の動作に、数倍近い時間が掛かる。なぜと思い足元に座るマギの様子を眺めてみれば、その理由はすぐにわかる。マギの眼部が黒布で覆われているためだ。蛇の血が混じるメデューサは、温度で周囲の物体を感知するのだとロコは言った。しかし城内の移動に不自由はなくとも、巻き尺やメモ紙に記された文字に温度はない。採寸に当たりマギが頼るは、視界ではなく指先の感覚だ。巻き尺に書かれた数字を指先で読み、読み取った文字を慣れぬ動作でメモ紙に記す。文字が重なっては不味いと採寸のたびにメモ紙を捲るから、そこでまた余分な時間を要す。常人にとっての単純作業が、視界を付けぬマギにとっては重労働なのだ。
マギ、とゼータは呼びかける。
「目を閉じていますから、どうぞ目隠しを取ってください」
マギは微かに肩を揺らすが、巻き尺をなぞる指先の動きは止めない。
「嬉しいお言葉でございますが、大国の王妃を石にしては大事です。フィビアス女王に合わす顔がありません」
「石になると、元に戻るのにどれくらいの時間が掛かるのですか?」
「術を掛けられた者の魔力含有量によりますが、半日から一日程度は石のままでございます」
「一日…はちょっと不味いですねぇ。折角の貴重な機会ですけれど、式典を前に呑気に石になっていたのではレイにどやされます」
呟きながら、ゼータは両目を閉じる。閉ざされた視界の中では、マギが目隠しを取ったのかどうかはわからない。耳に届くは巻き尺を引き延ばす音、ペンが紙をなぞる音、そして遠慮がちなマギの声。
「ゼータ様は、メデューサの眼が怖くはありませんか」
「ドラキス王国にはメデューサはいないんです。私には、ロコとマギの眼がどんな風であるのか想像もつかないんですよ。興味深いとは思いますけれど、怖いとは思いません」
「では石になることは、恐ろしくはありませんか」
「命を奪う技でないのなら、特段恐ろしいとは感じませんよ。こんな機会でなければ、ぜひ一度石になるという感覚を体験してみたいものです。意識はあるのか、聴覚や触覚は保たれるのか。メデューサに技に係る文献は手元にいくつかありますけれど、技を掛けられた側の感覚については一切言及がされていないんです。今ここでうっかり石になれば、それだけで論文を3本は書き上げることが出来ますよ。非常に魅力的な展開なんですけどねぇ…でも王妃としてのお仕事を投げ出すわけにもいきませんし…」
後半は完全に独り言である。目を閉じたゼータが一人妄想に耽る間に、マギはすっかり採寸を終えたようだ。ご協力に感謝致しますとの言葉を聞いて、ゼータはそっと目を開ける。視界の端では、床に座り込んだマギが目隠しを結わえ直しているところである。目隠しを取ってよい、とのゼータの提案は無事受け入れられたようだ。巻き尺やメモ紙を物入れに仕舞い込み、マギは立ち上がる。
「採寸情報は、衣装担当の侍女へ引き継がせていただきます。私はこの後城内の雑務に戻りますが、ゼータ様はお部屋でお過ごしになりますか?」
「…何も考えていなかったです。他国の国王方はどうされているんですか?」
「サロンにご滞在のことと思います。南棟の5階、階段を上がってすぐの部屋でございます。24時間自由な立ち入りが可能な場所ですから、どうぞお気軽に足を運んでくださいませ。軽食と飲み物もご用意しておりますよ」
マギの提案に、ゼータは顔を輝かせた。
「他国の方々と自由に話ができる場という事ですか?」
「左様でございます。国の長が一度に会する機会など滅多にありません。新たな交易の機会ともなりましょう。夕食をサロンでお取りいただく事も可能ですから、ご希望があればおっしゃってください。もちろんお疲れでしたら客室までお運びいたします」
「画期的な仕組みですね。レイ…バック王に声を掛けて早速足を運んでみます」
ゼータは足早に客室の扉へと向かい、その途中で躓くように足を止めた。質素な麻シャツのすそを、両指でつまみ上げる。
「マギ。サロンに足を運ぶのなら、ドレスに着替えた方が良いですか?」
今のゼータは無地の麻シャツに、綿のパンツを合わせただけという王妃らしからぬ格好だ。髪は後頭部で一つに結わえただけで、化粧もしていない。ここがドラキス王国の王宮であれば、カミラに首根っこを鷲掴みにされるところである。そのような非常識な格好で、他国の国王方と対面を果たすつもりか、と。多少手間でも、せめて手持ちのワンピース程度には着替えるべきか。迷うゼータにマギは微笑みかける。
「皆様、旅路の軽装のままサロンに向かわれておりますよ。希望があればすぐに替えのドレスをお持ち致しますが、気ままな場所ですから極力軽装の方が望ましいかと」
「良かった。ではこのまま行ってきます」
行ってらっしゃいませ。マギが頭を下げるのと、ゼータが部屋の扉を閉めるのは同時であった。
一人となった部屋で、マギは目元を覆う黒布を取る。現れた物は蛇の両眼だ。瞳孔が異様に大きく、本来白であるはずの結膜は血のように赤い。見た目の恐ろしさだけにあらず、その眼は見た者を石へと変える悪魔の力を持つ。布越しでさえ、人々はこの目を見る事を厭う。
「不思議なお方」
無音の客室にマギの声が響く。
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