【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔

三崎こはく

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荒城の夜半に龍が啼く

湖畔の町リーニャ

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 3度目の休憩地点は、バルトリア王国北方に位置する湖畔の街リーニャ。空中からでも決して見落とすことのない巨大な三日月湖の湖畔に、黒や茶を基調としたたくさんの建物が立ち並んでいる。三日月湖の南方には、緑豊かな田畑も目立つ。その湖畔の一角、街からは少し離れた場所にドラゴンは着陸した。この場所では休憩の他にもう一つ、達成すべき目的がある。黒の城訪問に先立ち、バルトリア王国内都市の視察を行うことだ。1200年を超える時を生きるレイバックであるが、過去バルトリア王国に足を踏み入れた経験は一度もない。新女王フィビアスと顔を合わせるにあたり事前に国土の様子を肌で感じておいて不都合はない、とは知者メリオンの言葉である。そうしてレイバックとゼータの、湖畔の街リーニャへの立ち寄りが決定されたのである。
 人生初となるバルトリア王国内都市への立ち入りに、人型に戻ったレイバックはうきうきと浮かれ立つ。その傍らでは着替えを終えたゼータが、手荷物の中に手袋やら帽子を詰め込んでいる。なぜゼータが豊かな湖畔で着替えをしているかと言えば、黒の城到着を前にして女性へと姿を変えたためだ。日常生活の大半を男性の姿で送るゼータであるが、黒の城滞在中は女性の姿で過ごすことが事前の話し合いで決定されている。男性の姿を他国の国賓に晒すことはせず、サキュバスを名乗ることもしない。当然のようになされた決定の裏に、「サキュバスの妃を迎えた事実がレイバック王の瑕疵となっては困る」とのメリオンの憂慮があったことは言うまでもない。
 シャツにズボン、靴までもをすっかり着替え終えたゼータは、男性用の衣類をかばんの奥底に仕舞い込む。そうして各々自身の手荷物を肩に掛け、街を目指して歩み出す。

 豊かな湖畔を5分も歩くと、茂る木々の向こうに茶けた屋根が見えていた。建物は家屋のようで、一見すると廃屋のようなその家屋には人が暮らす形跡がある。ぽつりぽつりと佇む家屋は次第にその数を増やし、15分も歩いた頃には集落と呼ぶに相応しい景色が広がる。手製の看板を掲げた小さな商店に、継ぎ接ぎだらけの家屋、獣臭さ漂う獣舎。実りを目前にした田畑には籠を背負う人の姿が見え、土の小路を荷車が行く。ここは本当に荒れ果てたバルトリア王国国土であるのか。疑いすら抱く長閑な光景だ。しかしここはあくまで、湖畔の街リーニャの一隅に位置する小集落。街の中心部となる場所は、もう少し先である。
 ゼータとレイバックは息弾ませながら、集落を貫く小路を駆ける。小さな集落を通り抜けるまでにさほどの時間は要せず、2人は喧騒とした通りに躍り出る。そこはポトスの街の歓楽街に等しい賑やかな通りだ。石畳の通りの両側には飲食店、服飾店、文具店など数々の店が立ち並ぶ。一般の家屋と思しき建物も多い。建物の多くは石造りであるが、中には木造の家屋も混じっている。その色合いも、色鮮やかに塗られた物から塗装の禿げた物まで様々だ。建物の高さはばらばらで、道に敷かれた石畳も途中で途切れたり色が変わったりと秩序がない。ロシャ王国の首都リモラに比べれば、ポトスの街は秩序のない場所に思われた。しかしリーニャの街はその遥か上を行く。
 無秩序な通りを行き交うは、これまた秩序なき人々だ。早足で通りを抜ける人、店の前で立ち止まる2人組、野良犬に餌をやる少年、客引きをする恰幅の良い店主、騎獣の綱を引く旅人。渦巻く騒めきの中にいては、声を張り上げねば会話は困難だ。

「賑やかな町ですね。メリオンの話を聞くに、国全体がもっと陰鬱としているのかと思っていました」
「リーニャは湖畔に築かれた街だ。水資源に恵まれ、農作物の栽培が盛んな土地である。俺達が今いる場所はリーニャの北方、少し離れた南方部には農地と酪農地が広がっている」
「それはメリオン情報?」
「そうだ。しかしメリオン自身は、リーニャを訪れた経験はないらしい。ドラキス王国に住まう吸血族から得た情報だと言っていた。現在ドラキス王国に住まうバルトリア王国出身者は、千名程度であるとの推測がある。その大半がバルトリア王国国土の北方、又は西方地域からの移住者なんだ。中でもリーニャからの移住者はかなりの割合を占める。国家間で正式な交易はなくとも、俺にとってはゆかりある土地だ。視察に不足はあるまい」

 ポトスの街から湖畔の街リーニャまでは、騎獣に跨り丸1日の距離だ。リーニャを越えてさらに南を目指せば、さらに丸一日の距離にバルトリア王国の中心地となる黒の城城下がある。つまりリーニャは、ポトスの街と黒の城城下を繋ぐ直線路の丁度中間地点に位置する土地なのだ。ドラキス王国からバルトリア王国の各都市へと赴く者、またバルトリア王国の各都市からドラキス王国内の都市を目指す者は、必ずと言ってよいほどリーニャへと立ち寄る。人が集まれば街は栄え、人々の生活は豊かになる。湖畔の街リーニャはそうして中継都市としての役割を担うことで、荒国の時代でも一定の繁栄を保ってきた。レイバックは通りのあちこちを見回しながら、そのようなことを説明した。

 怒号が耳に届き、レイバックとゼータははたと歩みを止めた。通りの逆端を見れば、数人の男達が胸倉を掴み合っている。中には刃物を手にする者もおり、正に一触即発の雰囲気だ。「金を返して欲しけりゃ力尽くで取ってみな、このうすのろ」一人の罵声を皮切りに、男達は一斉に拳を振り上げた。激しい殴打音に入り乱れる怒声、罵声、悲鳴。乱闘の輪から弾き飛ばされた男の一人が、石畳の上に無様と転がる。どうやら腹部に強烈な殴打を受けたようで、男は腹を抱えてのたうち回る。
 ゼータとレイバックは、呆然とその光景を眺めていた。乱闘が始まり間もなく数分の時が経とうとしている。これがポトスの街中であれば、即座に警備兵が駆け付け男達は皆取り押さえられるところだ。しかし通りのどこを見渡しても、男達を諫めようとする者の姿は見えない。通りを歩く者は皆、怒号を吐き散らかす男達を一瞥しては、諍いに巻き込まれては大変と足を速めるのだ。湖畔の街リーニャは、バルトリア王国の内においては比較的平和な都市である。だがその平和とは、ゼータとレイバックの知る平和には程遠い。乱闘から視線を外し、薄暗い路地裏を見やる。石造りの建物に挟まれた路地裏は、道幅が2mにも及ばない手狭な通りだ。塵と汚泥に埋め尽くされた路地裏には人の姿がある。襤褸切れを纏い座り込む子供、脚のない老婆、傷口に沸いた蛆虫を一つ一つ摘み上げる男、事切れた乳児の死体を抱く女。恐らく彼らは元々のリーニャの住人ではない。住んでいた集落を盗賊に襲われ、実りを目前にした田畑を魔獣に荒らされ、命を繋ぐためにリーニャの地へと逃げて来たのだ。しかし繁栄都市リーニャにも、全ての流浪者を救うだけの余裕があるわけではない。繁栄の片隅で日々多くの命が消えて行く。国土の荒廃はリーニャの街をも蝕んでいる。悲痛な光景から視線を逸らし、ゼータとレイバックは歩き出す。

 男達の怒号が喧騒に飲み込まれた頃に、レイバックは通りの片端で歩みを止めた。雑多とした街並みの中では珍しく、煉瓦造りの建物が数件立ち並ぶ場所だ。腐臭流れ出す路地裏に目を瞑り、その数件の建物だけを視界に移せば、赤白で統一されたポトスの街並みとも見えなくはない。レイバックが足を止めた場所は、「弁当屋」と看板を掲げた建物の前だ。煉瓦造りの壁には2つの小さな小窓が付いていて、小窓の上部には紙製のメニュー表がぶら下げられている。
―唐揚弁当、焼魚弁当、焼肉弁当、日替弁当 各銀貨一枚
 どうやら店内に立ち入って商品を選ぶ類の店ではなく、店の外で商品を注文し小窓から受け取る方式が採用されているようだ。昼時まではまだ時間があるが、小窓の近くにはすでに数人の客人が列を成している。小窓の内側では、年配の女性店員が代金の受け取りに商品の引き渡しにと忙しそうだ。

「王が立つらしいな」

 レイバックがそう問い掛けたのは、弁当屋の店先に立つ白髪の老人だ。弁当屋の看板と同じ色合いの衣装を身に着けたその老人は、腹の前に大きな箱を抱えている。麻の首掛け紐が結わえ付けられたその箱の中には、拳大の握り飯がぎっしりと詰まっているのだ。そして箱の横面にはこう書かれている。
―握り飯(味噌、海老、胡麻、焼鳥、野沢菜) 各銅貨一枚
 なるほど、形態の違う2人の売り子がいれば店の売り上げは伸びるだろう。
 重そうな売り箱を軽々と持ち上げるその老齢店員は、突然の問い人を胡乱気と眺める。

「確かに一部の住民の間で、そういった噂が流れている」
「噂?真実ではないのか」
「さぁな。俺は噂の真偽など知らねぇよ」
「即位の報せや勅命の配布は?王が立つというのなら、街の行政に何かしらの動きがあるはずだろう」

 老人の瞳が、レイバックを真正面から見据えた。白髪交じりの髪に、茶色味を帯びた鋭い眼。老人の面貌は大鷲を彷彿とさせる。

「あんたら、どこから来た」
「ドラキス王国の中心部だ。バルトリア王国に王が立つとの報せを聞いて、遥々この地へやって来た」
「そりゃご苦労なこった。だが無駄足だったな。噂は所詮ただの噂、この国には王など立たねぇよ」
「…なぜそう思う」
「俺達の暮らしが何も変わっていないからだ。俺が新王即位の噂を初めて耳にしたのは、もう二か月も前のことだ。しかしこの国の惨状は二か月前から何も変わらない。あんたらドラキス王国から来たのなら、道中の小集落の様子を目にしただろう。あの光景を見て、なぜ王が立ったなどという噂を信じられるんだ」
「悪いな。騎獣を飛ばしてきたから、道中の集落の様子は見ていない」
「そうかよ。ある意味では正しい判断だな。ドラキス王国の住人様にあの光景は酷すぎる。俺はリーニャ西方の集落に知人がいる。週に一度その集落に、村人全員の分の弁当を届けているんだ。金にはならねぇが、慈善活動ってやつだな。否が応にも現状を認識するぜ。この国には王などいない」

 レイバックとゼータの脳裏に、鬱々たる光景が思い出される。襤褸切れを纏い座り込む子供、脚のない老婆、傷口に沸いた蛆虫を一つ一つ摘み上げる男、事切れた乳児の死体を抱く女。そして弔われることのないまま、地に朽ちた数々の死体。あの光景はリーニャの外から街の中へと流れ込んできたものだ。あの路地裏の光景こそがバルトリア王国の現実。国土全域を支配する荒廃だ。今こうして話す間にも、魔獣の襲撃を受け滅びゆく集落がある。飢餓に負け潰える命がある。しかしそれは、バルトリア王国の頂に王が立った事実を思えばいささか不自然だ。

「そうは言ってもな。即位の噂が立つには何かしらの理由があるのだろう。リーニャ周辺の集落に救いの手は及ばずとも、別の地域で魔獣討伐や食糧庫の解放が行われている可能性は?」
「そんなこと、俺が知るわけねぇだろ。正確な情報が欲しいなら情報屋に行け」
「情報屋?」

 聞きなれない単語に、レイバックははてと首を傾げる。

「バルトリア王国内の大都市には、必ずと言っていいほど複数の情報屋がある。目印は緑色の小鳥が描かれた看板。この近辺だと…南に70mも歩けば行き当たるはずだ」
「その情報屋という場所では、どのような情報でも売ってくれるのか」
「情報屋が知り得ている情報ならば、金次第で何でも売ってくれる」
「料金の相場は?」
「美味い飯屋の情報、程度なら銀貨一枚。それ以上の情報となると情報屋の気分次第だな。料金交渉が面倒ならば、前料金として金貨一枚を支払うと良い。金貨で買えない情報はねぇ」

 レイバックとゼータは首を伸ばして、老人の指さした通りの果てを眺め見た。しかし人でごった返す通りの向こうに、目的の看板を臨むことはできない。しかし金さえ払えば、情報屋なる人物から正確な情報を買い受けることができる。その事実を知れただけでも、弁当屋の老人に話しかけた意味はある。レイバックは満足げな笑みを浮かべながら、売り箱の中の握り飯を指さした。

「貴重な情報に感謝する。ついでに握り飯を頂けるか。5つの味を、それぞれ一個ずつ」
「まいどあり。袋に入れるかい」
「そうだな、纏めて入れてくれ」

 老人は売り箱の底から、小さな紙袋を一枚引き出した。海苔に包まれた握り飯を一つ、また一つと紙袋の中に入れて行く。5個の握り飯が収まった紙袋はずしりと重たそうだ。差し出された紙袋と引き換えに、レイバックは老人の手のひらに銀貨を載せる。

「釣りは結構。情報量だ」
「お、あんた物の道理がわかっているねぇ」

 仏頂面から一変し、老人は顔中に笑みを広げた。情報は相応の価値を持つ。国が変われどその常識は変わらない。老人店員繰り返し礼を述べ、レイバックとゼータは再び歩み出す。目指す先は弁当屋の70m南にあるという、緑の小鳥の看板だ。
 歩き始めて間もなくすると、レイバックは左肘に掛けた紙袋を漁り始めた。海苔香る握り飯を一つ取り出し、にんまりとそれに噛り付く。記念すべき最初の一つは、野沢菜握り飯。しかし食欲そそる匂いを嗅いでも、ゼータの腹は空腹には程遠い。

「レイ、私握り飯は要りませんよ。さっきサンドイッチを食べたばかりですし」
「これは俺の分だ。ゼータはゼータで好きな物を買うと良い」
「あ、そう…」

 右肩には大きな旅行鞄、左肘には紙袋、そして左手には湖畔の街リーニャのお手軽美食。ドラキス王国の国王殿はご機嫌だ。
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