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十字架、銀弾、濡羽のはおり
2度目の精霊族祭-5
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金色の満月は、間もなく天頂に差し掛かろうとしていた。精霊族祭の終宴までは残すところ一時間半。広場に立ち込める熱気は健在で、たむろする人々はからくり人形のように踊り続ける。終宴に向かい人々の気分が盛り上がる今、演奏隊が掻き鳴らすは身も心も弾む陽気なラテン・ロック。宙に舞う汗の粒はランタンの光を浴びて、きらきらと星粒のごとく輝くのだ。
その熱気満つる広場の片隅に、踊ることを止め談笑に興じる男女がいる。
「レイは、十二種族長の面々と個人的な付き合いはあるんですか?」
「全員が全員というわけではないが、何かしら付き合いのある者が多いな。ザトとはよく2人で飲みに行くし、ウェールにはカバンや靴の修理を依頼するだろう。季節の変わり目にはシルフィーに買い物の荷物持ちを依頼される」
「王様を荷物持ちに?シルフィーは勇者ですねぇ…」
「ミディエットやアリエルには、時々茶会に呼ばれるな。ミクサとアマルディーナとはこれといった付き合いはないが…廊下ですれ違えば立ち話くらいはする」
国家のナンバー2であり悪魔族長であるザト、手先が器用な小人族長のウェール、少女のような外見の妖精族長シルフィー。精霊族長ミディエット、海獣族長アリエル、鬼族長ミクサ、幻獣族長アマルディーナ。見慣れた面々の顔が、ゼータの脳裏に次々と浮かぶ。ここに至るまで十数杯の酒を嗜み、ほろ酔い気分のレイバックは赤ら顔で続ける。
「巨人族長、獣人族長、竜族長の3人は、種族長の任と王宮軍の任を兼任している。訓練場で一緒になることもあれば、共に魔獣討伐遠征に赴くこともある。同じ釜の飯を食うのだから、彼らとは気心が知れた仲であることに違いはない。大規模な魔獣討伐遠征のあとには打ち上げが付き物だしな」
巨人族長、獣人族長、竜族長。ここまでに挙げられた十二種族長は総勢10名。残る2人のうち、一人は人間族長であるクリスだ。レイバックとの仲は言わずもがな。一番知りたかった人物が最後に残されてしまったと、ゼータは焦れたように唇を噛む。
「メリオンは?気心の知れた関係を築いています?」
「メリオンか…言われてみれば、彼が一番縁遠い存在であるかもしれない。種族長の在任歴が短いことともあるが、メリオンは公務と私事にはきっかり線を引いているだろう。ザトとは仲が良いようだが、それ以外の種族長と個人的な関係を築いている姿は見掛けない。俺も公務中であれば最低限話はするが、それ以外の時間となると…」
「でもメリオンも、種族長の任と王宮軍の任を兼任している一人ですよね?遠征や打ち上げで込み入った話をする機会はないんですか?」
捲し立てるようにそう問えば、レイバックはふるふると首を横に振る。
「俺はメリオンと遠征を共にすることはない。メリオンは王宮第2の実力者だろう。実力者2人が揃って王宮を空けてしまえば、いざというときに国の守りが手薄になる。俺が魔獣討伐遠征に赴くときはメリオンが留守番。逆にメリオンが遠征に赴くとき俺は王宮を空けない。そういう決まりになっているんだ」
「そうなんですか…」
メリオンに関して大した情報を得られずに、ゼータはひっそりと溜息を零す。ゼータがレイバックに十二種族長の話題を振ったのは、他でもなくメリオンに関する情報を集めるためだ。事あるごとに失礼な言動と淫猥な行動を繰り返すポトス城屈指の淫猥物。もしもレイバックがメリオンに対し爪先ほどでも不信感を抱いているのであれば、一連の出来事を密告してやろうと目論んでいたのである。大切な妃の貞操が脅かされているとなれば、独占欲の強いレイバックは恐らく黙ってはおるまい。吸血族長の地位を剥奪し国外追放の刑に処する可能性だって十分にあり得るのだ。淫猥物が王宮を去れば、ゼータには永劫安らかな生活が約束される。願ったり叶ったりの処遇である。
「レイ個人は関係が薄くとも、兵士や官吏の噂を耳にする機会はありませんか?その…悪い噂を耳にすることがあったりは…」
「悪い噂?なぜそんなことを聞くんだ。さっきのダンスで何か諍いがあったのか?それともザトと3人で飲んだときか?」
レイバックの手の中で杯が揺れる。短く刈り込まれた芝生の上に、空色の液体が零れ落ちる。気遣わしげな視線に晒されたゼータは思い迷う。ここでメリオンの罪を告白することは簡単だ。言葉巧みに血を吸われそうになったこと、強引に部屋に連れ込まれたこと、ダンスに託けて首筋に唇を付けられたこと。全てを赤裸々に告白すれば、レイバックはメリオンに然るべき処罰を下すことであろう。しかし果たしてそれは正しい判断なのか。先に述べられた通り、メリオンは王宮第2の実力者だ。彼が王宮から追放されれば王国の守りに大きな穴が空くことは間違いがないし、貴重なバルトリア王国の知者をもなくしてしまう。ドラキス王国に住まう吸血族が数十名しかいない現状では、吸血族長の後任を見つけることにも難儀するだろう。数秒目まぐるしく思い巡らせて、ゼータはゆっくりと頭を振った。
「メリオン個人と諍いがあったわけではありません。単なる興味ですよ。一度酒を酌み交わしたというのに、メリオンの人となりがいまいち掴めないんです。紳士という呼び名は頻繁に耳にしますけれど、本当のところはどうなのかと思って」
ゼータがそう伝えれば、レイバックは安心したように肩を落とす。澄んだ空色の酒が口内へと飲み込まれ、残される物は大衆用の有り触れたワイングラス。その空色の酒を、レイバックはここに至るまで10杯以上も空けている。ドラキス王国の国王殿は、精霊族祭の会場で無償提供される大衆酒が大層お気に召したらしい。対するゼータが嗜むは喉を焼く飴色のウイスキーだ。会場のテーブルに並べられた低アルコール飲料に物足りなさを感じたゼータが、給仕員に頼んで運んでもらった代物である。芝生に置かれたウイスキーのボトルは、すでに半分以上が空けられている。
空となったワイングラスを指先で弄びながら、ほろ酔いレイバックは舌足らずに言う。
「悪い噂を耳にすることがあるかとの問いに答えるのであれば、ない。メリオンの仕事ぶりは非常に優秀。書類を見る目は厳格だし、知識豊富で仕事も早い。部下の扱いにも長けている。俺は直接メリオンの技を目にした経験はないが、魔法の腕も相当のものらしいな。魔王のごとき戦いぶりであるとの兵士の評価だ。だから良い噂を聞く機会は頻繁にあれど、メリオンに関する悪い噂というのは耳にしない」
「へぇ…レイは、メリオンの存在を当てにしていたりはします?」
「当てにしているとも。百年に一度の繁殖期を含め、俺が戦えぬ身体になったときメリオンの力なくして国家は守れない。獣人族長や竜族長も手練れではあるが、緊張感が違うというのかな。メリオンはバルトリア王国の居住歴が長いだろう。危機管理能力に長けており、簡単には人を信用しない質なんだ。ザトを除く十二種族長の面々は、荒国の時代を知らない。平和な時代であれば国政運営に支障はないが、いざ有事となれば彼らの危機意識は当てにならん。メリオンの存在はドラキス王国の防波堤として、今以上に重宝されることとなるだろう」
レイバックの証言に関しては、ゼータも思い当たる節がある。それはクリスの人間族長推薦が決まったときのこと。人間族長任命伺いを持参したゼータに対し、メリオンは「クリスという男はなぜ大学内での出世を捨て、わざわざドラキス王国に赴いた」と問うたのだ。それ以外にも細々とした追及を繰り返すメリオンに、当時のゼータは煩わしさから「余計な質問をするな」とまで言い放った。しかし今ならわかる。メリオンはゼータの書き記した文字列からクリスという人物に不信感を抱き、素性を明らかにすべく質問を重ねたのだ。決裁印を押した後も疑いを解くことはなく、クリスの教育係を買って出た。貴重な時間を割き、自ら不審者の監視にあたるために。「王の御神体を組み敷くのもまた一興」などと戯言を述べながらも、メリオンがドラキス王国に、延いてはレイバックに忠誠を誓っていることは事実。メリオンの力なくして国家は守れぬというレイバックの言葉は、決して誇張ではないのだ。
密告は不可能。諦めを覚えながらも、強引に部屋に連れ込まれた身として悪足掻きは避けられぬ。
「メリオンの副業については認知しています?」
「吸血族と提供者の仲介業のことか?当然認知している。十二種族長の副業については報告義務があるからな」
「あ、そうなんですね。結構詳しいことを聞いているんですか?」
「副業に関する収支報告書は年に一度要提出だ。しかしメリオンは仲介業にあたり客人から金をとっていない。収支報告書の内容も事務所の光熱費と雑費くらいのものだ」
「収支報告以外には?例えば仲介された吸血族と提供者が、どのような行為に及んでいるかなど…」
目をぎらつかせるゼータに、レイバックは胡乱げな視線を向ける。
「血液を貰い受けるための仲介だろう。吸血以外に何をするというんだ?」
さも当たり前と告げられてしまえば、それ以上ゼータに返す言葉はない。吸血族の吸血行為に性的快楽が付き纏うという事実は、魔法オタクのゼータですら知らなかった。メリオンは仲介業に対し無難な報告は怠らないながらも、厳密な行為については言及を避けているのであろう。メリオンが意図的に隠している事実をゼータが暴露したとなれば、貞操どころか命まで脅かされかねない。魔法には長けたゼータであるが、魔王と呼称される人物に太刀打ちできる自身は皆無だ。メリオンの淫らな本性についても、吸血族の性についても、結局口を噤む他にない。
がっくりと肩を落とすゼータの視界に、革靴の爪先が映る。ふと視線を上げれば、そこに立つ人物は竜族長のツキノワだ。磨き上げられた黒の革靴に、身にまとうは藍色の燕尾服。脱いだ上着は肘に掛けられていて、捲り上げられたシャツの袖からは鍛え上げられた上腕が見え隠れする。芝生に座り込むレイバックとゼータに向けて、しっとりと一礼をするツキノワ。その脇に立つ人物は、精霊族長のミディエットだ。淡い黄色のマーメイドドレスと、長い銀の髪が夜風に靡く。
「ツキノワとミディエット?なぜ一緒に精霊族祭の会場に?まさか…」
横並びに立つ2人の姿を目視し、レイバックは口角を吊り上げた。見知った2人の逢瀬現場に鉢合わせてしまったかと、ゼータもどきどきを隠せない。しかし人混みを背に立つツキノワは至って真面目な表情である。
「私はミディエット殿の護衛を引き受けただけにございます。精霊族の長として、会場の繁盛具合を肌で味わいたいと仰るものですから」
「それにしてはダンス向きの装いだ。汗も掻いている」
「妙な勘繰りはお止めください。ダンスパーティーの会場に赴くのに、まさか全身鎧をまとうわけにもいきますまい。汗を掻いているのは人混みを抜けてきたからです。決してミディエット殿と手と手取り合い、ダンスに興じていたわけではございませんよ」
「そうか?別に隠さなくても良いのに」
レイバックの声音は明らかに浮かれ調子だ。ミディエットの表情は変わらぬままだが、ツキノワのへの字の口元からは歯軋りが聞こえてきそうだ。
「…王はお酒が入るとお人が悪くなる。失礼ながら御前より撤退させていただきます」
「王、ゼータ様。今宵の精霊族祭、どうぞフィナーレまでお楽しみくださいませ」
揃って一礼をすると、ツキノワとミディエットは人混みへと消えて行く。いじり甲斐のある玩具をなくしたレイバックは不満げだ。今度訓練場で会ったときにツキノワを問い詰めるべきか。いや下手に口を挟まずあちら方からの報告を待つべきか。呟くレイバックの左手指先では、空のグラスがくるくると回る。そうした時間が数分に及んだときに、レイバックははたと顔を上げた。
「…何の話をしていたんだったか」
「メリオンの副業の話です。仲介業の話は、私も飲み会の折に初めて耳にしたんですけれど」
待っていましたとばかりにゼータが会話を再開すれば、レイバックは途端と表情を曇らせた。神獣と名高い一国の国王が、妃の前でだけ見せる拗ねた子どものような表情だ。
「随分メリオンのことを気に掛けるんだな。まさか惚れ込んだわけではあるまいな?」
鳥肌ものの濡れ衣である。ゼータは引き千切れんばかりの勢いで首を左右に振る。
「まさか。同じバルトリア王国出身者として、少し気に掛かるだけですよ」
「ゼータはバルトリア王国の出身なのか。初めて聞いたな」
「幼少期に数年住んでいただけですから、大した記憶もないんですけどね。自分がどこに住んでいたのかも曖昧です」
「親御殿は顕在か」
「とっくの昔に亡くなっていますよ。死に際に立ち会ってはいませんけれど、亡くなっている事に間違いはありません」
ふぅんと相槌を打ったきり、レイバックは再び黙り込んだ。ゼータの出生に興味がないわけではない。しかし積極的に語られぬ過去を、必要以上に問い質すつもりはないのだ。
それからまたしばらくは、他愛もない会話を酒のつまみに時を過ごした。祭りのフィナーレまでは残すところ1時間を切り、会場の熱気は高まるばかり。時計の針が天頂を指す頃には、精霊族祭の会場となる広場の真上には大輪の花火が打ちあがる。大音量に掻き鳴らされる音楽に毬のように身を弾ませる人々。そして満開の花畑のごとく咲き誇る色とりどりの火華。それが毎年恒例の、精霊族祭のフィナーレだ。ほろ酔い夢心地で人波を眺めていたゼータは、とある瞬間にぽつりと零す。
「レイと踊るならルナの姿が無難かと思いましたけれど、あまり気にしなくても良かったみたいですね」
「そんなことを気にしていたのか。ダンスパーティーとはいえ所詮は庶民の祭りだ。男同士が手を取り合ったところで、咎める者などいない」
「そうですねぇ…」
目の前にあるは、一時よりも密度を減らした群衆。軽快と踊る人々はもちろん男女のペアが多いのであるが、中には女性同士・男性同士といった組み合わせも頻繁に見掛けられる。友人同士なのか、恋人同士なのか、それとも偶然出会った者同士が偶然手を取り合ったのか。そのどれであるかは傍目にはわからない。精霊族祭に参加することを決めたとき、ゼータは当然のごとく緋色のドレスを用意した。レイバックと共に踊るのならばルナの姿でなくてはならないと、特段の理由もなくそう感じたからだ。しかしここは種族も性別も入り乱れる自由気ままなダンスパーティー。一国の王の傍らに座る者が一介の研究員であったとて、何か問題となることがあるだろうか。会場にいる者は皆祭りを楽しむことに一生懸命で、広場の片隅にいる2人の男女が誰であるかなどと気にも留めない。
よし。ゼータは意気揚々と立ち上がる。
「着替えてきます。15分もすれば戻りますから、この場にてお待ちください」
「着替えるって、まさか燕尾服にか?」
「その通り。腰を抱かれてばかりはもう御免です」
聖ジルバード教会を模した建物の中には休憩室と名の付く部屋があり、その場所ではドレスや燕尾服の貸し出しが行われているのだ。本来は衣服を汚してしまった客人のための部屋であるが、事情を説明すればゼータが燕尾服を借りることは十分可能なはずだ。うきうき陽気なゼータとは対照的に、レイバックは表情を強張らせる。
「…まさか俺に女性役を踊れという意味ではあるまいな」
レイバックの問いにゼータは答えない。人の悪い笑みを残し、レイバック元を立ち去らんと身を翻す。芝生を掛ける脚は裸足、いつの間にやら脱ぎ捨てられた緋色のヒールは両手にしっかりと握り締められている。履き慣れない靴を脱げば、運動下手のゼータとてそれなりの速さでは駆けられる。遠ざかって行く緋色の背を見つめ、レイバックは焦り顔だ。
「無茶を抜かすな!俺は男性役しか踊ったことがない」
「大丈夫。習うより慣れよという有名な言葉がありますよ」
「待て待て、一度よく話し合おう。その場で止まれ、ゼータ!」
レイバックは慌てて立ち上がり、人混みに紛れようとするゼータの背を追う。止まれ、止まりません。言い争う声は次第に笑い声に代わり、身体絡ませた恋人達は喧騒の中に消えて行く。
その熱気満つる広場の片隅に、踊ることを止め談笑に興じる男女がいる。
「レイは、十二種族長の面々と個人的な付き合いはあるんですか?」
「全員が全員というわけではないが、何かしら付き合いのある者が多いな。ザトとはよく2人で飲みに行くし、ウェールにはカバンや靴の修理を依頼するだろう。季節の変わり目にはシルフィーに買い物の荷物持ちを依頼される」
「王様を荷物持ちに?シルフィーは勇者ですねぇ…」
「ミディエットやアリエルには、時々茶会に呼ばれるな。ミクサとアマルディーナとはこれといった付き合いはないが…廊下ですれ違えば立ち話くらいはする」
国家のナンバー2であり悪魔族長であるザト、手先が器用な小人族長のウェール、少女のような外見の妖精族長シルフィー。精霊族長ミディエット、海獣族長アリエル、鬼族長ミクサ、幻獣族長アマルディーナ。見慣れた面々の顔が、ゼータの脳裏に次々と浮かぶ。ここに至るまで十数杯の酒を嗜み、ほろ酔い気分のレイバックは赤ら顔で続ける。
「巨人族長、獣人族長、竜族長の3人は、種族長の任と王宮軍の任を兼任している。訓練場で一緒になることもあれば、共に魔獣討伐遠征に赴くこともある。同じ釜の飯を食うのだから、彼らとは気心が知れた仲であることに違いはない。大規模な魔獣討伐遠征のあとには打ち上げが付き物だしな」
巨人族長、獣人族長、竜族長。ここまでに挙げられた十二種族長は総勢10名。残る2人のうち、一人は人間族長であるクリスだ。レイバックとの仲は言わずもがな。一番知りたかった人物が最後に残されてしまったと、ゼータは焦れたように唇を噛む。
「メリオンは?気心の知れた関係を築いています?」
「メリオンか…言われてみれば、彼が一番縁遠い存在であるかもしれない。種族長の在任歴が短いことともあるが、メリオンは公務と私事にはきっかり線を引いているだろう。ザトとは仲が良いようだが、それ以外の種族長と個人的な関係を築いている姿は見掛けない。俺も公務中であれば最低限話はするが、それ以外の時間となると…」
「でもメリオンも、種族長の任と王宮軍の任を兼任している一人ですよね?遠征や打ち上げで込み入った話をする機会はないんですか?」
捲し立てるようにそう問えば、レイバックはふるふると首を横に振る。
「俺はメリオンと遠征を共にすることはない。メリオンは王宮第2の実力者だろう。実力者2人が揃って王宮を空けてしまえば、いざというときに国の守りが手薄になる。俺が魔獣討伐遠征に赴くときはメリオンが留守番。逆にメリオンが遠征に赴くとき俺は王宮を空けない。そういう決まりになっているんだ」
「そうなんですか…」
メリオンに関して大した情報を得られずに、ゼータはひっそりと溜息を零す。ゼータがレイバックに十二種族長の話題を振ったのは、他でもなくメリオンに関する情報を集めるためだ。事あるごとに失礼な言動と淫猥な行動を繰り返すポトス城屈指の淫猥物。もしもレイバックがメリオンに対し爪先ほどでも不信感を抱いているのであれば、一連の出来事を密告してやろうと目論んでいたのである。大切な妃の貞操が脅かされているとなれば、独占欲の強いレイバックは恐らく黙ってはおるまい。吸血族長の地位を剥奪し国外追放の刑に処する可能性だって十分にあり得るのだ。淫猥物が王宮を去れば、ゼータには永劫安らかな生活が約束される。願ったり叶ったりの処遇である。
「レイ個人は関係が薄くとも、兵士や官吏の噂を耳にする機会はありませんか?その…悪い噂を耳にすることがあったりは…」
「悪い噂?なぜそんなことを聞くんだ。さっきのダンスで何か諍いがあったのか?それともザトと3人で飲んだときか?」
レイバックの手の中で杯が揺れる。短く刈り込まれた芝生の上に、空色の液体が零れ落ちる。気遣わしげな視線に晒されたゼータは思い迷う。ここでメリオンの罪を告白することは簡単だ。言葉巧みに血を吸われそうになったこと、強引に部屋に連れ込まれたこと、ダンスに託けて首筋に唇を付けられたこと。全てを赤裸々に告白すれば、レイバックはメリオンに然るべき処罰を下すことであろう。しかし果たしてそれは正しい判断なのか。先に述べられた通り、メリオンは王宮第2の実力者だ。彼が王宮から追放されれば王国の守りに大きな穴が空くことは間違いがないし、貴重なバルトリア王国の知者をもなくしてしまう。ドラキス王国に住まう吸血族が数十名しかいない現状では、吸血族長の後任を見つけることにも難儀するだろう。数秒目まぐるしく思い巡らせて、ゼータはゆっくりと頭を振った。
「メリオン個人と諍いがあったわけではありません。単なる興味ですよ。一度酒を酌み交わしたというのに、メリオンの人となりがいまいち掴めないんです。紳士という呼び名は頻繁に耳にしますけれど、本当のところはどうなのかと思って」
ゼータがそう伝えれば、レイバックは安心したように肩を落とす。澄んだ空色の酒が口内へと飲み込まれ、残される物は大衆用の有り触れたワイングラス。その空色の酒を、レイバックはここに至るまで10杯以上も空けている。ドラキス王国の国王殿は、精霊族祭の会場で無償提供される大衆酒が大層お気に召したらしい。対するゼータが嗜むは喉を焼く飴色のウイスキーだ。会場のテーブルに並べられた低アルコール飲料に物足りなさを感じたゼータが、給仕員に頼んで運んでもらった代物である。芝生に置かれたウイスキーのボトルは、すでに半分以上が空けられている。
空となったワイングラスを指先で弄びながら、ほろ酔いレイバックは舌足らずに言う。
「悪い噂を耳にすることがあるかとの問いに答えるのであれば、ない。メリオンの仕事ぶりは非常に優秀。書類を見る目は厳格だし、知識豊富で仕事も早い。部下の扱いにも長けている。俺は直接メリオンの技を目にした経験はないが、魔法の腕も相当のものらしいな。魔王のごとき戦いぶりであるとの兵士の評価だ。だから良い噂を聞く機会は頻繁にあれど、メリオンに関する悪い噂というのは耳にしない」
「へぇ…レイは、メリオンの存在を当てにしていたりはします?」
「当てにしているとも。百年に一度の繁殖期を含め、俺が戦えぬ身体になったときメリオンの力なくして国家は守れない。獣人族長や竜族長も手練れではあるが、緊張感が違うというのかな。メリオンはバルトリア王国の居住歴が長いだろう。危機管理能力に長けており、簡単には人を信用しない質なんだ。ザトを除く十二種族長の面々は、荒国の時代を知らない。平和な時代であれば国政運営に支障はないが、いざ有事となれば彼らの危機意識は当てにならん。メリオンの存在はドラキス王国の防波堤として、今以上に重宝されることとなるだろう」
レイバックの証言に関しては、ゼータも思い当たる節がある。それはクリスの人間族長推薦が決まったときのこと。人間族長任命伺いを持参したゼータに対し、メリオンは「クリスという男はなぜ大学内での出世を捨て、わざわざドラキス王国に赴いた」と問うたのだ。それ以外にも細々とした追及を繰り返すメリオンに、当時のゼータは煩わしさから「余計な質問をするな」とまで言い放った。しかし今ならわかる。メリオンはゼータの書き記した文字列からクリスという人物に不信感を抱き、素性を明らかにすべく質問を重ねたのだ。決裁印を押した後も疑いを解くことはなく、クリスの教育係を買って出た。貴重な時間を割き、自ら不審者の監視にあたるために。「王の御神体を組み敷くのもまた一興」などと戯言を述べながらも、メリオンがドラキス王国に、延いてはレイバックに忠誠を誓っていることは事実。メリオンの力なくして国家は守れぬというレイバックの言葉は、決して誇張ではないのだ。
密告は不可能。諦めを覚えながらも、強引に部屋に連れ込まれた身として悪足掻きは避けられぬ。
「メリオンの副業については認知しています?」
「吸血族と提供者の仲介業のことか?当然認知している。十二種族長の副業については報告義務があるからな」
「あ、そうなんですね。結構詳しいことを聞いているんですか?」
「副業に関する収支報告書は年に一度要提出だ。しかしメリオンは仲介業にあたり客人から金をとっていない。収支報告書の内容も事務所の光熱費と雑費くらいのものだ」
「収支報告以外には?例えば仲介された吸血族と提供者が、どのような行為に及んでいるかなど…」
目をぎらつかせるゼータに、レイバックは胡乱げな視線を向ける。
「血液を貰い受けるための仲介だろう。吸血以外に何をするというんだ?」
さも当たり前と告げられてしまえば、それ以上ゼータに返す言葉はない。吸血族の吸血行為に性的快楽が付き纏うという事実は、魔法オタクのゼータですら知らなかった。メリオンは仲介業に対し無難な報告は怠らないながらも、厳密な行為については言及を避けているのであろう。メリオンが意図的に隠している事実をゼータが暴露したとなれば、貞操どころか命まで脅かされかねない。魔法には長けたゼータであるが、魔王と呼称される人物に太刀打ちできる自身は皆無だ。メリオンの淫らな本性についても、吸血族の性についても、結局口を噤む他にない。
がっくりと肩を落とすゼータの視界に、革靴の爪先が映る。ふと視線を上げれば、そこに立つ人物は竜族長のツキノワだ。磨き上げられた黒の革靴に、身にまとうは藍色の燕尾服。脱いだ上着は肘に掛けられていて、捲り上げられたシャツの袖からは鍛え上げられた上腕が見え隠れする。芝生に座り込むレイバックとゼータに向けて、しっとりと一礼をするツキノワ。その脇に立つ人物は、精霊族長のミディエットだ。淡い黄色のマーメイドドレスと、長い銀の髪が夜風に靡く。
「ツキノワとミディエット?なぜ一緒に精霊族祭の会場に?まさか…」
横並びに立つ2人の姿を目視し、レイバックは口角を吊り上げた。見知った2人の逢瀬現場に鉢合わせてしまったかと、ゼータもどきどきを隠せない。しかし人混みを背に立つツキノワは至って真面目な表情である。
「私はミディエット殿の護衛を引き受けただけにございます。精霊族の長として、会場の繁盛具合を肌で味わいたいと仰るものですから」
「それにしてはダンス向きの装いだ。汗も掻いている」
「妙な勘繰りはお止めください。ダンスパーティーの会場に赴くのに、まさか全身鎧をまとうわけにもいきますまい。汗を掻いているのは人混みを抜けてきたからです。決してミディエット殿と手と手取り合い、ダンスに興じていたわけではございませんよ」
「そうか?別に隠さなくても良いのに」
レイバックの声音は明らかに浮かれ調子だ。ミディエットの表情は変わらぬままだが、ツキノワのへの字の口元からは歯軋りが聞こえてきそうだ。
「…王はお酒が入るとお人が悪くなる。失礼ながら御前より撤退させていただきます」
「王、ゼータ様。今宵の精霊族祭、どうぞフィナーレまでお楽しみくださいませ」
揃って一礼をすると、ツキノワとミディエットは人混みへと消えて行く。いじり甲斐のある玩具をなくしたレイバックは不満げだ。今度訓練場で会ったときにツキノワを問い詰めるべきか。いや下手に口を挟まずあちら方からの報告を待つべきか。呟くレイバックの左手指先では、空のグラスがくるくると回る。そうした時間が数分に及んだときに、レイバックははたと顔を上げた。
「…何の話をしていたんだったか」
「メリオンの副業の話です。仲介業の話は、私も飲み会の折に初めて耳にしたんですけれど」
待っていましたとばかりにゼータが会話を再開すれば、レイバックは途端と表情を曇らせた。神獣と名高い一国の国王が、妃の前でだけ見せる拗ねた子どものような表情だ。
「随分メリオンのことを気に掛けるんだな。まさか惚れ込んだわけではあるまいな?」
鳥肌ものの濡れ衣である。ゼータは引き千切れんばかりの勢いで首を左右に振る。
「まさか。同じバルトリア王国出身者として、少し気に掛かるだけですよ」
「ゼータはバルトリア王国の出身なのか。初めて聞いたな」
「幼少期に数年住んでいただけですから、大した記憶もないんですけどね。自分がどこに住んでいたのかも曖昧です」
「親御殿は顕在か」
「とっくの昔に亡くなっていますよ。死に際に立ち会ってはいませんけれど、亡くなっている事に間違いはありません」
ふぅんと相槌を打ったきり、レイバックは再び黙り込んだ。ゼータの出生に興味がないわけではない。しかし積極的に語られぬ過去を、必要以上に問い質すつもりはないのだ。
それからまたしばらくは、他愛もない会話を酒のつまみに時を過ごした。祭りのフィナーレまでは残すところ1時間を切り、会場の熱気は高まるばかり。時計の針が天頂を指す頃には、精霊族祭の会場となる広場の真上には大輪の花火が打ちあがる。大音量に掻き鳴らされる音楽に毬のように身を弾ませる人々。そして満開の花畑のごとく咲き誇る色とりどりの火華。それが毎年恒例の、精霊族祭のフィナーレだ。ほろ酔い夢心地で人波を眺めていたゼータは、とある瞬間にぽつりと零す。
「レイと踊るならルナの姿が無難かと思いましたけれど、あまり気にしなくても良かったみたいですね」
「そんなことを気にしていたのか。ダンスパーティーとはいえ所詮は庶民の祭りだ。男同士が手を取り合ったところで、咎める者などいない」
「そうですねぇ…」
目の前にあるは、一時よりも密度を減らした群衆。軽快と踊る人々はもちろん男女のペアが多いのであるが、中には女性同士・男性同士といった組み合わせも頻繁に見掛けられる。友人同士なのか、恋人同士なのか、それとも偶然出会った者同士が偶然手を取り合ったのか。そのどれであるかは傍目にはわからない。精霊族祭に参加することを決めたとき、ゼータは当然のごとく緋色のドレスを用意した。レイバックと共に踊るのならばルナの姿でなくてはならないと、特段の理由もなくそう感じたからだ。しかしここは種族も性別も入り乱れる自由気ままなダンスパーティー。一国の王の傍らに座る者が一介の研究員であったとて、何か問題となることがあるだろうか。会場にいる者は皆祭りを楽しむことに一生懸命で、広場の片隅にいる2人の男女が誰であるかなどと気にも留めない。
よし。ゼータは意気揚々と立ち上がる。
「着替えてきます。15分もすれば戻りますから、この場にてお待ちください」
「着替えるって、まさか燕尾服にか?」
「その通り。腰を抱かれてばかりはもう御免です」
聖ジルバード教会を模した建物の中には休憩室と名の付く部屋があり、その場所ではドレスや燕尾服の貸し出しが行われているのだ。本来は衣服を汚してしまった客人のための部屋であるが、事情を説明すればゼータが燕尾服を借りることは十分可能なはずだ。うきうき陽気なゼータとは対照的に、レイバックは表情を強張らせる。
「…まさか俺に女性役を踊れという意味ではあるまいな」
レイバックの問いにゼータは答えない。人の悪い笑みを残し、レイバック元を立ち去らんと身を翻す。芝生を掛ける脚は裸足、いつの間にやら脱ぎ捨てられた緋色のヒールは両手にしっかりと握り締められている。履き慣れない靴を脱げば、運動下手のゼータとてそれなりの速さでは駆けられる。遠ざかって行く緋色の背を見つめ、レイバックは焦り顔だ。
「無茶を抜かすな!俺は男性役しか踊ったことがない」
「大丈夫。習うより慣れよという有名な言葉がありますよ」
「待て待て、一度よく話し合おう。その場で止まれ、ゼータ!」
レイバックは慌てて立ち上がり、人混みに紛れようとするゼータの背を追う。止まれ、止まりません。言い争う声は次第に笑い声に代わり、身体絡ませた恋人達は喧騒の中に消えて行く。
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