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無垢と笑えよサイコパス
ゆめうつつ-1
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ビットは薄明りの中にいた。何もない場所だ。壁も床も天井もない。揺らぐ木々もなく瀬々らぐ小川もなく、香る花々もない。どこまでも続くと思われる無の空間は全体がぼうっと白く発光し、明らかにそこが異質な場所であると伝えている。
―これは夢だ
ビットは確信する。そういえば客室のベッドに寝そべってからの記憶がない。柔らかな枕に顔を埋め心地よさを感じたことだけは覚えているから、きっとあのまま眠ってしまったのだ。
夢だと確証を得た途端、周囲の風景に変化が起きた。白く光る天頂から家具や書物が降って来たのだ。日に焼けた桐タンス、欠けたガラス戸の飾り棚、コーヒー染みのついたソファ、手垢で茶色に変色したたくさんの書物。それらの物体が積み木のように積み上がって、ビットの周囲に一つの部屋を形成した。魔法研究所の研究室の一室によく似ている。しかしそれよりも遥かに年季の入った部屋だ。
どこかで見たことのある部屋だ、とビットは思う。過去にこの部屋に立ち入ったことがある。当たり前だ。これは夢であるのだから、周囲の風景はビットの記憶を頼りに形作られているのだ。しかしどこで立ち入った部屋であるかが思い出せない。研究器具の立ち並ぶ作業台にも、書類の溢れた書き物机にも、ただ一つある窓の外に見える新緑の風景にも見覚えがあるのに、そこがどこであるかがわからない。
外に出てみようか。ビットは扉を探し、部屋の内部に視線を巡らせる。あった。飾り棚の真横にある飾り気のない灰色の扉、あれが外部へと続く扉だ。ビットは部屋の中央を横断し、扉の取っ手に手を掛ける。
―がちゃり
扉には鍵が掛かっていた。何度か引き動かしても、固く閉ざされた扉が開くことはない。ビットは扉を前にしばらく奮闘するが、やがて諦めた。夢を相手に意地になっても意味はない。温度のない取っ手から手を放し、背後を振り返る。目に入る物は新緑の木々を映す窓だ。扉が駄目なら窓からの脱出を図ろうか。窓際へと向かうビットの視界の端を、不可解な物体が掠める。扉だ。部屋の出入り口である扉とは違う、もう一つの扉。書物の詰まった本棚に半ば隠れるようにして、ひっそりと佇んでいる。模様はなく満足な塗装も施されていない、ただ木材を削り上げ取っ手を付けただけの扉だ。
この扉にも覚えがある。ビットは迷うことなく木製の扉へと向かい、円柱状の取っ手に手を掛ける。ねじが緩み扉板から外れ掛けた取っ手は、音を立てて回る。
扉の向こうは暗闇であった。黴臭さの混じる空気が充満している。1歩2歩と暗闇を進めば、木製の扉は軋めきとともに閉じた。ビットは暗闇の中に立ち竦む。己を取り巻く闇色が、鼻腔に流れ込む黴臭さが恐ろしかったわけではない。その場所に覚えがあったからだ。鮮やかな記憶ではない。遥か昔にその空間に立ち入ったことがある。しかしやはりそこがどこであるかは分からない。
記憶を辿るように暗闇を進めば、扉から数歩の場所で床が途切れていた。いや、途切れているわけではない。階段があるのだ。暗闇に落ちる下り階段。黴臭い空気は階段の奥底から吹き上げてくる。
はたとビットは思い至る。ここは旧魔法研究所の屋舎だ。
現存する魔法研究所が建てられたのはおよそ20年前、それ以前に使用していた木造2階建ての古びた屋舎。紅色の三角屋根を載せ、チョコレート色の壁板を下見板張りにした建物だ。白を基調とした現在の魔法研究所とは対照的な色合いで、周囲の木々によく調和していた。研究施設とは思えぬ古風な外観が人気を博し、ポトスの街中からわざわざ足を運ぶ観光客も多かったと記憶している。ビットもその建物が好きであった。三角屋根の玄関口から屋内に立ち入れば、古木と油の入り混じるどこか懐かしい香りが漂っていた。木製の格子窓からは柔らかな陽光が燦々と射し込んで、チョコレート色の木板の床に窓影を作っていた。
元々研究施設として建てられた建物ではなかったはずだ。顔も名も知らぬ人物が自身の趣味で建てた建物で、その人物の手を離れた後に国家の管理下に置かれた。人が使わなければ朽ちるのは早いからという理由で、魔法研究所の屋舎としての利用が決まったと聞いたことがある。元々別の目的で建てられた建物なのだから、研究所として便利な構造とは言い難かった。在籍する研究員の人数に対し、研究室として使用する部屋の数が圧倒的に足りなかった。だから広々とした部屋を数人の研究員で使用していたのだ。今の魔法研究所のように、研究員寮として使用できる設備もなかった。だから研究員のほとんどはポトスの街中に住居を構え、毎日馬車に揺られて研究所に通っていたのだ。ただ2階の端にある一番広い部屋が休憩室と定められていて、簡素な調理台や数組の寝具が置かれていた。研究に没頭し帰りの馬車に乗り損ねた研究員は、その休憩室で一夜を明かすことになるのだ。
不自由ではあるが、その不自由さがまた楽しかった。懐かしい記憶だ。
そして旧魔法研究所の屋舎には確かに地下室があった。今ビットが目にしている階段は、地下室へと続く下り階段なのだ。しかしその地下室が果たして何に使われていたのか、思い出すことができない。
ビットは温度のない石壁に手のひらを這わし、石造りの階段を下る。黴臭い風が絶えず顔面に吹き付けて、ビットの銀色の髪をふわふわと揺らしていた。
20段に及ぶ階段を下りた先にはまた扉があった。地上の物と同じ質素な木板の扉だ。ビットは円柱状の取っ手に手を掛け考える。この扉の先には何があるのだろう、と。夢はビットの記憶を頼りに形作られている。ならば扉の先に広がる風景もビットの見知った物であるはずなのだ。しかし、言いようのない不安が胸の奥に溜まっていく。扉を開けて先に広がる風景を臨むことが恐ろしい。その場所に立ち入ってはいけない。理由のわからぬ不安がビットを襲うのだ。
―所詮は夢
意を決してビットは扉を開ける。
扉の先は薄暗い空間であった。夢の初めにいた部屋と同様に、床も壁も天井もない。しかし薄暗闇の先に一箇所、明るく光る場所があるのだ。ビットは導かれるようにして光を目指す。近づくにつれて光の中に佇む物体が明らかになる。人の背中だ。黒髪で、白衣をまとった人の背。膝丈の白衣のすそからは、靴を履いた2本の脚が覗いている。
「ゼータさん」
ビットが呟くとその人物は振り返った。やはりそれはゼータであった。今よりも少し長い、耳にかかるほどの長さの黒髪。しかし瞬く黒の瞳はビットのよく知るゼータの物だ。ゼータは近づいて来るビットの姿を黙視すると、あれ、と呟いて首を傾げた。
「ビット、何をしているんですか」
「何って…ゼータさんこそ、ここで何を」
何をしているんですか、続く言葉は跳ねる鼓動に遮られた。手のひらに汗が滲む。脚が震える。口内が乾く。ビットの視線は、ゼータの着る白衣に釘付けとなっていた。なんの変哲もない有り触れたデザインの白衣だ。胸元にポケットの付いた三つボタンの白衣。しかしその布地の大半がどす黒く染まっている。胸元から腹部、そして袖に至るまで、粘性のある液体をぶちまけたような染みが広がっているのだ。
その途端、光の中に石台が現れる。白と灰色の斑模様の石台だ。厚さが10㎝はあろうかという天板の四隅に太い円柱の脚が付いている。天板の大きさは一般的なダイニングテーブルより少し大きい程度、人が寝そべって丁度良い大きさだろうか。豪勢な料理でも並べられていそうな石台の上には、奇妙な物体がのっている。人ではない。しかし大の大人がうずくまった程度の大きさの物体である。目を凝らす。その物体の正体を探るように、石台に近付いてゆく。
「何?私に何か用ですか?」
石台の前にゼータが立ちはだかった。石台上の物体を守るようにして、ビットの胸部を手のひらで押し止める。ゼータの手のひらに温かさは感じない。これが夢であるからだ。ここが夢の中でなければ、その手のひらには人の温かさがあることをビットは知っている。
怪訝な表情のゼータを押しのけて、ビットは石台の上の物体に対面する。初めはそれが何であるか分からなかった。頭部と思しき球体がある。口のような割れ目があり、中には牙のような物が生えている。ビットの視線は球体をなぞる。濁る眼球、乳白色の角。頭部に繋がった胴体はその表皮が全て苔色の鱗で覆われていて、しなやかな四足には鋭い3本の鍵爪。巨大な蜥蜴に似た魔獣だ。種名は分からない。しかしポトスの街の周辺山林でも頻繁に見かける、然して珍しくもない魔獣だ。
ゼータは魔獣を相手に何らかの実験を行っていたのだ。それは構わない。魔法研究所という名の施設であるのだから、魔獣相手の実験は珍しくもない。ゼータの専門とする魔獣の分布調査では魔獣に特殊な器具をつけて個体の動向を追うことがあるし、ビットの専門とするキメラ合成では魔獣から血液や骨髄液を採取することもある。
だがしかし、今目の前にある光景は何だ。なぜ石台上の魔獣は見るも無残な姿で事切れている。力なく開いた口内からは3本の牙が引き抜かれ、石台の隅に落ちている。血に濡れたペンチが傍に置かれているから、恐らく魔獣の牙を力任せに引き抜いたのだ。頭部の鱗は数枚が剥がされて、鱗と同じ苔色の表皮には血が滲んでいる。そして鱗に覆われた四足の1本は根元から切り落とされて、石台の下にころりと転がっていた。縄張り争いで傷ついた魔獣をゼータが保護したのか。そうであって欲しいと思う、しかしすぐにそうではないと思い至る。傷の手当てをしているのなら、石台の上に消毒液や包帯がないのは奇妙だ。そしてゼータの白衣を濡らすどす黒い液体。あれは魔獣の血液だ。傷ついた魔獣を運び込んだだけならばあれだけの血液を浴びることはない。導かれる答えは一つ。ゼータは健康な魔獣を捕らえ地下室に運び込み、自らの手で傷つけたのだ。牙を抜き鱗を剥ぎ、生きたまま手足の1本を切り落とした。
「癒しの魔法がね、使えないかと思ったんですよ」
ゼータが呟く。それは先ほどの問いに対する答えだ。
―ゼータさんこそ、ここで何をしているんですか
「精霊族の中に傷を癒す魔法を使う者がいるじゃないですか。特殊な魔法だから他の種族には使えないとされていますけど、魔力という力の源は一緒なんだから不可能ではないと思うんですよ。魔法とは想像力である、という言葉を知っています?最近出版された魔法書の中で使われていた表現です。良い言葉ですよねぇ。確かに想像力が豊かな人は使える魔法が豊富であるという一説があるんですよ。想像力は数値で測ることが出来ませんし、検証は不可能なんですけれどね」
ゼータは微笑みを浮かべすっかりいつもの調子だ。彼のまとう物が血濡れの白衣でなければ、「ゼータさん、やかましいからちょっと黙って」と軽口を叩きつけるところである。
「癒しの魔法も、想像力次第じゃないかと思うんですよ。骨、血管、筋肉、内臓。傷ついた組織が元々どうであったかを詳細に想像できれば、復元は可能かとも思ったんです。でもやっぱり厳しいんですよねぇ。ほら、魔獣の身体構造は人と全く違うでしょう。人の身体構造を書き表した書物は腐るほどありますけれど、魔獣についてはそこまで詳しい物がないんです。それでも牙とか爪とか、復元の想像しやすい箇所であれば可能かと思ったんですけどね。でも全然駄目なんですよねぇ。駄目元で腕を切り落としてみたけどやっぱり駄目。血管の一本、鱗の一枚でさえも復元できないんです」
魔獣の亡骸を撫で、ゼータは溜息をつく。癒しの魔法など使えるわけがないではないか、ビットは憤慨と思う。世に存在する魔法は大きく3つに分類される。魔族であれば誰でも使えるとされる生活魔法、訓練次第で使えるようになる訓練魔法、そして特定の種族や血族に限り使うことができる特殊魔法だ。傷や病気を癒す癒しの魔法は特殊魔法に分類され、使える者は精霊族の中のさらに一部の種族に限られているという。数多の種族が混在するポトスの街中にも、使える者はほとんどいない。
悪魔族であるゼータが癒しの魔法など使えるはずがない。しかし今のゼータは自らの種族など全くもって気に掛けた様子がなく、未知なる魔法への挑戦に胸膨らませているのだ。
「心臓」
突然、ゼータの右手人差し指がビットの胸をつついた。黒の瞳が愉快げに細められる。
「肺」
指先はビットの腹部へと下りて行く。
「肝臓、脾臓、胃、胆嚢、膵臓、腎臓」
歌うように呟きながらゼータはご機嫌だ。指先で、目には見えぬ臓器を辿ることが楽しくて仕方ない、そう告げるような挙動である。
「人の身体は分かりやすいんですよねぇ。参考文献が山ほどあるから。想像力次第で癒しの魔法を使えるようになるのなら、まず人の身体で試すのが手っ取り早いかとは思うんですよ。でも、使えるかどうか分からない魔法のために他人の身体を傷つけるのは躊躇われますよね。自分の身体なら、とも思いますけれど、痛みで集中力が乱れたら使える魔法も使えなくなります。誰かいれば良いんですけれどね。魔法研究所の仲間内で、快く実験台を引き受けてくれる人」
へその辺りに宛がわれたゼータの指先が熱を帯びる。暖かさも冷たさもない夢の中で、初めて感じる熱らしい熱だ。裂かれる、と咄嗟にビットは思った。腹を裂かれ、冷たい石台の上に引き摺り上げられる。そうして使えるはずもない癒しの魔法の実験台になるのだ。血溜まりの中で痛みに呻き、真¥まともな抵抗すらできずに身体を弄ばれて、やがて死ぬ。
石台上の魔獣同様、無残に事切れた自身の姿を想像し、ビットは悲鳴を上げた。腹に触れるゼータの指先を弾き飛ばし、逃げる。元来た道を辿る。木板の扉だ。扉を抜けて階段を上り、地上の部屋へと戻るのだ。この恐ろしい空間にもう一時でも身を置きたくはなかった。
何かにつまずく。転がるように地面に伏せる。一体何が落ちていたのだと後ろを振り返れば、そこには浅黒い舌を晒した魔獣の頭部があった。胴体はない。一抱えもある魔獣の頭部が打ち捨てられたように地面に転がっている。短い悲鳴を上げ、後ずさる。尻もちをついたまま立ち上がることができない。地面を這う指先に触れるものがある。振り返る。魔獣の腕だ。研ぎ澄まされた鍵爪を備える太い腕が、根元から千切れて落ちている。傷口から溢れ出した血液はいまだ乾かず、腕の周囲にぬるりとした血だまりを作っていた。
萎える脚を立て、ビットは駆ける。首をなくした四足獣の胴体が、腹に穴を開けた小動物の亡骸が、山のように積み上げられた獣の頭部が、なぜ逃げると言わんばかりにビットの目の間に立ちはだかる。しかしどれだけ駆けても目的の扉には近づかない。わずか数十mの場所にあったはずの木板の扉は、今はもう遥か遠くに遠ざかっていた。
つまずく。転ぶ。痛みに耐え膝を立てれば目の前には山がある。遺骸の山だ。身体の一部をなくし、或いは胴体に穴を開けて死に絶えた魔獣の山。一人の研究員の好奇心が作り上げた、見るもおぞましい山だ。
「ビット」
肩を叩かれ、振り返る。穏やかな顔で笑うゼータがいた。興味本位で命を弄ぶ人物の顔とは到底思えない。しかし裏を返せば、幾十幾百の命を奪い取った後でさえ笑えるのだ。この男は。
空気を震わせるような悲鳴が響く。それが自身の口から出たものであると悟った。悲鳴が途切れるよりも早く、ビットの意識はふわりと宙に浮きあがる。意識を失ったわけではない。意識が身体から離れたのだ。ふわふわとしゃぼん玉のように浮き上がりながら、ビットは眼下を眺め下ろす。ゼータの手のひらを逃れようとする自身の身体が、まだ視界の内にあった。
―夢が、覚める
―これは夢だ
ビットは確信する。そういえば客室のベッドに寝そべってからの記憶がない。柔らかな枕に顔を埋め心地よさを感じたことだけは覚えているから、きっとあのまま眠ってしまったのだ。
夢だと確証を得た途端、周囲の風景に変化が起きた。白く光る天頂から家具や書物が降って来たのだ。日に焼けた桐タンス、欠けたガラス戸の飾り棚、コーヒー染みのついたソファ、手垢で茶色に変色したたくさんの書物。それらの物体が積み木のように積み上がって、ビットの周囲に一つの部屋を形成した。魔法研究所の研究室の一室によく似ている。しかしそれよりも遥かに年季の入った部屋だ。
どこかで見たことのある部屋だ、とビットは思う。過去にこの部屋に立ち入ったことがある。当たり前だ。これは夢であるのだから、周囲の風景はビットの記憶を頼りに形作られているのだ。しかしどこで立ち入った部屋であるかが思い出せない。研究器具の立ち並ぶ作業台にも、書類の溢れた書き物机にも、ただ一つある窓の外に見える新緑の風景にも見覚えがあるのに、そこがどこであるかがわからない。
外に出てみようか。ビットは扉を探し、部屋の内部に視線を巡らせる。あった。飾り棚の真横にある飾り気のない灰色の扉、あれが外部へと続く扉だ。ビットは部屋の中央を横断し、扉の取っ手に手を掛ける。
―がちゃり
扉には鍵が掛かっていた。何度か引き動かしても、固く閉ざされた扉が開くことはない。ビットは扉を前にしばらく奮闘するが、やがて諦めた。夢を相手に意地になっても意味はない。温度のない取っ手から手を放し、背後を振り返る。目に入る物は新緑の木々を映す窓だ。扉が駄目なら窓からの脱出を図ろうか。窓際へと向かうビットの視界の端を、不可解な物体が掠める。扉だ。部屋の出入り口である扉とは違う、もう一つの扉。書物の詰まった本棚に半ば隠れるようにして、ひっそりと佇んでいる。模様はなく満足な塗装も施されていない、ただ木材を削り上げ取っ手を付けただけの扉だ。
この扉にも覚えがある。ビットは迷うことなく木製の扉へと向かい、円柱状の取っ手に手を掛ける。ねじが緩み扉板から外れ掛けた取っ手は、音を立てて回る。
扉の向こうは暗闇であった。黴臭さの混じる空気が充満している。1歩2歩と暗闇を進めば、木製の扉は軋めきとともに閉じた。ビットは暗闇の中に立ち竦む。己を取り巻く闇色が、鼻腔に流れ込む黴臭さが恐ろしかったわけではない。その場所に覚えがあったからだ。鮮やかな記憶ではない。遥か昔にその空間に立ち入ったことがある。しかしやはりそこがどこであるかは分からない。
記憶を辿るように暗闇を進めば、扉から数歩の場所で床が途切れていた。いや、途切れているわけではない。階段があるのだ。暗闇に落ちる下り階段。黴臭い空気は階段の奥底から吹き上げてくる。
はたとビットは思い至る。ここは旧魔法研究所の屋舎だ。
現存する魔法研究所が建てられたのはおよそ20年前、それ以前に使用していた木造2階建ての古びた屋舎。紅色の三角屋根を載せ、チョコレート色の壁板を下見板張りにした建物だ。白を基調とした現在の魔法研究所とは対照的な色合いで、周囲の木々によく調和していた。研究施設とは思えぬ古風な外観が人気を博し、ポトスの街中からわざわざ足を運ぶ観光客も多かったと記憶している。ビットもその建物が好きであった。三角屋根の玄関口から屋内に立ち入れば、古木と油の入り混じるどこか懐かしい香りが漂っていた。木製の格子窓からは柔らかな陽光が燦々と射し込んで、チョコレート色の木板の床に窓影を作っていた。
元々研究施設として建てられた建物ではなかったはずだ。顔も名も知らぬ人物が自身の趣味で建てた建物で、その人物の手を離れた後に国家の管理下に置かれた。人が使わなければ朽ちるのは早いからという理由で、魔法研究所の屋舎としての利用が決まったと聞いたことがある。元々別の目的で建てられた建物なのだから、研究所として便利な構造とは言い難かった。在籍する研究員の人数に対し、研究室として使用する部屋の数が圧倒的に足りなかった。だから広々とした部屋を数人の研究員で使用していたのだ。今の魔法研究所のように、研究員寮として使用できる設備もなかった。だから研究員のほとんどはポトスの街中に住居を構え、毎日馬車に揺られて研究所に通っていたのだ。ただ2階の端にある一番広い部屋が休憩室と定められていて、簡素な調理台や数組の寝具が置かれていた。研究に没頭し帰りの馬車に乗り損ねた研究員は、その休憩室で一夜を明かすことになるのだ。
不自由ではあるが、その不自由さがまた楽しかった。懐かしい記憶だ。
そして旧魔法研究所の屋舎には確かに地下室があった。今ビットが目にしている階段は、地下室へと続く下り階段なのだ。しかしその地下室が果たして何に使われていたのか、思い出すことができない。
ビットは温度のない石壁に手のひらを這わし、石造りの階段を下る。黴臭い風が絶えず顔面に吹き付けて、ビットの銀色の髪をふわふわと揺らしていた。
20段に及ぶ階段を下りた先にはまた扉があった。地上の物と同じ質素な木板の扉だ。ビットは円柱状の取っ手に手を掛け考える。この扉の先には何があるのだろう、と。夢はビットの記憶を頼りに形作られている。ならば扉の先に広がる風景もビットの見知った物であるはずなのだ。しかし、言いようのない不安が胸の奥に溜まっていく。扉を開けて先に広がる風景を臨むことが恐ろしい。その場所に立ち入ってはいけない。理由のわからぬ不安がビットを襲うのだ。
―所詮は夢
意を決してビットは扉を開ける。
扉の先は薄暗い空間であった。夢の初めにいた部屋と同様に、床も壁も天井もない。しかし薄暗闇の先に一箇所、明るく光る場所があるのだ。ビットは導かれるようにして光を目指す。近づくにつれて光の中に佇む物体が明らかになる。人の背中だ。黒髪で、白衣をまとった人の背。膝丈の白衣のすそからは、靴を履いた2本の脚が覗いている。
「ゼータさん」
ビットが呟くとその人物は振り返った。やはりそれはゼータであった。今よりも少し長い、耳にかかるほどの長さの黒髪。しかし瞬く黒の瞳はビットのよく知るゼータの物だ。ゼータは近づいて来るビットの姿を黙視すると、あれ、と呟いて首を傾げた。
「ビット、何をしているんですか」
「何って…ゼータさんこそ、ここで何を」
何をしているんですか、続く言葉は跳ねる鼓動に遮られた。手のひらに汗が滲む。脚が震える。口内が乾く。ビットの視線は、ゼータの着る白衣に釘付けとなっていた。なんの変哲もない有り触れたデザインの白衣だ。胸元にポケットの付いた三つボタンの白衣。しかしその布地の大半がどす黒く染まっている。胸元から腹部、そして袖に至るまで、粘性のある液体をぶちまけたような染みが広がっているのだ。
その途端、光の中に石台が現れる。白と灰色の斑模様の石台だ。厚さが10㎝はあろうかという天板の四隅に太い円柱の脚が付いている。天板の大きさは一般的なダイニングテーブルより少し大きい程度、人が寝そべって丁度良い大きさだろうか。豪勢な料理でも並べられていそうな石台の上には、奇妙な物体がのっている。人ではない。しかし大の大人がうずくまった程度の大きさの物体である。目を凝らす。その物体の正体を探るように、石台に近付いてゆく。
「何?私に何か用ですか?」
石台の前にゼータが立ちはだかった。石台上の物体を守るようにして、ビットの胸部を手のひらで押し止める。ゼータの手のひらに温かさは感じない。これが夢であるからだ。ここが夢の中でなければ、その手のひらには人の温かさがあることをビットは知っている。
怪訝な表情のゼータを押しのけて、ビットは石台の上の物体に対面する。初めはそれが何であるか分からなかった。頭部と思しき球体がある。口のような割れ目があり、中には牙のような物が生えている。ビットの視線は球体をなぞる。濁る眼球、乳白色の角。頭部に繋がった胴体はその表皮が全て苔色の鱗で覆われていて、しなやかな四足には鋭い3本の鍵爪。巨大な蜥蜴に似た魔獣だ。種名は分からない。しかしポトスの街の周辺山林でも頻繁に見かける、然して珍しくもない魔獣だ。
ゼータは魔獣を相手に何らかの実験を行っていたのだ。それは構わない。魔法研究所という名の施設であるのだから、魔獣相手の実験は珍しくもない。ゼータの専門とする魔獣の分布調査では魔獣に特殊な器具をつけて個体の動向を追うことがあるし、ビットの専門とするキメラ合成では魔獣から血液や骨髄液を採取することもある。
だがしかし、今目の前にある光景は何だ。なぜ石台上の魔獣は見るも無残な姿で事切れている。力なく開いた口内からは3本の牙が引き抜かれ、石台の隅に落ちている。血に濡れたペンチが傍に置かれているから、恐らく魔獣の牙を力任せに引き抜いたのだ。頭部の鱗は数枚が剥がされて、鱗と同じ苔色の表皮には血が滲んでいる。そして鱗に覆われた四足の1本は根元から切り落とされて、石台の下にころりと転がっていた。縄張り争いで傷ついた魔獣をゼータが保護したのか。そうであって欲しいと思う、しかしすぐにそうではないと思い至る。傷の手当てをしているのなら、石台の上に消毒液や包帯がないのは奇妙だ。そしてゼータの白衣を濡らすどす黒い液体。あれは魔獣の血液だ。傷ついた魔獣を運び込んだだけならばあれだけの血液を浴びることはない。導かれる答えは一つ。ゼータは健康な魔獣を捕らえ地下室に運び込み、自らの手で傷つけたのだ。牙を抜き鱗を剥ぎ、生きたまま手足の1本を切り落とした。
「癒しの魔法がね、使えないかと思ったんですよ」
ゼータが呟く。それは先ほどの問いに対する答えだ。
―ゼータさんこそ、ここで何をしているんですか
「精霊族の中に傷を癒す魔法を使う者がいるじゃないですか。特殊な魔法だから他の種族には使えないとされていますけど、魔力という力の源は一緒なんだから不可能ではないと思うんですよ。魔法とは想像力である、という言葉を知っています?最近出版された魔法書の中で使われていた表現です。良い言葉ですよねぇ。確かに想像力が豊かな人は使える魔法が豊富であるという一説があるんですよ。想像力は数値で測ることが出来ませんし、検証は不可能なんですけれどね」
ゼータは微笑みを浮かべすっかりいつもの調子だ。彼のまとう物が血濡れの白衣でなければ、「ゼータさん、やかましいからちょっと黙って」と軽口を叩きつけるところである。
「癒しの魔法も、想像力次第じゃないかと思うんですよ。骨、血管、筋肉、内臓。傷ついた組織が元々どうであったかを詳細に想像できれば、復元は可能かとも思ったんです。でもやっぱり厳しいんですよねぇ。ほら、魔獣の身体構造は人と全く違うでしょう。人の身体構造を書き表した書物は腐るほどありますけれど、魔獣についてはそこまで詳しい物がないんです。それでも牙とか爪とか、復元の想像しやすい箇所であれば可能かと思ったんですけどね。でも全然駄目なんですよねぇ。駄目元で腕を切り落としてみたけどやっぱり駄目。血管の一本、鱗の一枚でさえも復元できないんです」
魔獣の亡骸を撫で、ゼータは溜息をつく。癒しの魔法など使えるわけがないではないか、ビットは憤慨と思う。世に存在する魔法は大きく3つに分類される。魔族であれば誰でも使えるとされる生活魔法、訓練次第で使えるようになる訓練魔法、そして特定の種族や血族に限り使うことができる特殊魔法だ。傷や病気を癒す癒しの魔法は特殊魔法に分類され、使える者は精霊族の中のさらに一部の種族に限られているという。数多の種族が混在するポトスの街中にも、使える者はほとんどいない。
悪魔族であるゼータが癒しの魔法など使えるはずがない。しかし今のゼータは自らの種族など全くもって気に掛けた様子がなく、未知なる魔法への挑戦に胸膨らませているのだ。
「心臓」
突然、ゼータの右手人差し指がビットの胸をつついた。黒の瞳が愉快げに細められる。
「肺」
指先はビットの腹部へと下りて行く。
「肝臓、脾臓、胃、胆嚢、膵臓、腎臓」
歌うように呟きながらゼータはご機嫌だ。指先で、目には見えぬ臓器を辿ることが楽しくて仕方ない、そう告げるような挙動である。
「人の身体は分かりやすいんですよねぇ。参考文献が山ほどあるから。想像力次第で癒しの魔法を使えるようになるのなら、まず人の身体で試すのが手っ取り早いかとは思うんですよ。でも、使えるかどうか分からない魔法のために他人の身体を傷つけるのは躊躇われますよね。自分の身体なら、とも思いますけれど、痛みで集中力が乱れたら使える魔法も使えなくなります。誰かいれば良いんですけれどね。魔法研究所の仲間内で、快く実験台を引き受けてくれる人」
へその辺りに宛がわれたゼータの指先が熱を帯びる。暖かさも冷たさもない夢の中で、初めて感じる熱らしい熱だ。裂かれる、と咄嗟にビットは思った。腹を裂かれ、冷たい石台の上に引き摺り上げられる。そうして使えるはずもない癒しの魔法の実験台になるのだ。血溜まりの中で痛みに呻き、真¥まともな抵抗すらできずに身体を弄ばれて、やがて死ぬ。
石台上の魔獣同様、無残に事切れた自身の姿を想像し、ビットは悲鳴を上げた。腹に触れるゼータの指先を弾き飛ばし、逃げる。元来た道を辿る。木板の扉だ。扉を抜けて階段を上り、地上の部屋へと戻るのだ。この恐ろしい空間にもう一時でも身を置きたくはなかった。
何かにつまずく。転がるように地面に伏せる。一体何が落ちていたのだと後ろを振り返れば、そこには浅黒い舌を晒した魔獣の頭部があった。胴体はない。一抱えもある魔獣の頭部が打ち捨てられたように地面に転がっている。短い悲鳴を上げ、後ずさる。尻もちをついたまま立ち上がることができない。地面を這う指先に触れるものがある。振り返る。魔獣の腕だ。研ぎ澄まされた鍵爪を備える太い腕が、根元から千切れて落ちている。傷口から溢れ出した血液はいまだ乾かず、腕の周囲にぬるりとした血だまりを作っていた。
萎える脚を立て、ビットは駆ける。首をなくした四足獣の胴体が、腹に穴を開けた小動物の亡骸が、山のように積み上げられた獣の頭部が、なぜ逃げると言わんばかりにビットの目の間に立ちはだかる。しかしどれだけ駆けても目的の扉には近づかない。わずか数十mの場所にあったはずの木板の扉は、今はもう遥か遠くに遠ざかっていた。
つまずく。転ぶ。痛みに耐え膝を立てれば目の前には山がある。遺骸の山だ。身体の一部をなくし、或いは胴体に穴を開けて死に絶えた魔獣の山。一人の研究員の好奇心が作り上げた、見るもおぞましい山だ。
「ビット」
肩を叩かれ、振り返る。穏やかな顔で笑うゼータがいた。興味本位で命を弄ぶ人物の顔とは到底思えない。しかし裏を返せば、幾十幾百の命を奪い取った後でさえ笑えるのだ。この男は。
空気を震わせるような悲鳴が響く。それが自身の口から出たものであると悟った。悲鳴が途切れるよりも早く、ビットの意識はふわりと宙に浮きあがる。意識を失ったわけではない。意識が身体から離れたのだ。ふわふわとしゃぼん玉のように浮き上がりながら、ビットは眼下を眺め下ろす。ゼータの手のひらを逃れようとする自身の身体が、まだ視界の内にあった。
―夢が、覚める
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生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
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僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
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今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!
時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」
すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。
王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。
発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。
国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。
後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。
――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか?
容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。
怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手?
今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。
急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…?
過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。
ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!?
負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。
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主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。
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【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
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