【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔

三崎こはく

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無垢と笑えよサイコパス

ほころび

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 早朝より上機嫌のビットは、鼻歌交じりに食堂へと向かっていた。廊下ですれ違う白衣の研究員に挨拶を述べ、掲示板を前にたむろする学生たちの輪をすり抜ける。魔導大学滞在も6日目を数え、社交性に富んだビットは教養棟内部に広く顔見知りが出来つつあった。名前を呼んで挨拶をする間柄となった研究員は何人もいるし、休み時間に廊下を歩いていれば、学生の方からビットに声を掛けてくることもある。「ビットは見た目の年齢が学生に近いから、話しかけやすいのかしらね。羨ましいわぁ」とはフランシスカの言葉である。
 客室を出てから5度目になる学生との挨拶を交わし、ビットは教養棟2階の食堂へと立ち入った。大抵の学生と研究員は私宅や寮で朝食を済ませてしまうから、朝食時の食堂利用者は多くはない。食堂内には100席を超す座席が設けられているが、埋まっている座席はせいぜい20というところだ。座席に座る人の姿を順に追っていたビットは、窓際の一席で視線を止める。黒や茶の頭髪の人々の中で、唯一異質な色彩を放つ緋色の頭。一人黙々と朝食をつつく人物はレイバックである。周囲の席に他の視察員の姿はない。

 盆の上に主菜、副菜、汁物、果物とバランスの良い器を揃えたビットは、一直線にレイバックの元へと向かった。ビットの接近に気が付いたレイバックが、料理をつつく手を止める。

「レイさん、おはようございます。相席良いですか?」
「おはよう。好きに座ってくれ。どうせ連れはいない」

 レイバックの答えを受けてビットはおや、と思う。ドラキス王国の国王様は随分とご機嫌斜めのようだ。窓の外に広がる黒雲のごとく、今にも雷を打ち鳴らさんばかりである。そしてレイバックの機嫌を損ねる要因となれば、ビットの脳裏に浮かぶ人物は一人だ。

「レイさん、ゼータさんはどうしました?寝坊?」

 ゼータ、の単語にレイバックの肩が揺れる。どうやらビットの予想は正しく、レイバックの不機嫌はゼータに原因があるようだ。
 昨日の朝。玄関口を通りかかったビットは、傘立ての横に座り込むレイバックを発見した。陰鬱な表情のレイバックに事情を聞くに「ゼータが俺の誘いを反故ほごにしてクリスとの逢瀬を選んだ」と言うのである。よくよく話を聞けば「ゼータは魔導人形制作のためにクリスの研究室に向かった」というのが正しい言い方であるとわかるが、気遣いを無駄にされたという事実がレイバックは気に入らないらしい。膝を抱えて傘立ての横にうずくまる姿は、およそ一国の王とは思えぬ有様であった。
 レイバックの不機嫌は、昨日の出来事の延長であると踏んだビットである。ゼータが朝食会場にいない理由は、不機嫌のレイバックと顔を合わせたくないためか、はたまた一日がかりの魔導人形制作に疲れ果て、未だ夢の中にいるためか。あれこれと考えを巡らせるビットであるが、続くレイバックの言葉は少々予想を裏切るものであった。

「ゼータはまだ戻っていない」
「え?」
「何の連絡もないまま一晩中帰らなかった。日を超すまで寝ずに待っていたのに」
「えっと…つまり、ゼータさんはクリスさんの研究室で一晩を…」
「越したんだろうさ。魔導人形の制作に熱中し門限を忘れたのか、作業に疲れ果て寝落ちしたのかはわからんがな」
「ああー…」

 予想外の報告にビットは言葉をなくす。魔法オタクのゼータが、読書や研究に熱中し睡眠を忘れるのはよくある出来事だ。かく言うビットも「興味深い書物を見つけてしまって2晩寝ずに読み込んでしまいました」と笑うゼータに出くわした経験は一度や二度ではない。目の下の隈など見慣れたものである。それも魔法研究所での出来事であれば笑い話で済む話だが、ここは魔導大学だ。そしてさらに悪いことにゼータの傍にはクリスがいる。結婚相手を差し置いて他の人物と一晩を越したなど、レイバックが機嫌を損ねないはずがない。疚しい出来事が一切ないにしてもだ。
 ビットは口を開きかけるが、予想外の報告に返す言葉は見つからない。「あー…うー…」と唸り困り果てるビットを見て、少しばかり平静を取り戻したのか、レイバックは不自然に咳払いを一つした。

「ビット。何も俺は、ゼータとクリスの間にいかがわしい出来事が起こったのではないかと疑っているわけではない。俺はゼータを心から信用しているんだ。大方何としても魔導人形を完成させたいゼータが、クリスに徹夜での作業を請うたのだろう。それは構わないんだ」
「え、そうなんですか?」
「俺が心配しているのはクリスとゼータが揃って規律を破ったことだ。他国の者を研究棟に入れてはならないはずだし、門限だって定められていた。ゼータが規律を破ったことが他の研究員に漏れれば、国家の代表としての示しがつかない。魔導具の共同開発の検討にあたって支障が出る可能性もある。クリスとゼータは作業に熱中するあまり、その事実を忘れているのではないかと不安でな」
「それもそうですねぇ」

 無難な相槌を打ちながら、ビットはレイバックの様子を観察する。両腕は身体の前で組まれ、先ほどまでの不機嫌な形相はどこへやら、何とも清々しい表情を浮かべている。一見すれば冷静かつ的確にことの問題点を指摘しているレイバックであるが、ビットにはその態度が不自然に思われた。「俺はゼータを心から信用しているんだ」とは、ビットに伝えるためではなく自身に言い聞かせるための言葉のようだ。

「この件に対して俺自身が特段の怒りを抱いているわけではない。しかし視察同伴者の立場としては一言物申さねばならんだろう。ゼータの行いは規律を乱す行為であると…」
「レイさん。別に無理しなくても良いですよ」
「む、無理などしていない。思ったままを述べたまでだ」
「今回の一件に関しては完全にゼータさんに非があります。レイさんに何の断りもなく朝帰りだなんて最悪ですよ。ゼータさんとクリスさんの間に疚しい思いが一切ないんだとしても、身の潔白を証明する手段はないんですよ。怒った方が良いです」
「…そうか?しかし不愉快と思われないだろうか。結婚しているとはいえ所詮は他人だろう。離れている間の行動を詮索し文句を付けるなど、粘着質な奴と捉えられる可能性も…」

 はて何だか妙な案配である、とビットは首を傾げた。昨日までのレイバックは、過干渉に対するゼータの評価など微塵も気に掛けていなかった。外出の誘いを反故にされたと、これ見よがしに傘立ての横にうずくまっていたほどである。なぜ今更になって過干渉を気にかけているのかと考えれば、その原因はすぐに想像がついた。相方のイースが、レイバックに対し何らかの勧告を行ったのだ。ここまでのレイバックの言動から推測するに「他人の行動に逐一干渉しようとするなんて粘着質と捉えられかねないわ」というところか。イースはレイバックとゼータの結婚関係を知らないのだから、当然と言えば当然の勧告だ。そしてその勧告はレイバックの心に見事に刺さり込んだようだ。レイバックが態度を改めたところを見るに、イースの勧告は正しかったのだろうが、ゼータの朝帰りを聞いた後ではその評価も変わってくる。

「レイさん。結婚は信用で成り立っているんです。結婚生活20年目に突入する魔法研究所の研究員が言っていました。大事なのは不貞行為を働かないことではなくて、不貞行為を疑わせる行動をしないことなんですって。その人は外出となれば行き先と目的を隠さず家族に伝えるし、どのような理由があっても異性と2人きりで会うことはしないと言っていましたよ。だから今回、レイさんに不安を抱かせたゼータさんの行いは最低です。もう駄目駄目。厳罰に処した方が良いです」

 厳罰、の言葉にレイバックは喉を鳴らす。

「どの程度の量刑を化すのが適切だと思う」
「そうですねぇ…僕なら生尻叩き20回の刑の処します」

 成人男性が生尻を晒された挙句、その尻を平手で殴打されるとなればそれは確かに厳罰だ。死刑に等しい量刑である。執行の瞬間を想像したレイバックは俯いて肩を震わせる。ビットの披露する不慣れな平手の素振りが、一層笑いを誘った。
 しばらく笑いの発作に襲われていたレイバックは、発作が収まると皿に残る朝食を掻き込んだ。ご馳走様、と一礼をして盆を手に立ち上がる。

「悪いが俺は先に客室に戻る。ゼータが戻っているかもしれないからな」
「どうぞどうぞ。僕の事はお気になさらず。処罰の様子だけ後で教えてください」

 ビットとの会話で随分と身心の軽くなった様子のレイバックは、軽やかな笑いを残して食堂を後にした。

***

 ゼータは講義開始時刻前には客室に戻る。そう予想していたレイバックであるが、予想に違いいつまで経っても客室の扉が開くことはない。何度も時計を見上げ、焦れるに焦れたレイバックは講義開始時刻の20分も前に客室を出た。もしかしたらゼータはクリスと共に教養棟にやって来て、客室に寄らず直接講義室に向かうつもりかもしれない。「クリスは幽霊寮生である」とのデューの言葉を聞くに、研究室には最低限の生活環境が備えられていると想像がつく。徹夜で魔導人形の制作に当たり、クリスの研究室で呑気にシャワーを浴び、果ては中央食堂で優雅な朝食を済ませて講義に臨むつもりなのかもしれない。そう思えばレイバックの胸の内には再び苛々が募る。これは生尻叩き20回の処罰は生ぬるい。30回だ。

 文具とメモ紙を手に講義室へと向かったレイバックは、窓際の一席に腰掛けて皆の到着を待つ。人間は魔族に比べ時間に正確であると言われているが、流石に講義開始20分前の今、講義室に人の姿はない。レイバックは椅子を窓際に寄せ、窓の外に魔導大学の景色を臨んだ。昨日に引き続き空は曇天模様で、メインストリートを歩く人々の中には傘をぶら下げる者も多い。等間隔に植えられる街路樹をそよ風が揺らしていた。

 ぼんやりと景色を眺めるレイバックの視界に、見知った白衣姿が飛び込んでくる。白髪交じりの頭に小柄の体躯、使い古された革の鞄を手に歩く人物はルーメンだ。私服姿の学生に混じり歩くルーメンは、メインストリートを途中で折れて教養棟の玄関口へと向かってくる。首都リモラの街中に住居を構え、家族と共に暮らすルーメンは、連日教養棟へと到着時間が最も早い。すでに成人した息子夫婦と生活を共にしており、朝は息子と共に家を出るのだとルーメンは語っていた。息子夫婦には間もなく10歳を迎える娘がおり、世では「3世代同居」と呼ばれるらしい。血の繋がりに疎い魔族にはなじまない言葉である。
 ルーメンが玄関口の陰に消えたとき、レイバックの視界には再び見知った姿が現れる。花柄の傘を肘に掛け、のんびりと通りを歩く女性はイースだ。茶色の髪を背中に垂らしたイースは、付近を歩く学生と頻繁に挨拶を交わしている。年頃の息子2人を育てるイースにとっては、20歳そこそこの学生など子どもに等しい存在なのだ。学生の側からしても面倒見の良いイースは頼れる存在。研究員になってから母になる者はいても、入学当初から母という者は希少だ。温厚ながらはっきりとした物言いをするイースは、学生達の人気者なのである。

「あ」

 イースの姿が教養棟の玄関口に消えたところで、レイバックの視界の端には目立つ金色の頭が現れた。周囲の人々よりも頭一つ分飛びぬけた長身、周囲の学生が息を呑む優美な顔立ち、眩しく輝く金の髪の持ち主。クリスだ。レイバックは窓ガラスに鼻先を付け、クリスの周囲に視線を走らせる。しかし何度視線を巡らせても、人波の中に待ち望む人物の姿は見受けられない。少し離れた場所を歩いているかもしれないと辛抱強くゼータの姿を探していたレイバックであるが、クリスの姿が玄関口に消えたところで諦めた。手荷物は机の上に残したままで、講義室の出入り口へと向かう。丁度そのとき、ルーメンとイースが揃って講義室に入ってきた。

「あらレイさん、おはよう。今日は随分早いのね」
「そのつもりだったが忘れ物をしたようだ。講義開始までには戻る」

 おはようの言葉すらなく講義室を出ていくレイバックを、横並びのルーメンとイースは不思議そうに見送った。

 レイバックは駆け足で1階いバックは自然と人の目を集める。形黒色である緋髪を有しているのだからなおさらだ。バックは自然と人の目を集める。形黒色である緋髪を有しているのだからなおさらだ。無数の視線を受けながら階段を駆け下りたレイバックは、その階段の下り口でクリスと鉢合わせた。突然視界に飛び込んできた警告色に、驚いたクリスははたと歩みを止める。

「レイさん、どうしました。そんなに急いで」
「クリス、ゼータはどうした」
「体調不良で休みですよ。今は僕の研究室で寝ています」
「体調不良?冗談を抜かすなよ。あのゼータが多少のことで魔導具の講義を休むはずがないだろう」

 怒気を孕む声に、クリスは言葉を詰まらせる。ただならぬ雰囲気で相対する魔族の客人と魔導大学の王子様。周囲をすり抜ける学生達が物珍しそうに2人を眺めるものだから、クリスは居心地が悪いとばかりに身を縮こまらせた。すみません、と小さな声で謝罪を済ませ、レイバックに向けて手招きをする。

 手招きに呼ばれ立ち入った先は、階段横の小さな空間であった。積み上げられた段ボール箱と掃除用具入れ、そして壁に立てかけられた数脚の椅子。物置さながらの空間は、内緒話をするには持ってこいだ。

「嘘を言ってすみません。ゼータは怪我でお休みです。昨日、僕の研究室で脚に怪我をしてしまって。命に障るような怪我ではありませんが、移動に難儀するんです。傷が化膿する可能性がないとも言えませんから、今日一日は大事を取った方が良いと判断しました」
「怪我?それならそうと言えば良いじゃないか。隠す必要があるのか」
「…怪我をしたと言えば、怪我の理由を聞かれるでしょう。説明が少々面倒なんです」
「ほう。怪我の理由は?」

 おうむ返しの問いにクリスは口を噤む。冗談交じりとも捉えられる掛け合いであるが、レイバックの表情には激情が潜んでいる。その表情を見て、真実を語らぬことがどれ程の罪であるかをクリスは自然と理解した。気さくな官吏はあくまで仮面、真の姿は平和のために許多の首を掲げた神獣の王だ。クリスの顔には諦めの色が滲む。

「ゼータの怪我の理由については正直にお話しします。でもその前に一つ質問に答えていただきたいんです」
「何だ」
「レイさんとゼータの関係です。ただの友人同士と言うには親密過ぎやしませんか」
「そのことか。ゼータとは俺が王となる以前からの付き合いでな。建国の際にもいくらか力を借りているし、未だに頻繁に仕事の愚痴に付き合ってもらう。気心の知れた唯一無二の親友と言うところだろうか」
「親友…ですか」

 クリスは釈然としない表情である。しかしそれ以上の疑問を口にすることはない。

「それで、ゼータの怪我の理由は」
「魔獣用の罠紐に掛かったんです。大きい声では言えませんが、実は僕、研究室で大型の魔獣を飼っているんです。僕が研究で使うためではなく、飼育係を請け負っているだけなんですけれどね。魔獣が逃げ出したら一大事ですから、部屋の出入り口に罠を仕掛けていたんです。ゼータはその罠に掛かって脚に傷を負いました」
「罠がある、ということは事前にゼータに伝えていたのか?」
「いえ、魔獣がいること自体伝えていませんでしたよ。魔獣飼育の件は絶対に他言するなと言われているんです。いくら研究のためとはいえ、人の手の及ばない強大な魔獣を飼っているだなんて、首都リモラの民に知れれば暴動を引き起こしかねません。ゼータには、見られたくない物があるから余計な探索はしないようにと伝えていました。でも僕が研究室を離れた隙に、忠告を無視して魔獣飼育部屋に立ち入ったんですよ。それで案の定、出入り口の罠紐に掛かって脚に怪我を…という経緯です」

 今度はレイバックが納得した、と頷く番であった。大方ゼータは唸り声や臭いで魔獣の存在に気付き、その姿を一目見なければ気が済まなかったというところか。博物館ではペガサスの標本に10分張り付き続けた「魔」オタクのゼータだ。珍しい魔獣に相見えるやもしれぬとの好奇心に駆られ、クリスの忠告など頭から抜け落ちていたのだろう。
 語られる経緯が真実であるならば、レイバックにクリスを責める理由はない。明らかになったゼータの軽率な行動に、レイバックは参ったとばかりに頬を掻く。

「ゼータには俺からも注意を促しておく。余計な行動は慎むようにと。今日のうちに教養棟に戻れそうか?」
「どうでしょうね。朝寝顔を見た限り、発熱はしていないようでしたけれど。でも怪我の具合が良いからといって、すんなり解放とはいきませんよ。ゼータには一方的に秘密を知られた状態なんです。僕だって長年を掛けて築き上げた研究員の地位は惜しい。解放にあたり多少の条件を飲んでもらう必要はあるかな、とは思っています」
「…その条件とは」
「別に金銭を要求したり、無理難題を押し付けるつもりはありませんよ。ただ絶対にゼータが他言しないという保証が欲しいだけです」

 そのとき教養棟の内部に鐘の音が響き渡った。講義開始時刻を告げる鐘だ。ふと気が付けば、賑やかだった階段付近に学生の姿はない。視察員の講義開始時刻は学生と同じ午前9時。今日はルーメンの指導の元、共同開発品目の一つである丸薬の作成にあたる予定である。

「レイさん、行きましょう。ルーメンさんは遅刻には厳しい人なんです。鐘が鳴り終わる前には講義室に入らないと」
「それは不味いな」

 カバンを抱え階段を駆け上がるクリスを、レイバックは追う。視察員に宛がわれた講義室は2階の端だ。距離はあるが、駆け足ならば鐘が鳴り終わるまでに十分間に合う。廊下に並ぶ扉の隙間からは、講義の開始を待つ学生達の賑やかな声が漏れ出していた。学生達の声に混じり、レイバックの耳には疾駆しっくに弾むクリスの声が届く。

「僕、ルーメンさんにゼータ欠席の連絡をしたら、すぐ研究室に帰ります。朝食は置いてきましたけれど、慣れない研究室で一人ぼっちというのも可哀そうですから。伝言があれば伝えますよ」
「いや…必要ない」

 講義室を目前にして、レイバックの頭には一抹の不安が過る。今レイバックとゼータの地位は嘘で塗り固められている。王の地位を隠しロシャ王国の中枢機関に潜り込んだレイバックと、ルナの姿を隠したままクリスの相方となったゼータ。この先クリスとの間で情報漏洩を防ぐための何らかの交渉が行われるのならば、虚偽を述べている側が圧倒的に不利となる。クリスと過ごすうちに、ゼータがうっかり王妃の地位を漏らしてしまわぬという保証もない。

 全ての嘘が白日の下に晒されたとき、果たしてどうなるのだろう。クリスはドラキス王国にとっての敵ではないが、国家という括りを考えるのなら味方には成り得ない。
 極秘研究の一部を垣間見られた失態を、一体どう処理するつもりなのか。
 僅かな綻びを見逃すほどクリスは愚かではない。
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