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無垢と笑えよサイコパス
魔導大学
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魔導大学滞在2日目、ドラキス王国からの視察員である5人はそれぞれ相方を伴ってメインストリートを歩いていた。今日は丸一日が魔導大学内の散策に充てられている。空はよく晴れているが空気にはまだ冷たさの残る時間、風よけの上着を羽織る者の姿も多い。
「ゼータ、昨晩はよく眠れた?」
「それが図書館で借りた書物に夢中になってしまって。読み終わった後も頭が冴えて、あまり眠れなかったんです」
「眠そうだな、と思ったらやっぱりそういうことか」
クリスは声を立てて笑う。つられて笑うゼータの声を聞き、前を歩くレイバックがちらと振り返る。相方であるイースと会話を楽しみながらも、後ろを歩くゼータとクリスの様子を気にしているのだ。
「クリス。今、私達はどこに向かっているんですか?」
「魔獣学部だよ。魔導大学の敷地北側には牧草地が広がって、研究用の魔獣が飼育されているんだ」
「…まさか、魔獣が放し飼いにされているんですか?」
「そういうこと」
「逃げないんですか?魔法研究所でも魔獣とキメラを飼育していますけれど、皆檻の中ですよ」
「どうして逃げないかは、行けばわかるよ」
クリスの言葉通り、インストリートを北側に抜け少し歩くと広大な牧草地が見えてきた。牧草地の中にぽつぽつと建物が建っており、一行はその内のひときわ大きな平屋建ての建物へと向かう。建物の一面には10にも及ぶ鉄柵の扉が取り付けられており、今その扉は全て開け放たれていた。ポトス城の南部にある、騎乗用の魔獣の厩舎によく似た造りだ。
「魔獣がいる」
感嘆の声を上げた者は、先頭を歩くビットであった。まだ遠目であるために正確な種はわからない。しかし厩舎と思われる建物の周りは牧草地となっており、青々とした牧草の上を20に近い魔獣が駆け回っていた。厩舎脇に置かれた餌箱から餌を食べる魔獣もいれば、のんびりと青草を食む魔獣もいる。
「メレンちゃん。何でここの魔獣は逃げ出さないの?」
ビットは横を歩く相方の女性に尋ねた。メレンと呼ばれたその女性は、頬の周りで黒灰色の髪を跳ね回らせた愛らしい顔立ちをしている。ビットの問いにメレンは歩みを止め、青々と茂る足元の牧草を指さした。
「牧草地をぐるりと囲うように薬品を撒いているんです。魔獣の嫌う匂いを発する薬品です。放牧されている魔獣は皆鼻が良い子ばかりですから、薬を撒いた場所には絶対に近づかないんです」
「雨が降っても大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。薬品の効果を正確に言えば、牧草が土壌から薬品を吸収して魔獣の嫌いな匂いを放つようになるんです。牧草が枯れない限りは効果が継続します」
「便利だねぇ…今までに魔獣が逃げ出したことはない?」
「ないですよ。毎月1日に牧草地に薬品を撒くんですけれど、間違いがないように研究室の者総出で作業に当たるんです。薬品の希釈や撒く場所を間違えて魔獣が逃げ出したとなっては、魔獣学部の面目が丸潰れですから」
メレンの説明を聞きながら、一行は牧草地を横切り厩舎へと向かう。1頭の魔獣がメレンの横を通り過ぎ牧草地の端まで駆けていくが、ある地点で弾かれたように足を止めた。うろうろその場を歩き回り、やがて厩舎側へと引き返してくる。魔獣が足を止めた場所にメレンの言う薬品が撒かれているのだ。人の鼻にはわからない「匂いの壁」がそこにある。
「その薬品、キメラにも利くかなぁ」
「鼻の利く魔獣がかけ合わされているなら効くと思いますよ。ただ大型の魔獣や凶暴な魔獣には効果がないんです。匂いくらいじゃ怯まないんですよ。今撒いている薬品だと、子豚サイズの魔獣の足を止めるのが限界ですね。薬品の濃度を高めると牧草が枯れてしまいますし。牧草に悪影響を及ぼさずに薬品の効果を高めるというのが、今ある最優先課題です」
「そうなんだ。ねぇひょっとしてメレンちゃんは魔獣学部なの?」
「そうですよ。でも専門は魔獣育種学ですから、薬品を扱う魔獣管理室とは別の研究室に所属しています。魔獣学部に在籍する研究員は40名ほどですから、魔獣管理室にも知り合いはいますけどね」
「マジュウイクシュガク?何だか難しそうだねぇ」
首を傾げながらもビットは嬉しそうだ。メレンが自身と同じ、魔獣を扱う研究室に属していると知り嬉しいのだ。好意を抱く者と仲を深めるには、共通の話題を持つことが最も手っ取り早い。
厩舎脇で足を止めた一行はその場で放牧地を駆け回る魔獣を眺め、ある者は厩舎とは思えぬ綺麗な内装の建物内を見学し、10分ほどの滞在の後に牧草地を後にした。
***
牧草地を離れた一行は魔導大学の敷地西側へと向かう方角を変える。悠々と駆け回る魔獣を右手に臨みながら歩く道は煉瓦調の石畳だ。右に左にとうねりながら、草木茂る和やかな風景の中を進む。耳を澄ませば涼やかな川のせせらぎが聴こえるから、近くに小川が流れているようだ。観光客と思しき団体と数度すれ違いながら一行は進む。
「あそこに見えるのが西門です。門と言っても扉もなければ見張りもいないんですけどね。魔導大学の西側は住宅地になっているから、学生や研究員が西門を使うことって滅多にないんですよ」
そう説明するのは、フランシスカの相方であるデューという男性だ。年齢は20歳頃、この場にいる5人の研究員の中では最も若い。長めの黒髪は一束一束が丁寧に整髪料で固められ、耳には銀のピアス。白衣の下に着る私服は素人目に見ても洒落ている。
「それで、西門の手前に見えるのが研究員寮です。隣が学生寮。魔導大学在籍の単身者は寮生活を送る者が多いです」
「デューは研究員寮に住んでいるのかしら?」
尋ねる者はデューの隣を歩くフランシスカだ。今日の彼女の服装は鮮やかな赤のシャツワンピース、気ままな散策だからと白衣はまとっていない。艶やかな黒髪がワンピースの背に流れ、紅を引かれた唇が人目を惹く。
「その通りですよ、フランシスカさん。我々の中ではクリスさんも研究員寮住まいです。研究に没頭して滅多に帰ってこない幽霊寮生ですけどね」
皆の視線が一斉にクリスに向く。幽霊寮生と呼ばれたクリスは苦笑いだ。
「幽霊寮生って…週に2度は帰っているじゃない」
「クリスさん、ご存じですか。寮って週に7回帰る場所なんですよ。研究員寮の一部女性が嘆いていますよ。王子の御尊顔を拝見できないと日々が満ち足りないと言って」
「御尊顔って、勘弁してよ」
「せめて休校日くらいはのんびり寮に滞在してくださいよ。顔の系統が近いという理由だけで、頻繁にクリスさんに伝言を頼まれる俺の身にもなってください」
「…見当はしておくよ」
クリスとデューのやり取りに、肩を震わせる者はビットである。笑いを堪える奇妙奇天烈な表情はゼータに向く。「魔法研究所にもいますよね。研究に没頭して生活棟に帰ってこない変人が」ビットの表情はそう伝えている。
研究員寮と学生寮を横目に見ながら一行は歩みを進めた。運動場と思われる敷地の脇を抜け、木々の生い茂る小道を進む。最先端の研究を行う魔導大学の内部とは到底思えぬ風景である。そよ風抜ける小道を進む一行の目の前を茶色毛並みの小動物が横断する。猫か、狸か、はたまた狐か。話し合ううちに木々茂る小道を抜け、見知った建物のある道に辿り着く。4階建ての灰色の建物。レイバックがああ、と声を上げる。
「あれは教養棟か」
「そうよ。敷地の北西側をぐるりと回ってきたの。結構歩いたけどまだまだ先は長いわよ。これからが本番というくらいね。魔導大学の研究棟は敷地の南側に集中しているから」
「研究棟は全部でいくつあるんだ?」
「いくつかしらねぇ。一つの学部で複数の研究棟を所有しているから正確な数は私も知らないわ」
「なら学部の数は?」
「理系学部が魔獣学部、農学部、工学部、理学部、医学部、薬学部、歯学部の7つ。文系学部が教育学部、法学部、経済学部、文学部の4つね」
指折り数えるイースに向けて、前方よりデューの声が飛ぶ。
「イースさん。海獣学部を忘れていますよ」
「あら、本当。ごめんなさいね。ロシャ王国南方のダクトという都市に海獣学部があるわ。首都リモラには海がないから、海獣学部だけ海沿いの街ダクトに研究所を構えているの」
一行は教養棟の真横を通り過ぎて、今度はメインストリートを南へと下っていく。魔導大学の敷地を南北に貫くメインストリートは全長が1.2㎞あり、歩けばかなりの距離だ。途中の売店で各々が好みの飲み物を購入し、一行は人通りの多いメインストリートを進む。
「右手に見えるのが工学部棟です。魔導大学内では一番研究員数の多い学部です」
デューは指を指すのは、メインストリートの右手側に位置する6階建ての建物だ。大きく目立つその建物の周囲には、平屋もしくは2階建ての小さな建物が散らばっている。
「それで、左手奥側に見えるのが医学部と薬学部ですね。医学部棟には最先端の医療を扱う診療所も備えられていますから、首都リモラの人々も訪れる機会の多い場所です」
「研究施設内に診療所があるの?ドラキス王国では考えられないわね」
「魔族はあまり病気には罹らないんですよね?医学部の友人に聞いたことがあります。人間は健常者であっても何だかんだ診療所にかかりますからね。僕も先月腕に謎の発疹が現れて、受診を余儀なくされました。頻繁に怪我病気と向き合わなければならない人間にとっては、最先端の治療が受けられる診療所が傍にあるというのはとてもありがたいんです」
「ふぅん。人間も大変なのね。結局デューの発疹の原因は何だったの?」
「さぁ、原因はわからず仕舞いです。処方された軟膏を塗ったら治りました」
フランシスカとデューの会話に耳を澄ませながら、一行はメインストリートを歩く。
その内にメインストリートの右手に背の高い石造りの建物が現れた。魔導大学内の建物は白や灰色を基調とした外見であるのに対し、その建物は煉瓦造りだ。積み上げられた煉瓦は所々が欠け年季の入った建物であることが伺える。ポトス城の王宮を思わせる巨大な玄関口の前で、先頭を歩いていたクリスが足を止めた。皆はクリスに倣い足を止め、荘厳と佇む建物を見上げる。
「ここは博物館です。ロシャ王国を代表する博物館ですから、魔導大学を訪れる観光客は必ずと言って良いほど立ち寄る場所です。お昼まであまり時間がないから全ての展示を見ることはできないと思いますが、ひとまず入りましょう。見切れなかった部分は午後に回せば良いですから」
先頭を切って玄関口をくぐるクリスに皆が続く。ゼータは玄関口に立つ警備員に呼び止められぬようにとクリスの背にぴたりと張り付いた。レイバックや他の視察員も各々相方の横に並び、どっしりと構えた警備員の目前を通り過ぎる。
最後の一組、ビットとメレンのペアが警備員の前を通り過ぎたときに、玄関口の真横に据えられた事務室から一人の若い男性が飛び出してきた。博物館職員の身分証を首から下げた男性は、列の先頭に立つクリスを呼び止める。
「すみません。ドラキス王国からの視察員御一行様ですよね?先ほどセージ学長様がいらっしゃいまして、言伝を預かっております」
「セージ学長から?何でしょう」
「視察員の皆様の外出許可が下りた、と。リモラ駅内部であれば自由に出歩いて構わないとのことですよ。折角の機会ですから上手く視察の予定を調整して、ぜひリモラ駅を訪れて欲しいと仰っておりました」
「リモラ駅…」
リモラ駅は魔導大学の南部に位置しており、ロシャ王国一人の集まる場所だ。50に近い馬車停には昼夜問わず常に馬車が出入りし、首都リモラとロシャ王国方々の集落を結ぶ。馬車停には巨大な商業施設が併設し、服飾品や日用品、書物、玩具、何を買うにおいても不自由することはない。色彩豊かなのれんが並ぶ飲食店街に足を運べば、ロシャ王国各地の地方料理に舌鼓を打つことだってできるのだ。
「魔族を見慣れぬ首都リモラの人々に恐怖と混乱を与えぬために、視察員の者達を魔導大学内から連れ出すことのないよう」とはクリスを含む研究員5人が先にセージに言われた言葉である。しかしその言葉を覆すがごとくセージは国家の上層部を相手に視察員の外出申請を行い、それが認可された。2週間の視察予定にリモラ駅が含まれていないことを考えれば、セージとしても予定外の認可であったのかもしれない。予定外であるのは視察員の相方を任された研究員も同じで、皆が慌ててクリスの元に集う。
「どうしましょう。イースさん、2週間のうちにリモラ駅の視察をねじ込める日がありました?」
「いえ、明日からは予定が詰まっているわ。1、2時間程度なら時間の融通は利くかもしれないけれど」
「リモラ駅に行くのに2時間じゃ寂しいですよ。折角なら飲食店街で食事も取れた方が良いし。俺、フランシスカさんと服飾店街も見たいなぁ」
「私もカシワギ殿と小間物屋を見て回りたいところですな。明後日の農場視察の暁に、時間の融通はできませぬか?」
「農場視察は魔導具の共同開発に関わる重大案件ですよ。農場は広いし見るべき物も多いです。視察内容を圧縮することは難しいと思います」
額を突き合わせ議論を重ねる5人の研究員を、傍らに立つ視察員は黙って見つめていた。博物館の出入り口をくぐる観光客の団体が、不自然に円陣を組む研究員を何事だと一瞥する。3組目となる団体が出入口を通り過ぎて行ったときに、ようやく円陣は解けクリスが視察員の元へとやって来た。
「すみません。突然ですが今後の予定を変更します。セージ学長がリモラ駅の視察申請を行ってくれていたようなので、そちらの視察を先に済ませてしまいましょう。視察と言っても堅苦しいことはありません。様々な店が軒を連ねておりますから、どうぞ好きな土産物を買っていらしてください」
クリスが説明をする脇では、フランシスカに身を寄せたデューが「俺、フランシスカさんに素敵なリモラ風の服を見繕います」とうきうき顔である。その横ではメレンとデートができると悟ったビットが、歓喜の表情を浮かべていた。
「今から自由行動としますので、相方の研究員と相談して今後の予定を決めてください。すぐにリモラ駅に赴いて飲食店街で昼食を取っても構いませんよ。手っ取り早く食事を済ませたい方は、博物館の向かいにある中央食堂を使うのが良いでしょう。もちろん、博物館に興味があればこちらに滞在しても構いません。ただし門限の17時には教養棟にお戻りください」
では、解散。クリスの言葉を皮切りに、皆は思い思いに動き出す。フランシスカと相方デュー、ビットと相方メレンはすぐさま博物館を出て行った。リモラ駅の飲食店街で食事を取り、午後は気ままに買い物を楽しむつもりなのだ。カシワギと相方ルーメンはしばし相談の後に、中央食堂で昼食を取ってからリモラ駅に向かうということで話を付けたようだ。白髪交じりの2人は「揃いの帽子でも買いましょうか」と笑いながら博物館を後にする。
博物館の出入り口にはレイバックと相方イース、ゼータと相方クリスの4人が残された。イースはリモラ駅に行きましょうとレイバックの腕を揺するが、当のレイバックは腕を組んだままその場を動かない。突然の自由行動に不機嫌の滲ませる緋色の瞳は、一心にゼータの様子を伺っている。
「ゼータはどうする?リモラ駅に行く?」
「私は博物館を見たいです。買い物には興味がありませんし」
「そう?でも今日を逃すとリモラ駅には行けないよ。博物館は今後視察の予定を調整すれば観覧できる可能性はあるけど」
「でも確実に見られる予定はないですよね?リモラ駅に行けなくても後悔はしないですけど、博物館を見逃すと帰国後絶対に後悔します」
「じゃあ中央食堂で早めの昼食を取ってからゆっくり観覧にしようか。今ならまだ食堂も混んでいないからすぐに食べられるよ。あ、でも僕、昼時は一度研究室に戻らないといけないんだ。申し訳ないけど一人で食べていて。僕のことは気にしないで良いから」
教養棟の外部で相方と離れ一人になっても良いものだろうか。不安を覚えるゼータの肩を突如として掴む手がある。鼻息荒いレイバックの左手が、ゼータの肩をひしと掴んでいた。
「ゼータ、俺と一緒に昼食を取るぞ」
「あれ?レイはリモラ駅に行かないんですか?」
「行かない。俺も博物館を見たい」
レイバックの宣言に、イースが短い悲鳴を上げた。なぜ心躍るリモラ駅での自由時間を無下にして、退屈極まりない博物館の観覧を選ぶのだ。イースの表情はそう言いたげだ。
「レイさん、本当に良いの?今日しかリモラ駅に行けないのよ?」
「良い。俺も買い物には興味がないから」
「そう…」
リモラ駅に行く気満々であったイースは不満げだ。しかしレイバックが博物館を見たいという以上、イースが単身リモラ駅に赴くわけにはいかない。
「クリス、昼食はレイとイースと食べます。食べ終わったら博物館前で待っていますね」
「わかった。じゃあまた後で」
小走りで去って行くクリスを見送り、残された3人も中央食堂に向かうべく博物館を後にした。
「ゼータ、昨晩はよく眠れた?」
「それが図書館で借りた書物に夢中になってしまって。読み終わった後も頭が冴えて、あまり眠れなかったんです」
「眠そうだな、と思ったらやっぱりそういうことか」
クリスは声を立てて笑う。つられて笑うゼータの声を聞き、前を歩くレイバックがちらと振り返る。相方であるイースと会話を楽しみながらも、後ろを歩くゼータとクリスの様子を気にしているのだ。
「クリス。今、私達はどこに向かっているんですか?」
「魔獣学部だよ。魔導大学の敷地北側には牧草地が広がって、研究用の魔獣が飼育されているんだ」
「…まさか、魔獣が放し飼いにされているんですか?」
「そういうこと」
「逃げないんですか?魔法研究所でも魔獣とキメラを飼育していますけれど、皆檻の中ですよ」
「どうして逃げないかは、行けばわかるよ」
クリスの言葉通り、インストリートを北側に抜け少し歩くと広大な牧草地が見えてきた。牧草地の中にぽつぽつと建物が建っており、一行はその内のひときわ大きな平屋建ての建物へと向かう。建物の一面には10にも及ぶ鉄柵の扉が取り付けられており、今その扉は全て開け放たれていた。ポトス城の南部にある、騎乗用の魔獣の厩舎によく似た造りだ。
「魔獣がいる」
感嘆の声を上げた者は、先頭を歩くビットであった。まだ遠目であるために正確な種はわからない。しかし厩舎と思われる建物の周りは牧草地となっており、青々とした牧草の上を20に近い魔獣が駆け回っていた。厩舎脇に置かれた餌箱から餌を食べる魔獣もいれば、のんびりと青草を食む魔獣もいる。
「メレンちゃん。何でここの魔獣は逃げ出さないの?」
ビットは横を歩く相方の女性に尋ねた。メレンと呼ばれたその女性は、頬の周りで黒灰色の髪を跳ね回らせた愛らしい顔立ちをしている。ビットの問いにメレンは歩みを止め、青々と茂る足元の牧草を指さした。
「牧草地をぐるりと囲うように薬品を撒いているんです。魔獣の嫌う匂いを発する薬品です。放牧されている魔獣は皆鼻が良い子ばかりですから、薬を撒いた場所には絶対に近づかないんです」
「雨が降っても大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。薬品の効果を正確に言えば、牧草が土壌から薬品を吸収して魔獣の嫌いな匂いを放つようになるんです。牧草が枯れない限りは効果が継続します」
「便利だねぇ…今までに魔獣が逃げ出したことはない?」
「ないですよ。毎月1日に牧草地に薬品を撒くんですけれど、間違いがないように研究室の者総出で作業に当たるんです。薬品の希釈や撒く場所を間違えて魔獣が逃げ出したとなっては、魔獣学部の面目が丸潰れですから」
メレンの説明を聞きながら、一行は牧草地を横切り厩舎へと向かう。1頭の魔獣がメレンの横を通り過ぎ牧草地の端まで駆けていくが、ある地点で弾かれたように足を止めた。うろうろその場を歩き回り、やがて厩舎側へと引き返してくる。魔獣が足を止めた場所にメレンの言う薬品が撒かれているのだ。人の鼻にはわからない「匂いの壁」がそこにある。
「その薬品、キメラにも利くかなぁ」
「鼻の利く魔獣がかけ合わされているなら効くと思いますよ。ただ大型の魔獣や凶暴な魔獣には効果がないんです。匂いくらいじゃ怯まないんですよ。今撒いている薬品だと、子豚サイズの魔獣の足を止めるのが限界ですね。薬品の濃度を高めると牧草が枯れてしまいますし。牧草に悪影響を及ぼさずに薬品の効果を高めるというのが、今ある最優先課題です」
「そうなんだ。ねぇひょっとしてメレンちゃんは魔獣学部なの?」
「そうですよ。でも専門は魔獣育種学ですから、薬品を扱う魔獣管理室とは別の研究室に所属しています。魔獣学部に在籍する研究員は40名ほどですから、魔獣管理室にも知り合いはいますけどね」
「マジュウイクシュガク?何だか難しそうだねぇ」
首を傾げながらもビットは嬉しそうだ。メレンが自身と同じ、魔獣を扱う研究室に属していると知り嬉しいのだ。好意を抱く者と仲を深めるには、共通の話題を持つことが最も手っ取り早い。
厩舎脇で足を止めた一行はその場で放牧地を駆け回る魔獣を眺め、ある者は厩舎とは思えぬ綺麗な内装の建物内を見学し、10分ほどの滞在の後に牧草地を後にした。
***
牧草地を離れた一行は魔導大学の敷地西側へと向かう方角を変える。悠々と駆け回る魔獣を右手に臨みながら歩く道は煉瓦調の石畳だ。右に左にとうねりながら、草木茂る和やかな風景の中を進む。耳を澄ませば涼やかな川のせせらぎが聴こえるから、近くに小川が流れているようだ。観光客と思しき団体と数度すれ違いながら一行は進む。
「あそこに見えるのが西門です。門と言っても扉もなければ見張りもいないんですけどね。魔導大学の西側は住宅地になっているから、学生や研究員が西門を使うことって滅多にないんですよ」
そう説明するのは、フランシスカの相方であるデューという男性だ。年齢は20歳頃、この場にいる5人の研究員の中では最も若い。長めの黒髪は一束一束が丁寧に整髪料で固められ、耳には銀のピアス。白衣の下に着る私服は素人目に見ても洒落ている。
「それで、西門の手前に見えるのが研究員寮です。隣が学生寮。魔導大学在籍の単身者は寮生活を送る者が多いです」
「デューは研究員寮に住んでいるのかしら?」
尋ねる者はデューの隣を歩くフランシスカだ。今日の彼女の服装は鮮やかな赤のシャツワンピース、気ままな散策だからと白衣はまとっていない。艶やかな黒髪がワンピースの背に流れ、紅を引かれた唇が人目を惹く。
「その通りですよ、フランシスカさん。我々の中ではクリスさんも研究員寮住まいです。研究に没頭して滅多に帰ってこない幽霊寮生ですけどね」
皆の視線が一斉にクリスに向く。幽霊寮生と呼ばれたクリスは苦笑いだ。
「幽霊寮生って…週に2度は帰っているじゃない」
「クリスさん、ご存じですか。寮って週に7回帰る場所なんですよ。研究員寮の一部女性が嘆いていますよ。王子の御尊顔を拝見できないと日々が満ち足りないと言って」
「御尊顔って、勘弁してよ」
「せめて休校日くらいはのんびり寮に滞在してくださいよ。顔の系統が近いという理由だけで、頻繁にクリスさんに伝言を頼まれる俺の身にもなってください」
「…見当はしておくよ」
クリスとデューのやり取りに、肩を震わせる者はビットである。笑いを堪える奇妙奇天烈な表情はゼータに向く。「魔法研究所にもいますよね。研究に没頭して生活棟に帰ってこない変人が」ビットの表情はそう伝えている。
研究員寮と学生寮を横目に見ながら一行は歩みを進めた。運動場と思われる敷地の脇を抜け、木々の生い茂る小道を進む。最先端の研究を行う魔導大学の内部とは到底思えぬ風景である。そよ風抜ける小道を進む一行の目の前を茶色毛並みの小動物が横断する。猫か、狸か、はたまた狐か。話し合ううちに木々茂る小道を抜け、見知った建物のある道に辿り着く。4階建ての灰色の建物。レイバックがああ、と声を上げる。
「あれは教養棟か」
「そうよ。敷地の北西側をぐるりと回ってきたの。結構歩いたけどまだまだ先は長いわよ。これからが本番というくらいね。魔導大学の研究棟は敷地の南側に集中しているから」
「研究棟は全部でいくつあるんだ?」
「いくつかしらねぇ。一つの学部で複数の研究棟を所有しているから正確な数は私も知らないわ」
「なら学部の数は?」
「理系学部が魔獣学部、農学部、工学部、理学部、医学部、薬学部、歯学部の7つ。文系学部が教育学部、法学部、経済学部、文学部の4つね」
指折り数えるイースに向けて、前方よりデューの声が飛ぶ。
「イースさん。海獣学部を忘れていますよ」
「あら、本当。ごめんなさいね。ロシャ王国南方のダクトという都市に海獣学部があるわ。首都リモラには海がないから、海獣学部だけ海沿いの街ダクトに研究所を構えているの」
一行は教養棟の真横を通り過ぎて、今度はメインストリートを南へと下っていく。魔導大学の敷地を南北に貫くメインストリートは全長が1.2㎞あり、歩けばかなりの距離だ。途中の売店で各々が好みの飲み物を購入し、一行は人通りの多いメインストリートを進む。
「右手に見えるのが工学部棟です。魔導大学内では一番研究員数の多い学部です」
デューは指を指すのは、メインストリートの右手側に位置する6階建ての建物だ。大きく目立つその建物の周囲には、平屋もしくは2階建ての小さな建物が散らばっている。
「それで、左手奥側に見えるのが医学部と薬学部ですね。医学部棟には最先端の医療を扱う診療所も備えられていますから、首都リモラの人々も訪れる機会の多い場所です」
「研究施設内に診療所があるの?ドラキス王国では考えられないわね」
「魔族はあまり病気には罹らないんですよね?医学部の友人に聞いたことがあります。人間は健常者であっても何だかんだ診療所にかかりますからね。僕も先月腕に謎の発疹が現れて、受診を余儀なくされました。頻繁に怪我病気と向き合わなければならない人間にとっては、最先端の治療が受けられる診療所が傍にあるというのはとてもありがたいんです」
「ふぅん。人間も大変なのね。結局デューの発疹の原因は何だったの?」
「さぁ、原因はわからず仕舞いです。処方された軟膏を塗ったら治りました」
フランシスカとデューの会話に耳を澄ませながら、一行はメインストリートを歩く。
その内にメインストリートの右手に背の高い石造りの建物が現れた。魔導大学内の建物は白や灰色を基調とした外見であるのに対し、その建物は煉瓦造りだ。積み上げられた煉瓦は所々が欠け年季の入った建物であることが伺える。ポトス城の王宮を思わせる巨大な玄関口の前で、先頭を歩いていたクリスが足を止めた。皆はクリスに倣い足を止め、荘厳と佇む建物を見上げる。
「ここは博物館です。ロシャ王国を代表する博物館ですから、魔導大学を訪れる観光客は必ずと言って良いほど立ち寄る場所です。お昼まであまり時間がないから全ての展示を見ることはできないと思いますが、ひとまず入りましょう。見切れなかった部分は午後に回せば良いですから」
先頭を切って玄関口をくぐるクリスに皆が続く。ゼータは玄関口に立つ警備員に呼び止められぬようにとクリスの背にぴたりと張り付いた。レイバックや他の視察員も各々相方の横に並び、どっしりと構えた警備員の目前を通り過ぎる。
最後の一組、ビットとメレンのペアが警備員の前を通り過ぎたときに、玄関口の真横に据えられた事務室から一人の若い男性が飛び出してきた。博物館職員の身分証を首から下げた男性は、列の先頭に立つクリスを呼び止める。
「すみません。ドラキス王国からの視察員御一行様ですよね?先ほどセージ学長様がいらっしゃいまして、言伝を預かっております」
「セージ学長から?何でしょう」
「視察員の皆様の外出許可が下りた、と。リモラ駅内部であれば自由に出歩いて構わないとのことですよ。折角の機会ですから上手く視察の予定を調整して、ぜひリモラ駅を訪れて欲しいと仰っておりました」
「リモラ駅…」
リモラ駅は魔導大学の南部に位置しており、ロシャ王国一人の集まる場所だ。50に近い馬車停には昼夜問わず常に馬車が出入りし、首都リモラとロシャ王国方々の集落を結ぶ。馬車停には巨大な商業施設が併設し、服飾品や日用品、書物、玩具、何を買うにおいても不自由することはない。色彩豊かなのれんが並ぶ飲食店街に足を運べば、ロシャ王国各地の地方料理に舌鼓を打つことだってできるのだ。
「魔族を見慣れぬ首都リモラの人々に恐怖と混乱を与えぬために、視察員の者達を魔導大学内から連れ出すことのないよう」とはクリスを含む研究員5人が先にセージに言われた言葉である。しかしその言葉を覆すがごとくセージは国家の上層部を相手に視察員の外出申請を行い、それが認可された。2週間の視察予定にリモラ駅が含まれていないことを考えれば、セージとしても予定外の認可であったのかもしれない。予定外であるのは視察員の相方を任された研究員も同じで、皆が慌ててクリスの元に集う。
「どうしましょう。イースさん、2週間のうちにリモラ駅の視察をねじ込める日がありました?」
「いえ、明日からは予定が詰まっているわ。1、2時間程度なら時間の融通は利くかもしれないけれど」
「リモラ駅に行くのに2時間じゃ寂しいですよ。折角なら飲食店街で食事も取れた方が良いし。俺、フランシスカさんと服飾店街も見たいなぁ」
「私もカシワギ殿と小間物屋を見て回りたいところですな。明後日の農場視察の暁に、時間の融通はできませぬか?」
「農場視察は魔導具の共同開発に関わる重大案件ですよ。農場は広いし見るべき物も多いです。視察内容を圧縮することは難しいと思います」
額を突き合わせ議論を重ねる5人の研究員を、傍らに立つ視察員は黙って見つめていた。博物館の出入り口をくぐる観光客の団体が、不自然に円陣を組む研究員を何事だと一瞥する。3組目となる団体が出入口を通り過ぎて行ったときに、ようやく円陣は解けクリスが視察員の元へとやって来た。
「すみません。突然ですが今後の予定を変更します。セージ学長がリモラ駅の視察申請を行ってくれていたようなので、そちらの視察を先に済ませてしまいましょう。視察と言っても堅苦しいことはありません。様々な店が軒を連ねておりますから、どうぞ好きな土産物を買っていらしてください」
クリスが説明をする脇では、フランシスカに身を寄せたデューが「俺、フランシスカさんに素敵なリモラ風の服を見繕います」とうきうき顔である。その横ではメレンとデートができると悟ったビットが、歓喜の表情を浮かべていた。
「今から自由行動としますので、相方の研究員と相談して今後の予定を決めてください。すぐにリモラ駅に赴いて飲食店街で昼食を取っても構いませんよ。手っ取り早く食事を済ませたい方は、博物館の向かいにある中央食堂を使うのが良いでしょう。もちろん、博物館に興味があればこちらに滞在しても構いません。ただし門限の17時には教養棟にお戻りください」
では、解散。クリスの言葉を皮切りに、皆は思い思いに動き出す。フランシスカと相方デュー、ビットと相方メレンはすぐさま博物館を出て行った。リモラ駅の飲食店街で食事を取り、午後は気ままに買い物を楽しむつもりなのだ。カシワギと相方ルーメンはしばし相談の後に、中央食堂で昼食を取ってからリモラ駅に向かうということで話を付けたようだ。白髪交じりの2人は「揃いの帽子でも買いましょうか」と笑いながら博物館を後にする。
博物館の出入り口にはレイバックと相方イース、ゼータと相方クリスの4人が残された。イースはリモラ駅に行きましょうとレイバックの腕を揺するが、当のレイバックは腕を組んだままその場を動かない。突然の自由行動に不機嫌の滲ませる緋色の瞳は、一心にゼータの様子を伺っている。
「ゼータはどうする?リモラ駅に行く?」
「私は博物館を見たいです。買い物には興味がありませんし」
「そう?でも今日を逃すとリモラ駅には行けないよ。博物館は今後視察の予定を調整すれば観覧できる可能性はあるけど」
「でも確実に見られる予定はないですよね?リモラ駅に行けなくても後悔はしないですけど、博物館を見逃すと帰国後絶対に後悔します」
「じゃあ中央食堂で早めの昼食を取ってからゆっくり観覧にしようか。今ならまだ食堂も混んでいないからすぐに食べられるよ。あ、でも僕、昼時は一度研究室に戻らないといけないんだ。申し訳ないけど一人で食べていて。僕のことは気にしないで良いから」
教養棟の外部で相方と離れ一人になっても良いものだろうか。不安を覚えるゼータの肩を突如として掴む手がある。鼻息荒いレイバックの左手が、ゼータの肩をひしと掴んでいた。
「ゼータ、俺と一緒に昼食を取るぞ」
「あれ?レイはリモラ駅に行かないんですか?」
「行かない。俺も博物館を見たい」
レイバックの宣言に、イースが短い悲鳴を上げた。なぜ心躍るリモラ駅での自由時間を無下にして、退屈極まりない博物館の観覧を選ぶのだ。イースの表情はそう言いたげだ。
「レイさん、本当に良いの?今日しかリモラ駅に行けないのよ?」
「良い。俺も買い物には興味がないから」
「そう…」
リモラ駅に行く気満々であったイースは不満げだ。しかしレイバックが博物館を見たいという以上、イースが単身リモラ駅に赴くわけにはいかない。
「クリス、昼食はレイとイースと食べます。食べ終わったら博物館前で待っていますね」
「わかった。じゃあまた後で」
小走りで去って行くクリスを見送り、残された3人も中央食堂に向かうべく博物館を後にした。
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