【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔

三崎こはく

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無垢と笑えよサイコパス

クリスと

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「クリスです。よろしく」

 応接室を出たゼータの目の前に、手のひらが差し出された。見上げればクリスが端正な顔に笑みを称えている。1年前と変わらず男前である。ゼータは拳二つ分高い位置にあるクリスの両眼を見上げ、差し出された手のひらを握り返す。

「ゼータと言います。2週間お世話になります」
「ゼータさん。早速教養棟内部を案内しますよ。こっち」

 クリスに手招きされて、ゼータは視察員の輪を抜け出す。丁度相方である女性と握手を交わしていたレイバックが、ゼータの背に向けて長々と視線を送る。場を立ち去るゼータがその視線に気が付くことはない。
 一足早く人混みを抜け出したクリスとゼータは、教養棟の中央付近にある階段を4階まで一気に上った。軽く息を弾ませたクリスは、階段室の真横にある小部屋を指さして言う。

「ここは洗濯室。24時間いつでも使えるけれど、音が響くから深夜の使用が避けた方が無難です。洗剤は手持ちがなければ一階の受付で貰えますよ。受付の場所はわかりますか?」
「わかります。昨日到着した時に立ち寄りました」
「なら大丈夫ですね。乾燥機もありますからどうぞ自由に使ってください。僕のお勧めは向かって左側の乾燥機です。右側の乾燥機は古くて、使っているうちに止まることがあると聞きます」
「それはありがたい情報です」

 ゼータが洗濯室の内部を覗き込めば、狭い室内に2つの洗濯機と2つの乾燥機が押し込められていた。確かに右側の乾燥機は、左側の乾燥機に比べてずいぶん薄汚れている。
 洗濯室の内部をしげしげと見まわすゼータの横で、クリスはさらに隣にある小部屋を指さした。

「洗濯室の隣は給湯室です。こちらも自由に使っていただいて結構です。茶器や茶葉は給湯室の奥にある棚に入っています。コーヒーや紅茶は食堂でも飲めますけれど、お金が掛かるから自分で淹れる方がお得です。あ、でもきっと食費は大学側で支払う手筈になっていますよね」
「そうですね。そう聞いています」
「なら食堂が開いている時間は食堂で飲んだ方が良いでしょう。給湯室に置かれているコーヒー豆や茶葉は安物ですから、味がいまいちです。食堂のコーヒーは注文の都度豆から抽出してくれるから美味しいですよ」

 クリスの言葉にゼータは思わず笑みを零した。細々と披露される雑学が面白かったのはもちろんある。しかしそれ以上にクリスの口調が懐かしかったのだ。当時はルナの姿であったとはいえ、ゼータはクリスとともに数度の歓談会を開催した。他の使節団員がルナの魔法語りに耐え切れず退席を余儀なくされる中、ただ一人生き残った猛者がクリスであった。そして運命の夜とも言える精霊族祭の夜にも、ルナはクリスと手を取り合いダンスに興じながらたくさんの話をした。
 ルナ暗殺未遂事件の後処理に忙殺され、ろくに感謝の気持ちを伝えぬままの別れとなってしまったクリス。しかしルナはゼータとして、偶然にもクリスとの再会を果たした。1年前とおよそ変わらぬ姿のクリスがそこにいる。ゼータにはその事実がどうしようもなく嬉しかった。

「…僕、何か変なこと言いました?」
「すみません。細々とした雑学が面白くて」
「雑学は重要でしょう。洗濯中に乾燥機が止まるって結構なストレスですよ」
「そうですね。味の悪いコーヒーを飲むのもかなりのストレスです」

 相変わらずくつくつと笑いを零すゼータを前に、クリスは照れたように肩を竦めるのであった。

 客室階である4階の案内は程なくして終わり、ゼータとクリスは3階へと続く階段を下りた。3階にはこれと言って面白い部屋があるわけではない。細長い廊下ずらりと並ぶ扉は、どれも魔導大学に通う学生が教養講義を受けるための講義室だ。いくつかの部屋では数十人の学生が講義の真っ最中で、2人は講義の邪魔にならないようにと抜き足差し足で廊下を歩くのであった。2階も3階と同様の造りで、南端にある巨大な食堂を除いて物珍しい部屋は存在しなかった。

「講義を受けていた学生は、行く行くは研究員となるんですよね?」
「研究員を志している者はもちろん多いですよ。でも魔導大学の研究職は門扉が狭いんです。実際に研究員となれる者は学生全体の3割ほどではないでしょうか」
「残る7割の学生はどこに?」
「2割はロシャ王国内にある別の研究機関に就職します。魔導大学は入試試験も卒業試験も難関で、無事卒業したというだけで箔が付くんですよ。ロシャ王国内だけではなく、近隣の人間国家の内で研究職に就くとなれば一生不自由はありません。残りの5割の学生もその箔が目当ての者ですね。実家の家業を継ぐための修行として家から出された者もいますし、隣国からの留学生として魔導大学に在籍する者も多いです」
「へぇ…クリスさんはたった3割の狭い門扉をくぐった英才ということですか」
「そういうことになります」

 1階へと続く階段を下りる途中で、2人はビットとすれ違った。横を歩くのは、黒に近い灰色の髪を肩まで垂らした若い女性だ。毛先がくるりと跳ね、赤みを帯びた頬の近くを跳ね回っている。20歳は超えているように見えるが童顔で愛らしい女性だ。だらしなく表情を緩ませたビットが、すれ違うゼータに一瞥すらしないのも納得である。
 1階には先ほど使用した応接室があり、その付近には小さな医務室と事務室があった。他は物置や書庫となっている部屋がほとんどである。教養棟の北側に位置する扉の前でクリスは足を止めた。

「この先はお客様用の受付です。昨晩立ち寄ったということでしたので、案内は省略しますね。来客対応を目的とした場所ですから、大学内の者が立ち入る場所ではないんです」
「魔導大学には頻繁に客人がいらっしゃるのですか?」
「そうですね。常に数人の客人は滞在していると思いますよ。研究施設の視察であったり、大学内で行われる勉強会に参加するためであったり、共同研究のための滞在であったりと目的は様々ですけれどね。今も視察員の皆様の他に2名の客人が滞在されているはずです。出くわすこともないとは思いますけれど」
「国外からの客人も多い?」
「多いですねぇ。ロシャ王国は近隣の人間国家とは密接な関係を築いていますからね。これだけ広い敷地を有した研究機関は他に存在しませんから、大規模な勉強会や講演会が行われるとなると必ずと言ってよいほど魔導大学での開催となります。その時は大学の敷地南側にある宿泊棟が開けられるんです。100人以上の客人を収容できる施設です」

 話しながら廊下を歩き、2人は一度は通り過ぎた事務室の近くに立った。事務室の横は玄関口である。事務室と下足室の間の壁には小窓が付いており、事務員が玄関口の様子を伺えるようになっている。強面の事務員が小窓の内側からじろりとゼータを睨んだ。

「普段の出入りはこちらの玄関を使ってください。とは言ってもゼータさんが1人で玄関を通り外に出ることは出来ません。事務員に止められます。外に出たいときはまず僕に相談してください」

 そう言うと、クリスは首に下がる身分証を持ち上げた。水に濡れても大丈夫なようにと加工のされたその身分証には、延齢草の模様とクリスの名前、他にもいくつかの数字や文字が記されている。中でも目に付く物は、身分証の右隅に朱書きされた「特」の文字だ。ドラキス王国からの視察員を接待する立場にある今、魔導大学内で特別な権限を得ているという証だ。クリスの掲げた特別な身分証を目にし、強面の事務員は表情を緩めるのである。

「これで一通りの案内は済みました…が、まだ昼食には早い時間なんですよね。どうしましょうか」

 玄関口の目立つところに掛けられた時計の針は、間もなく11時を指そうとしている。「早めの昼食を」とセージは言ったが、まだあまりにも早すぎる。

「他の皆は何をしているんでしょう?」
「講義室にいるんじゃないかと思いますよ。2階の端にある講義室が、視察員の皆様用にと宛てがわれているんです。書物が運び込まれていますから、暇を持て余したときは講義室に滞在するのをお勧めします」
「書物…良いですね。私達も行きましょうか」
「それでも構いませんが…ゼータさん、折角だし少し外に出てみましょうか?」
「…出ても良いんですか?」
「僕が良いと言えば良いんですよ。セージ学長には、失礼と秘密漏洩にないよう自己判断で動くようにと言われていますから」

 朗らかに笑うクリスが玄関口へと向かうので、ゼータはその背を追った。

***

 玄関口を出ると、教養棟前には昨日馬車を付けた広場が広がっていた。広場とは言っても大勢の人が寛げるほどの広大な空間が広がっているわけではない。2台の馬車を付ければ手狭になってしまうような小さな広場だ。樹木も植わっていなければ花壇もない。しかし教養棟を出入りする学生の姿は多く、クリスとゼータが玄関口を出た時に丁度4人組の学生とすれ違った。学生の視線は客人であるゼータではなく白衣をまとったクリスを追う。2度の王子様選手権で勝ち得た「王子様」の称号は健在である。
 教養棟の玄関口を離れた2人は、小さな広場を横切り人々が行き交う大通りの端に立った。

「この通りはメインストリートと呼ばれています。魔導大学の敷地内を南北に貫いていて、全長は1.2㎞あります」
「1.2㎞?移動が大変ですね」
「大変ですよ。片道歩くだけでも良い運動になります。魔導大学内には観光客向けの馬車が走っていますが、学生と研究員はもっぱら徒歩移動です。研究員寮が敷地の西側にあるんですけれど、忘れ物をすると取りに戻るのが大変なんですよ」

 クリスが指さす先は、教養棟の裏手側。敷地の西側にあたる方角だ。背の高い樹木が生い茂り、遠くを見ることはできない。続いてクリスの指す敷地の南側には、幅広のメインストリートが長く伸びていた。白衣を着て小走りする研究員がおり、観光客と思しき団体がおり、のんびりと駆ける馬車がある。メインストリートの両脇には無機質な白い建物が立ち並んでいるが、高さも形も様々な建物は遠目には何に使う物なのか判別ができない。しかし白衣を着た研究員が玄関口へと入っていくから、研究棟に分類される建物が多いのだろうという推測はできた。

「南側が魔導大学の主要部です。研究棟の他に、観光客向けの売店や食堂もあります。博物館や中央図書館も南側に位置しています。明日の魔導大学内散策は敷地の南側を主として回ります。研究棟には立ち入れませんから、歩くばかりになるとは思いますけどね」
「中央図書館には立ち寄りますか?」
「図書館には寄らないですよ。書物の貸し出しは魔導大学の在籍者に限定されていますし、第一遥々他国を訪れて読書に没頭したい人なんて…」

 クリスの目線は、しょんぼりと下がったゼータの肩に止まる。同時に顔に浮かぶ表情は苦笑いだ。一日半の時をかけて遥々訪れたロシャ王国で、わざわざ読書に没頭したい変人がここにいた。

「中央図書館まではかなり距離がありますから、滞在中に訪れることは難しいと思います。代わりと言っては何ですが北部図書館を案内しましょうか?すぐ傍ですから、昼食までの時間で十分見学出来ますよ」
「すぐ傍?」
「ほら、あそこ」

 クリスの指先が、教養棟のすぐ傍にある3階建ての建物を指す。くすんだ白色の建物の入り口には、古びた木の看板が掛けられている。
―北部図書館
 3度看板を読み返したゼータの顔には歓喜の笑みが広がった。

 期待に胸高鳴らせながら立ち入った北部図書館の入り口には、教養棟の入り口と同様に事務員が立っていた。朱書きの身分証を首に下げたクリスが事務員に呼び止められることはなく、背に張り付くゼータも同様だ。無事図書館内に立ち入ったゼータは、館内に漂う紙の香りを胸いっぱいに吸い込む。インクの匂いが混じる新書の香りも良いが、使い古された古書の香りがゼータは何よりも好きなのだ。
 水中に放たれた小魚のように図書館内を駆け巡ろうとするゼータの肩を、クリスの手が掴んだ。

「ちょ、ちょっと待って。書物を閲覧する前に僕に表紙を見せてください。館内には論文雑誌や研究報告書の類も保管されていますから。魔導大学の研究内容に関わる書物については、僕の権限で閲覧を許すことはできません」

 ゼータは無言で何度も首を縦に振り、クリスの手が肩から離れると同時に本棚の間へと消えていった。

 それから小一時間の時をゼータは図書室内部を駆け巡って過ごした。途中クリスが「僕の名前で書物を借りても良いですよ。10冊まで」などと菩薩の言葉を述べるものだから、ゼータは客室での暇潰しに最適な書物を腕の中に積み上げた。貸出限度ぎりぎりまで書物を積み上げようとするゼータを見かね、書物の半分をクリスが引き受けたほどである。魔導大学の王子様を付き人に、うきうきと書物を漁るゼータの姿を、周囲の人々は不思議そうに眺めていた。
 そして10冊の書物の貸出処理を終えたゼータとクリスは、図書館内の一角にある休憩所に並んで腰かけている。クリスの手の中には、貸出処理を終えたばかりの書物の1冊。念のため、機密事項となる内容が含まれていないか検閲を行っているのだ。10冊の書物の検閲を終えたクリスは、閉じた書物をゼータの膝の上に積み上げた。

「よし、大丈夫。貸出期間は2週間だから、帰国前に忘れずに返却してください。僕に渡してくれても良いですし、図書館の入り口にある返却箱に直接入れても良いですよ」
「ありがとうございます。これで夜分も退屈しなくて済みそうです」
「僕も大概本好きだから、書物を前に浮かれる気持ちはよくわかります。でもゼータさんには負けますね。流石の僕もドラキス王国滞在中に書物は…」

 そこまで言ってクリスは言葉を切った。形の良い唇が、ゼータの耳元へと下りてくる。膝の上に積み上げられた書物を愛しむように撫でていたゼータは、耳元に当たる吐息に驚き飛びのいた。

「…何ですか?」
「すみません。ちょっと内緒話。ゼータさんに聞きたいことがあるんです」
「内緒話…ですか。何でしょう」

 何ですかと問わずとも、クリスの内緒話の内容は容易に想像がついた。先ほど応接室で再会を果たしたレイバックに関わること。一国の王ともあろう人物が、身分を隠しロシャ王国の中枢機関に入り込んでいる。この事実が、学長セージを含む国家の上層部に知れれば一大事だ。

「僕、1年位前に外交使節団の一員として、ドラキス王国の王宮に滞在していた経験があるんです。そのときに視察員の一人であるレイさんとお会いしているんですけれど…彼は王宮の官吏ではないですよね?」

 クリスの問いにゼータはどうしたものかと答えを探す。「王宮の官吏を名乗るレイとは深い付き合いではないから詳しいことはわからない」そう答えを濁すことができないわけではない。しかし2週間に及ぶ滞在期間中に、レイバックとゼータが2人部屋の客室を使用していることがクリスの耳に入らない保証はない。一つ部屋で過ごしながら赤の他人を名乗ることは不自然だ。またレイバックとゼータが話をする場面を目撃されれば、気安い関係であることは一発で気が付かれてしまう。
ゼータは腹を括る。

「そうですね。レイは王宮でとある特殊な地位に就いています。言及は避けますけれど」
「…ああやっぱりか。他人の空似かと信じたい気持ちもありましたけど、あんな目立つ緋色の髪の人そう多くはいないですよね」
「残念ながら本人です。あの…勝手なお願いだと承知はしているんですが、他言はしないでもらえますか?レイはあくまで王宮の上級官吏の地位でこの視察に参加しているんです。本当の地位が明るみになると非常に不味いというか…」
「不味いでしょうね。ドラキス王国の最強戦力者が、ロシャ王国の中枢部に無断で入り込んでいるなんて…。なんの目的ですか?偵察?ロシャ王国にとって不利益となり得る目的があるのなら、僕も黙ってはいられませんよ」

 他人に聞こえぬようにと声を潜めながらも、クリスの声には怒りがこもる。吊り上がっていくクリスの両眉を見て、ゼータは慌てる。待って待ってと首を横に振るものだから、膝の上の書物が音を立てて床に落ちる。

「違うんです。決して研究内容を盗み出そうとか、国家の機密事項を見聞きしてやろうとか、そんな犯罪紛いの目的はありません」
「じゃあ何の目的ですか?」
「…旅行です」
「…旅行」
「そう、旅行。千年以上真面目に王様をやっているんだから、たまには羽目を外したいんですって。もちろん国家の一大転機となり得る魔導具の共同開発に係る視察に、自ら赴きたいという思いもあると思いますよ。でも多分それ以上に、ロシャ王国の観光を勝手気ままに楽しみたいという思いがですね…」

 話していて情けなくなってきた、とゼータは小さな溜息をつく。なぜレイバックの我儘の尻拭いを自分がせねばならぬのだ。国家の転機となり得る視察に王自らが赴く、そう言えば確かに聞こえは良い。しかし魔導大学に立ち入りたいのならば、王の身分を引っ提げて堂々と立ち入れば良いのだ。今回の視察は無理にしても、アポロとセージを相手に根気強く交渉に当たればいつか立ち入りが認められる可能性は十分にある。それをせずに身分を隠し、魔導大学へと立ち入ったのは単にレイバックの我儘だ。護衛など付けず、人々に頭を下げられることもなく、勝手気ままに他国への滞在を楽しみたいと。研究員の中にクリスがいることは完全に想定外の事態であったが、レイバックの我儘の尻拭いをゼータがする必要が果たしてあるだろうか。
 段々と不機嫌顔になっていくゼータとは対照的に、クリスは落ち着きを取り戻しつつあった。

「そうですか…。確かに裏であれやこれやと画策をするような人物ではないですよね。ゼータさんの言葉を信じます。疑ってすみません」
「いいえ。身分を偽っていることは確かですから、悪意を疑われても仕方はありません」
「他の視察員の方々はレイさんの正体をご存じなんですか?」
「知っているのは私とビットだけです。ビットは灰色の髪の青年ですよ。他の2名はレイを王宮の官吏と信じていますから、そのように接していただけると助かります」
「わかりました」

 クリスは頷き、ようやくゼータの耳元から口を話した。ゼータは椅子から下り、床に散らばった本を1冊1冊拾い上げる。ゼータの手伝いをすべく床にしゃがみ込んだクリスは、1冊の本を差し出しながら言った。

「ゼータさん。失礼ついでに一つお願いをしても?」
「何でしょう」
「敬語は苦手なので日常語で話しかけても良いですか?あと、名前を呼び捨てにしても良い?」

 クリスの顔は緊張感に満ちている。一年前の出来事が、ゼータの脳裏にありありと思い出される。王宮の談話室で、たくさんのことを語り合った懐かしい日々。あの日クリスは今と同じ緊張感に満ちた表情で、ルナに精霊族祭の誘いをかけた。本当になんて懐かしい。ゼータは笑う。

「良いですよ。私も堅苦しいのは苦手なので」
「そう、良かった。ではゼータ。2週間よろしく」

 緊張の表情から一変して満面の笑みをなったクリスは、ゼータに向けて手のひらを差し出す。ゼータは掴み上げていた書物を椅子の上に置き、差し出された手のひらを握り返す。

「よろしく、クリス」
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