【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔

三崎こはく

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無垢と笑えよサイコパス

ロシャ王国へ

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 ロシャ王国へと出発する日がやって来た。午前中に2週間分の旅路の準備を済ませ、簡単な昼食を終えたレイバックとゼータは揃って出発地点である魔法研究所へと向かった。出発時刻は13時を予定している。本日の移動距離は全行程の三分の一程度、ドラキス王国内の集落で一泊を挟み、明日の夕刻には目的地であるロシャ王国の首都リモラに到着する予定だ。

 レイバックとゼータが馬車に揺られ魔法研究所に到着すると、研究所の入り口にはすでに2台の魔獣車が待機していた。ほかの視察員の姿はまだない。
 魔獣車とは人が乗った客車を、馬ではなく魔獣が引く乗り物である。国内での移動に使われることはほとんどないが、ドラキス王国とロシャ王国間の荷物の輸送や要人の移動の際に使われる。魔獣は馬の倍の速さで走ることができ、小まめな休息を必要としない。出発時間を早朝に設定すればその日のうちにロシャ王国の首都リモラに到着することも可能なのだ。しかし今回は道中の観光も楽しみたいというレイバックの強い要望により一泊を挟んでの旅路となった。快適な客車であっても丸一日乗りっぱなしというのは苦痛であり、ゼータと他の視察員にとってもありがたい要望であった。

 ゼータは土の地面に荷物を置き、客車の前方に繋がれた魔獣をしげしげと眺めた。小型のドラゴンのような風貌である。艶々とした苔色の鱗を撫でようとしたゼータに向けて「噛みつかれますよ」との声が降ってくる。見上げれば客車の御者席に座る壮年の男性が、両手で大きな×を作っていた。ゼータはしぶしぶ持ち上げていた手のひらを下ろす。
 そのうちに生活棟の玄関口から3人の研究員が顔を出した。この度視察員として魔導大学行きの切符を勝ち取ったビットとカシワギ、フランシスカである。3人の顔には旅路への期待が溢れている。3人が各々手にカバンを下げているのだが、中でも目立つのは特大サイズのビットのカバンだ。中に人でも隠れているのかと疑いを抱くほどの大きさである。

「ゼータさん、おはようございます。旅行日和で良かったですね」
「ビット…その樽みたいなカバンには何が入っているんですか?」
「これ?変な物は入っていませんよ。旅に必要な物ばかりです」

 必要な物しか入っていないのならば、皆の物よりも3倍近い大きさのカバンになるはずがない。ビットの荷物の検閲を申し出るべきかと迷うゼータの背後にレイバックが顔を出した。

「よ、ビット。その節はどうも」

 親しげに左手を上げるレイバックを前に、ビットは途端に表情を強張らせた。レイバックとゼータの結婚披露宴に参列したビットは、この国の王であるレイバックの御顔を間近でばっちりと目撃している。披露宴に参列していないカシワギとフランシスカをごまかすことは可能でも、ビットを相手にレイバックの地位をごまかすことは流石に不可能。そう判断したゼータが事前にビットに事情を説明しているのだ。「うちの王様が視察に同行する気満々なんです。国内最強戦力がロシャ王国の中枢部に入り込むことなど認められるはずもないので、王宮の官吏と地位を偽って参加します。相手方に気が付かれると結構大変なことになると思うので、秘密厳守にご協力お願いします」2人きりでされた脅しとも言うべき事前説明に、ビットは表情を引きつらせていた。

「レイ…さん。お久しぶりです。その…よろしくお願いします」
「ああ、2週間よろしく」

 にこにことビットとの握手を済ませたレイバックは、カシワギとフランシスカに向かった。

「王宮で官吏をしているレイという。ゼータとは旧知の友人だ。視察中に王宮側としての意見を出させてもらう立場だ。どうぞよろしく」

 握手を求める手のひらに、カシワギとフランシスカは応えた。

「カシワギです」
「フランシスカです、よろしく」

 挨拶を済ませたレイバックは視察員の姿を順に眺める。ロシャ王国側から出された視察員の条件を満たしているかどうかの確認のためだ。魔導大学の学長であるセージから提示された視察員の条件は1つ、人間と偽っても違和感のない外見であることだ。魔導大学には二千を超える学生と研究員が在籍する。広い敷地に数十の建物を有する巨大な組織であるのだ。隣国のドラキス王国から魔族の研究員が視察に訪れることを、当然魔導大学の上層部は承知している。しかし二千を超える大学関係者全てに告知をすることは困難だ。ゆえに外見に特徴のある巨人族や小人族、幻獣族等の研究員は視察員から外すよう事前に伝えられているのだ。魔族に慣れぬ魔導大学の関係者が、大学内で突然魔族と思しき視察員に出くわせば大騒ぎである。
 カシワギは外見の年齢が50歳ほどの鬼族の男性だ。額に角があるが鬼族の中ではかなり小さい部類で、手拭いで十分に隠すことが可能。髪色も黒に近い灰色と人間と偽って違和感はない。フランシスカは30代中頃の外見である吸血族の女性だ。口内に尖った犬歯を携える以外は人間と変わらぬ容姿であるから、大口を開けて笑わない限りは魔族と気が付かれることはない。ビットは髪色が白に近い灰色と少し特徴的であるものの、尖った耳を隠せば人間を名乗ることは十分に可能。そして黒髪黒目のゼータは魔族らしい特徴を何一つ持ち合わせていない。
 4人の視察員はロシャ王国側から提示された条件を十分に満たしている。緋髪緋眼の自分が一番魔族に近い容姿であるかと、レイバックは肩を竦めた。

「皆様お集まりでしたら、どうぞ客車へ。2台に分かれてお乗りください」

 御者の声に、カシワギとフランシスカはすぐに動いた。一言二言と言葉を交わしながら後方車へと向かってゆく。面識のない2人と旅路を共にする選択肢などあるはずもないレイバックは前方車の扉へ向かい、ゼータはそれに続く。困った者はビットだ。この場の全員と面識のあるビットはどちらの客車を選ぶこともできる。魔法研究所内の関係のみを考慮するのならば、当然唯一無二の親友であるゼータと客車を共にしたい。しかしゼータの客車にはレイバックがいる。新婚ほやほやの2人の仲を邪魔するというのもいかがなものか。前方車と後方車の間をうろうろと歩き回るビットに、前方車からゼータの声が飛んできた。

「ビット、何しているんですか。一緒に乗りましょうよ」
「僕、そっちに乗ったらお邪魔じゃないですか?」
「まさか。邪魔者といえばどちらかというとレイの方ですよ。私とビットは仕事ですけれど、レイは完全に浮かれた旅行者…あ痛っ」

 客車から顔だけ出したゼータの後頭部を、車内から伸びてきたレイバックの手のひらが叩いた。

 ビットがゼータと同じ前方車に乗り込んだことで、2台の魔獣車は予定時刻丁度に魔法研究所を出発した。ポトスの街中を通り抜け、広く均された道を進んでいく。ポトスの街からロシャ王国方面へと向かう馬車は多い。ドラキス王国西部は比較的栄えた都市が多く、荷物の輸送も含めれば、ポトスの街中を出発し西部方面へと向かう馬車は日に10本に及ぶ。当然道は綺麗に均されており、休憩所や飲料用の湧き水の提供地も各地に存在する。速度の速い魔獣車での移動ということもあり、これ以上にないほど快適な旅路だ。

「視察員の選抜はすぐに済んだのか?」
「いえ、大激戦でしたよ。魔法研究所の研究員は私を含めて30名いるんですけれど、ロシャ王国出身の2名を除く全員が視察員に立候補しましたからね」
「それは意外だな。2週間知らぬ土地に滞在するとなれば覚悟も必要だろう」
「うちの研究員は皆好奇心旺盛ですからね。魔族の立ち入れぬロシャ王国に大手を振って入国できるとなれば、大概のことでは怖気づきませんよ」

 客車の後方部に隣り合って座るレイバックとゼータ。談笑に興じる2人の対面席では、ビットが揺れる小窓から外の景色を眺めていた。一人で座るには広い座席の下には、樽のようなカバンが押し込められている。

「選抜はどうやって行ったんだ。くじ引きか?」
「いえ、じゃんけんです。その名も王妃じゃんけん。私の掛け声と共に皆が一斉に手のひらを掲げ、私に勝った者だけが次の一戦に臨めるという勝ち抜き戦です」
「…王妃じゃんけんの提案はゼータがしたのか?」
「まさか。熱い戦いに血潮滾(たぎ)らせた一人の研究員の提案ですよ。残りの人数が4人となったときの盛り上がりようと言ったら。ねぇ、ビット」

 同意を求めるゼータの声に、ビットは小さな声で相槌を打った。流石のビットも一国の王を前にして、王妃に対し無遠慮な発言をぶつける勇気など持ち合わせてはいないのである。

 初めのうちこそ和やかに興じていたレイバックとゼータであるが、出発より30分が立つ頃には客車内に暗雲が立ち込める。事の始まりはレイバックがゼータに対し「魔獣車に乗るのは初めてか?」と安易な質問を投げたことであった。その質問によりゼータはつい30分前、魔法研究所において魔獣車を見たときの興奮を思い出す。大好きな「魔」の付く話題にゼータの瞳は煌めき、それまで小川の流れのように穏やかであった口調は途端に飛瀑ひばくの勢いとなる。

「私、魔獣車に乗るのは初めての経験なんですよ。魔獣車は魔獣の種類によっては馬車の倍の速さで進むと言うじゃないですか。それほどの速さで進んだら乗り心地はいかがなものかと不安に思っていたんですけれど、結構快適ですよね。まぁこの際乗り心地はどうでも良いんです。レイ、客車を引く魔獣を間近で見ました?苔色の鱗に小さな翼、ドラゴンに似た風貌の魔獣はワイバーンであるはずです。合っています?」
「ああ、そうだな。俺はあまりよく観察をしていないが、ワイバーンで合っていると思う…」
「やっぱりそうですよね。とかげ似の魔獣ってかなり種類が多いじゃないですか。区別が難しいんですよね。昔騎獣用の魔獣の訓練を生業(なりわい)とする人物と話をする機会があったんですけれどね。ワイバーンと思って慣らしていた魔獣が、実は全く違う種であったというのは多々ある出来事だと言っていましたよ。玄人でも魔獣の種を正確に見分けることは難しいんですって」
「そうか」
「ワイバーンは魔獣車向きの魔獣であると聞いたことがあります。最高速度はそれほど速くないけれど、一定速度で走り続けることが得意みたいですよ。でも騎乗向きではないんですって。鱗が硬くて乗り心地が悪いのと、背中に跨るには羽が邪魔みたいです。知っていました?」
「…騎乗向きではないというのは知識として知っている。王宮で飼育している騎乗用の魔獣にワイバーンはいない」
「あ、やっぱりいないんですね。以前魔獣舎の見学に行ったときに姿が見えなかったから、いないんだろうなとは思ったんです。寝そべっている子が多かったから正確な種はわかりませんでしたけど、やっぱり馬に似た姿の魔獣が多いですよね。馬の延長として魔獣を使うから、同じ姿勢で乗れる方が楽なんでしょうね」
「そうだな」
「私は移動と言えばもっぱら馬で、魔獣には乗る機会がないんですよねぇ。庶民ですから当たり前ですけれど。あ、今は庶民じゃなかった。まぁまぁ私の身分はどうでもいいんです。ドラキス王国内で騎乗用にされている魔獣ってかなり種類が限られているじゃないですか。もっと色々挑戦してみれば良いと常日頃思っているんですよ。例えばペガサス。どうですかペガサス。乗ってみたくありません?」
「彼らは人を乗せんぞ。高貴な種だ」
「知っていますよ。もしもの話です。もう大分前の話ですけれど、そんな御伽話が市井しせいで流行ったんですよ。貧困に喘ぐ美しい町娘の元にペガサスに乗った王子様が現れるという恋物語です。表紙にペガサスが描かれていたから内容も見ずに思わず購入してしまったんですけど、途中までしか読んでいないんですよねぇ。ペガサスに跨るなんてそんな馬鹿なと思って投げ出してしまいました。でも一つの空想の物語と思えば面白いですよね。ペガサスに跨る王子さまって。視察から帰ったらもう一度読んでみようかな…」
「ああ、そうしてくれ」
「あ、レイ。ユニコーンは?ユニコーンはどうですか。馬に似た姿だから乗り心地は良さそうです。かなり希少な種だから滅多にお目に掛かれませんけど、結構騎乗向きだと思うんですよ。私が最近読んだ書物には―」

 ビットがレイバックとゼータの会話に耳を澄ませながら、かたかたと揺れる小窓の外を眺めるうちに時は過ぎた。心地良い揺れにうとうととし始めていたビットは、魔獣車の車輪が石を踏み客車が跳ねた瞬間に目覚める。王様の目の前で居眠りをしてしまったと慌ててレイバックを見れば、彼は隣席から押し寄せる魔獣語りに耐え切れず白目を剥いていた。半開きの唇からは時折思い出したように「ああ」「そうだな」の二言が繰り返される。まるで壊れたからくり人形のようである。

「レイ、サラマンダーは?会ったことあります?私はもう100年以上前に一度森で見かけたことがありますよ。のっぺりした外見とは裏腹に動きが速いんですよ。ワイバーンと見た目は違いますけど、サラマンダーもとかげ似の容姿ですよね。背に跨るとしたらどうですかねぇ。重心が低いから乗り心地は良さそうですよね。生い茂った森の中の移動では重宝されるかもしれません」
「ゼータさん。サラマンダーはちょっと…機嫌を損ねたら騎手は丸焦げですよ」
「それもそうですね」
「あ、そういえばリオンさんが道中でどうぞとお菓子をくれたんです。食べますか?」
「リオンの手作りですか?食べます食べます」

 ビットは座席下に置いた樽のようなカバンの中から、手のひらサイズの小箱を取り出した。蓋を開けば様々な形のクッキーがぎっしりと詰め込まれている。客車内に漂う香ばしい香りに興奮が冷めた様子のゼータは、箱からクッキーを一つつまみぽりぽりとかじり始めた。
 客車内は途端に水を打ったように静かになる。ビットに差し出された小箱からいくつかのクッキーを掴み上げたレイバックは、香ばしく焼き色のついた手製のクッキーを口に放り入れた。

―もっと早く助けてくれよ。
 レイバックの顔は暗にそう告げていた。ゼータと同じ前方車に乗り込んだビットの選択は、どうやらレイバックにとって天の助けであったようだ。
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