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緋糸たぐる御伽姫
34.失踪
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「レイバック様!」
レイバックの言葉を遮るものは、ひどく慌てた声であった。向かい合ったレイバックとメアリは同時に声の主に顔を向ける。聖ジルバード教会を模した建物の内部から駆け出してくる者は、先刻までルナとダンスを共にしていたはずのクリスであった。
「お話し中に申し訳ありません。ルナ様をお見掛けしませんでしたか?」
「ルナ? いや、見ていないが…人混みではぐれたのか?」
「はぐれたと言いますか…。僕が飲物を取りに行く間にいなくなってしまったんです。丸テーブルの傍は人が多いですから、離れた場所で待つように言ったんですけれど」
「…いなくなった?」
不穏な言葉にレイバックは眉根を寄せる。メアリも同様だ。二人の表情を交互に見、クリスは言葉を続ける。
「待合場所を離れたことについては、どうやら休憩室に向かったようなんです。僕が離れている間にルナ様のドレスに飲料を零してしまった少年がいたらしく、ドレスを変えるために建物内にある休憩室に向かったと。待合場所付近にいた数人が同じ証言をしましたから、そこまでは間違いないと思うんですけれど…」
「休憩室にも姿が見えないのか?」
「そうなんです。僕が休憩室に着いたときには部屋はもぬけの空でした。スタッフの方がいれば事情を聞けるかと思ってしばらく待っていたんですけれど、誰も来なくって。もしかしたら休憩室に向かう途中で迷われた可能性もあるかと思って、こうして探し回っているんですけれど…」
クリスは困惑の表情で、広い庭園を見渡す。灯りのない庭園を隅々まで見渡すことはできないが、目の届く範囲に人の姿はない。例えルナが休憩室に辿り着けずに迷っていたとしても、人気のない庭園を延々暗がりに向けて歩くことなどしないだろう。
「…一度休憩室に行ってみるか。迷っているだけなら良いが、祭りの会場にいるのは単純にダンスを楽しむ人々だけではない。一晩の共を求め、手当たり次第好みの者に声を掛けるような輩もいるんだ。長いこと一人にしておくのは不安だ」
「メアリ姫とお話し中だったのでは?」
クリスの視線の先で、メアリが慌てて首を横に振った。
「私の話は後ほどでも構いません。先にルナ様をお探ししましょう」
メアリが言葉を終えるよりも早く、レイバックは立ち上がった。灯りの灯る建物内を目指して駆けて行く。クリスとメアリもそれに続く。
3人が休憩室に辿り着いたとき、丁度中から一人のドレス姿の女性が出てきたところであった。「助かりました、ありがとう」部屋の中にいるスタッフに手を振って、女性は祭りの会場へと戻って行く。レイバックを先頭に、3人は今しがた女性が出てきたばかりの扉へと飛び込んだ。
「どうされました。衣服の貸出ですか?」
部屋の中にいたスタッフは、ダンス会場にいる給仕スタッフと同じ装いの若い女性であった。先の女性が使用したのか、長机に広げた化粧道具をせっせと箱に仕舞い込んでいる。化粧道具の他にも広い部屋の中には靴があり、アクセサリーがあり、壁には一面にドレスと燕尾服が掛けられている。客人が座るための椅子と姿見もあった。
「ルナという名の女性が来なかったか? 黒髪で、緋色のドレスを着た女性だ」
レイバックの問いに、スタッフの女性は首を傾げる。
「私、先程代わりで入ったばかりなんです。当番の方が急用を思い出したと言うから」
「では、ルナが来たかどうかはわからんか?」
「備品を貸し出したのであれば、名前とお住まいを控えておりますよ。少々お待ちください」
女性は窓際に置かれた長机に寄り、端に置かれたメモ帳を手に取った。何枚か紙を捲り、ああと声を上げる。
「ルナ様。いらっしゃっていますね。でも貸出品の種類が書かれていない…書き忘れてしまったのかしら」
女性は困ったように首を左右に傾げるが、レイバックは一先ず安堵の息を吐いた。ルナは無事休憩室には辿り着いた。ならば行く先がわからずに会場内を一人彷徨っているということはない。レイバックの後ろで、クリスが申し訳なさそうな声を上げた。
「レイバック様。僕もう一度会場内を探してみます。入れ違いになってしまったんだと思います」
「ああ…そうだな」
「心配を掛けるような真似をして申し訳ありません。責任を持って探しますから…」
クリスの瞳はレイバックを離れ、メモ帳を手に立つ女性に向いた。
「ルナという女性はドレスの貸出を受けているはずです。何色のドレスを借りたのか調べられませんか?」
「ドレスの貸出数は多くありませんから、他の貸出履歴と在庫を照らし合わせればわかりますよ。お待ちくださいね」
女性は壁に掛けられたドレスを眺めながら、手の中のメモ帳を一枚ずつ捲る。しばらくすると二十枚ほど捲ったメモ帳を一度閉じ、同じ動作を繰り返す。そうして二度同じ動作を繰り返した後に、女性は悩ましげに口を開いた。
「あの…ルナ様と言う方にはドレスを貸し出しておりません。他の方の貸出履歴と、在庫の数が一致するんです」
「ドレスを借りていない? でも飲料を零したと…」
不可解な供述であった。会場にいた少年がどれほどの量の飲料をルナのドレスに零したのかは分からない。しかし周囲の人々が「着替えるために休憩室に向かった」と証言をしたということは、きっと拭き取って済む飲料の量ではなかったのだ。そして着替えのために訪れた休憩室で、ドレスを借りることなく忽然と姿を消した。ルナの名をメモ帳に残したであろうスタッフも、急用があると言っていなくなった。なぜ、そんな不可解な出来事が起きたのだ。
レイバックは床に白い布が落ちていることに気が付いた。姿見の陰に隠れるようにして、汚れた手拭いが落ちている。レイバックは手拭いを拾い上げ、端をつまみ目の前に広げた。真っ白な手拭いの中央には紅い染みが付いている。ぷんとアルコールが香るから、どうやら赤ワインを拭いた後のようだ。
小さな物体が音を立てて床に落ちた。手拭いに包み込まれていたのだ。レイバックは屈みこんで、その小さな物体を拾い上げる。それは首飾りであった。レイバックが「精霊祭が終わるまで外すな」と命じてゼータに押し付けたガラス玉の首飾りが、赤ワインに濡れて落ちていた。
「レイバック様、僕はダンス会場に戻ります。ドレスに飲物が掛かったとは聞きましたけど、拭いて済む程度だったのかもしれません。入れ違いになった可能性は大いにありますし、もう一度会場を探してみます」
クリスの言葉に、レイバックははっと意識を取り戻す。
「ああ…そういうことなら、メアリ姫。クリスに付き添ってくれるか。男前のクリスが単身会場を出歩いたのでは、ダンスの誘いを求められ人探しどころではない」
「はい、分かりました」
メアリとクリスは、寄り添い休憩室を後にした。
***
一人になったレイバックは、聖ジルバード教会に似た建物の内部をしらみ潰しにしていた。灯りの消えた建物の上階で、廊下に立ち並ぶ扉を手当たり次第に開ける。机の下に潜り込み、物入れの扉を開け、そこに人の姿がないことを確認する。レイバックが探す者は勿論行方不明となったルナだ。事をさして重大とは捉えていないクリスとメアリとは異なり、レイバックの心には焦りがある。ルナに向けられる悪意の存在を知っているからだ。マルコーが自身の野望を果たすべく画策を働き、ルナを連れ去った可能性は大いにある。小部屋に閉じ込めたルナに刀を当て、レイバックの妃候補を辞退するように脅す。外交使節団の帰国を目前にし、焦りと苛立ちを感じているマルコーならば、その程度の行為を安易と働いてもおかしくはない。
三階、二階と全ての部屋に立ち入り、内部に人の姿がないことを確認したレイバックは、再び建物の一階へと下りた。庭園へと続く裏口の傍で、物置と思われる簡素な扉を開ける。中に立ち入り、棚の陰からカーテンの裏側まで隅々と視線を巡らせる。マルコー一人の力では、華奢なルナとはいえ遠くに運ぶことは容易ではない。恐らくルナは建物の内部にいるというのがレイバックの予想であった。しかし予想に違い、これまで何一つの痕跡すら見つけ出せない。焦るレイバックが物置の捜索を終え、次の部屋に向かうべく扉を開ける直前のことであった。部屋の外に話し声を聞き、はたと動きを止める。
「滞りなく事は済みました」
「そうか。良くやった。暴れなかったか」
「暴れましたが、こちらは四人掛かりですから。女一人何とでも」
「そのようだな。酷い格好だ。随分派手にやったな」
「ああ…申し訳ありません。着替えを持ち合わせておりませんでした」
「まぁ良い。すぐに現場に案内しろ。その血濡れの姿を人に見られては事だぞ」
「はい。庭園の傍に馬が―」
二人の男の話し声は遠ざかって行く。「事は済んだ」と述べた男は、レイバックの知らない声であった。しかしもう一方の男の声はよく知っている。人間族長のダグだ。メアリとの接触を拒むレイバックに対し、街歩きに同行して交流を深めよと直談判した男。
何が済んだのだ。眩暈を覚え、レイバックは隠れていた物置を飛び出す。足音を忍ばせ、裏口を出た二人の男を追う。どくどくと脈打つ心臓が煩い。落ち着け。ルナの話だと決まったわけではない。仮にそうだとしてもルナが殺されたと断定はできない。多少体に傷を付けて交渉を図っただけやもしれぬ。命が惜しければ妃候補を辞退せよ、と。しかし酷い格好だと評されるほどの返り血は。ダグがわざわざルナの元を訪れる意味は。嫌な想像ばかりが脳内を巡り、駆ける脚は震える。
―彼がいなくなったら、俺はどうやって生きればいい
レイバックの言葉を遮るものは、ひどく慌てた声であった。向かい合ったレイバックとメアリは同時に声の主に顔を向ける。聖ジルバード教会を模した建物の内部から駆け出してくる者は、先刻までルナとダンスを共にしていたはずのクリスであった。
「お話し中に申し訳ありません。ルナ様をお見掛けしませんでしたか?」
「ルナ? いや、見ていないが…人混みではぐれたのか?」
「はぐれたと言いますか…。僕が飲物を取りに行く間にいなくなってしまったんです。丸テーブルの傍は人が多いですから、離れた場所で待つように言ったんですけれど」
「…いなくなった?」
不穏な言葉にレイバックは眉根を寄せる。メアリも同様だ。二人の表情を交互に見、クリスは言葉を続ける。
「待合場所を離れたことについては、どうやら休憩室に向かったようなんです。僕が離れている間にルナ様のドレスに飲料を零してしまった少年がいたらしく、ドレスを変えるために建物内にある休憩室に向かったと。待合場所付近にいた数人が同じ証言をしましたから、そこまでは間違いないと思うんですけれど…」
「休憩室にも姿が見えないのか?」
「そうなんです。僕が休憩室に着いたときには部屋はもぬけの空でした。スタッフの方がいれば事情を聞けるかと思ってしばらく待っていたんですけれど、誰も来なくって。もしかしたら休憩室に向かう途中で迷われた可能性もあるかと思って、こうして探し回っているんですけれど…」
クリスは困惑の表情で、広い庭園を見渡す。灯りのない庭園を隅々まで見渡すことはできないが、目の届く範囲に人の姿はない。例えルナが休憩室に辿り着けずに迷っていたとしても、人気のない庭園を延々暗がりに向けて歩くことなどしないだろう。
「…一度休憩室に行ってみるか。迷っているだけなら良いが、祭りの会場にいるのは単純にダンスを楽しむ人々だけではない。一晩の共を求め、手当たり次第好みの者に声を掛けるような輩もいるんだ。長いこと一人にしておくのは不安だ」
「メアリ姫とお話し中だったのでは?」
クリスの視線の先で、メアリが慌てて首を横に振った。
「私の話は後ほどでも構いません。先にルナ様をお探ししましょう」
メアリが言葉を終えるよりも早く、レイバックは立ち上がった。灯りの灯る建物内を目指して駆けて行く。クリスとメアリもそれに続く。
3人が休憩室に辿り着いたとき、丁度中から一人のドレス姿の女性が出てきたところであった。「助かりました、ありがとう」部屋の中にいるスタッフに手を振って、女性は祭りの会場へと戻って行く。レイバックを先頭に、3人は今しがた女性が出てきたばかりの扉へと飛び込んだ。
「どうされました。衣服の貸出ですか?」
部屋の中にいたスタッフは、ダンス会場にいる給仕スタッフと同じ装いの若い女性であった。先の女性が使用したのか、長机に広げた化粧道具をせっせと箱に仕舞い込んでいる。化粧道具の他にも広い部屋の中には靴があり、アクセサリーがあり、壁には一面にドレスと燕尾服が掛けられている。客人が座るための椅子と姿見もあった。
「ルナという名の女性が来なかったか? 黒髪で、緋色のドレスを着た女性だ」
レイバックの問いに、スタッフの女性は首を傾げる。
「私、先程代わりで入ったばかりなんです。当番の方が急用を思い出したと言うから」
「では、ルナが来たかどうかはわからんか?」
「備品を貸し出したのであれば、名前とお住まいを控えておりますよ。少々お待ちください」
女性は窓際に置かれた長机に寄り、端に置かれたメモ帳を手に取った。何枚か紙を捲り、ああと声を上げる。
「ルナ様。いらっしゃっていますね。でも貸出品の種類が書かれていない…書き忘れてしまったのかしら」
女性は困ったように首を左右に傾げるが、レイバックは一先ず安堵の息を吐いた。ルナは無事休憩室には辿り着いた。ならば行く先がわからずに会場内を一人彷徨っているということはない。レイバックの後ろで、クリスが申し訳なさそうな声を上げた。
「レイバック様。僕もう一度会場内を探してみます。入れ違いになってしまったんだと思います」
「ああ…そうだな」
「心配を掛けるような真似をして申し訳ありません。責任を持って探しますから…」
クリスの瞳はレイバックを離れ、メモ帳を手に立つ女性に向いた。
「ルナという女性はドレスの貸出を受けているはずです。何色のドレスを借りたのか調べられませんか?」
「ドレスの貸出数は多くありませんから、他の貸出履歴と在庫を照らし合わせればわかりますよ。お待ちくださいね」
女性は壁に掛けられたドレスを眺めながら、手の中のメモ帳を一枚ずつ捲る。しばらくすると二十枚ほど捲ったメモ帳を一度閉じ、同じ動作を繰り返す。そうして二度同じ動作を繰り返した後に、女性は悩ましげに口を開いた。
「あの…ルナ様と言う方にはドレスを貸し出しておりません。他の方の貸出履歴と、在庫の数が一致するんです」
「ドレスを借りていない? でも飲料を零したと…」
不可解な供述であった。会場にいた少年がどれほどの量の飲料をルナのドレスに零したのかは分からない。しかし周囲の人々が「着替えるために休憩室に向かった」と証言をしたということは、きっと拭き取って済む飲料の量ではなかったのだ。そして着替えのために訪れた休憩室で、ドレスを借りることなく忽然と姿を消した。ルナの名をメモ帳に残したであろうスタッフも、急用があると言っていなくなった。なぜ、そんな不可解な出来事が起きたのだ。
レイバックは床に白い布が落ちていることに気が付いた。姿見の陰に隠れるようにして、汚れた手拭いが落ちている。レイバックは手拭いを拾い上げ、端をつまみ目の前に広げた。真っ白な手拭いの中央には紅い染みが付いている。ぷんとアルコールが香るから、どうやら赤ワインを拭いた後のようだ。
小さな物体が音を立てて床に落ちた。手拭いに包み込まれていたのだ。レイバックは屈みこんで、その小さな物体を拾い上げる。それは首飾りであった。レイバックが「精霊祭が終わるまで外すな」と命じてゼータに押し付けたガラス玉の首飾りが、赤ワインに濡れて落ちていた。
「レイバック様、僕はダンス会場に戻ります。ドレスに飲物が掛かったとは聞きましたけど、拭いて済む程度だったのかもしれません。入れ違いになった可能性は大いにありますし、もう一度会場を探してみます」
クリスの言葉に、レイバックははっと意識を取り戻す。
「ああ…そういうことなら、メアリ姫。クリスに付き添ってくれるか。男前のクリスが単身会場を出歩いたのでは、ダンスの誘いを求められ人探しどころではない」
「はい、分かりました」
メアリとクリスは、寄り添い休憩室を後にした。
***
一人になったレイバックは、聖ジルバード教会に似た建物の内部をしらみ潰しにしていた。灯りの消えた建物の上階で、廊下に立ち並ぶ扉を手当たり次第に開ける。机の下に潜り込み、物入れの扉を開け、そこに人の姿がないことを確認する。レイバックが探す者は勿論行方不明となったルナだ。事をさして重大とは捉えていないクリスとメアリとは異なり、レイバックの心には焦りがある。ルナに向けられる悪意の存在を知っているからだ。マルコーが自身の野望を果たすべく画策を働き、ルナを連れ去った可能性は大いにある。小部屋に閉じ込めたルナに刀を当て、レイバックの妃候補を辞退するように脅す。外交使節団の帰国を目前にし、焦りと苛立ちを感じているマルコーならば、その程度の行為を安易と働いてもおかしくはない。
三階、二階と全ての部屋に立ち入り、内部に人の姿がないことを確認したレイバックは、再び建物の一階へと下りた。庭園へと続く裏口の傍で、物置と思われる簡素な扉を開ける。中に立ち入り、棚の陰からカーテンの裏側まで隅々と視線を巡らせる。マルコー一人の力では、華奢なルナとはいえ遠くに運ぶことは容易ではない。恐らくルナは建物の内部にいるというのがレイバックの予想であった。しかし予想に違い、これまで何一つの痕跡すら見つけ出せない。焦るレイバックが物置の捜索を終え、次の部屋に向かうべく扉を開ける直前のことであった。部屋の外に話し声を聞き、はたと動きを止める。
「滞りなく事は済みました」
「そうか。良くやった。暴れなかったか」
「暴れましたが、こちらは四人掛かりですから。女一人何とでも」
「そのようだな。酷い格好だ。随分派手にやったな」
「ああ…申し訳ありません。着替えを持ち合わせておりませんでした」
「まぁ良い。すぐに現場に案内しろ。その血濡れの姿を人に見られては事だぞ」
「はい。庭園の傍に馬が―」
二人の男の話し声は遠ざかって行く。「事は済んだ」と述べた男は、レイバックの知らない声であった。しかしもう一方の男の声はよく知っている。人間族長のダグだ。メアリとの接触を拒むレイバックに対し、街歩きに同行して交流を深めよと直談判した男。
何が済んだのだ。眩暈を覚え、レイバックは隠れていた物置を飛び出す。足音を忍ばせ、裏口を出た二人の男を追う。どくどくと脈打つ心臓が煩い。落ち着け。ルナの話だと決まったわけではない。仮にそうだとしてもルナが殺されたと断定はできない。多少体に傷を付けて交渉を図っただけやもしれぬ。命が惜しければ妃候補を辞退せよ、と。しかし酷い格好だと評されるほどの返り血は。ダグがわざわざルナの元を訪れる意味は。嫌な想像ばかりが脳内を巡り、駆ける脚は震える。
―彼がいなくなったら、俺はどうやって生きればいい
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