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SCENE.2【公安調査庁第三調査部呪霊特別調査室】
Capture.16『厚待遇ホワイト企業』
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「え……」
私は耳を疑った。だって、まさかそんな事があるなんて思ってもいなかったからだ。
「あなたの力は、国家のために使うべき。あたしはそう考えてる」
先日の呪霊特別調査室の人が来た理由が――
「さくらちゃん、の、お父さん?」
「ええ、父は公安調査庁第三調査部部長、九条総一郎よ」
彼女による情報リークのせいだったなんて……
*
「それでどうするんだ、凛?」
さくらちゃんと別れ、帰宅した私に、小太郎さんが笑いながら尋ねた。彼女との話を小太郎さんに説明したところ――
『面白そうじゃねぇか』
彼は呪霊特別調査室で、呪霊と戦う事に興味を持っているようだった。私としては、戦いとか、そんな危険な事はお断りなんだけど、先日、安藤という人が置いて行った案内パンフレットを見ると、待遇の良さに目がくらむ。
「週休三日……月給五十万、それに加えて各種手当有。十時から十七時で休憩二時間……厚待遇ホワイト企業過ぎる」
その上、ボーナスも年二回。しかも、通勤手当は無制限。実家からでも出勤可能という好条件は、間もなく失業の私にとって、喉から手が出る内容だった。
「どうしよう……」
だけど、呪霊と呼ばれる死神たちと戦うのは気が引けるのも事実だった。
*
BABY BABY在籍中、最後の休日。奈々さんの事があったり、忙しい時期になる事もあって、私の送別会というのは行われない事になっていた。半年くらいの勤務だったし、バイトみたいだから、当然だと思う。それに、もう颯太さんの顔はあまり見たくない。勝手に失恋しておいて、どうかと思うけど……
<明後日ね、何時くらいに着く予定?>
実家に帰る段取りをお母さんと電話する。
<それにしても、あんなに憧れて入った職場だったのに後悔はないの?>
後悔がないと言ったら嘘になる。他の店舗に配属されていたら、こうして辞めるという決断はしていなかったかもしれない。
「いいんだ、もう。それじゃ、お母さん、明後日の迎え、お願いします」
でも、もし奈々さんにソロキャンプを勧められていなかったら、小太郎さんと出会っていなかった。そうしたら、お母さんを助ける事ができなかっただろう……
電話を切った私は、ベッドの上で大の字に寝転んだ。
「……お母さんまで殺されて……あっ?!」
上体を勢いよく起こす。そして、思い出した事を口にする。
「あの死神、御手洗家って言ってた」
あの時の悔しさに歪んだ老人の顔と、その叫び声が頭の中で再現される。お父さんが殺されたという事実に、私は悔しくなり、怒りのままに刀を振ってしまった。
「……お父さん、怒ってるだろうなぁ」
感情に任せた剣を何よりも嫌ったお父さん。でも、仕方ないじゃない。お父さんの原因不明の自殺が、あの呪霊のせいだったと判明したんだから。私は無意識にそう弁解していた。
そんな中、インターホンが鳴る。そして、モニターに映ったのは――
<どうも、呪霊特別調査室の安藤です。覚えていますか?>
厚待遇ホワイト企業の人だった。そして、隣には、すらっとして長いサラサラのサイドポニーを右に垂らすすごく美人な女性が一緒に立っていた。
*
「すみません、散らかってまして。今、コーヒー入れます」
「いえいえ、突然お邪魔しているのですから、お気になさらず」
「えっと、ホットでいいですか?」
二度目の訪問だ。さくらちゃんの紹介で来ている事も分かった以上、雑に扱うわけにもいかず、二人を部屋に招き入れた。女性が一緒だというのも大きい。
「では、私はホットで」
「わたくしもホットで」
マグカップを二人の前に置く。その前にミルクとシュガー、それにマドラーも置いた。安藤さんは、慣れた手付きでミルクをカップに流し込むのだった。
私は耳を疑った。だって、まさかそんな事があるなんて思ってもいなかったからだ。
「あなたの力は、国家のために使うべき。あたしはそう考えてる」
先日の呪霊特別調査室の人が来た理由が――
「さくらちゃん、の、お父さん?」
「ええ、父は公安調査庁第三調査部部長、九条総一郎よ」
彼女による情報リークのせいだったなんて……
*
「それでどうするんだ、凛?」
さくらちゃんと別れ、帰宅した私に、小太郎さんが笑いながら尋ねた。彼女との話を小太郎さんに説明したところ――
『面白そうじゃねぇか』
彼は呪霊特別調査室で、呪霊と戦う事に興味を持っているようだった。私としては、戦いとか、そんな危険な事はお断りなんだけど、先日、安藤という人が置いて行った案内パンフレットを見ると、待遇の良さに目がくらむ。
「週休三日……月給五十万、それに加えて各種手当有。十時から十七時で休憩二時間……厚待遇ホワイト企業過ぎる」
その上、ボーナスも年二回。しかも、通勤手当は無制限。実家からでも出勤可能という好条件は、間もなく失業の私にとって、喉から手が出る内容だった。
「どうしよう……」
だけど、呪霊と呼ばれる死神たちと戦うのは気が引けるのも事実だった。
*
BABY BABY在籍中、最後の休日。奈々さんの事があったり、忙しい時期になる事もあって、私の送別会というのは行われない事になっていた。半年くらいの勤務だったし、バイトみたいだから、当然だと思う。それに、もう颯太さんの顔はあまり見たくない。勝手に失恋しておいて、どうかと思うけど……
<明後日ね、何時くらいに着く予定?>
実家に帰る段取りをお母さんと電話する。
<それにしても、あんなに憧れて入った職場だったのに後悔はないの?>
後悔がないと言ったら嘘になる。他の店舗に配属されていたら、こうして辞めるという決断はしていなかったかもしれない。
「いいんだ、もう。それじゃ、お母さん、明後日の迎え、お願いします」
でも、もし奈々さんにソロキャンプを勧められていなかったら、小太郎さんと出会っていなかった。そうしたら、お母さんを助ける事ができなかっただろう……
電話を切った私は、ベッドの上で大の字に寝転んだ。
「……お母さんまで殺されて……あっ?!」
上体を勢いよく起こす。そして、思い出した事を口にする。
「あの死神、御手洗家って言ってた」
あの時の悔しさに歪んだ老人の顔と、その叫び声が頭の中で再現される。お父さんが殺されたという事実に、私は悔しくなり、怒りのままに刀を振ってしまった。
「……お父さん、怒ってるだろうなぁ」
感情に任せた剣を何よりも嫌ったお父さん。でも、仕方ないじゃない。お父さんの原因不明の自殺が、あの呪霊のせいだったと判明したんだから。私は無意識にそう弁解していた。
そんな中、インターホンが鳴る。そして、モニターに映ったのは――
<どうも、呪霊特別調査室の安藤です。覚えていますか?>
厚待遇ホワイト企業の人だった。そして、隣には、すらっとして長いサラサラのサイドポニーを右に垂らすすごく美人な女性が一緒に立っていた。
*
「すみません、散らかってまして。今、コーヒー入れます」
「いえいえ、突然お邪魔しているのですから、お気になさらず」
「えっと、ホットでいいですか?」
二度目の訪問だ。さくらちゃんの紹介で来ている事も分かった以上、雑に扱うわけにもいかず、二人を部屋に招き入れた。女性が一緒だというのも大きい。
「では、私はホットで」
「わたくしもホットで」
マグカップを二人の前に置く。その前にミルクとシュガー、それにマドラーも置いた。安藤さんは、慣れた手付きでミルクをカップに流し込むのだった。
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