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第七十六話 魔王城目前

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「……ここが魔族の町で間違いないんやんな?」
「あぁ。だが少し様子がおかしいな……」
「人の気配がまるでしないぜ」
「……」

 勇者たちは魔族の町へ足を踏み入れた。
 しかしそこは人っ子一人おらず、もぬけの殻状態であった。

「……逃げたんか?」
「そうかもしれないな」
「まぁ余計な戦闘を避けれていいじゃねぇか」
「……」

 そのまま町の奥、魔王城がある方向へと進んでいく。
 魔王城は周りを海で囲まれており、町との間には橋がかかっている。

「橋か。落ちたりせえへんやろな……」
「……でも行くしかないだろ」
「あれが魔王城か。なんだか物々しいぜ」
「……」

 四人は進んでいく。
 そして橋の中腹まで来たところで足をとめた。

「あいつらは?」
「おそらく四天王だな」
「……モンスターもそれなりにいるな」
「……こっちからも来た」

 行く先には三人の魔族が待ち構えていた。
 その後ろには多くのモンスターがいる。
 さらに勇者たちの後ろからもモンスターの大群が押し寄せてきた。

「……挟まれたみたいやな」
「転移魔法陣があったか」
「まぁお前らならなんとかなるんじゃないか?」
「……私が後ろをやる」
「ならウチらは前に集中でええか?」
「それしかないだろうな」

 三人と一人に分かれることを選択したようだ。

 魔道士は後ろを振り返り、杖に魔力を集中させはじめた。
 残りの三人は勇者を先頭に警戒しながらも足を進めていく。

「いけっ!」

 四天王の一人が大きな声で合図をした。
 すると四天王の後ろにいたモンスターたちが凄いスピードで襲いかかってくる。

「メタスラー!?」
「油断するな! 昨日の俺の二の舞になるぞ!」
「せやったな! これは強いほうのやつか!」

 メタスラーたちは勇者たちに攻撃を仕掛ける。
 だが非力なためにダメージを与えられないようだ。

「……これ普通のメタスラーやん!」
「きっと囮だ! 周囲の警戒を怠るな!」
「後ろは順調みたいだな」

 後方では凄い音がした。
 魔道士の向こう側には煙や砂ぼこりが舞い上がっている。

 とそのとき……

「ぐぉっ!」
「えっ!? あっ!」

 戦士の足から血が流れた。

「昨日のやつか!」

 勇者は戦士の近くにいたメタスラーを攻撃しにかかる。
 戦士もなんとか剣で応戦する。
 だがメタスラーたちは逃げていった。

「一匹だけ強いのが混ざってやがった……」
「ホンマせこいことしやがって!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!」
「えっ!?」

 戦士と勇者が声のしたほうを見る。

「……どうなってんあれ」
「モモモモンガだ」

 もう一人の上級者がモモモモンガ数匹に空中に連れ去られている。
 そして海へ放り出された。

「あっ……」
「くそっ……切り替えろ!」

 直後、コウテイハムスター数十体が襲いかかってくる。
 その後ろからはドワーフラビットも数十体走ってきている。

「ちょっ!? どっから湧いてきてん!? ウチ一人では無理や!」
「いったん引け! あいつと合流するぞ!」

 勇者と戦士は後方へ向かって走り出した。
 だが手負いの戦士は足を引きずっている。
 勇者と戦士の距離はどんどん開いていく。

「早くしいや!」
「……俺が囮になるから先に行け!」
「なんやて!? それならウチだって戦うわ!」
「バカ野郎! お前までここにいたらあいつが魔法使えないだろ!」
「そやけど……」
「魔王さえ倒せばいいんだ!」
「……わかった」

 直後、戦士はモンスターの群れにのみこまれた。

「くっ……あんたのことは忘れへん」

 勇者は魔道士と合流する。

「頼んだで!」
「少し強めにいく」

 そして魔道士からモンスターの大群に向けて強力な炎魔法が放たれた。
 これまた凄い爆発音とともに前方が一瞬で煙に包まれる。

「さすがにやりすぎやろ!? 橋は大丈夫なんか!?」
「……おかしい」
「はっ!? なにがおかしいねん!?」
「当たってない」
「当たってるやろ! だからこんなんなってんねん!」
「モンスターに当たってないってこと。たぶん魔法で防がれた」
「はぁ!?」

 数秒後、目の前の視界がクリアになった。

「……え?」
「消えた……」
「やっぱ当たってたんちゃうん?」
「そうなのかな……でもなにも落ちてない」

 そこにはモンスターの姿はなかった。
 もちろん四天王の姿もない。
 ただ、転移魔法陣だけが一つ残されていた。

「……罠やんな?」
「これで逃げたのか」
「どうする? スルーして魔王城行くか?」
「……私が見てくる。帰ってこなかったら先に進んで」
「いやいや、明らかに罠やろ! こんなん構ってる暇ないねん!」
「行けばわかるよ。すぐに戻ってくるから」
「っておい!?」

 魔道士は勇者がとめるのも聞かず転移していった。
 ……だがすぐに戻ってきた。

「早いな! で、どやったん?」
「……大丈夫そう。というかこれが正解っぽい」
「正解? どういうことや?」
「行こう」
「えっ!?」

 魔道士は勇者の腕を引っ張りむりやり転移魔法陣に誘導する。
 そして橋には誰もいなくなった。
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