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第七十五話 虹箱
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勇者パーティは無事に金ガチャ券を五枚獲得した。
一人が致命傷を受けたのだから無事とは言えないか。
そしてガチャ券により金箱を四つ獲得。
残すは虹箱のみだ。
ガチャの周りには店内のほぼ全ての客が集まっている。
虹箱の瞬間を見ようとしているのだろう。
だが真後ろからではほとんど見えないに違いない。
「おお!? これが虹箱の演出か!?」
「……きれい」
あぁ、毎日見てるがいまだにきれいだと感じる。
そういや魔道士は女だったんだな。
「きたーーーーっ!」
勇者の前に虹箱が置かれた。
「開けるで!?」
「早く」
魔道士は勇者とは正反対のテンションで早く開けるように促す。
そして勇者は虹箱を開けた。
「…………なんやこれ?」
「……なんだろう?」
勇者は中身を取り出した。
二人とも不思議がってるな。
「木でできてるみたいやけど……」
「う~ん」
「……てか剣じゃないやん」
「なんの効果があるのかな……」
冒険者たちも覗き込んでるがそれがなにかは誰にもわからないようだ。
「なぁ? これなんなん?」
勇者はガチャレーンを出てジャスミンに訊ねた。
「これは通行手形です」
「通行手形?」
「はい。これがあれば世界中の町の転移魔法陣が無料で利用可能です」
「……は? それだけ?」
「永久に無料ですよ? しかも一度に四人まで利用できます」
凄いだろ?
町中にある転移魔法陣を使いたい放題だぞ?
「いやいや、こんなんいらんて。聖剣が入ってるんちゃうん?」
「そう言われましても……」
やはり聖剣が入ってると思ってたのか。
伝説の剣がガチャなんかでゲットできるわけないだろう。
そんなゲームがあるんなら教えてくれよ。
まぁ昨日までは入ってたんだけどな。
「あの……勇者様。それは大変貴重な物ですよ?」
見兼ねた冒険者が声をかける。
「いや、わかるんやけどな……聖剣と思ってたからさ」
「はははっ、聖剣なんて伝説の剣がガチャの商品になるわけないでしょう」
「せやけどさ……」
勇者は周囲を気にすることなく残念がってる。
「いらないんでしたら譲っていただけませんか?」
「おい、ズルいぞ! 勇者様! 金貨十枚でどうでしょう!?」
「通行手形がそんな安いわけないだろ! 金貨十五枚では!?」
「金貨二十枚でいかがでしょう!? 分割になりますが……」
勝手にオークションが始まってるぞ……。
この通行手形を提供してくれたのはティラミス王女だ。
ガナッシュ王国の王族はみんな持ってるらしい。
「帰ろう」
「……せやな」
勇者と魔道士は気を落として帰っていった。
「もうこんな時間か」
「俺たちも帰るか」
「いやぁ、今日はいい戦いが見れたな」
「さすが勇者パーティだったよな!」
確かに勇者の強さがわかる戦いばかりだった。
最後にはあの魔道士の強さも少しばかり見れたしな。
あとの二人はまぁもう少し頑張れって感じか。
さすがに勇者たちと比べられると可哀想だな。
「予定通り明日魔王城に行くみたいね」
「そうみたいだな。でも戦士がケガしたから延期の可能性もあるぞ?」
「……行くよ。時間がないからね」
「時間?」
アイリはまだ本調子ではないようだが仕事はしっかりこなしてくれている。
「大将! 今日の賄はなんですか!?」
「刺身とローストビーフかな」
「早く食べましょっ! 下行って片付け手伝ってきますね!」
ティラミス王女は地下二階へ向かったようだ。
そういや今日プリン王女は来なかったな。
てっきり勇者たちを見に来るかと思ってたのに。
「トルテばあさん、プリン王女となにか話しました?」
「うん? あぁ、城でお説教してきた」
「え……なぜお説教を?」
「そりゃこないだここで騒がしくしたからに決まっておるだろ」
「でもあれはもう一か月も前のことじゃないですか……」
「ん? 虹箱の中身を見たらまた騒いだだろうからね」
なるほど。
だからわざわざ今日ババロア城まで行ってくれてたのか。
クレアばあさんもそうだが顔が広いと助かることも多いな。
「今から下で食事ですがどうされます?」
「行くよ。さっきはみんなに挨拶できてないからね」
「わかりました」
営業前の食事の際にはまだ来てなかった。
ティラミス王女だけは先にみんなと顔合わせしたのだが……
みんなの迫力にビビッて泣き出してしまった。
彼女も魔道士だから地下二階の面々の強さがわかってしまうのだろう。
俺はそういうのいっさいわからないから楽でいいな。
「でも本当にいいんですか?」
「何回も言わせないでおくれ」
「すみません……」
ティラミス王女とトルテばあさんは明日からここに住む。
だから地下一階のミアたちの部屋の隣に新しい部屋を作ってもらう。
そういや神様にお願いするのは久しぶりのことだ。
それに住むのは王女だけのつもりだったんだがな。
まぁ住むといっても二人は忙しいだろうし、休憩部屋みたいなもんか。
昨日、王女はミアたちの部屋に泊まり、今朝早くに帰っていった。
そしてガナッシュ城では重役だけを集めての緊急会議が行われたらしい。
その場で王女の口からこの店のことが話されたとのことだ。
ただし、その時点では王女は地下二階のことをまだ詳しくは知らない。
レファたちとも会ってなかったしな。
会議は意外にも大騒ぎになるようなことはなかったみたいだ。
トルテばあさんが王女の意見に賛成してくれたらしいからな。
だが王様は魔族と繋がりがあることを完全に納得したわけではない。
王女とトルテばあさんは引き続き監視に任命されたというわけだ。
王女はただここに住みたいだけのようにも思えるけどな……。
それにしても明日は忙しい一日になりそうだ。
できることは全てやっておこう。
一人が致命傷を受けたのだから無事とは言えないか。
そしてガチャ券により金箱を四つ獲得。
残すは虹箱のみだ。
ガチャの周りには店内のほぼ全ての客が集まっている。
虹箱の瞬間を見ようとしているのだろう。
だが真後ろからではほとんど見えないに違いない。
「おお!? これが虹箱の演出か!?」
「……きれい」
あぁ、毎日見てるがいまだにきれいだと感じる。
そういや魔道士は女だったんだな。
「きたーーーーっ!」
勇者の前に虹箱が置かれた。
「開けるで!?」
「早く」
魔道士は勇者とは正反対のテンションで早く開けるように促す。
そして勇者は虹箱を開けた。
「…………なんやこれ?」
「……なんだろう?」
勇者は中身を取り出した。
二人とも不思議がってるな。
「木でできてるみたいやけど……」
「う~ん」
「……てか剣じゃないやん」
「なんの効果があるのかな……」
冒険者たちも覗き込んでるがそれがなにかは誰にもわからないようだ。
「なぁ? これなんなん?」
勇者はガチャレーンを出てジャスミンに訊ねた。
「これは通行手形です」
「通行手形?」
「はい。これがあれば世界中の町の転移魔法陣が無料で利用可能です」
「……は? それだけ?」
「永久に無料ですよ? しかも一度に四人まで利用できます」
凄いだろ?
町中にある転移魔法陣を使いたい放題だぞ?
「いやいや、こんなんいらんて。聖剣が入ってるんちゃうん?」
「そう言われましても……」
やはり聖剣が入ってると思ってたのか。
伝説の剣がガチャなんかでゲットできるわけないだろう。
そんなゲームがあるんなら教えてくれよ。
まぁ昨日までは入ってたんだけどな。
「あの……勇者様。それは大変貴重な物ですよ?」
見兼ねた冒険者が声をかける。
「いや、わかるんやけどな……聖剣と思ってたからさ」
「はははっ、聖剣なんて伝説の剣がガチャの商品になるわけないでしょう」
「せやけどさ……」
勇者は周囲を気にすることなく残念がってる。
「いらないんでしたら譲っていただけませんか?」
「おい、ズルいぞ! 勇者様! 金貨十枚でどうでしょう!?」
「通行手形がそんな安いわけないだろ! 金貨十五枚では!?」
「金貨二十枚でいかがでしょう!? 分割になりますが……」
勝手にオークションが始まってるぞ……。
この通行手形を提供してくれたのはティラミス王女だ。
ガナッシュ王国の王族はみんな持ってるらしい。
「帰ろう」
「……せやな」
勇者と魔道士は気を落として帰っていった。
「もうこんな時間か」
「俺たちも帰るか」
「いやぁ、今日はいい戦いが見れたな」
「さすが勇者パーティだったよな!」
確かに勇者の強さがわかる戦いばかりだった。
最後にはあの魔道士の強さも少しばかり見れたしな。
あとの二人はまぁもう少し頑張れって感じか。
さすがに勇者たちと比べられると可哀想だな。
「予定通り明日魔王城に行くみたいね」
「そうみたいだな。でも戦士がケガしたから延期の可能性もあるぞ?」
「……行くよ。時間がないからね」
「時間?」
アイリはまだ本調子ではないようだが仕事はしっかりこなしてくれている。
「大将! 今日の賄はなんですか!?」
「刺身とローストビーフかな」
「早く食べましょっ! 下行って片付け手伝ってきますね!」
ティラミス王女は地下二階へ向かったようだ。
そういや今日プリン王女は来なかったな。
てっきり勇者たちを見に来るかと思ってたのに。
「トルテばあさん、プリン王女となにか話しました?」
「うん? あぁ、城でお説教してきた」
「え……なぜお説教を?」
「そりゃこないだここで騒がしくしたからに決まっておるだろ」
「でもあれはもう一か月も前のことじゃないですか……」
「ん? 虹箱の中身を見たらまた騒いだだろうからね」
なるほど。
だからわざわざ今日ババロア城まで行ってくれてたのか。
クレアばあさんもそうだが顔が広いと助かることも多いな。
「今から下で食事ですがどうされます?」
「行くよ。さっきはみんなに挨拶できてないからね」
「わかりました」
営業前の食事の際にはまだ来てなかった。
ティラミス王女だけは先にみんなと顔合わせしたのだが……
みんなの迫力にビビッて泣き出してしまった。
彼女も魔道士だから地下二階の面々の強さがわかってしまうのだろう。
俺はそういうのいっさいわからないから楽でいいな。
「でも本当にいいんですか?」
「何回も言わせないでおくれ」
「すみません……」
ティラミス王女とトルテばあさんは明日からここに住む。
だから地下一階のミアたちの部屋の隣に新しい部屋を作ってもらう。
そういや神様にお願いするのは久しぶりのことだ。
それに住むのは王女だけのつもりだったんだがな。
まぁ住むといっても二人は忙しいだろうし、休憩部屋みたいなもんか。
昨日、王女はミアたちの部屋に泊まり、今朝早くに帰っていった。
そしてガナッシュ城では重役だけを集めての緊急会議が行われたらしい。
その場で王女の口からこの店のことが話されたとのことだ。
ただし、その時点では王女は地下二階のことをまだ詳しくは知らない。
レファたちとも会ってなかったしな。
会議は意外にも大騒ぎになるようなことはなかったみたいだ。
トルテばあさんが王女の意見に賛成してくれたらしいからな。
だが王様は魔族と繋がりがあることを完全に納得したわけではない。
王女とトルテばあさんは引き続き監視に任命されたというわけだ。
王女はただここに住みたいだけのようにも思えるけどな……。
それにしても明日は忙しい一日になりそうだ。
できることは全てやっておこう。
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