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第七十三話 モンスターの存在意義

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「モンスターが増えて景気も少し良くなったでしょう?」
「それは確かにそう感じます! 町に笑顔が増えた気がしますし!」
「ではお金が入手できなくなるとどうなります?」
「え……どうなるんでしょう……」
「お金は破損や紛失などでなくなることはあります」
「お金の量が減っていくってことですか?」
「はい。それに対して人口は増えていく」
「……つまりお金の価値がどんどん上がっていくと?」

 理解が早いな。
 というか税金も取らないでどうやって国を運営してるんだ?
 なにか店でも経営してるのか?
 寄付金を集めたりか?
 騎士や魔道士がモンスター狩りをしてるのかもしれない。
 そこらへんのことはまた別の機会に聞いてみようか。

「その通りです。そうなると経済が破綻します」
「……そうなったらどうすればいいんでしょうか?」
「簡単です。今のお金に代わる新しいお金を発行すればいい」
「えっ!? そんなことができるんですか!?」
「それはあなたたち国のお偉いさんがやることでしょう」
「そうですけど……」
「でもわざわざそんな状態にする必要はないじゃないですか」
「……やはりモンスターがいなくなったら困るってことですよね?」
「逆に今モンスターがいて困る理由はなんですか?」
「……町の外を自由に歩けません」
「だから冒険者という職が成り立ってるんでしょう?」
「そうです……それに城の騎士や魔道士もです」

 やはり騎士たちもモンスター狩りをしているのか?
 薬草を採ったりしてるのかもな。
 一応町でも門番や見回りの騎士みたいなのはいるしな。
 モンスターがいなくなったら騎士の多くが廃業かもしれない。

 ……酒場を経営してるのは国か?
 確かガナッシュ王が装備品を依頼報酬に回すとか言ってた気もする。

「他に困ることはありませんか?」
「……モンスターに負けると全財産を奪われることでしょうか」
「そうですね。でも奪われなかったらどうなると思います?」
「え…………お金が増え続けますよね?」
「はい。増え続けるとどうなります?」
「……先ほどとは逆でお金の価値が下がるですか?」
「はい。今までのことから俺がなにを言いたいかわかりますか?」
「……もしかして……モンスターがお金をコントロールしていると?」
「おお!? 素晴らしい!」

 やるじゃないか!
 まさかその結論まで辿り着くとは思ってもみなかった!

 モンスターたちは冒険者から奪ったお金で食事をしたりガチャを回している。
 食事をするようになったのも魔族の町でお金を使わせるためらしい。
 魔族は決して人間のように裕福な暮らしはしていない。
 俺の料理をあそこまで美味いと言ってくれるのもそのせいだ。
 じゃあ魔族はモンスターが使ったそのお金をどうしているか。

 答えは一番身近なところにあった。
 レファたちはモンスター生成の際にお金を配合していたんだ。
 それを知ったのは最近のこと。
 サクラが魔剣をドロップすると聞いたときだな。

 それまではモンスターがいなくなったらお金が入手できなくなるとしか考えていなかった。
 さっきまでの王女と同じ程度の考えだ。
 お金はモンスターが生成される度に増えるもんだと思ってたからな。
 もちろんお金が増え続けることに疑問を持ったこともあった。
 だからあまり生成しすぎるのはよくないことだとも考えていた。

 だがまさかレファたちがそれを管理しているなんて思いもしないだろう。
 魔王の血を引いてる者の特性としてお金も生成可能とも聞いた。
 ただお金の生成は全体量がよほど少なくならない限りは行わないらしい。

 今の状態はレファに言わせれば供給量が少し増えたくらいだそうだ。
 それも人が減らなくなった今では必要なこととも言っていた。
 要するにお金をただ循環させてるだけなんだ。

「あの……本当にモンスターにお金がコントロールできるんですか?」
「正確にはモンスターじゃなくて魔族ですね」
「魔族が!? ……いえ、そうですよね」
「魔族に対してはどういう感情をお持ちなんですか?」
「当然モンスターと同じ……いや、私は魔族のことを知らなすぎです」
「魔族と人間の違いなんて色が違うだけですよ」
「色ですか?」
「はい。人間の町に入れるか入れないかだけです」
「魔族にも詳しいようですけど、お知り合いがいらっしゃるんですか?」
「えぇ、何人か」
「……もう誤魔化す気すらないようですけど……」
「あっ……まぁいいでしょう」

 ここに来た理由を聞くだけのつもりだったのに。

 というかなにが勘だよ。
 色々証拠まで集めて名探偵ぶりを発揮しまくりじゃないか。

「……大将」
「はい?」
「魔族と人間は共存できるんでしょうか?」
「今できてるでしょう?」
「え……これでですか……」
「これ以上を望むのはモンスターがいる限り無理ですね」

 じゃあやっぱりモンスターはいなくなったほうがいいとか言うなよ?
 この世界の仕組みそのものを変えることになるからな。
 それにそんなことになったら俺が前いた世界となんら変わりないじゃないか。

 で、これを聞いて王女は次どういう行動に出るんだ?
 魔法で攻撃してきたりはやめてくれよ?

「私、決めました」
「……」
「大将にもっと色んなことを教えてもらいたいです」
「はぁ」
「私は……いえ、ガナッシュ王国は大将を支持します!」
「は?」

 ……俺の味方になるということか?
 でもなんで王女だけではなく国レベルの話なんだよ。
 この王女にそんな権限があるとは思えない。
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