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第五十三話 ガナッシュ王国の見解
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はぁ、昨日の疲れが残ってるな。
まさかあそこまで忙しくなるとは思ってもみなかった。
「大丈夫ですか?」
「うぅ……頭が痛い……」
クレアばあさんは二日酔いのようだ。
年甲斐もなく飲みすぎなんだよ。
「お主のせいだぞ……」
「なんで俺のせいになるんですか」
「あんな美味いものばかり出しおって……うぅ」
いやいや、なにを言ってるんだ?
「酒だけではあそこまで飲めん。料理が美味いからどんどん飲んでしまったんだよ」
「とりあえず水分を多めに採ってください」
「あぁ。悪いね……」
クレアばあさんはコップの水を一気に飲み干す。
初日からこんな調子で大丈夫か?
というか今日も仕事あるんだぞ?
「ふぅ~。少しは楽になってきたよ」
「じゃあ聞かせてもらえますか?」
「せっかちだねぇ」
「この後すぐ仕入れに行かないといけないんで」
「あぁ、そうか。ランチ営業もあるんだったね」
昨日遅くまでばあさん二人は飲み続けていた。
アイリも王女とお喋りしながら賄を食べていた。
あの王女も食べすぎだな。
俺は打ち上げの場に合流したからばあさんたちのその後の話は聞けてない。
アイリもお喋りに集中しすぎたらしいからな。
「やはり疑ってたようだね」
「ここのオーナーをですか?」
「あぁ。ボスモンスターとなんらかの繋がりがあるんじゃないかってさ」
「当然でしょうね。格闘場のモンスターについてはなんて?」
「それはワシがいるから納得したようだよ」
「どう言ったんですか?」
「カイザーとモッスンが脅してむりやり連れてこさせたとな」
「それだけで納得したんです?」
「勝てばオーナーから金が出ると説明した」
「なるほど。オーナーは極悪非道みたいな奴と間違って思われてそうですね」
「その通りだと思うが……」
これならオーナーの道楽に付き合わされた魔物使いって感じでいけそうだな。
「次はそのオーナーの特定に動きますよね?」
「だろうね。普通なら昨日も裏で見てたと思うはずだ」
これだけのモニター設備があるんだからな。
「仮に特定できたとしてもなにをする気でしょうか?」
「……なにもできないだろうね」
「ですよね。闇ガチャ屋のことが知られたら別でしょうけど」
「そのときはみんなで牢獄行きだな」
みんなで行けばこわくない。
でもそうは絶対にならないけどな。
「わかりました。旧友だからって距離は考えてくださいよ?」
「わかってるよ。ワシもこの暮らしを失いたくないしね」
この生活が楽しいということか?
それとも消されるのをおそれているのか?
「それより聞かないのかい?」
「なにをですか?」
「その旧友のことだよ」
「あぁ~、それは別にいいです。なにか問題が起きそうならまたそのときにでも」
「そうかい。まぁなにもしてこないとは思うがねぇ」
聞く必要はない。
既にアイリから聞いてるからな。
「じゃあ夜までゆっくりしててください」
「はいよ。気をつけて行ってくるんだよ」
昨日は予備の食材まで使い切ったからな。
今日はさらに多めに買っておこうか。
いつもの店への道中、仕入れの量を考えながら足早に歩く。
「へい、らっしゃい! おう、兄ちゃん!」
「昨日よりもさらに多めに欲しいんだが」
「おぉ!? てことは夜も大盛況だったのか!?」
「あぁ。ネタが新鮮って若い客も褒めてたぞ」
「そいつぁ嬉しいねぇ! ちょっと待ってな! そっちの嬢ちゃんもゆっくりしてくれ!」
店の親父が魚を見繕ってくれている。
この親父に任せておけば間違いはない。
ふと横を見る。
…………いつからいたんだ?
「私、市場って初めてなんです!」
「……」
なぜここにいる?
周りを探すが、ばあさんはいっしょではないようだ。
「おばあ様は一度城に戻られました!」
まだ俺はなにも聞いてないんだが……。
それに一度って言うとまた来るみたいに聞こえるぞ?
「また夜に来るみたいです!」
やはりそういう意味なのか。
今度は裏側を探ろうとしてくるんだろうな。
一応ミーティングのときにみんなには伝えておこう。
「昨日はありがとうございました!」
「……いえ」
ここで会ったのは偶然ではないよな?
尾行されていたのか?
ただの寿司職人の俺がつけられることになるなんて想像もしてなかった。
戦闘力が高ければ気配でわかったりしたのだろうか。
王女は店の中や周りの店などを興味深そうに見ている。
「毎度ありぃ!」
これだけの量があればさすがに大丈夫だろう。
一応肉も多めにとミアに頼んでおくか。
「こんなに買われるんですね!」
まだついてくるのか?
俺は寡黙な大将だから話相手にはならないぞ?
無言のまましばらく歩き、市場を抜ける。
ここまで来ると周りも静かだ。
さすがに無言は感じが悪かったか?
よく考えるともう王女だって知ってることになってるんだった。
もしかして俺が消されたりする?
「大将、一つだけお聞きしてもいいですか?」
「……なんでしょう?」
「大将がオーナーさんですか?」
……思わず足をとめてしまった。
まさかあそこまで忙しくなるとは思ってもみなかった。
「大丈夫ですか?」
「うぅ……頭が痛い……」
クレアばあさんは二日酔いのようだ。
年甲斐もなく飲みすぎなんだよ。
「お主のせいだぞ……」
「なんで俺のせいになるんですか」
「あんな美味いものばかり出しおって……うぅ」
いやいや、なにを言ってるんだ?
「酒だけではあそこまで飲めん。料理が美味いからどんどん飲んでしまったんだよ」
「とりあえず水分を多めに採ってください」
「あぁ。悪いね……」
クレアばあさんはコップの水を一気に飲み干す。
初日からこんな調子で大丈夫か?
というか今日も仕事あるんだぞ?
「ふぅ~。少しは楽になってきたよ」
「じゃあ聞かせてもらえますか?」
「せっかちだねぇ」
「この後すぐ仕入れに行かないといけないんで」
「あぁ、そうか。ランチ営業もあるんだったね」
昨日遅くまでばあさん二人は飲み続けていた。
アイリも王女とお喋りしながら賄を食べていた。
あの王女も食べすぎだな。
俺は打ち上げの場に合流したからばあさんたちのその後の話は聞けてない。
アイリもお喋りに集中しすぎたらしいからな。
「やはり疑ってたようだね」
「ここのオーナーをですか?」
「あぁ。ボスモンスターとなんらかの繋がりがあるんじゃないかってさ」
「当然でしょうね。格闘場のモンスターについてはなんて?」
「それはワシがいるから納得したようだよ」
「どう言ったんですか?」
「カイザーとモッスンが脅してむりやり連れてこさせたとな」
「それだけで納得したんです?」
「勝てばオーナーから金が出ると説明した」
「なるほど。オーナーは極悪非道みたいな奴と間違って思われてそうですね」
「その通りだと思うが……」
これならオーナーの道楽に付き合わされた魔物使いって感じでいけそうだな。
「次はそのオーナーの特定に動きますよね?」
「だろうね。普通なら昨日も裏で見てたと思うはずだ」
これだけのモニター設備があるんだからな。
「仮に特定できたとしてもなにをする気でしょうか?」
「……なにもできないだろうね」
「ですよね。闇ガチャ屋のことが知られたら別でしょうけど」
「そのときはみんなで牢獄行きだな」
みんなで行けばこわくない。
でもそうは絶対にならないけどな。
「わかりました。旧友だからって距離は考えてくださいよ?」
「わかってるよ。ワシもこの暮らしを失いたくないしね」
この生活が楽しいということか?
それとも消されるのをおそれているのか?
「それより聞かないのかい?」
「なにをですか?」
「その旧友のことだよ」
「あぁ~、それは別にいいです。なにか問題が起きそうならまたそのときにでも」
「そうかい。まぁなにもしてこないとは思うがねぇ」
聞く必要はない。
既にアイリから聞いてるからな。
「じゃあ夜までゆっくりしててください」
「はいよ。気をつけて行ってくるんだよ」
昨日は予備の食材まで使い切ったからな。
今日はさらに多めに買っておこうか。
いつもの店への道中、仕入れの量を考えながら足早に歩く。
「へい、らっしゃい! おう、兄ちゃん!」
「昨日よりもさらに多めに欲しいんだが」
「おぉ!? てことは夜も大盛況だったのか!?」
「あぁ。ネタが新鮮って若い客も褒めてたぞ」
「そいつぁ嬉しいねぇ! ちょっと待ってな! そっちの嬢ちゃんもゆっくりしてくれ!」
店の親父が魚を見繕ってくれている。
この親父に任せておけば間違いはない。
ふと横を見る。
…………いつからいたんだ?
「私、市場って初めてなんです!」
「……」
なぜここにいる?
周りを探すが、ばあさんはいっしょではないようだ。
「おばあ様は一度城に戻られました!」
まだ俺はなにも聞いてないんだが……。
それに一度って言うとまた来るみたいに聞こえるぞ?
「また夜に来るみたいです!」
やはりそういう意味なのか。
今度は裏側を探ろうとしてくるんだろうな。
一応ミーティングのときにみんなには伝えておこう。
「昨日はありがとうございました!」
「……いえ」
ここで会ったのは偶然ではないよな?
尾行されていたのか?
ただの寿司職人の俺がつけられることになるなんて想像もしてなかった。
戦闘力が高ければ気配でわかったりしたのだろうか。
王女は店の中や周りの店などを興味深そうに見ている。
「毎度ありぃ!」
これだけの量があればさすがに大丈夫だろう。
一応肉も多めにとミアに頼んでおくか。
「こんなに買われるんですね!」
まだついてくるのか?
俺は寡黙な大将だから話相手にはならないぞ?
無言のまましばらく歩き、市場を抜ける。
ここまで来ると周りも静かだ。
さすがに無言は感じが悪かったか?
よく考えるともう王女だって知ってることになってるんだった。
もしかして俺が消されたりする?
「大将、一つだけお聞きしてもいいですか?」
「……なんでしょう?」
「大将がオーナーさんですか?」
……思わず足をとめてしまった。
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