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第三十六話 刺激が欲しい

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 ドーラとサーラが再会して数日が経ち、地下一階と地下二階の大改装を行った。
 もちろん夜中に神様によっていつの間にか行われていたんだが。
 今は六時でみんなはもちろん寝ている。
 やはり俺が先に確認しておかないといけないからな。

 なにも変更がなかったのは地下二階作業部屋とリリアンヌの部屋だけ。
 その作業部屋もこれからは食事スペース兼リビングのような部屋になった。
 今日マドラーナにはリリアンヌの部屋で寝てもらっている。

 リリアンヌの部屋から見て左側の部屋はレファの新しい作業部屋。
 右側はマドラーナやベルネッタ、サーラたちの住居部屋。
 リビングを挟んで向こう側が闇ガチャ屋なのは変わらない。

 レファの作業部屋は特になにもない部屋だ。
 その部屋からのみ隣の商品保管部屋へ行ける。

 マドラーナやベルネッタの部屋はリリアンヌの部屋とまではいかないが立派な部屋だ。
 元作業部屋であるリビングのドアから入るとそこは廊下になっていてそれぞれの部屋へのドアがある。
 入ってすぐ左の部屋はサーラの部屋で、この部屋はまた特殊な作りになっている。

 闇ガチャ屋内もかなり変更をした。
 前はリビングのドアから見て奥にガチャレーンがあったが、それが左壁側に丸々移動。
 右奥には魔物たちがやってくる転移魔法陣がある。
 真ん中奥には帰り専用の転移魔法陣を設置する予定だ。
 帰りはいつもモンスターが増えて混雑してたからな。

 そして右の壁側には買取所への入り口となるドアを設置。
 今までカウンターだけだったのが店舗として独立した感じだ。
 モンスターからしたら場所が変わっただけにしか思わないだろう。

 わざわざ店舗にしたのはここには魔族も来るからだ。
 買取所内には魔王城下町と繋がる転移魔法陣を設置する。
 転移先は今までサーラが依頼の受付をしていた場所らしい。
 転移可能時間も日中だけにすることでモンスターと被ることはない。
 ここにいながら魔族の仕事も請け負えることになるわけだ。

 買取所の奥は鍛冶や裁縫の作業部屋になっている。
 サーラとドーラはこの部屋で作業をすることになる。
 この部屋はサーラが住む部屋にも繋がっており、さらに地下一階へ繋がる階段もある。
 真上には店舗というほどではないが交換所と交換用商品の保管庫がある。

 言うなれば自宅兼買取所兼交換所兼鍛冶屋って感じだろうか。
 もちろんサーラは地下一階に行くことはできないが。
 ドーラもここに住むのかと思ったら、変わらず二階でジャスミンと寝ている。

 一通り見たが要望通りだな。
 さすが神様だ。

 さて、そろそろ寝るか。
 これだけ変更があるとみんな大騒ぎするんじゃないか?

◇◇◇

「……ト! ヤマト! もう十四時だよ! 起きて!」

 ……十四時か。
 起きて買い出しに行く準備をしないとな。

「ねぇ! やっぱり地下一階ももっと変えようよ!」

 地下一階?
 あぁ、改装のことか。

「交換所とその商品の保管部屋ができてただろ?」
「でもそれだけじゃん!」
「他になにがいるんだよ?」
「……もっと広くとか?」

 まぁあれだけ地下二階が変われば羨ましくもなるか。
 普段アイリは地下一階での作業がほとんどだからな。
 交換所の他はガチャレーンの向きが変わったくらいだし。

「地下一階はもう少し繁盛してからだな」
「……うん」

 といっても地下一階は今のままで十分だとも思うが。

「みんなはもう見たのか?」
「うん。喜んでた」
「そうか。良かったな」
「うん」
「……地下一階も二階もアイリが作るガチャがあってこそ成り立つんだからな?」
「そうだよね。ごめんね」
「たまにはいっしょに買い出し行くか?」
「今日はお店定休日だよ?」

 そうだ、だから今日改装をしたんだったな。
 ちょっと疲れてるのかもしれない。

 さすがに三店舗も同時に経営するのは無理があるのかもな。
 いくら営業時間は短めとはいっても考えることが多すぎる。
 アイリやレファ、ジャスミンも毎日ヘトヘトだろうし。

 ……あれ?

「レファはもう起きてるのか?」
「なんか昼前に起きて一人でどこか行ったみたい」

 そんな早く起きるなんて珍しいな。
 魔王城に帰ったのか?

「リリアンヌやマドラーナたちは?」
「みんないつも通りどっか行ってるよ」
「ジャスミンやドーラは?」
「買い物」
「サーラは来てないのか?」
「来てたけど荷物を取りにくって城下町に帰ったみたい」
「……てことはアイリ一人か?」
「うん」

 この広い家に一人でいるのが寂しかったのかもしれないな。
 定休日ならわざわざ俺を起こすようなことはしないはずだし。
 特にドーラが来てからは毎日騒がしいからな。

「二人きりだとここに来たときのことを思い出すな」
「うん。まだ三か月しか経ってないしね」
「……前の世界に戻りたいか?」
「それはない。今のほうが楽しいもん」
「俺もだ」

 もし今前の世界に戻ってもいいと言われても戻らないだろうな。
 毎日の充実感が全然違う。
 それも目新しい日々が続いてる今だけかもしれないが。

「でも正直なこと言うと、もっと異世界感があってもいいかなって」
「異世界感?」
「うん。上手く言えないけどもっとドキドキやワクワクが欲しいの」

 こんな近くにラスボス的存在がいたら普通ハラハラもんだよ?
 あまりにも近くにいるせいで異世界って実感がないのかもしれない。

 う~ん、俺ができることは寿司を握ることだけ。
 となるとアイリのガチャ職人の特性を利用するしかない。
 他にガチャでなにができる?
 やはりガチャが一番の楽しみでなくてはならないからな。

「格闘場でも作るか?」
「格闘場!?」
「あぁ。冒険者対モンスターの格闘場」
「……それ面白いの?」
「さぁな」
「それにガチャ関係あるの?」
「ガチャ券を報酬にすればいい」
「ガチャ券!? その響き最高! レア度とかあったりする!?」
「レア度? 相手の強さによってもらえるレアリティを変えればいいんじゃないか?」
「虹チケとか金チケってことだよね!? それやりたい!」

 格闘場よりもガチャ券に食いついてるじゃないか。
 自分がガチャ券を使うわけじゃないのに。
 さすが色んな意味でのガチャ中毒。

 喜ばせといて悪いが、これを実現するには高すぎるハードルがあるけどな。
 闇ガチャ屋以上に闇って呼ばなくてはならなくなるかもしれない。
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