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第二十一話 王様御一行、食べる
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「本当に申し訳ございませんでしたー!!」
店の入り口の床に頭をこすりつけて土下座している騎士? がいる。
「いえ、気にしてませんから。大丈夫ですよ」
アイリは何事もなかったかのように振る舞っている。
ついさっきまで喉元に剣を突きつけられていたのに……。
「そういうわけにはいきません! 責任をとって切腹を!」
騎士じゃなくて武士なのか?
この世界にも切腹なんて言葉あるんだな。
「じゃあ一番高いセット頼んでください。お席に案内しますね」
アイリはそう言って奥のテーブル席に四人を案内した。
騎士以外の三人も非常に申し訳なさそうにしている。
俺と目が合うとみんな肩をすくめて頭を下げてきた。
というかよく入ってくる気になったな。
普通謝って帰らないか?
こんな状況ではご飯が楽しめないだろう。
寿司がマズいと思われるかもしれないじゃないか。
「ご注文どうされますか? 一番人気は竹セットです」
四人は困っている。
さっき一番高いセットを頼めと言われたのに竹セットを勧められたからだ。
「……松セット四つお願いします」
「松セットですね? かしこまりました。松セット四つお願いします!」
「はいよ」
俺は握りに入る。
アイリは味噌汁と茶碗蒸しの準備に入る。
さっきの出来事が衝撃的すぎて気付かなかったが、あの二人身なりがいいな。
あとの二人は明らかに護衛って感じだ。
客は全員平等に扱うと決めているのに、なぜだか気合が入るな。
お前らに俺の寿司の味がわかるのか? って感じだ。
っとダメだダメだ。
そんな邪念が混じっていては美味い寿司は握れない。
いつも通り、一貫一貫丁寧にだ。
「松セット」
いかなるときも寡黙な雰囲気は忘れずに。
「お待たせしました、松セットです」
アイリはいつもと変わらぬ笑顔だ。
それが逆にこわい。
少しも動じてる様子がないな。
そんなに肝が据わってたっけ?
「(アイリ、大丈夫なのか?)」
「(うん! なんともないよ?)」
小声で確認をしたが、本当に何事もなかったかのようだ。
「美味い!」
「美味しいです!」
身なりのいい二人が急に大きな声をあげる。
そこまではっきり言う人もなかなかいないぞ?
でも口に合ったんなら良かった。
「お姉さん! サーモンもう一つ頼めるか!?」
「あっ、お父様ズルい! 私もお願いします!」
悪いがウチはセットのみなんだ。
それにしてもお父様ときたか。
もしかして貴族ってやつか?
この世界にそんな制度があるのかは知らないが。
「申し訳ありません。材料の関係でセットのみの販売になっておりまして」
アイリが断りを入れる。
「むっ!? なら松セット追加で頼む!」
「私も!」
冗談ではなさそうなので、もう二セット作りにかかる。
よくそんなに食べれるな。
「はいよ追加の松セット」
今日は開店から客の入りもなかなかいいようだ。
最近は毎日黒字とまではいかないが赤字になることは少なくなってきた。
闇ガチャ屋も相変わらず好調だし。
あとはガチャ屋にもう少し客が来てくれれば言うことなしなんだが。
「お姉さん! 持ち帰り注文できるか!?」
またあの客か。
「申し訳ありませんが……」
「むぅ~そうかぁ。まぁ仕方ないか」
なんやかんや一時間近くいたのか。
話しているのは二人だけだったが。
あの騎士の人なんて寿司の味がわからなかっただろうな。
ずっとアイリのことをちらちら気にしてたし。
魔道士であろう年配の女性は店の作りが珍しいのかやたら店内を見ていた。
「ありがとう! また来るよ! 迷惑かけたね」
「また来ます! 凄く美味しかったです!」
四人は帰っていった。
たまにはああいう賑やかな人たちも悪くないな。
俺は寡黙だから直接話すことはないが。
◇◇◇
「どういうことなんだ?」
「申し訳ありません! 殺気のようなものを感じて……」
「そんなわけないだろう。あんなに可愛いお嬢さんなんだぞ?」
「それはそうなんですが……」
店を出てすぐ、騎士は王様に怒られていた。
「いや、あの子は強いよ」
「ですよね!? なんかオーラが凄かったですもん!」
「だからって敵意のない相手に襲いかかるな!」
「はいっ、すみません!」
今度は魔道士に怒られている。
「でも一番不気味なのはあの店主ですね!」
「店主が? まさか。凄腕の寿司職人ってやつじゃないか」
「だってあんな状況なのにあの場から一歩も動きませんでしたよ?」
「こわくて動けなかったんだろう」
「いえ、そのあとも何事もなかったかのようにお寿司握ってました」
騎士は店主のことも気になったようだ。
すると王女が口をはさむ。
「わかりました! 私がしばらくここに通って様子を探ろうと思います!」
「……なんの様子を探るんだ?」
「えっ!? それはほら……毎日違うネタなのかとか……」
「寿司が食べたいだけだな?」
「……だって美味しかったんですもの!」
王様は呆れてしまったようだ。
「はぁ~。そろそろ時間か?」
「はい! 間もなく十八時です!」
「では行くとしよう」
四人は地下への階段を下りていった。
店の入り口の床に頭をこすりつけて土下座している騎士? がいる。
「いえ、気にしてませんから。大丈夫ですよ」
アイリは何事もなかったかのように振る舞っている。
ついさっきまで喉元に剣を突きつけられていたのに……。
「そういうわけにはいきません! 責任をとって切腹を!」
騎士じゃなくて武士なのか?
この世界にも切腹なんて言葉あるんだな。
「じゃあ一番高いセット頼んでください。お席に案内しますね」
アイリはそう言って奥のテーブル席に四人を案内した。
騎士以外の三人も非常に申し訳なさそうにしている。
俺と目が合うとみんな肩をすくめて頭を下げてきた。
というかよく入ってくる気になったな。
普通謝って帰らないか?
こんな状況ではご飯が楽しめないだろう。
寿司がマズいと思われるかもしれないじゃないか。
「ご注文どうされますか? 一番人気は竹セットです」
四人は困っている。
さっき一番高いセットを頼めと言われたのに竹セットを勧められたからだ。
「……松セット四つお願いします」
「松セットですね? かしこまりました。松セット四つお願いします!」
「はいよ」
俺は握りに入る。
アイリは味噌汁と茶碗蒸しの準備に入る。
さっきの出来事が衝撃的すぎて気付かなかったが、あの二人身なりがいいな。
あとの二人は明らかに護衛って感じだ。
客は全員平等に扱うと決めているのに、なぜだか気合が入るな。
お前らに俺の寿司の味がわかるのか? って感じだ。
っとダメだダメだ。
そんな邪念が混じっていては美味い寿司は握れない。
いつも通り、一貫一貫丁寧にだ。
「松セット」
いかなるときも寡黙な雰囲気は忘れずに。
「お待たせしました、松セットです」
アイリはいつもと変わらぬ笑顔だ。
それが逆にこわい。
少しも動じてる様子がないな。
そんなに肝が据わってたっけ?
「(アイリ、大丈夫なのか?)」
「(うん! なんともないよ?)」
小声で確認をしたが、本当に何事もなかったかのようだ。
「美味い!」
「美味しいです!」
身なりのいい二人が急に大きな声をあげる。
そこまではっきり言う人もなかなかいないぞ?
でも口に合ったんなら良かった。
「お姉さん! サーモンもう一つ頼めるか!?」
「あっ、お父様ズルい! 私もお願いします!」
悪いがウチはセットのみなんだ。
それにしてもお父様ときたか。
もしかして貴族ってやつか?
この世界にそんな制度があるのかは知らないが。
「申し訳ありません。材料の関係でセットのみの販売になっておりまして」
アイリが断りを入れる。
「むっ!? なら松セット追加で頼む!」
「私も!」
冗談ではなさそうなので、もう二セット作りにかかる。
よくそんなに食べれるな。
「はいよ追加の松セット」
今日は開店から客の入りもなかなかいいようだ。
最近は毎日黒字とまではいかないが赤字になることは少なくなってきた。
闇ガチャ屋も相変わらず好調だし。
あとはガチャ屋にもう少し客が来てくれれば言うことなしなんだが。
「お姉さん! 持ち帰り注文できるか!?」
またあの客か。
「申し訳ありませんが……」
「むぅ~そうかぁ。まぁ仕方ないか」
なんやかんや一時間近くいたのか。
話しているのは二人だけだったが。
あの騎士の人なんて寿司の味がわからなかっただろうな。
ずっとアイリのことをちらちら気にしてたし。
魔道士であろう年配の女性は店の作りが珍しいのかやたら店内を見ていた。
「ありがとう! また来るよ! 迷惑かけたね」
「また来ます! 凄く美味しかったです!」
四人は帰っていった。
たまにはああいう賑やかな人たちも悪くないな。
俺は寡黙だから直接話すことはないが。
◇◇◇
「どういうことなんだ?」
「申し訳ありません! 殺気のようなものを感じて……」
「そんなわけないだろう。あんなに可愛いお嬢さんなんだぞ?」
「それはそうなんですが……」
店を出てすぐ、騎士は王様に怒られていた。
「いや、あの子は強いよ」
「ですよね!? なんかオーラが凄かったですもん!」
「だからって敵意のない相手に襲いかかるな!」
「はいっ、すみません!」
今度は魔道士に怒られている。
「でも一番不気味なのはあの店主ですね!」
「店主が? まさか。凄腕の寿司職人ってやつじゃないか」
「だってあんな状況なのにあの場から一歩も動きませんでしたよ?」
「こわくて動けなかったんだろう」
「いえ、そのあとも何事もなかったかのようにお寿司握ってました」
騎士は店主のことも気になったようだ。
すると王女が口をはさむ。
「わかりました! 私がしばらくここに通って様子を探ろうと思います!」
「……なんの様子を探るんだ?」
「えっ!? それはほら……毎日違うネタなのかとか……」
「寿司が食べたいだけだな?」
「……だって美味しかったんですもの!」
王様は呆れてしまったようだ。
「はぁ~。そろそろ時間か?」
「はい! 間もなく十八時です!」
「では行くとしよう」
四人は地下への階段を下りていった。
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