上 下
10 / 83

第十話 異種族

しおりを挟む
 酒場にて、俺とアイリは驚愕の事実を知ることになった。
 なんとこの世界にはエルフやドワーフといった種族が存在しているのだ。

 アイリは依頼書を見ているときにエルフやドワーフといった存在に気がついたらしい。
 俺は依頼書を出した後に、酒場の様子を端から見ていて気がついた。

 エルフは耳が長く、ドワーフは背が低い。
 イメージ通りの姿だった。

 特にドワーフは酒場に小さな子供がいると思ったくらいだ。
 背は低いのに顔には立派な髭が生えていたから少し驚いたが。

 だがエルフもドワーフもそれ以外は人間とたいして違いがないように見える

 というか俺はこの世界に一か月もいてなぜ気付かなかったんだろうか。
 ……毎日三十分ほどしか外出しないからか。
 しかも家と市場との往復のみ。

 店に食べにきてくれてたらさすがに気付くと思うんだけどな。

「えっ!? もう依頼出してきたの!?」
「あぁ、声かけられたもんでついでにな」

 俺とアイリは酒場内の飲食スペースと思われる一角にあるテーブルで話をしていた。
 どうやらなにも注文しなくても利用していいらしい。
 さすがに朝から酒を飲んでる人は……少しいるな。

「ガチャのことは話したの?」
「話したんだが、なにも聞かれなかったな」
「ふ~ん。特に決まりとかはないのかもね」

 エミリアさんはガチャという言葉を知らなかった。
 だけど内容を説明したらすぐに理解してくれた。
 もしかすると似たような商売があるのかもしれない。

「で、種族は問わないってしたのね?」
「そうだが、特に問題はないだろ?」
「うん! というよりもどういう立場なんだろう」

 人間じゃないとダメという依頼主がいることはわかった。
 エルフやドワーフは迫害されている可能性もある。
 でも少なくともこの酒場内ではそんな様子は見られない。

 今すぐにはわからないことかもしれないな。
 それにエルフやドワーフがウチで働くことになるとは思えない。
 彼らはなにか特殊な技能を持っているイメージだしな。

 人数的なことから見ても圧倒的に人間のほうが多いようだし。

「帰ってひと眠りしよう」
「そうね!」

 俺とアイリは酒場をあとにし、家に帰ると再び眠りについた。

◇◇◇

 十四時過ぎ、いつもより遅めに起き、そのあとはいつも通り買い出しに行った。
 そして仕込みをしつつ、ご飯を作っていたときだ。

「ヤマト! 下に従業員希望の人が来た!」
「なにっ!? 早いな……」

 今朝依頼書を出したばかりなのにもう来たのか。
 わざわざ夜営業に合わせてきてくれた可能性もあるか。

「お茶を出しといてくれ。すぐに行くから」

 まだ寿司屋の営業までは一時間ある。
 俺は仕込みをキリのいいところまで終え、地下へ向かおうとした。

「おはよ~」
「ん? あぁレファか。悪いが下で用事があるから先に食べてていいぞ」
「うん。なんの用事?」
「従業員希望者が来てるんだ」
「……エルフ?」
「えっ?」

 俺はレファの言ったことが一瞬理解できなかった。
 だが客人を待たせるのは悪いと思いそのまま下へ行く。
 するとそこには一人の女性が座っていた。
 アイリはテーブルの横に緊張した面持ちで立っている。

「お待たせしてすみません」
「いえ、急にお訪ねしたのは私のほうですから」

 若いな。
 アイリと同じくらいだろうか。

 とても冒険者には見えないが……。

「早速ですが、面接希望ということでよろしかったですか?」
「はい。よろしくお願いします」

 少し話しただけでも礼儀作法がしっかり身についていることがわかる。
 冒険者相手の仕事だから少々荒いくらいでも良かったんだけどな。

「依頼書を見てここに来てくれたんですよね?」
「はい。ですが依頼書が貼り出される前にエミリアさんが紹介してくれました」

 エミリアさんが?
 依頼書は貼り出さずにこの人に直接声かけたってことだよな?
 だからこそこんなに早く見つかったのかもしれないけど。
 でもそれってエミリアさんの贔屓とか入ってるんじゃないのか?
 
「アイリ、とりあえず椅子持ってきて座れ」
「え!? あ、うん!」

 とここで、アイリが緊張していた理由がわかった。
 それとさっきレファが言ったことも。

「エルフですか?」
「はい……やはりダメでしょうか?」

 やはりダメでしょうか?
 そんな聞き方をするということは他では断られるケースが多いってことだよな。
 耳以外にも人間と違う部分があるのか?
 さっきレファに聞いておくべきだった。

「いえ、実は今まであまりエルフの方と面識がなかったものですから」
「そうですよね。エルフなんかと関わりたくないですよね」

 そんなこと一言も言ってないよな?
 なにか理由がありそうだな。

「ここはそんなくだらない理由であなたを雇わないことはない」
「レファ!?」

 いつのまにかレファまで来ていたようだ。
 髪ボッサボサだけど。

「……魔族……ですか?」
「うん。だから?」
「え……だからって言われましても……」

 やはり魔族だってわかるのか。
 ん?
 人間とエルフが共存してるんならエルフからしても魔族は敵だよな?

 ……もしかしてマズイ状況なのでは?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

セラルフィの七日間戦争

炭酸吸い
ファンタジー
 世界と世界を繋ぐ次元。その空間を渡ることができる数少ない高位生命体、《マヨイビト》は、『世界を滅ぼすほどの力を持つ臓器』を内に秘めていた。各世界にとって彼らは侵入されるべき存在では無い。そんな危険生物を排除する組織《DOS》の一人が、《マヨイビト》である少女、セラルフィの命を狙う。ある日、組織の男シルヴァリーに心臓を抜き取られた彼女は、残り『七日間しか生きられない体』になってしまった。

処理中です...