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第三話 サービス枠

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 ガチャ職人は神様が準備してくれることになったはずだった。
 でもいっしょにいた女性がガチャ職人になると言ってくれたんだ。
 もちろんガチャ職人として必要な技術も仕込んでくれるらしい。

 でもそれのおかげでサービス枠という名のお詫び枠を別の要員にさけることになったんだ。

 俺が希望したのはこれまたガチャ要員。
 ただし、ガチャを作るのではなく、ガチャの商品を調達する役割としてだ。

 商品となる武器や防具は店で売ってる物でもいいかもしれない。
 商品を仕入れ、冒険者たちがガチャを引いて、また商品を仕入れる。
 それだけでも確実に儲かる自信はあった。
 確率設定次第でどうにでもなるからな。
 幸いにも当面の資金は用意してもらえるみたいだし。

 だがせっかくのサービス枠をただの買い物要員に使うのはもったいない。
 有効に使うためにも俺は少し角度を変えて考えてみたんだ。
 具体的には仕入れ先候補の拡大だ。

 そこで思いついたのが、モンスターから武器防具を買い取ることだ。

 冒険者たちはモンスターを討伐しにダンジョンに入る。
 そこでモンスターの魔石や素材を入手してくる。

 だがモンスターたちが冒険者たちを討伐した場合にはなにを得るのだろう。
 きっと金目の物を奪ったり、身ぐるみを剥がすに違いない。
 人間の体などモンスターにとってはなんの意味もないだろうからな。

 その剥がされた身ぐるみ……装備品はどうするのだろうか。
 まだ武器は装備できるかもしれないが、防具に至ってはサイズが合うなんて稀だ。
 となるとほとんどの装備品はモンスターたちにとってはただの使えない戦利品なはずだ。

 そもそもモンスターに知性があるのかどうかもわからない。
 もっといえばこの世界のシステムもよく知らない。
 つまり今考えたことは全部単なる俺の想像にすぎない。

 だから俺は神様に聞いてみた。

「モンスターと話すことはできるのか?」
「賢いモンスターは言葉が話せるわよ」
「そいつらは強いのか?」
「ボスと呼ばれるレベルになるわね」

 ボスと会話ができるならなんとかなりそうか?

「人間と良好な関係のモンスターっているのか?」
「……モンスターにはたぶんいないけど」

 そりゃそうか。
 仮にいたとしてもそれは完全に人間側のモンスターだよな。
 さすがに取引はできまい。

 俺は自分の構想を神様に話した。

「モンスターじゃなくてもいい?」
「どういうことだ?」
「魔族はどうかなって思ってね」
「魔族だと? 人間を悪くしたような姿をしてるあの魔族か?」
「えぇ、この世界の魔族は見た目は完全に人間よ」

 魔族の見た目が完全に人間って肌の色も同じなのか?
 紫色とかじゃなくて?
 角生えてたりしないのか?
 でも強いんだよな?

「人間と敵対してるんじゃないのか?」
「そうね。魔族の王が魔王だからね」
「モンスターよりタチが悪いじゃないか」
「変わり者もいるのよ。で、目的はなに?」
「魔物たちと取引できないかなと思ってさ」
「……なるほど。それならちょうどいいかも」

 人間寄りの魔族がいるってことか?
 それなら好都合だが、魔族とモンスターの関係性はどうなんだ?
 俺の中では魔王が全モンスターの頂点ってイメージなんだが。

「モンスターって人間の仲間になったりするのか?」
「なるわよ。魔物使いって職業もあるわ」
「本当にあるのか。ゲームの世界みたいだな」
「どの世界もゲームみたいなものよ。アナタが住んでた世界もね」

 神様からしたらどの世界もお遊びで作った世界ってことか。
 結局のところ俺が異世界に行こうがどうでもいいに違いないもんな。

「じゃあ、その魔族を紹介してくれ」
「わかったわ。少しいじろうか?」

 ……いじる?
 なにを?
 性格ってことか?
 こわすぎるだろ……。

「いや、そのままでいいや。合わなかったら別の方法を考える」
「そう? じゃあ明日にでも家に向かわせるわ」

 神様はその魔族と直接交渉するのか?
 そんなに人前に出ていいものなのか?

 ……性格をいじれるんだからなんでもありか。
 深くは聞かないほうがいいな。

「俺はこれからも神様とコンタクトがとれるのか?」
「神様? アタシのこと? しばらくは監視させてもらうわ」

 神様じゃないのか?
 女神様って言ったほうが良かったのか?

 その魔族とそりが合わなかったら一枠を無駄にするかもしれないな。
 でもまぁサービス分だからな。

「俺はもうこれくらいでいいよ」
「なら今からアナタたちが住むことになる家に飛ばすわね」
「あぁ、頼んだ」
「寿司屋とガチャ屋の構成を決めておいてね」

 次の瞬間、今までいた家とは別の家の中にいた。

 神様の姿は見当たらない。

「……これからよろしくな」
「はい……こちらこそよろしくお願いします」

 名前も知らない女性との生活が始まった。

 次の日、朝起きて二階から一階に行くと、そこには見知らぬ少女が佇んでいた。
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