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人間って不思議
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「人間っていうのは、つくづく不思議な生き物だと思うんだよねぇ」
「また意味の分からん事を……」
大学から帰ってきて早々に、面倒くさそうな話を振られてしまった。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、クニハルが話し始めた。
「大学って義務教育じゃ無いよね?」
「そうだな」
「って事は行きたくて行ってるんだよね?」
「まぁ……そうだな」
「それなのに、学生の多くは大学に行くことを面倒くさがるよね?それって不思議じゃない?」
「いやそれ普通だと思う……」
確かに矛盾はある。だが、それは別に珍しい話じゃ無い。
行きたいけど行きたくない、なんて現象は人間にはよくある事だ。他にも、やりたいけどやりたくない、眠たいけど眠りたくない、例を挙げたらキリが無いくらいだ。
基本的に人間は少しわがままで、自分勝手で、小さな矛盾を沢山抱えているのだ。
「普通なのかぁ。世紀の大発見かと思ったんだけどな」
「世紀の大発見舐めんな」
「歴史に名を刻んだかと思ったんだけどな~」
「歴史舐めんな」
この程度で大発見?歴史に名を刻む?甘いな。こんな事で世界を騒がせる事が可能なら、俺は今すぐにでもノーベル賞を受賞出来る。
「いや絶対無理だと思うよ」
「……ちょいちょい人の心読むのやめて貰える?」
「流石に蜂谷君がノーベル賞は……世界がひっくり返っても無理だね」
「分かってるわい!本気で思ってないから!そもそも、人の可能性は無限大とか言ってた奴が何言ってんだよ!夢も希望も無えってか!?」
自分はよく変なことを言う癖に、人の夢はバッサリ否定してくる。とは言え、別にノーベル賞を目指してる訳では無いので、さほど気にもならなかったが。(そもそも絶対取れない)
「あ、そうだ。ちょっと話戻すんだけど、今日の仕事について蜂谷君に相談が」
「いやそんな話して無かったけどね?全然話戻せて無いけどね?」
「払うのもったいないから今日分の給料ゼロでいい?」
「やだよ!なんでだよ!」
突然ノーベル賞の話を始めたかと思ったら、今度はタダ働きを要求してきた。
能天気と言うか、何と言うか、何処まで自由人なんだこいつは。(先にノーベル賞がどうこう言ったのは俺の方だったが、そんなことは気にしない)
残業代が支払われないブラック企業と言うのは聞いた事があるが、そもそもの給料がゼロと言うのは前代未聞だった。
「って言うのは嘘で、急用が出来ちゃったから、今日の仕事は一人で行ってもらいたいなと思いまして」
「え?マジで?」
「うん、出来るでしょ?飲食店みたいに料理を作る訳でも無いんだし」
「まぁそうだけどさ……」
「うんうん、物分かりが良くて助かるよ!じゃあそういう事で!頼んだよ!」
「あ、おい!」
「そうそう!アレ、机の上に置いといたから!忘れずに持っていってね!」
「アレ?」
言われた通り、机に目を向けると、そこには一冊の赤いノートがあった。
「キャリアノート!必要でしょ!」
「いらねー!役に立つ情報が分かりにくいんだよコレ!もっとマシな道具を……」
もっとマシな道具を出してくれ。そう言おうとした時には、クニハルの姿は風のように消えていた。
「最後まで聞けよ!あのヤロー!」
一人取り残された俺の叫び声が、家中に反響した。
とりあえず、次あったらシバいてやろう。俺は心の中で密かに決意を固めるのだった。
普段、あまり感情を表に出さない俺も、こいつを相手にするとどうも調子が狂う。
本当、人間ってのは不思議な生き物だな。
「また意味の分からん事を……」
大学から帰ってきて早々に、面倒くさそうな話を振られてしまった。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、クニハルが話し始めた。
「大学って義務教育じゃ無いよね?」
「そうだな」
「って事は行きたくて行ってるんだよね?」
「まぁ……そうだな」
「それなのに、学生の多くは大学に行くことを面倒くさがるよね?それって不思議じゃない?」
「いやそれ普通だと思う……」
確かに矛盾はある。だが、それは別に珍しい話じゃ無い。
行きたいけど行きたくない、なんて現象は人間にはよくある事だ。他にも、やりたいけどやりたくない、眠たいけど眠りたくない、例を挙げたらキリが無いくらいだ。
基本的に人間は少しわがままで、自分勝手で、小さな矛盾を沢山抱えているのだ。
「普通なのかぁ。世紀の大発見かと思ったんだけどな」
「世紀の大発見舐めんな」
「歴史に名を刻んだかと思ったんだけどな~」
「歴史舐めんな」
この程度で大発見?歴史に名を刻む?甘いな。こんな事で世界を騒がせる事が可能なら、俺は今すぐにでもノーベル賞を受賞出来る。
「いや絶対無理だと思うよ」
「……ちょいちょい人の心読むのやめて貰える?」
「流石に蜂谷君がノーベル賞は……世界がひっくり返っても無理だね」
「分かってるわい!本気で思ってないから!そもそも、人の可能性は無限大とか言ってた奴が何言ってんだよ!夢も希望も無えってか!?」
自分はよく変なことを言う癖に、人の夢はバッサリ否定してくる。とは言え、別にノーベル賞を目指してる訳では無いので、さほど気にもならなかったが。(そもそも絶対取れない)
「あ、そうだ。ちょっと話戻すんだけど、今日の仕事について蜂谷君に相談が」
「いやそんな話して無かったけどね?全然話戻せて無いけどね?」
「払うのもったいないから今日分の給料ゼロでいい?」
「やだよ!なんでだよ!」
突然ノーベル賞の話を始めたかと思ったら、今度はタダ働きを要求してきた。
能天気と言うか、何と言うか、何処まで自由人なんだこいつは。(先にノーベル賞がどうこう言ったのは俺の方だったが、そんなことは気にしない)
残業代が支払われないブラック企業と言うのは聞いた事があるが、そもそもの給料がゼロと言うのは前代未聞だった。
「って言うのは嘘で、急用が出来ちゃったから、今日の仕事は一人で行ってもらいたいなと思いまして」
「え?マジで?」
「うん、出来るでしょ?飲食店みたいに料理を作る訳でも無いんだし」
「まぁそうだけどさ……」
「うんうん、物分かりが良くて助かるよ!じゃあそういう事で!頼んだよ!」
「あ、おい!」
「そうそう!アレ、机の上に置いといたから!忘れずに持っていってね!」
「アレ?」
言われた通り、机に目を向けると、そこには一冊の赤いノートがあった。
「キャリアノート!必要でしょ!」
「いらねー!役に立つ情報が分かりにくいんだよコレ!もっとマシな道具を……」
もっとマシな道具を出してくれ。そう言おうとした時には、クニハルの姿は風のように消えていた。
「最後まで聞けよ!あのヤロー!」
一人取り残された俺の叫び声が、家中に反響した。
とりあえず、次あったらシバいてやろう。俺は心の中で密かに決意を固めるのだった。
普段、あまり感情を表に出さない俺も、こいつを相手にするとどうも調子が狂う。
本当、人間ってのは不思議な生き物だな。
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