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第6部 西校舎攻略編
第171話 意気!チョーヒの義心!
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渡り廊下を挟んだチョーヒ軍とゲンガン軍の攻防は、チョーヒの勝利で幕を下ろした。敗れたゲンガンはチョーヒ軍の捕虜となった。
「なに、ゲンガン将軍が倒されただと!
だから、私は最初から戦うことに反対だったんだ! 降伏だ! 降伏するぞ!」
ゲンガン敗北の報が届けられると、教室の管理者・チョウサクはすぐに降伏を決断。自分たちが守っている教室をチョーヒに明け渡した。
チョーヒ軍は堂々と手に入れた教室に入り、西校舎の東端エリアの攻略に成功した。
後に残る問題は、気を失ったためにそのままになっていた防衛軍の指揮官・ゲンガンの去就であった……。
「んん、ここは……」
チョウサクが教室を明け渡してしばらく後、髭面の防衛指揮官・ゲンガンが再び目を覚ました。
「目が覚めたんだぜ、髭面。
お前が寝てる間にお前の防衛軍とチョウサクらは降伏したんだぜ。
後はお前一人なんだぜ!」
意識を取り戻したゲンガンは自身が縄で縛られていることを認識した。彼が周囲を見回すと、そこは見慣れたチョウサクの守っていたはずの教室であった。
ゲンガンの真正面にはお団子ヘアーの少女・チョーヒが勝ち誇った顔で仁王立ちしている。その後ろに深青色の髪にメガネの男、軍師・ソウヨを初めチョーヒの部下たちが並んでいた。
「髭面、オレは事前に降伏勧告もしてやったのに、お前だけが抗戦を主張したそうだぜ?
戦力差もわかっていたはずなのになんで敢えて戦いの道を選んだんだぜ?」
チョーヒはあからさまではないが、怒りのこもった口調でゲンガンを問い詰めた。
チョーヒとしては早く義兄・リュービの元に行きたかった。それに渡り廊下の攻略前に後続のチョーウンらに追いつかれていたら面目は丸潰れだ。彼女は余計な手間を取らせたゲンガンに腹を立てていた。
しかし、強者のチョーヒの怒気を感じながらも髭面の指揮官・ゲンガンは取り乱す様子もなく答えた。
「君たちは無礼にも我らの校舎を侵略した。
君たちは非戦闘員を脅して降伏したのを喜んでいるようだな。
だが、我が校舎には倒される将軍はいても、降伏する将軍はいない」
縛られてなお、堂々とした態度を貫くゲンガンに、チョーヒは腹を立てて怒鳴りつけた。
「オレと力比べをして、まだその態度をとるとはいい度胸なんだぜ!
そんなに言うなら望み通りぶっ倒してやるんたぜ!」
チョーヒは鬼の形相で今まさにゲンガンに掴み掛からんばかりの様子であった。周囲のチョーヒの部下たちも戦々恐々としてことの成り行きを見守った。
だが、ゲンガンはその怒りを間近で見ながらも、全く狼狽えることもなく答えた。
「既に決着はついた。
煮るなり焼くなり好きにすると良い。
何故、勝者の君が腹を立てることがある」
そのはっきりとしたゲンガンの物言いに、周囲の兵士たちに緊張が走る。今のチョーヒの怒りの火にゲンガンの油が注がれれば、自分たちも巻き添えになるのではと、返ってチョーヒの兵士たちの方が取り乱し始めた。
その空気を感じ取った軍師・ソウヨは、兵士を代表してチョーヒに進言した。
「チョーヒ将軍、これから私たちは多くの敵を相手にしなければなりません。
来たるべき敵への牽制のためにも、降伏を拒んだ指揮官に関する処分には強い態度で臨まねばなりません。
ここは軍法に従い、処罰致しましょう」
ソウヨはこれで事態は丸く収まると信じての進言であった。だが、チョーヒはそれを拒否した。
「待つんだぜ、ソウヨ」
そういうとチョーヒはゲンガンを縛っていた縄を解いてやった。
「なんのつもりだ、チョーヒよ」
いくらチョーヒに脅されても身動ぎ一つしなかったゲンガンだったが、このチョーヒの行動には驚きを隠せない様子であった。
一方のチョーヒは、それまでの鬼の形相とは打って変わって、神妙な面持ちでゲンガンに答えた。
「髭……いや、ゲンガン。
お前は堂々とした男だぜ。それをここで討ち倒すのはオレの望むことじゃないんだぜ。
好きにどこにでも行けばいいんだぜ」
脅しても怯まぬゲンガンの態度に感服したチョーヒは、なんと彼を釈放した。
せっかくの捕虜を放とうとするチョーヒに対して、軍師・ソウヨは思い止めようとこれを諌めた。
「チョーヒ将軍、それではこの男は再び我らの敵になりますよ!」
だが、チョーヒは決定を覆そうとはしなかった。
「なら、また相手をすればいいんだぜ。
オレたちは西校舎を手に入れるために来たが、ぶち壊すためにきたわけじゃないんだぜ」
そのチョーヒの態度に、今度はゲンガンの方が感心して、彼女に尋ねた。
「チョーヒよ、君は噂に聞いた残虐非道の将とは違うようだ。やはり噂なぞ当てにならんものだ。
聞かせてほしい。君たちは何故、西校舎に来た?」
それまでのゲンガンはリュービ一党を征服者、破壊者の類と思っていた。だが、今チョーヒは手に入れることと壊すことは違うと区別してみせた。ゲンガンはチョーヒに興味を示した。
だが、チョーヒは面倒な話とばかりに言い渋った。
「そういう話はコウメイとかに聞いて欲しいんだぜ……」
「いや、誰でもない、君の言葉で聞きたい」
そう聞かれれば答えるしか無い。チョーヒはこれも義兄・リュービのためと思って、自分なりの言葉で語り出した。
「うーん、オレたちが西校舎を必要とするのは、アニキ、リュービがソウソウと戦うためだぜ。
このままじゃ、この学園はソウソウの天下になっちまうんだぜ。アニキはそれを食い止めたいけど、今はまだそれだけの力がないんだぜ。
だから、西校舎を手に入れてソウソウに対抗できるだけの力を得ようとしているんだぜ。
アニキは西校舎を手に入れようとしているけど、アニキの目標はあくまでその先のソウソウとの戦いのためで、侵略ではないんだぜ」
ゲンガンはチョーヒの一語一句をしっかりと聞いてから尋ねた。
「ふむ、ソウソウと戦うためか。
しかし、西校舎を手に入れたとて、それでソウソウに勝てる勢力になぞなるまい」
「お前も赤壁の勝利を知っているはずだぜ。
アニキは確かに今はまだ力は弱っちいし、西校舎を合わせてもまだまだかもしれないだぜ。
でも、ソウソウの支配をひっくり返せるだけの力を秘めた男なんだぜ!」
チョーヒの熱を帯びた語りを一通り聞き終わると、ゲンガンは自陣を振り返りながらもしっかりとした口調で語り出した。
「思えばリュウショウ様はソウソウに坑がおうともせず、ただ眼の前のチョウロを倒すことにのみ力を注いできた方であった。
学園の選挙戦なぞ無縁と思っていたが、このソウソウ天下の情勢で、まだそれだけ坑がおうとする者がいるのだな。
良かろう、このゲンガン、チョーヒ将軍の軍門に下り、リュービ様の配下となろう」
チョーヒの語りと態度に感じるところのあったゲンガンは彼女に降伏した。
~~~
後続のチョーウン・コウメイ軍がチョーヒ軍に合流したのはそれから間もなくのことであった。
「よぉ、チョーウンにコウメイ、遅かったんだぜ!
お前らがあんまり遅いもんだから、オレだけで教室一つ陥落させちゃったんだぜ」
やって来たチョーウン・コウメイらに対して開口一番、チョーヒは得意顔でそう話す。
これに対して野球帽をかぶった、ジャージの上着にスパッツ姿のボーイッシュな女生徒・チョーウンはからかい混じりの口調で尋ねた。
「チョーヒのことだから無理やり力ずくで陥落させたんだろう?」
「へへへ、そんな事ないんだぜ。
このゲンガンはオレの誠心誠意の説得に応じて投降を決断したんだぜ」
そう言ってチョーヒは傍らの髭面の男を指し示した。
「チョーヒの言葉は本当かい?」
チョーウンは訝しんだ様子で男に尋ねた。
「はい、某はチョーヒ将軍の説得に感化され、リュービ様の配下に加わることを決めました。
チョーウン将軍、よろしくお願いいたします」
髭面の男・ゲンガンはそうはっきりと断言した。
「うーん、信じられないな」
チョーウンはそう言い、まだ半信半疑であった。だが、証拠を見せたチョーヒはますます得意気でチョーウンに話した。
「へへん、いつまでもオレが力だけの武将だと思うんじゃないんだぜ!」
チョーヒがチョーウン相手に得意になっている頃、華奢な体つきの小柄な少女・コウメイは、教室の隅でチョーヒの軍師として同行していたメガネを掛けた男子生徒・ソウヨに話しかけた。
「どうでしたか?
チョーヒさんの軍に同行して?」
コウメイの問いかけにソウヨはハキハキと答えた。
「はい。チョーヒ将軍は初めは武力頼みの軽率短慮な人物かと思って私は気張って接しておりました。
ですが、実際にともにしてみると、義理人情を重んじ、リュービ様の大義を誰よりも理解されています。
一代の国士というべき人物です」
そう語るソウヨに、コウメイは頷き返したがら答えた。
「なるほど、良い経験になったようです。
ソウヨ、あなたはこのままチョーヒさんの軍師として彼女を支え、そして、よく学びなさい。
十分な経験を積んだ後には、私の側近として働いてもらいます」
「わかりました。コウメイ様の下で働くその日まで、チョーヒ将軍の軍師として精一杯働かせていただきます」
ソウヨはそう強く述べると、チョーヒの元へと戻っていった。
「おそらく、チョーヒさんも後輩であるソウヨを前にして指揮官としての意識が強く出たことでしょう。
ソウヨも四角四面で融通の利かないところがありましたが、それだけで人が動くわけではありません。チョーヒさんから人の動かし方を学ぶことでしょう。
ソウヨをチョーヒさんの軍師とすることでお互いに良い影響が出たみたいですね」
元々、ソウヨをチョーヒの軍師に任命したのはコウメイであった。その人事が直情的だが経験豊富なチョーヒと、冷静だが経験の乏しいソウヨ両方に良い影響を及ぼしたことをコウメイは感じ取った。
~~~
先鋒軍・チョーヒの活躍により西校舎の東端を押さえたリュービ援軍。
軍師・コウメイは西校舎の見取り図を手に、次の経路の説明を始めた。
「さて、チョーヒさんたちの活躍で東端の教室を手に入れることが出来ました。つまり、私たちは西校舎の玄関を押さえました。
敵・リュウショウの本拠地やリュービさんの軍は西校舎の西側にいます。なので、我々は東から西へ移動しなければなりません。
しかし、そのまま西側を目指したのでは、北部や南部は手つかずのままになってしまいます。
そこで軍を三部隊に分け、北道、中道、南道の三ルートからリュービさんのいる西側を目指します。
北道にはチョーヒさんの部隊に、南道にはチョーウンの部隊にお任せいたします。
中道は私、コウメイが行き、出来るだけ早くリュービさんの軍と合流します」
コウメイが見取り図を指しながらそう語ると、それを聞いたチョーヒが駄々をこね始めた。
「えー、コウメイばっかズルいんだぜ!
オレもアニキに早く合流したいんだぜ!」
「私は何も早くリュービさんに会いたいがために中道を行くわけではありません。退場した軍師・ホウトウさんの穴を埋めるためです。
それにチョーヒさんにお任せする北部は重要なエリアです。
北には敵のリュウショウ陣営の最も有力な武将・ホーギがおります。今、北ではこのホーギの軍と我らの陣営のカクシュンさんの軍が戦いの真っ最中だそうです。
さらに北には別勢力のチョウロもおります。こちらもいつ我らに襲いかかるかわかりません。
そのように危険な場所だからこそ、リュービ軍随一の猛将であるチョーヒさんにお願いするのです」
「う、うーん、そう言われると弱いんだぜ……」
コウメイの説明にチョーヒは押されてしまう。
「この戦いの重要さはチョーヒさんもよく理解されているはずだと思ったのですが」
さらにコウメイのダメ押しの台詞でチョーヒは観念した。少し前にゲンガンに語った手前、チョーヒも納得するしかなかった。
「わ、わかったんだぜ。北はオレに任せるんだぜ!」
「では、チョーヒさんには北をお願いします。ゲンガンさんとその部隊は副将として連れて行ってください。
チョーウンさんは南をお願いします。こちらは北よりも手つかずです。慎重にお願いします」
「ああ、任せておいてよ!」
コウメイは攻略した東端エリアの守りとして新将・ホキョウを残し、彼女らの援軍は北道、中道、南道の三ルートを進軍した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新話まで読んでいただきありがとうございました。
三国志が好き、三国志に興味が持てたと思っていただけたのなら、お気に入り登録、感想をよろしくお願いいたします。
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「なに、ゲンガン将軍が倒されただと!
だから、私は最初から戦うことに反対だったんだ! 降伏だ! 降伏するぞ!」
ゲンガン敗北の報が届けられると、教室の管理者・チョウサクはすぐに降伏を決断。自分たちが守っている教室をチョーヒに明け渡した。
チョーヒ軍は堂々と手に入れた教室に入り、西校舎の東端エリアの攻略に成功した。
後に残る問題は、気を失ったためにそのままになっていた防衛軍の指揮官・ゲンガンの去就であった……。
「んん、ここは……」
チョウサクが教室を明け渡してしばらく後、髭面の防衛指揮官・ゲンガンが再び目を覚ました。
「目が覚めたんだぜ、髭面。
お前が寝てる間にお前の防衛軍とチョウサクらは降伏したんだぜ。
後はお前一人なんだぜ!」
意識を取り戻したゲンガンは自身が縄で縛られていることを認識した。彼が周囲を見回すと、そこは見慣れたチョウサクの守っていたはずの教室であった。
ゲンガンの真正面にはお団子ヘアーの少女・チョーヒが勝ち誇った顔で仁王立ちしている。その後ろに深青色の髪にメガネの男、軍師・ソウヨを初めチョーヒの部下たちが並んでいた。
「髭面、オレは事前に降伏勧告もしてやったのに、お前だけが抗戦を主張したそうだぜ?
戦力差もわかっていたはずなのになんで敢えて戦いの道を選んだんだぜ?」
チョーヒはあからさまではないが、怒りのこもった口調でゲンガンを問い詰めた。
チョーヒとしては早く義兄・リュービの元に行きたかった。それに渡り廊下の攻略前に後続のチョーウンらに追いつかれていたら面目は丸潰れだ。彼女は余計な手間を取らせたゲンガンに腹を立てていた。
しかし、強者のチョーヒの怒気を感じながらも髭面の指揮官・ゲンガンは取り乱す様子もなく答えた。
「君たちは無礼にも我らの校舎を侵略した。
君たちは非戦闘員を脅して降伏したのを喜んでいるようだな。
だが、我が校舎には倒される将軍はいても、降伏する将軍はいない」
縛られてなお、堂々とした態度を貫くゲンガンに、チョーヒは腹を立てて怒鳴りつけた。
「オレと力比べをして、まだその態度をとるとはいい度胸なんだぜ!
そんなに言うなら望み通りぶっ倒してやるんたぜ!」
チョーヒは鬼の形相で今まさにゲンガンに掴み掛からんばかりの様子であった。周囲のチョーヒの部下たちも戦々恐々としてことの成り行きを見守った。
だが、ゲンガンはその怒りを間近で見ながらも、全く狼狽えることもなく答えた。
「既に決着はついた。
煮るなり焼くなり好きにすると良い。
何故、勝者の君が腹を立てることがある」
そのはっきりとしたゲンガンの物言いに、周囲の兵士たちに緊張が走る。今のチョーヒの怒りの火にゲンガンの油が注がれれば、自分たちも巻き添えになるのではと、返ってチョーヒの兵士たちの方が取り乱し始めた。
その空気を感じ取った軍師・ソウヨは、兵士を代表してチョーヒに進言した。
「チョーヒ将軍、これから私たちは多くの敵を相手にしなければなりません。
来たるべき敵への牽制のためにも、降伏を拒んだ指揮官に関する処分には強い態度で臨まねばなりません。
ここは軍法に従い、処罰致しましょう」
ソウヨはこれで事態は丸く収まると信じての進言であった。だが、チョーヒはそれを拒否した。
「待つんだぜ、ソウヨ」
そういうとチョーヒはゲンガンを縛っていた縄を解いてやった。
「なんのつもりだ、チョーヒよ」
いくらチョーヒに脅されても身動ぎ一つしなかったゲンガンだったが、このチョーヒの行動には驚きを隠せない様子であった。
一方のチョーヒは、それまでの鬼の形相とは打って変わって、神妙な面持ちでゲンガンに答えた。
「髭……いや、ゲンガン。
お前は堂々とした男だぜ。それをここで討ち倒すのはオレの望むことじゃないんだぜ。
好きにどこにでも行けばいいんだぜ」
脅しても怯まぬゲンガンの態度に感服したチョーヒは、なんと彼を釈放した。
せっかくの捕虜を放とうとするチョーヒに対して、軍師・ソウヨは思い止めようとこれを諌めた。
「チョーヒ将軍、それではこの男は再び我らの敵になりますよ!」
だが、チョーヒは決定を覆そうとはしなかった。
「なら、また相手をすればいいんだぜ。
オレたちは西校舎を手に入れるために来たが、ぶち壊すためにきたわけじゃないんだぜ」
そのチョーヒの態度に、今度はゲンガンの方が感心して、彼女に尋ねた。
「チョーヒよ、君は噂に聞いた残虐非道の将とは違うようだ。やはり噂なぞ当てにならんものだ。
聞かせてほしい。君たちは何故、西校舎に来た?」
それまでのゲンガンはリュービ一党を征服者、破壊者の類と思っていた。だが、今チョーヒは手に入れることと壊すことは違うと区別してみせた。ゲンガンはチョーヒに興味を示した。
だが、チョーヒは面倒な話とばかりに言い渋った。
「そういう話はコウメイとかに聞いて欲しいんだぜ……」
「いや、誰でもない、君の言葉で聞きたい」
そう聞かれれば答えるしか無い。チョーヒはこれも義兄・リュービのためと思って、自分なりの言葉で語り出した。
「うーん、オレたちが西校舎を必要とするのは、アニキ、リュービがソウソウと戦うためだぜ。
このままじゃ、この学園はソウソウの天下になっちまうんだぜ。アニキはそれを食い止めたいけど、今はまだそれだけの力がないんだぜ。
だから、西校舎を手に入れてソウソウに対抗できるだけの力を得ようとしているんだぜ。
アニキは西校舎を手に入れようとしているけど、アニキの目標はあくまでその先のソウソウとの戦いのためで、侵略ではないんだぜ」
ゲンガンはチョーヒの一語一句をしっかりと聞いてから尋ねた。
「ふむ、ソウソウと戦うためか。
しかし、西校舎を手に入れたとて、それでソウソウに勝てる勢力になぞなるまい」
「お前も赤壁の勝利を知っているはずだぜ。
アニキは確かに今はまだ力は弱っちいし、西校舎を合わせてもまだまだかもしれないだぜ。
でも、ソウソウの支配をひっくり返せるだけの力を秘めた男なんだぜ!」
チョーヒの熱を帯びた語りを一通り聞き終わると、ゲンガンは自陣を振り返りながらもしっかりとした口調で語り出した。
「思えばリュウショウ様はソウソウに坑がおうともせず、ただ眼の前のチョウロを倒すことにのみ力を注いできた方であった。
学園の選挙戦なぞ無縁と思っていたが、このソウソウ天下の情勢で、まだそれだけ坑がおうとする者がいるのだな。
良かろう、このゲンガン、チョーヒ将軍の軍門に下り、リュービ様の配下となろう」
チョーヒの語りと態度に感じるところのあったゲンガンは彼女に降伏した。
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後続のチョーウン・コウメイ軍がチョーヒ軍に合流したのはそれから間もなくのことであった。
「よぉ、チョーウンにコウメイ、遅かったんだぜ!
お前らがあんまり遅いもんだから、オレだけで教室一つ陥落させちゃったんだぜ」
やって来たチョーウン・コウメイらに対して開口一番、チョーヒは得意顔でそう話す。
これに対して野球帽をかぶった、ジャージの上着にスパッツ姿のボーイッシュな女生徒・チョーウンはからかい混じりの口調で尋ねた。
「チョーヒのことだから無理やり力ずくで陥落させたんだろう?」
「へへへ、そんな事ないんだぜ。
このゲンガンはオレの誠心誠意の説得に応じて投降を決断したんだぜ」
そう言ってチョーヒは傍らの髭面の男を指し示した。
「チョーヒの言葉は本当かい?」
チョーウンは訝しんだ様子で男に尋ねた。
「はい、某はチョーヒ将軍の説得に感化され、リュービ様の配下に加わることを決めました。
チョーウン将軍、よろしくお願いいたします」
髭面の男・ゲンガンはそうはっきりと断言した。
「うーん、信じられないな」
チョーウンはそう言い、まだ半信半疑であった。だが、証拠を見せたチョーヒはますます得意気でチョーウンに話した。
「へへん、いつまでもオレが力だけの武将だと思うんじゃないんだぜ!」
チョーヒがチョーウン相手に得意になっている頃、華奢な体つきの小柄な少女・コウメイは、教室の隅でチョーヒの軍師として同行していたメガネを掛けた男子生徒・ソウヨに話しかけた。
「どうでしたか?
チョーヒさんの軍に同行して?」
コウメイの問いかけにソウヨはハキハキと答えた。
「はい。チョーヒ将軍は初めは武力頼みの軽率短慮な人物かと思って私は気張って接しておりました。
ですが、実際にともにしてみると、義理人情を重んじ、リュービ様の大義を誰よりも理解されています。
一代の国士というべき人物です」
そう語るソウヨに、コウメイは頷き返したがら答えた。
「なるほど、良い経験になったようです。
ソウヨ、あなたはこのままチョーヒさんの軍師として彼女を支え、そして、よく学びなさい。
十分な経験を積んだ後には、私の側近として働いてもらいます」
「わかりました。コウメイ様の下で働くその日まで、チョーヒ将軍の軍師として精一杯働かせていただきます」
ソウヨはそう強く述べると、チョーヒの元へと戻っていった。
「おそらく、チョーヒさんも後輩であるソウヨを前にして指揮官としての意識が強く出たことでしょう。
ソウヨも四角四面で融通の利かないところがありましたが、それだけで人が動くわけではありません。チョーヒさんから人の動かし方を学ぶことでしょう。
ソウヨをチョーヒさんの軍師とすることでお互いに良い影響が出たみたいですね」
元々、ソウヨをチョーヒの軍師に任命したのはコウメイであった。その人事が直情的だが経験豊富なチョーヒと、冷静だが経験の乏しいソウヨ両方に良い影響を及ぼしたことをコウメイは感じ取った。
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軍師・コウメイは西校舎の見取り図を手に、次の経路の説明を始めた。
「さて、チョーヒさんたちの活躍で東端の教室を手に入れることが出来ました。つまり、私たちは西校舎の玄関を押さえました。
敵・リュウショウの本拠地やリュービさんの軍は西校舎の西側にいます。なので、我々は東から西へ移動しなければなりません。
しかし、そのまま西側を目指したのでは、北部や南部は手つかずのままになってしまいます。
そこで軍を三部隊に分け、北道、中道、南道の三ルートからリュービさんのいる西側を目指します。
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「えー、コウメイばっかズルいんだぜ!
オレもアニキに早く合流したいんだぜ!」
「私は何も早くリュービさんに会いたいがために中道を行くわけではありません。退場した軍師・ホウトウさんの穴を埋めるためです。
それにチョーヒさんにお任せする北部は重要なエリアです。
北には敵のリュウショウ陣営の最も有力な武将・ホーギがおります。今、北ではこのホーギの軍と我らの陣営のカクシュンさんの軍が戦いの真っ最中だそうです。
さらに北には別勢力のチョウロもおります。こちらもいつ我らに襲いかかるかわかりません。
そのように危険な場所だからこそ、リュービ軍随一の猛将であるチョーヒさんにお願いするのです」
「う、うーん、そう言われると弱いんだぜ……」
コウメイの説明にチョーヒは押されてしまう。
「この戦いの重要さはチョーヒさんもよく理解されているはずだと思ったのですが」
さらにコウメイのダメ押しの台詞でチョーヒは観念した。少し前にゲンガンに語った手前、チョーヒも納得するしかなかった。
「わ、わかったんだぜ。北はオレに任せるんだぜ!」
「では、チョーヒさんには北をお願いします。ゲンガンさんとその部隊は副将として連れて行ってください。
チョーウンさんは南をお願いします。こちらは北よりも手つかずです。慎重にお願いします」
「ああ、任せておいてよ!」
コウメイは攻略した東端エリアの守りとして新将・ホキョウを残し、彼女らの援軍は北道、中道、南道の三ルートを進軍した。
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最新話まで読んでいただきありがとうございました。
三国志が好き、三国志に興味が持てたと思っていただけたのなら、お気に入り登録、感想をよろしくお願いいたします。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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