学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第6部 西校舎攻略編

第140話 決定!リュービ遠征軍!

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 南校舎・リュービ陣営~

 俺たちの元に再び西校舎の使者・ホーセーが訪ねてきた。いや、今はもう俺たちの新たな仲間・ホーセーと呼ぶべきだろう。

 セミロングの黒髪に色白の肌、帽子に片眼鏡、厚手のコートに黒手袋をした女生徒・ホーセーは俺の前に進み出て、一礼した。

「リュービ様、ホーセーただいま戻りました。

 お約束どおり、リュウショウよりチョウロ討伐の依頼を引き出して参りました」

「そうか、よくやってくれた」

 俺はホーセーの背後にもう一人、男子生徒が立っているのに目が行った。俺の視線に気づき、その男子生徒をホーセーが紹介する。

「彼は前に話しました我らの同志・モウタツです。彼も私たちの計画に賛同しております」

 その紹介されたロングの茶髪に切れ長の目、近代的な黒い軍服を着た男子生徒・モウタツも、俺の前に進み出て、ひざを付いて答えた。

「俺は孟山達敬たけやま・たつたか、通称をモウタツと申します。この学園の卒業生・モウタの弟にして、元は中央校舎より流れ、西校舎のリュウショウの元、不遇をかこつておりました。この度、高名なリュービ様のご計画に触れ、参上いたした次第でございます。はなは不肖ふしょうの身ではございますが、リュービ様の配下に恥じぬよう、粉骨砕身ふんこつさいしん……」

 軽い挨拶を受けるつもりだったが、相手のモウタツは滔々とうとうと語りだして、付け入る隙を与えない。こちらが困っているのを察したか、ついにはホーセーによってたしなめられた。

「モウタツ、長いですよ」

「おう、これは失礼仕った。

 これからはリュービ様の配下として務めていきますのでよろしくお願いいたしまする」

 厳かに拝礼をするモウタツに少々面食らいながらも、俺は家臣の申し入れを受け入れた。

「あ、ああ、よろしく頼むよ、モウタツ。

 それで、早速で悪いが今後について話し合いたい。二人とも会議室に来て欲しい」

 二人はリュービの案内で彼らの会議室へとやってきた。そこには武将のカンウ・チョーヒ・チョーウンや軍師のコウメイ・ホウトウら、リュービ軍を代表する文武の官が既にそろっていた。

 ホーセー・モウタツの新参二人は、彼ら重臣たちと並ぶ席に案内された。

「まさか、来て早々にこのような方々と同列に並ぶとは思いませんでした。さすが、リュービ殿、準備がお早いですな」

 モウタツが独り言のようにもらすが、ホーセーが返す間もなく、早々に会議ははじめられた。

「それでは、早速、会議を始めよう。

 ホーセー、リュウショウ部長からの要望は、俺たちリュービ軍によるチョウロの討伐であったね」

 開始早々当てられ、ホーセーは起立して答えた。

「はい、チョウロは長らく西校舎の北部を陣取り、西校舎のリュウショウとは不倶戴天ふぐたいてんの敵でありました。

 しかし、両者の力は拮抗きっこうし、未だに決着はつかず。そのために、外部からリュービ様を招いて討伐してもらおうという話となりました」

「そして、ホーセー。君が俺に提案してくれた策は、それを利用しようというものだったね」

「はい。西校舎の生徒の多くは扱いやすいリュウショウを神輿にしているだけで、忠誠心のある者は数えるほどしかありません。

 また、ソウソウの勢力が刻一刻こくいっこくと迫る今、リュウショウのリーダーシップに疑問符を浮かべる者も少なくありません。

 リュービ様が西校舎に来られ、広く恩徳をほどこしたならば、西校舎は自然とリュービ様になびくことでしょう」

 ホーセーの提案した策は、チョウロ討伐にかこつけて西校舎に侵入し、その討伐の間に西校舎を内から乗っ取ってしまうというものだ。

 ホーセーが一通り話し終わると、今度は俺がみんなに向けて話し出す。

「みんな、ホーセーの策は今聞いてもらった通りだ。既にこの策はコウメイ・ホウトウの両軍師の賛同を得て、俺も実行を決断している。

 よって、我らはホーセーの策にのっとり、これより天下三分の計の第二段階、西校舎確保のために動き出す!」

 リュービの声に応じ、彼の武将たちが一斉に賛同の声を上げる。

 その様子を見て、新参のホーセーは既に西校舎攻略という目標をこの場にいる臣下一同が把握していることを察し、隣のモウタツと互いに顔を見合って小声で話した。

「さすが、リュービ軍だ。上も下も目標をしっかりと認識している。ただのその場しのぎに徹するリュウショウ軍とは違う」

「その上、新参の俺たちにも会議の内容をここまで見せてくれている。これは面白い軍に入ったものだよ」

 ひとしきり会合が盛り上がったところで、リュービが次の議題についての話を始め出した。

「さて、次に話し合わなければならないのは西校舎に差し向ける軍の編成だ。西校舎への軍の総司令官は既に話に出てきているように俺・リュービが務めよう。

 そして、この策で大事なことは南校舎へ残す人員の方だ。場合によっては俺たちの西校舎の攻略は長期に及ぶ可能性がある。俺たちが留守の間に南校舎を失ってしまっては、遠征先の俺たちは行くところも帰るところも無くし、勢力の消滅になりかねない。

 そこで、カンウ・チョーヒ。二人には引き続きソウソウに備え、北部前線の防衛を行ってもらいたい」

 俺はカンウ・チョーヒの方へと向き、そう告げたが、どうも二人の顔を見るに不満気な様子だ。




「なあ、アニキ、やっぱりオレたちもアニキの軍についていっちゃダメなんだぜ?」

 背が低い、頭に中華風のお団子カバーを左右に二つ着けていた俺の義妹・チョーヒは、いつもの元気な雰囲気はどこへやらで、眉を斜めに垂らしてそう尋ねてきた。

「チョーヒ、それは前にも話し合ったじゃないか」

 俺がもう一度説明しようとすると、今度はその隣に座るチョーヒとは対照的に背の高い女生徒が同じように尋ねてくる。

「ですが、兄さん。やはり私たち二人ともを置いていかなくてもいいんじゃないですか?」

 その背の高い、腰まで届く長く美しい黒髪にお嬢様のような雰囲気の女生徒はもう一人の俺の義妹・カンウであった。

 いつもは元気の有り余るチョーヒをたしなめる立場にあるカンウだが、どうも今回の策はカンウもよく思っていないようだ。

「カンウまで……。

 前に言っただろう。まず、南校舎の防衛が第一だと。

 それに俺たちはリュウショウ軍を一先ず安心させておく必要があるんだ。まずは安心してもらって、心を開いてもらう必要がある。そうして、ようやくこちらの話を聞いてもらえる。

 そのためには有名な武将は連れて行くわけにはいかない。カンウ・チョーヒは俺の義妹で、我が軍の主力だ。だから、あえて二人を置いていくんだよ」

 南校舎はソウソウの領土とも隣接している。その隣接地を守ってもらうのはやはり、カンウ・チョーヒしか考えられない。俺も常に一緒にいた二人と離れることに寂しさを感じているが、判断としてこれが最良だろう。

「わかったんだぜ……」

「それはわかっていますが……」

 チョーヒは納得してくれたようだが、カンウはまだ納得しない様子だ。彼女がここまで聞き分けが悪いのも珍しい。

「大丈夫だって。西校舎なんてここのすぐ隣じゃないか。何かあればすぐ戻ってくるさ」

「ええ……わかってます……

 わかりました。西校舎防衛の任務、慎んでお受けします。兄さん、お気をつけて」

 しぶっていたカンウもようやく納得してくれたようだ。

「ああ、頼むよ。

 それで他のメンバーだが、コウメイ。君を南校舎盟主の代理に任命する。俺の留守の間は南校舎の一切を君に任せるよ」

 俺の言葉に、目にかかるぐらいの長さの薄水色の髪、愛らしい顔つきの華奢きゃしゃな女生徒、軍師・コウメイが返事をする。



「わかりました。お任せください」

「そして、チョーウン。君にはこの本拠地の防衛を任せる。ソウソウからの脅威はカンウ・チョーヒに任せるが、それ以外から問題が起こったら君が対処してくれ」

 続いて、ショートヘアーにボーイッシュな顔つき、ジャージの上着にスパッツ姿の女生徒、武将・チョーウンが応じる。



「ああ、わかったよ」

 南校舎の防衛は我が軍の主力である彼女らに任せよう。

「他に今、南校舎での任務についている者は引き続きそちらをやってほしい。

 次に西校舎遠征軍。総司令官は先ほども言ったように俺が務める。そして軍師にホウトウ。

 そして、将軍としてコーチュー・カクシュン・タクヨーを連れて行く」

 軍師のホウトウも、将軍のコーチュー・カクシュン・タクヨーも皆、この南校舎で新たに仲間に加わった人員だ。

 特に将軍の三人は、既に先代のリュウヒョウ時代にも将軍を努めていた実績のある三人だ。だが、知名度という点ではあまり外には知られていない。今回、西校舎に同行してもらうにはうってつけの三人と言える。

 この他、今回の遠征には、南校舎で新たに募集した人材は積極的に連れて行くつもりだ。彼ら彼女らは言うなれば将来の幹部候補。ここで経験を積ませ、来るべきソウソウとの一戦までに鍛えておく。

 新たに部隊長としてギエン・フウシュウ・チョウナン・コウショウ・ホキョウ・リュウヨウら新人たちを任命し、遠征軍に加えることとした。

「他にはイセキやバショクらを行政官として同行させるとして、後は……。

 そうだ、忘れるところだった。カンヨー、おいカンヨー!」

 いつも人選で呼ぶことのない名なので、危うく忘れるところだった。

 俺は慌てて、なんだかんだで長い付き合いとなる悪友の名を呼んだ。だが、一向に返事がない。

「まったく……」

 俺があきれながら歩き出すと、周囲の視線は一斉に後ろの席へとそそがれた。その視線の先には、教室のすみにて耳にイヤホンをつけ、漫画を読んでケラケラと笑う金髪頭の男がいた。

「おい、カンヨー! 聞いてるのか!」

 俺はその男の耳からイヤホンを引っこ抜き、怒鳴りつけた。
 
「なんだよー、リュービ。あ、会議終わったのかー?」

 その金髪の男は相変わらずのへらへら顔で、呑気のんきに返してくる。

 この男はカンヨー。俺と中学から付き合いのある悪友で、その縁でこの陣営に居座っている。しかし、運動も勉強もからきしで、おまけにやる気がないため何もしようとしない。まさに厄介な居候いそうろうと言える存在だ。

 だが、いつまでもこんな扱いを認めていると、新入生や新参のホーセーらに示しがつかない。いい加減、厳しくするしかない。

「お前、前に約束しただろ。今度は出陣させると」

「あー? そんな約束いつしたんだよー」

「今回の選挙戦が始まってすぐ、ソウソウ陣営を攻めた時だ」

「……あっ! あー」

 過去、俺がリュウヒョウの客将だった頃、ソウソウの陣地を攻撃する時に一度、カンヨーも軍に加えようとしたが、この男は次は出陣するからと言って結局、加わらなかった。(※第69話参照)

 今こそ、その時の約束を果たしてもらう時だ。

「まー待てよー、あの後、ソウソウ軍が攻めてきたろー。その時に俺も一緒にいただろー?」

「あれは一緒に逃げてただけだろ! 出陣したことになるかよ!

 とにかく、これ以上何もしないのは許さん! 今度の遠征軍には同行しろよ!」

「そんなー、俺何の役にも立たないぞー!」

 とても威張って言えることではないはずだが、この男はこういうことを堂々と言ってくるから困る。

「いいから来い!」

 俺は強引にカンヨーの同行を決めた。確かにあいつの言う通り、使い所が無さそうだが、行けば一つぐらいは出来る仕事があるだろう。とにかく、これ以上特別扱いをするわけにはいかない。

「えーと、次は……そうだ、モウタツ」

「はい、なんでしょうか」

 俺は新たにホーセーとともに西校舎から加わった黒い軍服姿の男子・モウタツに声をかけた。

「俺は既にホーセーとは話をして、彼女が参謀として働けるだけの能力があることは知っている。

 だが、君のことはまだよく知らない。

 それで、君の扱いを決めたい。君は参謀と将軍ならどちらが得意だ?」

 俺の質問にモウタツはすぐに答える。

「そうですね、いささか人より頭が回る自信はございますが、ホーセーの智謀には遠く及びません。

 しかし、軍を率いることなら劣らぬと自負しております。そのどちらかと聞かれれば将軍でしょう」

「そうか、わかった。

 では、ホーセー、君を参謀に任命する。そのまま遠征軍に加わって欲しい。

 そして、モウタツ、君は将軍に任命する。君とホーセーが率いた軍は君が率いて、一先ひとまずは防衛のためにこの南校舎に留まって欲しい。

 今後、リュウショウと戦う時になったら改めて動いてもらうから、それまでは待機してくれ」

「わかりました。その役目、確かに引き受けました」

「これで編成は一通り終わったかな」

 遠征軍の編成も一段落すると、俺たちの陣営はすぐに準備へと取り掛かった。

 リュービ陣営が慌ただしく動き出す中、新たに将軍に任じられたモウタツは、隣のホーセーに小声で話しかけた。

「まさか、来て早々に将軍に任じてもらえるとは思いませなんだ。

 これもあなたが先にリュービ殿の……いや、リュービ様の信頼を得たからでしょうな」

「いや、それだけですぐに任じられるものでもない。これもリュービ様だからできる人材活用だろう。

 私たちは今ようやく居場所を得た。これは働きがいのある主を得たぞ」



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