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第6部 西校舎攻略編
第134話 逐電!西涼の御旗!
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西涼陣営~
バチョウ、ソウソウ両軍は校舎の一角に陣取り、熾烈な戦いを繰り広げていた。だが、バチョウら西涼軍の内部では厭戦気分が蔓延し、ソウソウ軍との戦争継続が難しくなった。
そのためにソウソウとの講和を模索するようになったのだが、ソウソウの罠に嵌り、西涼の首魁・バチョウ、カンスイの二人は対立するようになってしまった。
「カンスイは我らを欺いた!
ソウソウとの会談の内容の詳細は未だ我らに語らず、ソウソウからきた書状を勝手に塗り潰して我らに隠した!
奴は我らを欺き、独自にソウソウに接近している!」
そう叫ぶのは、美しく輝く長い金髪に、碧い瞳、白い肌、着崩した制服にアクセサリーをつけた、今や西涼諸侯の自他共に認める盟主となった美しい容姿の女生徒・バチョウ。
彼女は怒りを露わにしながらそう、カンスイを除いた居並ぶ群雄たちの前で演説した。
「カンスイのヤロー!
胡散臭い奴だったが、俺たちを騙しやがったのか!」
リーゼントの男、西涼諸侯の一人・リョウコウは真っ先にバチョウに同調する。
リョウコウはかつてバチョウの盟主を認めなかったが、今となっては彼がバチョウ支持者の急先鋒となっていた。
この二人が西涼軍の主戦論の中心であったが、元来、血の気の多い西涼諸侯。この二人に当てられて周りの諸侯の多くもこの意見に同調していった。
スケバン・テーギン、金髪サングラスの男・コーセン、特攻服の男・リカンら西涼諸侯もその立場であった。
「まったく、アタイらは嵌められたってのかい!」
「俺たちも騙されたとあっちゃぁ、黙ってられねーな」
「オラ、舐められて黙ってられるか、オラ!」
この三人も今やバチョウ支持者であった。
その後ろでスキンヘッドの男・ヨーシューは含み笑いをして彼らを見て訛った口調で言った。
「いやはや、カンスイのダンナもいやらしい御仁でんなぁ。わいらを出し抜こうなんて」
だが、二人の意見を全員が支持しているわけではなかった。
恰幅のよい男子生徒、西涼諸侯の一人・セーギは一際落ち着いた口調で彼女らを諌めた。
「まあ、落ち着かれよ。
カンスイ殿は我ら西涼軍の中心的な人物。迂闊に疑えば、わしらの連合軍は瓦解しかねんぞ。
よくよく話し合うべきじゃろう」
「一向に真実を語らぬあの男と今更、何を話し合う!」
だが、バチョウは完全に頭に血が登っており、セーギの言葉にも聞く耳を持たない有様であった。
しかし、セーギの言う通りカンスイといえば西涼を代表する大物。その勢力の規模はバチョウに次ぎ、入学してから今までの3年間、戦乱に明け暮れた西涼随一の熟練者であった。
それを迂闊に責めれば、西涼連合軍が崩壊しかねないほどの相手であった。
諌めるセーギの懸念はそこにあった。
「そのカンスイを糾弾するということは、カンスイ軍を敵に回す恐れがあるということじゃ。
問い詰めるなとは言わぬが、慎重にやらねば我らの身も危ないぞい」
「セーギのジジイよぉ!
そうは言うが、確認が取りたくても、そのカンスイのヤローは一向に現れないじゃねーか!
あのヤロー逃げたんじゃねーのか!」
主戦派・リョウコウは同級生のセーギを無遠慮にもジジイ呼ばわりし、彼に食ってかかった。
リョウコウの言うように、この場は本来ならカンスイ釈明のための会見の場である。しかし、その肝心のカンスイが一向に姿を現さず、結果、バチョウらのカンスイ糾弾の場へと変わってしまった。
「同じ陣地内におるんじゃから、逃げ場なんてなかろう。
準備に時間がかかっとるんじゃ。まあ、待て」
「一体、何の準備があるっつうんだよ!」
「大方、言い訳の準備だろう!」
あくまでも穏便な話し合いで事態の収拾を計ろうとするセーギであったが、リョウコウ・バチョウらはそんな彼を責めた。
「はぁ……
なんと血の気の多い連中じゃろうか。
カンスイめ、一体いつまでわしらを待たせるのか……」
慎重派・セーギが西涼勢の興奮に頭を痛め、深くため息をつく最中、一人の生徒が会議の教室に駆け込み、三下のような口調で叫んだ。
「大変です!
カンスイ軍が勝手に引き上げて行きやす!」
その一報は場を震撼させた。
それはわずかに残っていたカンスイへの信頼を踏みにじる報告であった。
「なんじゃと……!
カンスイの奴、やはり……」
何よりフォローに回っていたセーギの落胆は激しかった。
そして、ついにバチョウは怒りを爆発させた。
「やはり奴は裏切り者であったか!
全軍、出撃して裏切り者・カンスイを討て!」
盟主でもある彼女は、全軍に出撃命令を出す。その命令に他の諸侯も意気盛んに賛同しようとした。
だが、ここで思わぬ人物が止めに入った。この中で最も血の気が多いと思わしき人物、リーゼントの男・リョウコウであった。
「待ちな、バチョウ。それにお前らもだ!
確かにカンスイは憎い! 許せねー!
だが、ここはソウソウの目と鼻の先だ! ここで俺たちがカンスイを討ちに行っちまったら、それこそソウソウの餌食になっちまう!」
思わぬ人物からの思わぬ意見に、周囲は少々面食らいながらも、盟主・バチョウはすぐに彼に反論した。
「リョウコウ、ならばこのままカンスイを見逃せというのか!」
そのやり取りで、落胆していた恰幅のよい男・セーギは冷静さを取り戻し、リョウコウの意見に同調する。
「そうじゃ、今一番怖いのはわしらが争っている最中に横っ腹をソウソウに突かれることじゃ。
その危険を犯すくらいなら、カンスイは見逃した方が良いじゃろう」
「奴をみすみす西北に逃し、秩序が保てるものか!」
バチョウはあくまで二人に食ってかかるが、冷静さを取り戻したセーギは新たな意見を提示する。
「ならば、カンスイに使者を送り、戻ってくるよう説得するのはどうじゃろうか?
説得に応ずる可能性は低いが、カンスイと戦うよりはなんぼも良かろう」
「なら、その使者はアタシが行く!
引きずってでもあの男を連れ戻す!」
バチョウが他の諸侯らの反対を押し切り、自らカンスイの元に向かおうとしたその時、またも一人の兵士が会議の教室に新入してきた。
「大変ですぜ!
ソウソウが全軍上げて出撃してきやした!
もう間もなくこの陣地に衝突します!」
皆がその報告に接し、反応しようとしたその瞬間、外から鬨の声が一斉に轟いた。
すでに西涼陣営の前線では、ソウソウとの合戦が始まっていた。
「いくら眼の前といっても早すぎる!」
「チッ! 見張りの奴何してやがったんだ!
おい、今の見張り番はどの軍の担当だ!」
そのリョウコウの怒号に、バチョウは視線を落とし、低く呻くような声で返した。
「カンスイだ……!
今の見張り番はカンスイ軍の役目だ!」
「あんにゃろー、俺たちを売りやがったな!」
バチョウの言葉にリョウコウらは激怒した。しかし、時は彼らに暇を与えない。矢継ぎ早に前線より報告が入る
「大将さん方、前線は混乱しております!
どなたか指揮を!」
この兵士の言葉に、急かすような口調でスケバン・テーギンが叫ぶ。
「バチョウ、誰を行かすんだい!」
「オラ、悩んでる暇はねー!
この白き弾丸・リカン様が突撃してやるぜ、オラ!」
言うが早いか、突撃を得意とする特攻服の男・リカンが他者の意見も聞かず、飛び出していった。
その様子を見て、金髪サングラスの男・コーセンがへへと笑いながら話す。
「リカンの奴、俺たちの意見も聞かずに行きやがったぜ。
まあ、ひとまずはあいつに任せるか」
「それよりもカンスイのヤローだ!
やっぱり奴をとっちめるか!」
リーゼントの男・リョウコウはなおもカンスイの裏切りに怒りを燃やしている。だが、それを恰幅のよい男子生徒・セーギが落ち着いて毅然とした口調で止めに入る。
「待て、リョウコウ。
お前さんは先ほどカンスイを討つべきじゃないと言ったばかりじゃろう」
「ありゃー、それが良いと思ったからよぉ!
だが、カンスイがそこまでやるとは思っちゃいなかった!」
「そこまで考えられるお前なら、今何が最良かわかるじゃろう……」
セーギの穏やかな目に、言わんとすることを察したリョウコウは恨みがましいような目を彼に向けた。
「……てめぇ、俺にその決断をしろっつうのか!」
だが、その視線にセーギは笑顔で返す。
リョウコウとセーギは友人ではない。直接顔を合わせたのも数えるほどしかない。しかし、西涼高校で三年間、鎬を削ってきた好敵手であることは両者認めるところであった。
だが、バチョウはそうではない。ここにいる西涼諸侯とは先日、顔を合わせたばかりである。その彼女に二人の短いやり取りを見て察しろというのは無理な話であった。
意味が読み取れないバチョウは、怒りをさらに露わにして、二人を押しのけて前に出ようと歩みだした。
「お前たち、何をゴチャゴチャ言っている!
カンスイが討てぬのなら、ソウソウを討つ!
全軍、アタシに続け!」
だが、出撃するバチョウの前に、リョウコウが立ちふさがる。
「何の真似だ、リョウコウ。退け!」
「バチョウ、お前は逃げろ!」
西涼一の直情径行・リョウコウから出たまさかの「逃げろ」の一言に、バチョウは唖然として一瞬、声を失った。
「……逃げろだと……!
まさか、最も血の気の多いお前からその言葉を聞くとは思わなかった……
だが、アタシはこの乱の盟主だ! 逃げることはできない!」
バチョウのリョウコウを見る目は臆病者を見る目であった。リョウコウはすぐにそれに気づいたが、それでも言葉を枉げようとはしなかった。
「お前は俺を臆病風に吹かれたとでも思っただろーよ。
俺だってできることなら言いたかねー!
だが、今はそれが最良だ!
バチョウ!
俺はお前に魅せられた。お前は俺たちに魅せた。魅せた責任を果たせ!」
バチョウは蔑みの目線を変えることなく、リョウコウに言い返した。
「責任?
だから、アタシがソウソウと戦って責任を果たそうとしているのではないか!」
「潔く散るのが責任じゃねー!
俺たちがいくら潰れてもこの乱は終わんねー! お前が逃げ延びる限りこの乱は終わらねーんだ!
だから逃げろ!
逃げて逃げて逃げ延びて意地でも西涼を残せ!
それがお前の責任だ!」
リョウコウが言葉を一息に言い終わると、バチョウが言葉を出すより先に、隣にいた恰幅のよい男子生徒・セーギが後に続けて言葉を発した。
「バチョウ、カンスイのことは許せんかもしれんが、あやつは一つ良い事を言った。
バチョウ、お前は錦だ。
錦の御旗だ。それがお前さんの役目だ。お前さんがいる限り、西涼の乱は終わらぬ。終わらせぬためにわしらが守る。それがわしらの役目じゃ。
今、わしらが役目を果たそうとしているのだから、お前さんも自分の役目を果たせ」
二人の言葉に諭されて、項垂れるようにバチョウは首を縦に振った。
「わかった……撤退しよう」
そのバチョウの言葉にセーギはニコリと笑い、今度はリョウコウの方へと向き直った。
「フォッフォッフォ、しかし、リョウコウ、良い先輩になったのぉ。
ならば、わしも良い先輩のところを見せねばなるまい。リカン一人でソウソウ軍は止められんじゃろう。
わしが殿(最後尾)を引き受ける。お前たちは逃げろ」
その言葉に、リーゼントの男・リョウコウより先に金髪碧眼の女生徒・バチョウの方が反応した。
「待て、セーギ。それはダメだ!
逃げるなら全員一緒に……」
思わずセーギの元に歩み寄ろうとするバチョウ。だが、リョウコウは彼女の肩を掴み、セーギの方を真っ直ぐに見据えて返答した。
「わかった、セーギ。後は頼んだ」
「リョウコウ、何を!」
リョウコウはバチョウの言葉には返答せず、そのまま振り返って、セーギに背を向けた。
「セーギ……ありがとよ」
「フォッフォッフォッ、お前さんからその言葉が聞けるとはな、長生きはするもんじゃて」
「同い年だろうがよ!」
「そーじゃった、そーじゃった。
あまりにもお前さんがわしをジジイ呼びするから忘れとったわい」
リョウコウは一瞬、フッと笑うと、今度は隣に立つ群雄・テーギン、コーセンの方へと顔を向けた。
「テーギン・コーセン、てめーらも逃げるぞ!」
「しかし、リカンが!」
このままでは先に飛び出した同胞のリカンを見捨てることになると、スケバン・テーギンは同行を渋るが、リョウコウはその意見をはね退けた。
「これ以上戦力は減らせねー。お前らは来い」
まだ、躊躇いを見せるテーギンに対し、その隣に立つ金髪グラサンの男・コーセンがいつもの軽妙な口調と真反対の声色で語りかけた。
「ギンちゃん、仕方ねーぜ。
安っぽい言葉かもしれねーが、乱に加わった時点で俺たちは覚悟決めてたはずだぜ」
彼ら彼女らが各々、逃げる準備に入る中、一人、教室からしれっと姿を消そうとする男を、リョウコウは見逃さなかった。
「おっと、何処行こーっつうんだ、ヨーシュー?」
リョウコウに肩を掴まれたスキンヘッドの男は、冷や汗を流しながら彼に答えた。
「へへ、リョウコウのダンナ……
わいも一緒に逃げよう思いましてね、へへ」
「勝手に逃げんじゃねーよ。
ここまで来たんだ、一緒に逃げようじゃねーか」
一人、別方向に逃げようとしたヨーシューの企みは見破られ、彼はただただ青ざめた顔を縦に振り、同意した。
「へへ、もちろん、同行させていただきますよ」
「そうでなくちゃな。
さぁ、バチョウ、全軍に指示を!」
リョウコウの言葉に、バチョウは盟主としての覚悟を決め、その澄んだ声で全軍への指示を下した。
「……わかった。西涼の盟主として責任を果たそう!
セーギ、リカンと共に殿を頼む!
他の者は全軍、撤退だ!」
ここに西涼の乱は、ソウソウによってひとまず平定された。
西涼の首魁・カンスイは西北校舎に逃れ、殿として残ったセーギ・リカンはソウソウに討たれた。
これにより西部の地はソウソウの手に取り戻された。
しかし、逃走した盟主・バチョウ以下、リョウコウ・テーギン・コーセン・ヨーシューの五将の行方は杳として知れなかった。
バチョウ、ソウソウ両軍は校舎の一角に陣取り、熾烈な戦いを繰り広げていた。だが、バチョウら西涼軍の内部では厭戦気分が蔓延し、ソウソウ軍との戦争継続が難しくなった。
そのためにソウソウとの講和を模索するようになったのだが、ソウソウの罠に嵌り、西涼の首魁・バチョウ、カンスイの二人は対立するようになってしまった。
「カンスイは我らを欺いた!
ソウソウとの会談の内容の詳細は未だ我らに語らず、ソウソウからきた書状を勝手に塗り潰して我らに隠した!
奴は我らを欺き、独自にソウソウに接近している!」
そう叫ぶのは、美しく輝く長い金髪に、碧い瞳、白い肌、着崩した制服にアクセサリーをつけた、今や西涼諸侯の自他共に認める盟主となった美しい容姿の女生徒・バチョウ。
彼女は怒りを露わにしながらそう、カンスイを除いた居並ぶ群雄たちの前で演説した。
「カンスイのヤロー!
胡散臭い奴だったが、俺たちを騙しやがったのか!」
リーゼントの男、西涼諸侯の一人・リョウコウは真っ先にバチョウに同調する。
リョウコウはかつてバチョウの盟主を認めなかったが、今となっては彼がバチョウ支持者の急先鋒となっていた。
この二人が西涼軍の主戦論の中心であったが、元来、血の気の多い西涼諸侯。この二人に当てられて周りの諸侯の多くもこの意見に同調していった。
スケバン・テーギン、金髪サングラスの男・コーセン、特攻服の男・リカンら西涼諸侯もその立場であった。
「まったく、アタイらは嵌められたってのかい!」
「俺たちも騙されたとあっちゃぁ、黙ってられねーな」
「オラ、舐められて黙ってられるか、オラ!」
この三人も今やバチョウ支持者であった。
その後ろでスキンヘッドの男・ヨーシューは含み笑いをして彼らを見て訛った口調で言った。
「いやはや、カンスイのダンナもいやらしい御仁でんなぁ。わいらを出し抜こうなんて」
だが、二人の意見を全員が支持しているわけではなかった。
恰幅のよい男子生徒、西涼諸侯の一人・セーギは一際落ち着いた口調で彼女らを諌めた。
「まあ、落ち着かれよ。
カンスイ殿は我ら西涼軍の中心的な人物。迂闊に疑えば、わしらの連合軍は瓦解しかねんぞ。
よくよく話し合うべきじゃろう」
「一向に真実を語らぬあの男と今更、何を話し合う!」
だが、バチョウは完全に頭に血が登っており、セーギの言葉にも聞く耳を持たない有様であった。
しかし、セーギの言う通りカンスイといえば西涼を代表する大物。その勢力の規模はバチョウに次ぎ、入学してから今までの3年間、戦乱に明け暮れた西涼随一の熟練者であった。
それを迂闊に責めれば、西涼連合軍が崩壊しかねないほどの相手であった。
諌めるセーギの懸念はそこにあった。
「そのカンスイを糾弾するということは、カンスイ軍を敵に回す恐れがあるということじゃ。
問い詰めるなとは言わぬが、慎重にやらねば我らの身も危ないぞい」
「セーギのジジイよぉ!
そうは言うが、確認が取りたくても、そのカンスイのヤローは一向に現れないじゃねーか!
あのヤロー逃げたんじゃねーのか!」
主戦派・リョウコウは同級生のセーギを無遠慮にもジジイ呼ばわりし、彼に食ってかかった。
リョウコウの言うように、この場は本来ならカンスイ釈明のための会見の場である。しかし、その肝心のカンスイが一向に姿を現さず、結果、バチョウらのカンスイ糾弾の場へと変わってしまった。
「同じ陣地内におるんじゃから、逃げ場なんてなかろう。
準備に時間がかかっとるんじゃ。まあ、待て」
「一体、何の準備があるっつうんだよ!」
「大方、言い訳の準備だろう!」
あくまでも穏便な話し合いで事態の収拾を計ろうとするセーギであったが、リョウコウ・バチョウらはそんな彼を責めた。
「はぁ……
なんと血の気の多い連中じゃろうか。
カンスイめ、一体いつまでわしらを待たせるのか……」
慎重派・セーギが西涼勢の興奮に頭を痛め、深くため息をつく最中、一人の生徒が会議の教室に駆け込み、三下のような口調で叫んだ。
「大変です!
カンスイ軍が勝手に引き上げて行きやす!」
その一報は場を震撼させた。
それはわずかに残っていたカンスイへの信頼を踏みにじる報告であった。
「なんじゃと……!
カンスイの奴、やはり……」
何よりフォローに回っていたセーギの落胆は激しかった。
そして、ついにバチョウは怒りを爆発させた。
「やはり奴は裏切り者であったか!
全軍、出撃して裏切り者・カンスイを討て!」
盟主でもある彼女は、全軍に出撃命令を出す。その命令に他の諸侯も意気盛んに賛同しようとした。
だが、ここで思わぬ人物が止めに入った。この中で最も血の気が多いと思わしき人物、リーゼントの男・リョウコウであった。
「待ちな、バチョウ。それにお前らもだ!
確かにカンスイは憎い! 許せねー!
だが、ここはソウソウの目と鼻の先だ! ここで俺たちがカンスイを討ちに行っちまったら、それこそソウソウの餌食になっちまう!」
思わぬ人物からの思わぬ意見に、周囲は少々面食らいながらも、盟主・バチョウはすぐに彼に反論した。
「リョウコウ、ならばこのままカンスイを見逃せというのか!」
そのやり取りで、落胆していた恰幅のよい男・セーギは冷静さを取り戻し、リョウコウの意見に同調する。
「そうじゃ、今一番怖いのはわしらが争っている最中に横っ腹をソウソウに突かれることじゃ。
その危険を犯すくらいなら、カンスイは見逃した方が良いじゃろう」
「奴をみすみす西北に逃し、秩序が保てるものか!」
バチョウはあくまで二人に食ってかかるが、冷静さを取り戻したセーギは新たな意見を提示する。
「ならば、カンスイに使者を送り、戻ってくるよう説得するのはどうじゃろうか?
説得に応ずる可能性は低いが、カンスイと戦うよりはなんぼも良かろう」
「なら、その使者はアタシが行く!
引きずってでもあの男を連れ戻す!」
バチョウが他の諸侯らの反対を押し切り、自らカンスイの元に向かおうとしたその時、またも一人の兵士が会議の教室に新入してきた。
「大変ですぜ!
ソウソウが全軍上げて出撃してきやした!
もう間もなくこの陣地に衝突します!」
皆がその報告に接し、反応しようとしたその瞬間、外から鬨の声が一斉に轟いた。
すでに西涼陣営の前線では、ソウソウとの合戦が始まっていた。
「いくら眼の前といっても早すぎる!」
「チッ! 見張りの奴何してやがったんだ!
おい、今の見張り番はどの軍の担当だ!」
そのリョウコウの怒号に、バチョウは視線を落とし、低く呻くような声で返した。
「カンスイだ……!
今の見張り番はカンスイ軍の役目だ!」
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まあ、ひとまずはあいつに任せるか」
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やっぱり奴をとっちめるか!」
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「待て、リョウコウ。
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意味が読み取れないバチョウは、怒りをさらに露わにして、二人を押しのけて前に出ようと歩みだした。
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「責任?
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だから逃げろ!
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「バチョウ、カンスイのことは許せんかもしれんが、あやつは一つ良い事を言った。
バチョウ、お前は錦だ。
錦の御旗だ。それがお前さんの役目だ。お前さんがいる限り、西涼の乱は終わらぬ。終わらせぬためにわしらが守る。それがわしらの役目じゃ。
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「わかった……撤退しよう」
そのバチョウの言葉にセーギはニコリと笑い、今度はリョウコウの方へと向き直った。
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「わかった、セーギ。後は頼んだ」
「リョウコウ、何を!」
リョウコウはバチョウの言葉には返答せず、そのまま振り返って、セーギに背を向けた。
「セーギ……ありがとよ」
「フォッフォッフォッ、お前さんからその言葉が聞けるとはな、長生きはするもんじゃて」
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「テーギン・コーセン、てめーらも逃げるぞ!」
「しかし、リカンが!」
このままでは先に飛び出した同胞のリカンを見捨てることになると、スケバン・テーギンは同行を渋るが、リョウコウはその意見をはね退けた。
「これ以上戦力は減らせねー。お前らは来い」
まだ、躊躇いを見せるテーギンに対し、その隣に立つ金髪グラサンの男・コーセンがいつもの軽妙な口調と真反対の声色で語りかけた。
「ギンちゃん、仕方ねーぜ。
安っぽい言葉かもしれねーが、乱に加わった時点で俺たちは覚悟決めてたはずだぜ」
彼ら彼女らが各々、逃げる準備に入る中、一人、教室からしれっと姿を消そうとする男を、リョウコウは見逃さなかった。
「おっと、何処行こーっつうんだ、ヨーシュー?」
リョウコウに肩を掴まれたスキンヘッドの男は、冷や汗を流しながら彼に答えた。
「へへ、リョウコウのダンナ……
わいも一緒に逃げよう思いましてね、へへ」
「勝手に逃げんじゃねーよ。
ここまで来たんだ、一緒に逃げようじゃねーか」
一人、別方向に逃げようとしたヨーシューの企みは見破られ、彼はただただ青ざめた顔を縦に振り、同意した。
「へへ、もちろん、同行させていただきますよ」
「そうでなくちゃな。
さぁ、バチョウ、全軍に指示を!」
リョウコウの言葉に、バチョウは盟主としての覚悟を決め、その澄んだ声で全軍への指示を下した。
「……わかった。西涼の盟主として責任を果たそう!
セーギ、リカンと共に殿を頼む!
他の者は全軍、撤退だ!」
ここに西涼の乱は、ソウソウによってひとまず平定された。
西涼の首魁・カンスイは西北校舎に逃れ、殿として残ったセーギ・リカンはソウソウに討たれた。
これにより西部の地はソウソウの手に取り戻された。
しかし、逃走した盟主・バチョウ以下、リョウコウ・テーギン・コーセン・ヨーシューの五将の行方は杳として知れなかった。
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そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
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名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
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