学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第6部 西校舎攻略編

第123話 群雄!西涼の番長たち!

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 生徒会長・ソウソウに対する不満をを抱えた西北の群雄たちは、西北の傑物・カンスイの呼びかけに応じ、次々と彼の拠点とする教室へと集まってきた。

 西北の群雄…それは、荒れた生徒を力で束ねる番長たちであった。西北校舎には数多あまたの番長が割拠し、時には対立し、時には協力し、一応の拮抗きっこうを保っている状態であった。

 少々、揉め事もあったが、集まったそれぞれの勢力のかしらたちが揃ったタイミングを見計らい、前の扉が開けられ、二人の生徒が姿を現した。

 一人はカウボーイハットをかぶり、ウエスタンシャツにブーツを履いた、筋肉質の男性、今回の発起人・カンスイである。

 そして、もう一人は、美しく輝く長い金髪に、あおい瞳、白い肌、着崩した制服にアクセサリーをつけた、居並ぶ群雄たちの見知らぬ美しい容姿の女生徒。

 その女生徒は誰なのかと群雄たちがたずねるより先に、口を開いたのは、教壇に立つカンスイの方であった。

西涼せいりょうが誇る荒鷲あらわしたちよ、よく俺たちの激に応じ、せ参じてくれた。

 ソウケンやリュウユウメイのように不参加の者もいるが…総勢“十名”。

 キリが良くていいじゃないか」

 そう言うとカンスイは、目の前に座る八人の生徒を見回した。

 そう、席に座る生徒は八人、カンスイを入れて九人。

 しかし、カンスイの口から出た数は十人。

 勘定かんじょうが合わない。

 その疑問を、はしの席に座るチョンマゲヘアに着物姿の男が真っ先に口にする。

「待たれよ、カンスイ殿。

 この場にいる群雄は九人しかいないと思われるが…

 まさか、その横にいる小娘を含めての数ではござらぬよな?」

 武士のような喋り方のその男・バガンの発言により、一斉に横に立つ金髪の少女へと群雄たちの視線がそそがれる。

 ここに参加しているはただの生徒ではない。勢力を率いる番長たちだ。誰でもがいられる場所ではない。

 それなのに、見知らぬ小娘がそこにいる。それどころか、数に含めようとしている。誰もが当然抱く疑問であった。

「ああ、この娘は…」

 カンスイが説明しようとするより先に、その問題の金髪の少女が前に進み出た。

「アタシの名前は馬道蝶々ばどう・ちょうちょう

 バチョウだ!」

 金髪碧眼へきがんの少女は、目の前の不良たちにひるむことなく、堂々とそう答えた。



「オラ、馬道ばどうだと…

 テメー、あの裏切者の妹か、オラ!」

「名前だけなら知ってーぜー、バチョウちゃんだろ?

 確かまだ一年生だよな」

 前の席に座る特攻服の男・リカン、その横の金髪サングラスの男・コーセンがまず彼女に噛み付いた。

 バチョウの兄・バトウは、かつて彼らと肩を並べる西涼せいりょうの群雄であった。だが、元生徒会長トータクが西涼せいりょう高校を去ったどさくさにまぎれ、生徒会長に就任。それだけでも反感を買っていたが、そのまま西涼せいりょう高校の吸収合併を承諾しゅうだく。バトウ自身は三国学園の生徒会役員に迎えられ、残された元西涼せいりょう高校の面々からは裏切者と非難されていた。

「確かにアタシはバトウの妹だ。

 だが、あの裏切者と兄妹の縁は切った。

 もう関係ない!」

 バチョウの言葉に続き、さらに発起人・カンスイが口添くちぞえをする。

「この娘の実力は俺が保証しよう。

 それにバトウの勢力は、今はバチョウが引き継いでいる。

 この場に立つには充分な資格があるだろう」

 だが、カンスイの言葉に、今度は前列に並ぶ長いスカートのスケバン姿の女生徒・テーギンが不満を示す。

「カンスイ、あんた盟主だからって好き勝手し過ぎじゃないの?

 バトウの兵を参戦させたいってんなら賛成よ。

 でもね、こんな小娘じゃ群雄として率いるのはまだ無理なんじゃないの?

 部下のホートク辺りに任せたらどうよ」

 そう言い、テーギンはキッとカンスイをにらみつけた。カンスイを盟主にいただくといえども、自分たちは部下ではない。言いなりにはならないぞと、強い意志を示す目であった。

「ハッハッハ、この娘の実力は保証するといっただろう。

 それと君たちは何か勘違いをしている。

 この連合の盟主は俺ではない。

 このバチョウだ。

 この娘こそが我らの盟主だ!」

 そのカンスイの発言に、周囲からはどよめきがき、一気に怨嗟えんさの声が噴出ふんしゅつした。

 前列のはしに座るゴーグルを頭にかけた、迷彩服の男・チョーオーが起立してカンスイを問い詰める。

「カンスイ殿、それはどういう意味でありますかな?

 あなたが集めたこの連合の盟主が、あなたで無いとは如何いかに?」

「元々、この蜂起ほうきはバチョウの言い出したことだ。

 それに、この弱肉強食の西涼せいりょう校で、最も実力のある者が盟主を務めるのは当然ではないか」

 そのカンスイの回答に、後ろのはしに座るスキンヘッドの男・ヨーシューが下品な笑い声を上げる。

「ギャハハハハハハ、ゲホッゲホッ…

 ゲホッ…カンスイはん、あんさん卑怯なお人ですなぁ。

 その一年嬢に責任押し付けて、なんかあれば逃げる気でっしゃろ?」

「ハッハッハ。

 ヨーシュー、君と一緒にされるのは心外だな」

 カンスイがヨーシューのげんを笑い飛ばそうとするが、それをかき消すようにドンと、強烈な音が教室に響いた。

 教室中央に陣取るリーゼントの男・リョウコウは机椅子を蹴っ飛ばし、立ち上がった。

「カンスイよぉ…俺はあんたに一目置いてたんだが、ガッカリだぜ!

 あんたがそんな抜け野郎だとはな!

 あんたがやらねーなら、このリョウコウが盟主をやってやるぜ!」

 えるリョウコウに、こんな狂人に任せられるかと、スケバンのテーギンが声を荒らげて、静止する。

「冗談じゃないよ!あんたの盟主なんてまっぴらゴメンよ!

 ちょっとセーギ、黙ってないで、あなたが盟主やりなさいよ」

 怒鳴り返すリョウコウを無視して、彼女は最後列に陣取る恰幅かっぷくの良い、スーツ姿の男性・セーギへと盟主の話を投げかける。

 それまで黙って事の推移すいいを見守っていた男は、フハッと笑うと、重い口を開いた。

「フォッフォ、わしが務めてもいいがのぉ、それじゃあカンスイの面子めんつを潰しちまうじゃろうて。

 どうじゃ、皆の衆、カンスイの話をもう少し聞いてやらんか?」

 セーギはあくまで落ち着いたそぶりだが、彼の前に立つリーゼントの男・リョウコウの怒りは一向に収まる気配を見せない。

「チッ、セーギのジジイまで抜けかよ!」

「おい、リョウコウ。

 わしはお前さんと同い年じゃぞ。

 いい加減ジジイ呼びはやめんか」

「俺はそんな耄碌もうろくしてねー!

 セーギや、カンスイのようにな!」

 リョウコウの目は今度は教壇に立つカンスイ、そしてバチョウへと向けられた。

「実力があるっつーんなら、試してやろーじゃねーか!」

 彼は愛用のバットを構えると、その先をバチョウへと向けた。

 その様子に周囲の群雄たちも一斉に立ち上がった。

「結局、力比べでござるか」

「オラ、やってやろーじゃねーか!オラ!」

「へへ、やっぱこーなったか」

「いいじゃない!

 西涼せいりょうらしくてアタイは好きだよ!」

「やれやれ、やはり闘争は避けられぬか」

「ほんま、かなわへんなぁ」

 一触即発の雰囲気だが、そこは喧嘩けんか慣れした西涼せいりょうの群雄たち。各々おのおの、獲物を構えて、対峙した。

 だが、そんな中、バチョウは手に何も持たず、一切身構えもせず、まばたき一つも見せず、微動びどうだにせず、その場にただ立っていた。

「チッ、今更怖気おじけづいてんじゃねーぞ、このアマ!」

 頭上高くかかげられたリョウコウのバットは、彼の踏み込みと同時に、うなりをあげて、目の前の少女へと振り下ろされた。

 直撃すればタダでは済まないであろう一撃。

 次の瞬間、誰もが血の惨劇さんげきを想像したが、バットは皆の想像を裏切り、何に触れることもなく、床へとたどり着いた。

 「何っ!」

 リョウコウは目の前の小娘が消えたのを認識すると同時に右に寒気を覚えた。

 その寒気の先へとすぐさま視線を移すが、振り向いた時には既に手遅れ。バチョウ渾身こんしんの拳が、彼の顔面へと接していた。

 リョウコウを一撃でほうむると、バチョウは音一つ上げず、すぐさま周囲へ視線を向ける。

「マジかよ、あの狂犬を一撃かよ」

「そんなんでひるむアタイらじゃないよ!

 行くよ、コーセン・リカン!」

 スケバン・テーギンの掛け声で、金髪グラサンのコーセン、特攻服のリカンがそれぞれ愛用の獲物を手にバチョウを取り囲む。

「長兵2、暗器1…!」

 まず、特攻服のリカンは長柄ながえの棍棒を手に突撃し、その後ろに金髪グラサンのコーセンがメリケンサックを手に突き進む。そして、そのさらに後ろにスケバンのテーギンが長柄ながえの銀色の棒を構える。

 彼ら彼女ら馴染みのコンビネーションだが、バチョウはそれを物ともせず、リカンの棍棒をいなすとその背中に一撃を加え、続くコーセンのメリケンサックの拳をすり抜け、その腹に一撃を与え、あっという間に二人を撃沈した。

「ちょーしに乗るんじゃないよー!」

 残されたテーギンの手に持つ銀色の棒は、三つに分かれ、中にしまわれていたくさりを伸ばして、鞭のようにバチョウをほおをかすめる。

「アタイの武器は三節棍さんせつこんさ!」

 思わぬ伏兵に、バチョウの身はかすったが、カラクリが解れば脅威ではない。

 振り回された鎖の波をスルリとかわし、そのふところに入ると、テーギンもバチョウの一撃に敗れた。

「どうも、カンスイ殿が言われるだけの腕前はあるようですね。ですが…」

 テーギンの後ろに立っていた迷彩服の男・チョーオーは、煙玉を破裂させ、煙幕えんまくでもってバチョウの視界をふさいだ。

「この程度の対応が出来ねば、西涼せいりょうの盟主は務まりませんよ!」

 チョーオーはゴーグルをかけ、警棒を手に煙の中へと突っ込んでいく。

 それに合わせるようにその右手より、チョンマゲ頭のバガンが木刀片手に突撃する。

「心眼で見れば、この程度の煙なぞ容易たやすいでござる!」

 二人の男が煙の中へと足を踏み入れると、その先には姿勢低く、床に張り付くバチョウの姿があった。

 その姿を視認した次の瞬間、迷彩服のチョーオーのあごめがけて、下から強烈な一撃が繰り出された。

 バチョウは、その一撃で意識朦朧もうろうとするチョーオーをつかむと、次に迫りくるチョンマゲ頭のバガンへと叩きつけた。

「ケホ、ケホ、なんや、なにが起きたんや!」

 煙を吸ってむせるスキンヘッドの男・ヨーシューがこすりながらも目を開けると、爛爛らんらんとそのあおい瞳を輝かせ、バチョウ一人が彼の前に立っていた。

「次はお前か」

「ま、待ちな

 わいは戦うつもりはあらへん。

 降参、降参や」

 ヨーシューが両手を挙げて降参ポーズを示すと、バチョウは拳を下ろし、カンスイの方へと向き直った。

「カンスイ、終わったぞ」

「隙を見せたな、この小娘が!」

 スキンヘッドの男・ヨーシューはバチョウが背を見せたその瞬間、スタンガンを取り出してバチョウを狙う。

 バチョウはすぐに向き直るが、振り返るその瞬間、彼女の眉間みけん目掛けてナイフが投げられ、それをかわすために姿勢が崩れた。

 ヨーシューはその一瞬のすきを見逃さす、すかさずスタンガンを繰り出すが、バチョウは崩れる勢いを利用してヨーシューの後ろへの転がり、彼の足をつかんで床へと叩きつけた。

 ヨーシューが床に叩きつけられるのと、入れ替わりでバチョウは立ち上がると、後ろへ陣取る男へと目を向けた。

「今のナイフはあなたか」

 バチョウのにらみに、恰幅かっぷくの良い男・セーギは手を上げた。

「ヨーシューの殺気に隠したつもりじゃったが、無駄なようじゃの。

 そこの男と違って、わしの降参は本物だ。

 バチョウ、お前の勝ちだ」

 そのセーギの反応を見届けると、教壇に立つカウボーイ姿の男・カンスイは得意満面な様子で、周囲を見渡した。

「弱肉強食、が、西涼せいりょうの流儀であったな。

 どうかね、納得いただけたかね?」

 カンスイは周囲にたずねるが、その多くは床に倒れ、低くうめき声をあげるばかりで、返事を発する余裕はなかった。

 その様子に、仕方なく最後列の恰幅かっぷくの良い男・セーギが代弁する。

「誰も答えれんようじゃから、わしが代表して答えよう。

 わしら西涼せいりょうの番長八名、そこの嬢ちゃん…いや、バチョウを連合軍の盟主として認めよう」

「だ、そうだ、バチョウ。

 君の乱は今ここより始まった」

「任せろ。

 アタシがソウソウを倒す!」



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