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第6部 西校舎攻略編
第123話 群雄!西涼の番長たち!
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生徒会長・ソウソウに対する不満をを抱えた西北の群雄たちは、西北の傑物・カンスイの呼びかけに応じ、次々と彼の拠点とする教室へと集まってきた。
西北の群雄…それは、荒れた生徒を力で束ねる番長たちであった。西北校舎には数多の番長が割拠し、時には対立し、時には協力し、一応の拮抗を保っている状態であった。
少々、揉め事もあったが、集まったそれぞれの勢力の頭たちが揃ったタイミングを見計らい、前の扉が開けられ、二人の生徒が姿を現した。
一人はカウボーイハットをかぶり、ウエスタンシャツにブーツを履いた、筋肉質の男性、今回の発起人・カンスイである。
そして、もう一人は、美しく輝く長い金髪に、碧い瞳、白い肌、着崩した制服にアクセサリーをつけた、居並ぶ群雄たちの見知らぬ美しい容姿の女生徒。
その女生徒は誰なのかと群雄たちが訊ねるより先に、口を開いたのは、教壇に立つカンスイの方であった。
「西涼が誇る荒鷲たちよ、よく俺たちの激に応じ、馳せ参じてくれた。
ソウケンやリュウユウメイのように不参加の者もいるが…総勢“十名”。
キリが良くていいじゃないか」
そう言うとカンスイは、目の前に座る八人の生徒を見回した。
そう、席に座る生徒は八人、カンスイを入れて九人。
しかし、カンスイの口から出た数は十人。
勘定が合わない。
その疑問を、端の席に座るチョンマゲヘアに着物姿の男が真っ先に口にする。
「待たれよ、カンスイ殿。
この場にいる群雄は九人しかいないと思われるが…
まさか、その横にいる小娘を含めての数ではござらぬよな?」
武士のような喋り方のその男・バガンの発言により、一斉に横に立つ金髪の少女へと群雄たちの視線が注がれる。
ここに参加しているはただの生徒ではない。勢力を率いる番長たちだ。誰でもがいられる場所ではない。
それなのに、見知らぬ小娘がそこにいる。それどころか、数に含めようとしている。誰もが当然抱く疑問であった。
「ああ、この娘は…」
カンスイが説明しようとするより先に、その問題の金髪の少女が前に進み出た。
「アタシの名前は馬道蝶々…
バチョウだ!」
金髪碧眼の少女は、目の前の不良たちに怯むことなく、堂々とそう答えた。
「オラ、馬道だと…
テメー、あの裏切者の妹か、オラ!」
「名前だけなら知ってーぜー、バチョウちゃんだろ?
確かまだ一年生だよな」
前の席に座る特攻服の男・リカン、その横の金髪サングラスの男・コーセンがまず彼女に噛み付いた。
バチョウの兄・バトウは、かつて彼らと肩を並べる西涼の群雄であった。だが、元生徒会長トータクが西涼高校を去ったどさくさに紛れ、生徒会長に就任。それだけでも反感を買っていたが、そのまま西涼高校の吸収合併を承諾。バトウ自身は三国学園の生徒会役員に迎えられ、残された元西涼高校の面々からは裏切者と非難されていた。
「確かにアタシはバトウの妹だ。
だが、あの裏切者と兄妹の縁は切った。
もう関係ない!」
バチョウの言葉に続き、さらに発起人・カンスイが口添えをする。
「この娘の実力は俺が保証しよう。
それにバトウの勢力は、今はバチョウが引き継いでいる。
この場に立つには充分な資格があるだろう」
だが、カンスイの言葉に、今度は前列に並ぶ長いスカートのスケバン姿の女生徒・テーギンが不満を示す。
「カンスイ、あんた盟主だからって好き勝手し過ぎじゃないの?
バトウの兵を参戦させたいってんなら賛成よ。
でもね、こんな小娘じゃ群雄として率いるのはまだ無理なんじゃないの?
部下のホートク辺りに任せたらどうよ」
そう言い、テーギンはキッとカンスイを睨みつけた。カンスイを盟主に戴くといえども、自分たちは部下ではない。言いなりにはならないぞと、強い意志を示す目であった。
「ハッハッハ、この娘の実力は保証するといっただろう。
それと君たちは何か勘違いをしている。
この連合の盟主は俺ではない。
このバチョウだ。
この娘こそが我らの盟主だ!」
そのカンスイの発言に、周囲からはどよめきが沸き、一気に怨嗟の声が噴出した。
前列の端に座るゴーグルを頭にかけた、迷彩服の男・チョーオーが起立してカンスイを問い詰める。
「カンスイ殿、それはどういう意味でありますかな?
あなたが集めたこの連合の盟主が、あなたで無いとは如何に?」
「元々、この蜂起はバチョウの言い出したことだ。
それに、この弱肉強食の西涼校で、最も実力のある者が盟主を務めるのは当然ではないか」
そのカンスイの回答に、後ろの端に座るスキンヘッドの男・ヨーシューが下品な笑い声を上げる。
「ギャハハハハハハ、ゲホッゲホッ…
ゲホッ…カンスイはん、あんさん卑怯なお人ですなぁ。
その一年嬢に責任押し付けて、なんかあれば逃げる気でっしゃろ?」
「ハッハッハ。
ヨーシュー、君と一緒にされるのは心外だな」
カンスイがヨーシューの言を笑い飛ばそうとするが、それをかき消すようにドンと、強烈な音が教室に響いた。
教室中央に陣取るリーゼントの男・リョウコウは机椅子を蹴っ飛ばし、立ち上がった。
「カンスイよぉ…俺はあんたに一目置いてたんだが、ガッカリだぜ!
あんたがそんな腑抜け野郎だとはな!
あんたがやらねーなら、このリョウコウが盟主をやってやるぜ!」
吠えるリョウコウに、こんな狂人に任せられるかと、スケバンのテーギンが声を荒らげて、静止する。
「冗談じゃないよ!あんたの盟主なんてまっぴらゴメンよ!
ちょっとセーギ、黙ってないで、あなたが盟主やりなさいよ」
怒鳴り返すリョウコウを無視して、彼女は最後列に陣取る恰幅の良い、スーツ姿の男性・セーギへと盟主の話を投げかける。
それまで黙って事の推移を見守っていた男は、フハッと笑うと、重い口を開いた。
「フォッフォ、わしが務めてもいいがのぉ、それじゃあカンスイの面子を潰しちまうじゃろうて。
どうじゃ、皆の衆、カンスイの話をもう少し聞いてやらんか?」
セーギはあくまで落ち着いたそぶりだが、彼の前に立つリーゼントの男・リョウコウの怒りは一向に収まる気配を見せない。
「チッ、セーギのジジイまで腑抜けかよ!」
「おい、リョウコウ。
わしはお前さんと同い年じゃぞ。
いい加減ジジイ呼びはやめんか」
「俺はそんな耄碌してねー!
セーギや、カンスイのようにな!」
リョウコウの目は今度は教壇に立つカンスイ、そしてバチョウへと向けられた。
「実力があるっつーんなら、試してやろーじゃねーか!」
彼は愛用のバットを構えると、その先をバチョウへと向けた。
その様子に周囲の群雄たちも一斉に立ち上がった。
「結局、力比べでござるか」
「オラ、やってやろーじゃねーか!オラ!」
「へへ、やっぱこーなったか」
「いいじゃない!
西涼らしくてアタイは好きだよ!」
「やれやれ、やはり闘争は避けられぬか」
「ほんま、かなわへんなぁ」
一触即発の雰囲気だが、そこは喧嘩慣れした西涼の群雄たち。各々、獲物を構えて、対峙した。
だが、そんな中、バチョウは手に何も持たず、一切身構えもせず、瞬き一つも見せず、微動だにせず、その場にただ立っていた。
「チッ、今更怖気づいてんじゃねーぞ、このアマ!」
頭上高く掲げられたリョウコウのバットは、彼の踏み込みと同時に、唸りをあげて、目の前の少女へと振り下ろされた。
直撃すればタダでは済まないであろう一撃。
次の瞬間、誰もが血の惨劇を想像したが、バットは皆の想像を裏切り、何に触れることもなく、床へとたどり着いた。
「何っ!」
リョウコウは目の前の小娘が消えたのを認識すると同時に右に寒気を覚えた。
その寒気の先へとすぐさま視線を移すが、振り向いた時には既に手遅れ。バチョウ渾身の拳が、彼の顔面へと接していた。
リョウコウを一撃で葬ると、バチョウは音一つ上げず、すぐさま周囲へ視線を向ける。
「マジかよ、あの狂犬を一撃かよ」
「そんなんで怯むアタイらじゃないよ!
行くよ、コーセン・リカン!」
スケバン・テーギンの掛け声で、金髪グラサンのコーセン、特攻服のリカンがそれぞれ愛用の獲物を手にバチョウを取り囲む。
「長兵2、暗器1…!」
まず、特攻服のリカンは長柄の棍棒を手に突撃し、その後ろに金髪グラサンのコーセンがメリケンサックを手に突き進む。そして、そのさらに後ろにスケバンのテーギンが長柄の銀色の棒を構える。
彼ら彼女ら馴染みのコンビネーションだが、バチョウはそれを物ともせず、リカンの棍棒をいなすとその背中に一撃を加え、続くコーセンのメリケンサックの拳をすり抜け、その腹に一撃を与え、あっという間に二人を撃沈した。
「ちょーしに乗るんじゃないよー!」
残されたテーギンの手に持つ銀色の棒は、三つに分かれ、中にしまわれていた鎖を伸ばして、鞭のようにバチョウを頬をかすめる。
「アタイの武器は三節棍さ!」
思わぬ伏兵に、バチョウの身はかすったが、カラクリが解れば脅威ではない。
振り回された鎖の波をスルリとかわし、その懐に入ると、テーギンもバチョウの一撃に敗れた。
「どうも、カンスイ殿が言われるだけの腕前はあるようですね。ですが…」
テーギンの後ろに立っていた迷彩服の男・チョーオーは、煙玉を破裂させ、煙幕でもってバチョウの視界を塞いだ。
「この程度の対応が出来ねば、西涼の盟主は務まりませんよ!」
チョーオーはゴーグルをかけ、警棒を手に煙の中へと突っ込んでいく。
それに合わせるようにその右手より、チョンマゲ頭のバガンが木刀片手に突撃する。
「心眼で見れば、この程度の煙なぞ容易いでござる!」
二人の男が煙の中へと足を踏み入れると、その先には姿勢低く、床に張り付くバチョウの姿があった。
その姿を視認した次の瞬間、迷彩服のチョーオーの顎めがけて、下から強烈な一撃が繰り出された。
バチョウは、その一撃で意識朦朧とするチョーオーを掴むと、次に迫りくるチョンマゲ頭のバガンへと叩きつけた。
「ケホ、ケホ、なんや、なにが起きたんや!」
煙を吸ってむせるスキンヘッドの男・ヨーシューが擦りながらも目を開けると、爛爛とその碧い瞳を輝かせ、バチョウ一人が彼の前に立っていた。
「次はお前か」
「ま、待ちな
わいは戦うつもりはあらへん。
降参、降参や」
ヨーシューが両手を挙げて降参ポーズを示すと、バチョウは拳を下ろし、カンスイの方へと向き直った。
「カンスイ、終わったぞ」
「隙を見せたな、この小娘が!」
スキンヘッドの男・ヨーシューはバチョウが背を見せたその瞬間、スタンガンを取り出してバチョウを狙う。
バチョウはすぐに向き直るが、振り返るその瞬間、彼女の眉間目掛けてナイフが投げられ、それをかわすために姿勢が崩れた。
ヨーシューはその一瞬の隙を見逃さす、すかさずスタンガンを繰り出すが、バチョウは崩れる勢いを利用してヨーシューの後ろへの転がり、彼の足を掴んで床へと叩きつけた。
ヨーシューが床に叩きつけられるのと、入れ替わりでバチョウは立ち上がると、後ろへ陣取る男へと目を向けた。
「今のナイフはあなたか」
バチョウの睨みに、恰幅の良い男・セーギは手を上げた。
「ヨーシューの殺気に隠したつもりじゃったが、無駄なようじゃの。
そこの男と違って、わしの降参は本物だ。
バチョウ、お前の勝ちだ」
そのセーギの反応を見届けると、教壇に立つカウボーイ姿の男・カンスイは得意満面な様子で、周囲を見渡した。
「弱肉強食、が、西涼の流儀であったな。
どうかね、納得いただけたかね?」
カンスイは周囲に訊ねるが、その多くは床に倒れ、低くうめき声をあげるばかりで、返事を発する余裕はなかった。
その様子に、仕方なく最後列の恰幅の良い男・セーギが代弁する。
「誰も答えれんようじゃから、わしが代表して答えよう。
わしら西涼の番長八名、そこの嬢ちゃん…いや、バチョウを連合軍の盟主として認めよう」
「だ、そうだ、バチョウ。
君の乱は今ここより始まった」
「任せろ。
アタシがソウソウを倒す!」
西北の群雄…それは、荒れた生徒を力で束ねる番長たちであった。西北校舎には数多の番長が割拠し、時には対立し、時には協力し、一応の拮抗を保っている状態であった。
少々、揉め事もあったが、集まったそれぞれの勢力の頭たちが揃ったタイミングを見計らい、前の扉が開けられ、二人の生徒が姿を現した。
一人はカウボーイハットをかぶり、ウエスタンシャツにブーツを履いた、筋肉質の男性、今回の発起人・カンスイである。
そして、もう一人は、美しく輝く長い金髪に、碧い瞳、白い肌、着崩した制服にアクセサリーをつけた、居並ぶ群雄たちの見知らぬ美しい容姿の女生徒。
その女生徒は誰なのかと群雄たちが訊ねるより先に、口を開いたのは、教壇に立つカンスイの方であった。
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ソウケンやリュウユウメイのように不参加の者もいるが…総勢“十名”。
キリが良くていいじゃないか」
そう言うとカンスイは、目の前に座る八人の生徒を見回した。
そう、席に座る生徒は八人、カンスイを入れて九人。
しかし、カンスイの口から出た数は十人。
勘定が合わない。
その疑問を、端の席に座るチョンマゲヘアに着物姿の男が真っ先に口にする。
「待たれよ、カンスイ殿。
この場にいる群雄は九人しかいないと思われるが…
まさか、その横にいる小娘を含めての数ではござらぬよな?」
武士のような喋り方のその男・バガンの発言により、一斉に横に立つ金髪の少女へと群雄たちの視線が注がれる。
ここに参加しているはただの生徒ではない。勢力を率いる番長たちだ。誰でもがいられる場所ではない。
それなのに、見知らぬ小娘がそこにいる。それどころか、数に含めようとしている。誰もが当然抱く疑問であった。
「ああ、この娘は…」
カンスイが説明しようとするより先に、その問題の金髪の少女が前に進み出た。
「アタシの名前は馬道蝶々…
バチョウだ!」
金髪碧眼の少女は、目の前の不良たちに怯むことなく、堂々とそう答えた。
「オラ、馬道だと…
テメー、あの裏切者の妹か、オラ!」
「名前だけなら知ってーぜー、バチョウちゃんだろ?
確かまだ一年生だよな」
前の席に座る特攻服の男・リカン、その横の金髪サングラスの男・コーセンがまず彼女に噛み付いた。
バチョウの兄・バトウは、かつて彼らと肩を並べる西涼の群雄であった。だが、元生徒会長トータクが西涼高校を去ったどさくさに紛れ、生徒会長に就任。それだけでも反感を買っていたが、そのまま西涼高校の吸収合併を承諾。バトウ自身は三国学園の生徒会役員に迎えられ、残された元西涼高校の面々からは裏切者と非難されていた。
「確かにアタシはバトウの妹だ。
だが、あの裏切者と兄妹の縁は切った。
もう関係ない!」
バチョウの言葉に続き、さらに発起人・カンスイが口添えをする。
「この娘の実力は俺が保証しよう。
それにバトウの勢力は、今はバチョウが引き継いでいる。
この場に立つには充分な資格があるだろう」
だが、カンスイの言葉に、今度は前列に並ぶ長いスカートのスケバン姿の女生徒・テーギンが不満を示す。
「カンスイ、あんた盟主だからって好き勝手し過ぎじゃないの?
バトウの兵を参戦させたいってんなら賛成よ。
でもね、こんな小娘じゃ群雄として率いるのはまだ無理なんじゃないの?
部下のホートク辺りに任せたらどうよ」
そう言い、テーギンはキッとカンスイを睨みつけた。カンスイを盟主に戴くといえども、自分たちは部下ではない。言いなりにはならないぞと、強い意志を示す目であった。
「ハッハッハ、この娘の実力は保証するといっただろう。
それと君たちは何か勘違いをしている。
この連合の盟主は俺ではない。
このバチョウだ。
この娘こそが我らの盟主だ!」
そのカンスイの発言に、周囲からはどよめきが沸き、一気に怨嗟の声が噴出した。
前列の端に座るゴーグルを頭にかけた、迷彩服の男・チョーオーが起立してカンスイを問い詰める。
「カンスイ殿、それはどういう意味でありますかな?
あなたが集めたこの連合の盟主が、あなたで無いとは如何に?」
「元々、この蜂起はバチョウの言い出したことだ。
それに、この弱肉強食の西涼校で、最も実力のある者が盟主を務めるのは当然ではないか」
そのカンスイの回答に、後ろの端に座るスキンヘッドの男・ヨーシューが下品な笑い声を上げる。
「ギャハハハハハハ、ゲホッゲホッ…
ゲホッ…カンスイはん、あんさん卑怯なお人ですなぁ。
その一年嬢に責任押し付けて、なんかあれば逃げる気でっしゃろ?」
「ハッハッハ。
ヨーシュー、君と一緒にされるのは心外だな」
カンスイがヨーシューの言を笑い飛ばそうとするが、それをかき消すようにドンと、強烈な音が教室に響いた。
教室中央に陣取るリーゼントの男・リョウコウは机椅子を蹴っ飛ばし、立ち上がった。
「カンスイよぉ…俺はあんたに一目置いてたんだが、ガッカリだぜ!
あんたがそんな腑抜け野郎だとはな!
あんたがやらねーなら、このリョウコウが盟主をやってやるぜ!」
吠えるリョウコウに、こんな狂人に任せられるかと、スケバンのテーギンが声を荒らげて、静止する。
「冗談じゃないよ!あんたの盟主なんてまっぴらゴメンよ!
ちょっとセーギ、黙ってないで、あなたが盟主やりなさいよ」
怒鳴り返すリョウコウを無視して、彼女は最後列に陣取る恰幅の良い、スーツ姿の男性・セーギへと盟主の話を投げかける。
それまで黙って事の推移を見守っていた男は、フハッと笑うと、重い口を開いた。
「フォッフォ、わしが務めてもいいがのぉ、それじゃあカンスイの面子を潰しちまうじゃろうて。
どうじゃ、皆の衆、カンスイの話をもう少し聞いてやらんか?」
セーギはあくまで落ち着いたそぶりだが、彼の前に立つリーゼントの男・リョウコウの怒りは一向に収まる気配を見せない。
「チッ、セーギのジジイまで腑抜けかよ!」
「おい、リョウコウ。
わしはお前さんと同い年じゃぞ。
いい加減ジジイ呼びはやめんか」
「俺はそんな耄碌してねー!
セーギや、カンスイのようにな!」
リョウコウの目は今度は教壇に立つカンスイ、そしてバチョウへと向けられた。
「実力があるっつーんなら、試してやろーじゃねーか!」
彼は愛用のバットを構えると、その先をバチョウへと向けた。
その様子に周囲の群雄たちも一斉に立ち上がった。
「結局、力比べでござるか」
「オラ、やってやろーじゃねーか!オラ!」
「へへ、やっぱこーなったか」
「いいじゃない!
西涼らしくてアタイは好きだよ!」
「やれやれ、やはり闘争は避けられぬか」
「ほんま、かなわへんなぁ」
一触即発の雰囲気だが、そこは喧嘩慣れした西涼の群雄たち。各々、獲物を構えて、対峙した。
だが、そんな中、バチョウは手に何も持たず、一切身構えもせず、瞬き一つも見せず、微動だにせず、その場にただ立っていた。
「チッ、今更怖気づいてんじゃねーぞ、このアマ!」
頭上高く掲げられたリョウコウのバットは、彼の踏み込みと同時に、唸りをあげて、目の前の少女へと振り下ろされた。
直撃すればタダでは済まないであろう一撃。
次の瞬間、誰もが血の惨劇を想像したが、バットは皆の想像を裏切り、何に触れることもなく、床へとたどり着いた。
「何っ!」
リョウコウは目の前の小娘が消えたのを認識すると同時に右に寒気を覚えた。
その寒気の先へとすぐさま視線を移すが、振り向いた時には既に手遅れ。バチョウ渾身の拳が、彼の顔面へと接していた。
リョウコウを一撃で葬ると、バチョウは音一つ上げず、すぐさま周囲へ視線を向ける。
「マジかよ、あの狂犬を一撃かよ」
「そんなんで怯むアタイらじゃないよ!
行くよ、コーセン・リカン!」
スケバン・テーギンの掛け声で、金髪グラサンのコーセン、特攻服のリカンがそれぞれ愛用の獲物を手にバチョウを取り囲む。
「長兵2、暗器1…!」
まず、特攻服のリカンは長柄の棍棒を手に突撃し、その後ろに金髪グラサンのコーセンがメリケンサックを手に突き進む。そして、そのさらに後ろにスケバンのテーギンが長柄の銀色の棒を構える。
彼ら彼女ら馴染みのコンビネーションだが、バチョウはそれを物ともせず、リカンの棍棒をいなすとその背中に一撃を加え、続くコーセンのメリケンサックの拳をすり抜け、その腹に一撃を与え、あっという間に二人を撃沈した。
「ちょーしに乗るんじゃないよー!」
残されたテーギンの手に持つ銀色の棒は、三つに分かれ、中にしまわれていた鎖を伸ばして、鞭のようにバチョウを頬をかすめる。
「アタイの武器は三節棍さ!」
思わぬ伏兵に、バチョウの身はかすったが、カラクリが解れば脅威ではない。
振り回された鎖の波をスルリとかわし、その懐に入ると、テーギンもバチョウの一撃に敗れた。
「どうも、カンスイ殿が言われるだけの腕前はあるようですね。ですが…」
テーギンの後ろに立っていた迷彩服の男・チョーオーは、煙玉を破裂させ、煙幕でもってバチョウの視界を塞いだ。
「この程度の対応が出来ねば、西涼の盟主は務まりませんよ!」
チョーオーはゴーグルをかけ、警棒を手に煙の中へと突っ込んでいく。
それに合わせるようにその右手より、チョンマゲ頭のバガンが木刀片手に突撃する。
「心眼で見れば、この程度の煙なぞ容易いでござる!」
二人の男が煙の中へと足を踏み入れると、その先には姿勢低く、床に張り付くバチョウの姿があった。
その姿を視認した次の瞬間、迷彩服のチョーオーの顎めがけて、下から強烈な一撃が繰り出された。
バチョウは、その一撃で意識朦朧とするチョーオーを掴むと、次に迫りくるチョンマゲ頭のバガンへと叩きつけた。
「ケホ、ケホ、なんや、なにが起きたんや!」
煙を吸ってむせるスキンヘッドの男・ヨーシューが擦りながらも目を開けると、爛爛とその碧い瞳を輝かせ、バチョウ一人が彼の前に立っていた。
「次はお前か」
「ま、待ちな
わいは戦うつもりはあらへん。
降参、降参や」
ヨーシューが両手を挙げて降参ポーズを示すと、バチョウは拳を下ろし、カンスイの方へと向き直った。
「カンスイ、終わったぞ」
「隙を見せたな、この小娘が!」
スキンヘッドの男・ヨーシューはバチョウが背を見せたその瞬間、スタンガンを取り出してバチョウを狙う。
バチョウはすぐに向き直るが、振り返るその瞬間、彼女の眉間目掛けてナイフが投げられ、それをかわすために姿勢が崩れた。
ヨーシューはその一瞬の隙を見逃さす、すかさずスタンガンを繰り出すが、バチョウは崩れる勢いを利用してヨーシューの後ろへの転がり、彼の足を掴んで床へと叩きつけた。
ヨーシューが床に叩きつけられるのと、入れ替わりでバチョウは立ち上がると、後ろへ陣取る男へと目を向けた。
「今のナイフはあなたか」
バチョウの睨みに、恰幅の良い男・セーギは手を上げた。
「ヨーシューの殺気に隠したつもりじゃったが、無駄なようじゃの。
そこの男と違って、わしの降参は本物だ。
バチョウ、お前の勝ちだ」
そのセーギの反応を見届けると、教壇に立つカウボーイ姿の男・カンスイは得意満面な様子で、周囲を見渡した。
「弱肉強食、が、西涼の流儀であったな。
どうかね、納得いただけたかね?」
カンスイは周囲に訊ねるが、その多くは床に倒れ、低くうめき声をあげるばかりで、返事を発する余裕はなかった。
その様子に、仕方なく最後列の恰幅の良い男・セーギが代弁する。
「誰も答えれんようじゃから、わしが代表して答えよう。
わしら西涼の番長八名、そこの嬢ちゃん…いや、バチョウを連合軍の盟主として認めよう」
「だ、そうだ、バチョウ。
君の乱は今ここより始まった」
「任せろ。
アタシがソウソウを倒す!」
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Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
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シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
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突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
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