学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第5部 赤壁大戦編

第106話 終幕!始まりの三分!

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 南校舎・図書室~

 南校舎の北側に位置するこの図書室に、シュウユ軍の猛攻を振り切ったソウジン軍が次々と到着していた。

「ソウジン将軍、ご無事で何よりです」

「チョウゲン、君が上手く援軍をまとめてくれたおかげで我らは無事だ。

 助かったぞ。

 特にリツウの活躍は目覚ましいものであった」

 ソウジン軍はシュウユ軍に包囲され、陥落寸前かんらくすんぜんだったところを、ガクシン・ジョコー、そしてリツウら援軍の尽力により、この図書室まで落ち延びることができた。

 だが、代わりに戦うことになった援軍より良くない知らせがもたらされた。

「リツウ軍、敵・カンネー軍と交戦し、壊滅的打撃!」

「なんだと!

 そ、それでリツウは無事なのか」

「リツウ軍は現在、ガクシン・ジョコー両軍と合流し、撤退中!

 リツウ隊長本人の安否あんぴは不明!」

「まずいことになったぞ!

 リツウの救援に赴かねばならん!」

「お待ちください、ソウジン将軍!

 将軍の兵は戦える状態ではありませんし、将軍にもしものことがあれば、リツウたちの戦いが無駄になります!」

「だが、リツウは欠かすことのできない武将だ。

 それにお前の友人でもあるだろう」

「それでもです!

 それでもあなたは待つべきです!」

「わかった…出撃はやめよう」

 チョウゲンの説得にあいソウジンはやむなく待機を選択した。

 そのうち、ガクシンが戻り、ジョコー、マンチョウも戻ってきた。

 その軍の中にリツウの部隊の者も含まれていたが、肝心かんじんのリツウの姿はその中から見つけることはできなかった。

「なぜ、リツウが戻らない!

 やはり俺が出撃しよう!」

「待ちな、ソウジンの旦那ぁ…!

 俺なら戻ったぜぇ…!」

「リツウ!

 無事…なのか…?」

 帰還したリツウの姿は、自慢の帽子ぼうしを失い、髪は振り乱れ、ひたいより血は流れ、左腕はだらんとれ、その足取りも覚束おぼつかない有り様であった。

「この通りぃ…俺はピンピンしてるぜぇ…

 狂った女にちょっとばかりつきまとまれたがよぉ…

 ちゃんと送り返してきたぜぇ…!」

 そのあまりの有り様にすぐにチョウゲンが彼に駆け寄った。

「リツウ、大丈夫…ではないね。

 すぐに彼に治療を!」

 リツウは駆け寄ってきたチョウゲンの肩に手をかけ、その耳元でうめくようにささやいた。

「友よぉ…後は頼むぜぇ…!」

「リツウ!

 リツウ、しっかりしてください、リツウ!」



 中央校舎・東部~

 一方、シュウユ軍の赤壁での開戦に連動して、東校舎の盟主・ソンケンは軍を率いて北上し、ソウソウ領・中央校舎東部へと侵攻していた。

 このソンケン侵攻は、ソウソウの主力軍が南校舎に集中していたことと、東部の防衛指揮官・リュウフクが入院したことも重なり、当初はソンケン優勢で進行した。

「チョウショウ公、あなたは敵の援軍が来れないよう連絡路を押さえてくれ」

「はい、ソンケン様。

 やれやれ、まさか私が今さら部隊を率いることになるとはのぅ…」

 ソンケンは自身で東部の防衛拠点を包囲し、さらに参謀・チョウショウに別動隊を指揮させ、そこへ至る連絡通路を押さえさせた。

 これに対してソウソウは援軍を派遣したが、赤壁の敗戦直後ということもあり、兵の数は少なく、また諸事情により到着が大幅に遅れ、東部防衛拠点は風前ふうぜんともしびとなった。

「ソウソウ会長からの援軍は遅れている上に、その援軍も兵数は100人しかいない。

 このままではここがソンケン軍に落とされてしまう…

 なにか策を立てねば!」

 ソンケン軍に包囲された防衛拠点にこもる参謀・ショーセイはこの事態を打開するために一計を案じた。

 その一計により、ソンケン軍はにわかに動き出すこととなる。

「それは本当かチョウコウ殿?

 もうソウソウの援軍がすぐそこまで迫っているのか」

「そのようですね、ソンケン様。

 捕らえた敵の連絡員の話によると、援軍としてカコウトンが兵400を率いてまもなく到着するということですね」

「カコウトンに兵400…

 残念だが、ここが退ぎわのようだな」

 ソンケンがつかんだ情報により、こちらに目前と迫る敵援軍が今の自分たちの戦力でかなう相手ではないことを知った。

 だが、その敵援軍の情報に、それをつかんできた参謀・チョウコウは疑問を感じていた。

「ただ、我が軍の偵察はまだその援軍の発見には至っておらぬようです。

 この情報をどこまで信じるべきか…」

 だが、ソンケンは撤退の意思を変えなかった。

「いや、やはり退き時だろう。

 元々、今回は長期戦を想定していなかったし、すでにソウソウは中央校舎に引き戻ったという。

 それに、シュウユが南校舎まで進出できた時点で今回の出兵の目的はほぼ果たせた。

 長居ながいは無用だ」

 ソウソウ軍参謀・ショーセイはわざと誇張こちょうした援軍の情報をソンケンにつかませた。

 この偽情報により、ソンケンは撤退を開始し、東部は陥落かんらくまぬがれることができた。



 中央校舎・生徒会室~

「中央校舎東部に進出したソンケン軍は撤退したか。

 ショーセイの機転のおかげだな」

 赤壁の敗戦により、中央校舎に引き揚げた生徒会長・ソウソウは、生徒会室にて東部での戦況の報告を受けていた。

 東部での防衛に成功し、一安心といったところだが、南校舎の戦況は決して安心できるような状態ではなかった。

「ソウソウ会長、ソウジン将軍がただいま南校舎より戻られました」

「わかった、通せ」

「ソウソウ、今戻った。

 南校舎の戦況はすでに報告を受けていると思うが、防衛できず、申し訳ない」

 ソウソウが引き揚げた後、ソウジンが南校舎の防衛司令官に任命され、シュウユ・リュービ連合軍と南校舎中央にて戦ったが、結果はソウジン軍の敗退。

 南校舎は北部の図書室周辺とブンペーの守る北東部のわずかな領土を残し、中部以南はシュウユ・リュービらの勢力圏せいりょくけんとなってしまった。

 その後も南校舎全域を支配しようとするシュウユ軍の執拗しつような攻勢が続いたが、ソウソウ軍の戦力が北部に集中したことにより防衛に成功。

 戦いは膠着こうちゃく状態となり、両軍の疲労もあり大きな動きがなくなったため、報告をね一時的にソウジンは中央校舎へと戻ってきた。

「ソウジン、報告は受けている。

 リツウのことは残念であった…」

 ソウソウの口からこの南校舎の戦いの功労者・リツウの名が上がった。

「リツウの戦線復帰は難しいそうだ。

 今回のリツウの働きは我ら諸将の中でも第一であろう。

 彼の活躍があったからこそ、我らは無事に撤退することができた」

 ソウジンは涙をグッとこらえながら、リツウの活躍をソウソウに語って聞かせた。

「リツウ…それにチョウシュウ、コウラン、シカン、ソウジュン、その他多くの武将兵士たち…

 今回の南校舎出兵にて多くの者たちを失うことになってしまった…

 全ては私が至らなかったばかりに…」

 ソウソウはうつむきながらそうつぶやいた。

 学園統一を掲げ、天下仕上げの戦いと銘打って始めた今回の南征。

 リュウヒョウ陣営の降伏により早々はやばやと成し遂げられたかに見えたが、逃走したリュービを追撃し、その戦いでチョウシュウ、コウランの二将を討ち取られた。

 さらに赤壁の敗戦で多くの将兵を失い、逃走戦にてシカン、ソウジュンは倒れ、そして南校舎防衛戦にてリツウまでやられてしまった。

 当初の意気盛んな頃からは考えられないほどの敗北となってしまった。

「私はソンケンを見誤っていたようだ。

 内通者の報告ばかりを頼り、姉・ソンサクほどの覇気はきもない、家臣たちに都合つごうよくかつがれた御輿みこしと過小評価していた。

 やはり一度、このソウソウ自身の目で確かめねばならないようだな。

 東の主・ソンケンという男を!」

 ソウソウはソンケンがいるであろう東の方角をにらみ付けた。

「そして、リュービだ。

 まさか、あそこまで追い詰められながら、こんな逆転の一手を打ってくるとは思わなかった。

 どうやら、私はリュービさえも過小評価していたようだ。

 ああ、なんてにくらしいんだ。

 れ直したぞ、リュービ。

 だが、まずはソンケンだ。

 リュービ、今は力をたくわえておけ。

 万全な状態で決着を付けようではないか!

 我がいとしのリュービよ!」

 ソウソウは顔をゆがませ、不適にして満面の笑みを浮かべた。



 南校舎・シュウユ本陣~

「聞きましたぞ、シュウユ司令!

 まーた、カンネーが暴走したそうですな!」

 いかにも苦虫をつぶしてますよといった顔で、参謀・ロシュクが総司令官・シュウユの元にやって来た。

「ええ、おかげでソウジン軍に痛手を与えることができましたが…

 彼女は少々やりすぎますね」

「まったく、やれやれですな。

 男漁おとこあさりするか、戦闘狂せんとうきょうかの二択とは、極端きょくたんで困りますな!」

 参謀・ロシュクはプンスカと怒りながら、ぶつぶつ文句を言い始めた。

「それでも彼女の戦闘力は我が軍の中でもずば抜けています。

 単純な勝ち負けだけならあのカンウやチョーヒ相手にも勝てるかもしれません」

「その前に退学にならなきゃいいですがね。

 そうそう、カンウ・チョーヒといえば、彼女らの義兄・リュービが南校舎南部の占領を完了したとのことですぞ」

「なんですって! あのリュービが!

 早すぎる、我らの北部攻略がまだ半ばだというのに…!」

 シュウユは信じられないという様子であったが、対するロシュクは想定通りといった面持おももちで話を続けた。

「リュービは、リュウキ他、多くのリュウヒョウ系人材を配下にしていながらも、リュウヒョウから離反したという経緯があります。

 それをたくみに使い分け、親リュウヒョウ派からも反リュウヒョウ派からも支持を得ているようですぞ」

「なんということですか…」

 そう言いながらシュウユが立ち上がろうとすると、うっと悲鳴ひめいを上げて、少しよろめき、側の机に手をついた。

「だ、大丈夫ですかな!

 シュウユ司令!」

「少し立ちくらみがしただけですよ。

 しかし、これでリュービは南校舎の南半分を所有することになりました。

 れっきとした群雄の仲間入り、我らに従わせるのは難しくなりました」

(もう少しだけもってください…

 せめてサクちゃんの戻るその時まで…)

 シュウユの腹の中を知らぬロシュクは、毅然きぜんと答えるその姿を見て安心した。

「ああ、やはりリュービは私のにらんだとおり、“奇貨きか”でありましたな。

 利用せぬ手はありませんぞ…」



 南校舎・リュービ陣営~

 シュウユ軍に俺の義妹・カンウ、チョーヒの二人をつけて、南校舎の中部に布陣ふじんするソウジン軍と戦わせている一方、俺たちリュービ軍はそれとは別に南校舎南部へ侵攻。

 ソウソウの派遣したキンセン、カンゲン、チョウハン、リュウタクの四人の行政官を降伏させ、割拠する中小勢力をも従えて、分裂気味であった南部の統一に成功した。

「リュービさん、南部支配の成功、おめでとうございます」

 俺が南部の占領を終え、ひとまず落ち着くと、軍師・コウメイが戻ってきた。

 彼女は友人・ゲツエイと共に、今回の戦乱により雲隠れしてしまった南校舎の人材を俺の陣営に引き入れようと、情報を集めてきてくれていた。

「リュービさん、こちらはかなりの成果がありました。

 バリョウ・バショク姉妹を始め、多くの在野ざいやの方々がリュービさんの陣営に加わってくれるとのことです。

 やはり、リュービさんの南校舎での一連の活躍が印象的だったようです」

「そうか、コウメイ、それは良かった。

 こちらは君の言っていたリュウハには逃げられてしまったよ」

 ソウソウは南校舎撤退直前にリュウハに命じて、南部の中小勢力を説得させ、俺たちに対抗できる勢力を作りあげようとしていた。

 だが、俺はその計画が実行されるよりも早く南部を占領し、その策をくじくことができた。

 しかし、その時にコウメイよりリュウハは出来れば仲間にしたいと言われていたのだが、すでに行方をくらました後であった。

「そうですか、それは残念です。

 リュウハさんは切れ者として知られていますから、仲間に出来ればと思ったのですが」

「いくらさがしても見つからなかった。

 あるいはもうこの南校舎にはいないのかもしれない」

「ですが、私たちが北への道をふさいでいる以上、ソウソウの元に帰ったとは思えませんね。

 さらに南か、西あたりに行かれたのでしょうか」

「だけど、リュウハには逃げられたが、かなりの兵士を集めることができた。

 これならすぐにカンウ・チョーヒを戻せるだろう」

「リュービさん!

 カンウさんやチョーヒさんを戻すのも大事ですが、一番の目的を忘れてはいけませんよ!

 この南部占領はリュービさんの第一歩なのですから、これから二歩、三歩と歩みを進めていかなければならないのです!」

「わ、わかってるさ、コウメイ」

「そのためにまずやるべきことは軍隊の編成を見直し、戦力を増強することです!

 他にも支配地の強化や人材の確保が…」

 コウメイはまるで説教でもするかのように俺に対して強い口調で次々と今後の方針を話していく。

 コウメイの俺に対する人見知りが完全に払拭ふっしょくされたようで、俺は嬉しいよ。

 でも、もう少しお手柔らかに頼みたい…

「とにかく、リュービさん、これからよりいそがしくなりますよ!

 こうなってくると、あの子にも来てほしいのですが…」

「コウメイ、あの子って?」

「はい、私が臥龍がりゅうと呼ばれたように、鳳雛ほうすうと呼ばれたもう一人の人物ー

 その名はホウトウ!」



 リュウヒョウの支配下であった南校舎は、赤壁の大戦により、北をソウソウ、中央をソンケン、南を俺、リュービが支配する三つどもえの情勢へと様変わりした。

 これにより俺はついに拠点を手に入れることとなり、群雄の仲間入りを果たした。

 だが、赤壁での勝利も、南部の領土もこれから起こるであろう戦いの始まりにすぎない。

 俺たちが目指すのは天下三分!

 この南校舎のみならず、学園全てを巻き込む三つどもえの戦いだ。

 そのための第一歩を俺たちは今、踏み出したんだ。

 第五部 完
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