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第5部 赤壁大戦編
第80話 光明!微かなる天下!
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南校舎・リュービ陣営~
「なんだって!
ソウソウが大軍を率いて、もう南校舎目前まで迫ってきているというのか!」
「そうである、リュービ殿。
リュウソウ部長代理もソウソウ会長への降伏を決めたのである。
何卒、共に降伏を!」
リュウヒョウに変わって部長代理を務めるリュウソウからの使者・ソウチュウより、我らリュービ陣営にもたらされた情報。
それは既にソウソウの大軍が、ここ南校舎の目前にまで迫り、もうリュウソウはソウソウへの降伏を決定したという内容であった。
「ソウチュウさん。
これだけ近くにいながら何の相談もなく、ソウソウが南校舎の間近に迫って初めて、俺たちに報告するなんて、あまりにも酷いやり方ではないですか?」
俺は、この青白い顔の男子生徒・ソウチュウに詰め寄った。
前のように最前線に入れば、もう少し情報を仕入れれただろうが、今や我がリュービ陣営はリュウヒョウ陣営からも監視される立場にあり、偵察を出すのも難しい状態であった。
その結果がこの事態か。
ソウソウの南校舎への侵攻、リュウソウの部長代理就任、南校舎の降伏決定。
すべて事後報告となり、ただ俺たちにはともに降伏するよう要求してくるだけとは…
「アニキ、こうなったら、この男を八つ裂きにしようぜ!」
「ひっ!」
お団子ヘアーの小柄な俺の義妹・チョーヒも腹に据えかねた様で、拳を鳴らしながらソウチュウに近寄っていく。
「待て、チョーヒ。
今、彼を倒したところで何の問題解決にもならない。
とにかく、状況はわかった。
ソウチュウさん、帰ってくれ」
「わ、わかったのである…」
チョーヒの怒気に恐れをなしたのか、説得をあきらめ、ソウチュウはすごすごと帰っていった。
ソウチュウが去り、少しため息をつく俺の側に、長身で、長い黒髪のもう一人の義妹・カンウが歩み寄る。
「どうしますか兄さん?
ここでソウソウ軍を迎え撃ちますか?」
カンウの意見に、義妹・チョーヒも同調する。
「こうなりゃ先制攻撃だぜ!
突撃して蹴散らしてやろーぜ!」
「ダメだ、兵力が違いすぎる。
真正面から攻めても勝ち目はない」
俺は血気盛んな二人の義妹を押し止めた。
前回のようにカコウトンやウキンらの数名の武将相手ならまだしも、今回の陣容はほぼソウソウ全軍、とても俺たちの兵力では相手にならない。
「リュービさん、おられますか?」
非常時の対応をめぐり頭を悩ましている時に、赤毛のショートに、カチューシャとメガネをかけたリュウヒョウ陣営に所属する女生徒・イセキが俺たちを訪ねてきた。
「イセキさん、どうされたんですか?」
「あなたに情報をお伝えするために参りました」
イセキは神妙な面持ちでこれまでのリュウヒョウ陣営での経緯を教えてくれた。
サイボウらが中心となり、リュウソウの兄であるリュウキをも除いた形でのリュウソウの部長代理就任、さらにはそのリュウソウが渋るにもかかわらず決定されたソウソウへの降伏。
先ほどのソウチュウの説明では省かれた部分を詳細に語ってくれた。
「なるほど、サイボウが…」
「リュービさんだけではなく、リュウキ・リュウバン・リゲン・ゴキョといった境界警備の将も蚊帳の外で降伏が決定されてしまいました」
イセキは残念そうにつぶやいた。
「リュービさん、これはサイボウによる暴走です。
あいつを捕らえてソウソウと戦ってください」
「しかし、それはさすがに…」
「イセキさんの言うことにも一理あります。
今、サイボウ・リュウソウを捕らえればリュービさんが南校舎を治める事ができます」
イセキの提案に俺がためらうと、その後ろよりその提案に同意するものが現れた。
目にかかるぐらいの長さの薄水色の髪、まだ幼さの残る愛らしい顔つきの、背が低く、華奢な女生徒。
新たに俺の軍師となったコウメイであった。
「それでサイボウの兵を率いて、リュウバンさんたちと合流し、南校舎に立て籠れば勝機もあるかもしれません」
「コウメイ、すまないが、それは出来ない。
リュウヒョウさんにはお世話になった。
その部を乗っ取るような真似をすれば、彼女が復帰した時、どの面を下げて会うことができるだろうか」
軍師であるコウメイの策なら最良の策であるのだろう。
だが、その策は今までお世話になってきたリュウヒョウの恩を仇で返すような行為だ。
確かに俺はリュウヒョウ陣営から独立することを決めた。
しかし、これは独立ではなく乗っ取りだ。賛成することはできない。
「そうですか。
では、仕方がありません。
ここは逃げましょう」
俺の反応に、コウメイが続けて提案してきたのは逃亡であった。
「おいおい、このまま敵に背を向けて逃げるのかだぜ!」
俺より先に反応したのは激情の義妹・チョーヒであった。
しかし、不満気な様子のチョーヒに対し、コウメイは少しおどおどしながらも説明を始める。
「あのあの、真正面からでは勝ち目がありません…
それに、この教室に籠城しても勝ち目もありませんし…
なので…あの…逃げるしかないと思うのですが…」
コウメイがチョーヒに対し人見知りを発動させている。
何度も話した成果か、俺相手には理路整然と説明してくれるのだが、俺以外の人にはまだ苦手意識があるようだ。
「コウメイちゃんの言う通りだ!
さっさと逃げようぜ!」
コウメイの説明に、チョーヒは上手く反論できずに押し黙っていると、その脇より沈黙を破る一声が響き渡った。
金髪に、片耳からイヤホンをぶら下げていたこの男の名はカンヨー。
俺の悪友で、いつの間にか俺たちの陣営に加わっていたが、戦いとなれば姿を消す、何の役にも立たない男だが、今回ばかりは一足先に逃げることはできなかったようだ。
「カンヨー、お前という奴は…
しかし、コウメイ、逃げるといってもどこへ?」
まあ、カンヨーの逃げ癖はさておき、コウメイの提案は考慮する余地がある。
コウメイは俺の方に向き直ると、また理路整然と説明を始めてくれた。
「はい、リュービさん。
ただ逃げるだけではいけません。
途中で部隊を率いる方々と合流して勢力を増やす必要があります。
今、味方してくれそうなのは東のリュウキ、西のリゲン、南のリュウバン・ゴキョですね」
「この中で一番、兵力があるのは南か…」
南には第二南校舎制圧のための部隊がある。
また、俺はリュウバンやゴキョとも親しくしていたから、協力してくれる可能性は高い。
「そうですね、今から東西に向かっても、すでにソウソウの別動隊と戦いが始まっている可能性もあります。
ここはリュウキさんやリゲンさんにも南下してもらい、南部で合流して連合軍を結成するのが、現状、最良ではないかと思います」
「わかった。
各部隊と連絡を取ろう。
みんなは逃走のための準備を進めてくれ」
俺の指示で、慌ただしく逃げ支度が始まった。
その様子を見て、コウメイはポツリとつぶやいた。
「現状、最良ではありますが…
後もう一手欲しいところですね…」
俺はリュウバンらに連絡を取り、南部で合流することを約束した。
しかし、リュウキ・リゲンは音信不通であった。
「リュービさん、折り返し連絡があるかもしれません。
とにかく、今はリュウバンさんと合流することを優先しましょう」
俺についてきてくれた仲間は、義妹のカンウ・チョーヒ。
武将のチョーウン。
軍師のコウメイ・ジョショ。
補佐官のビジク・ビホウ姉妹。
文官のソンカン・イセキ。
悪友のカンヨー。
黄巾を率いるリューヘキ。
カンウ配下のカンペー・シューソウ。
新将のリュウホウ。
非戦闘員のコウソンサン・リョフ・カコウリン・コウゲツエイ、その他兵二百余名ほど。
「出発する前にリュウソウ君たちのところに挨拶に行こうと思う」
俺の発言に、コウメイが疑問を呈する。
「リュービさん、それは少し悠長過ぎませんか?」
「コウメイ、わかっている。
だが、直接会うのはこれが最後になるかも知れないから…」
少々強引だが、俺たちは先にリュウソウらのいる図書室へ向かった。
ただ、別れの挨拶をするつもりだったのだが、突然の俺たちの来訪に、リュウソウ陣営は震撼した。
「大変です!
リュービが全軍を率いてこちらに向かってきます!」
色黒の男子生徒・チョーインが、息を切らせながら、リュービ来訪をサイボウらに伝えた。
「なんだと!
防御を固めよ!
ソウソウ会長が来るまでなんとしてもこの教室を死守するんだ!
チョーイン、お前は扉の前に行き、リュービの食い止めよ!」
「やはり攻めてきた!
リュービを怒らせてしまった!」
「落ち着くんだ、リュウソウ部長!」
リュービの来訪を侵略と勘違いしたリュウソウは震え上がり、サイボウは急いで防御を固め出した。
「止まれ!
ここから先には一歩たりとも進ませはしない!」
チョーインの部隊が扉の前を固め、俺たちの進行を阻もうとする。
「チョーイン、勘違いするな。
俺は戦いに来た訳じゃない。
ただ、挨拶に来ただけだ」
しかし、チョーインは一向にどける気配はなく、やむなく俺は扉の前から、室内のリュウソウに呼び掛けた。
「リュウソウ部長代理!
今日は別れの挨拶に来ました!
お会いできないだろうか!」
「別れの挨拶?
サイボウ先輩、どういうつもりだろうか?」
「リュービの卑劣な作戦でしょう。
出てきたところを捕らえる気です」
俺の声に返事はなかった。
「出てきてはくれないか」
仕方がないので、俺はこの場で別れの挨拶を告げた。
「弁論部の方々、そして南校舎の方々、今までお世話になりました!
リュウヒョウ部長にもありがとうございましたとお伝えください!」
しかし、それに対しても返事はなかった。
「では行こうか、俺たちは歓迎されないようだ」
俺は後ろのコウメイらに振り返る。
「はい、リュービさん、わかりました」
俺たちが図書室を後に出発しようとしたその時、突如、俺たちを呼び止める者が現れた。
「待ってください!
我々も同行させてください!」
俺たちを呼び止めたのは、かつてイセキを介して話をした、ショートの白髪にメガネをかけた女生徒・ショウロウであった。
「ショウロウさん、あなたがともに来ていただけるなら心強いです。
しかし、我々とは…?」
「リュービさん、こちらにです」
ショウロウが案内で、俺たちは中庭の方へ目を向けた。
「リュービさん、ここにいる皆のことです」
「リュービさん俺たちもついて行きます!」
「サイボウにはもう、ついて行けない!」
「ソウソウに巻き込まれるのは嫌だ!」
「俺も」「私も」「僕も」
そこにいたのは、教室には入りきれないほどの男女合わせた多数の生徒であった
「これは…」
「すげーぜ!
300人、いや400…もっといるんだぜ!」
「リュービさん、ここにいるのはあなたを慕う部員や無所属の南校舎の生徒達です。
どうか我らもともに連れていってください」
義妹・カンウが俺の側に歩み寄り、微笑みかける。
「兄さんは前回の選挙戦以降、南校舎を基盤にここの生徒と接してきました。
それは決して無駄ではなかったようですね」
軍師・コウメイもまた発言する。
「この様子ならまだまだ増えるかも知れません
この方々を仲間にすれば、勢力をさらに拡大させることも可能かもしれませんね」
「勢力の大小でもない、戦争の勝敗でもない、これは選挙戦だ。
支持者をもって優劣とする。
俺はその力をまだ失っていなかったか」
「なんだって!
ソウソウが大軍を率いて、もう南校舎目前まで迫ってきているというのか!」
「そうである、リュービ殿。
リュウソウ部長代理もソウソウ会長への降伏を決めたのである。
何卒、共に降伏を!」
リュウヒョウに変わって部長代理を務めるリュウソウからの使者・ソウチュウより、我らリュービ陣営にもたらされた情報。
それは既にソウソウの大軍が、ここ南校舎の目前にまで迫り、もうリュウソウはソウソウへの降伏を決定したという内容であった。
「ソウチュウさん。
これだけ近くにいながら何の相談もなく、ソウソウが南校舎の間近に迫って初めて、俺たちに報告するなんて、あまりにも酷いやり方ではないですか?」
俺は、この青白い顔の男子生徒・ソウチュウに詰め寄った。
前のように最前線に入れば、もう少し情報を仕入れれただろうが、今や我がリュービ陣営はリュウヒョウ陣営からも監視される立場にあり、偵察を出すのも難しい状態であった。
その結果がこの事態か。
ソウソウの南校舎への侵攻、リュウソウの部長代理就任、南校舎の降伏決定。
すべて事後報告となり、ただ俺たちにはともに降伏するよう要求してくるだけとは…
「アニキ、こうなったら、この男を八つ裂きにしようぜ!」
「ひっ!」
お団子ヘアーの小柄な俺の義妹・チョーヒも腹に据えかねた様で、拳を鳴らしながらソウチュウに近寄っていく。
「待て、チョーヒ。
今、彼を倒したところで何の問題解決にもならない。
とにかく、状況はわかった。
ソウチュウさん、帰ってくれ」
「わ、わかったのである…」
チョーヒの怒気に恐れをなしたのか、説得をあきらめ、ソウチュウはすごすごと帰っていった。
ソウチュウが去り、少しため息をつく俺の側に、長身で、長い黒髪のもう一人の義妹・カンウが歩み寄る。
「どうしますか兄さん?
ここでソウソウ軍を迎え撃ちますか?」
カンウの意見に、義妹・チョーヒも同調する。
「こうなりゃ先制攻撃だぜ!
突撃して蹴散らしてやろーぜ!」
「ダメだ、兵力が違いすぎる。
真正面から攻めても勝ち目はない」
俺は血気盛んな二人の義妹を押し止めた。
前回のようにカコウトンやウキンらの数名の武将相手ならまだしも、今回の陣容はほぼソウソウ全軍、とても俺たちの兵力では相手にならない。
「リュービさん、おられますか?」
非常時の対応をめぐり頭を悩ましている時に、赤毛のショートに、カチューシャとメガネをかけたリュウヒョウ陣営に所属する女生徒・イセキが俺たちを訪ねてきた。
「イセキさん、どうされたんですか?」
「あなたに情報をお伝えするために参りました」
イセキは神妙な面持ちでこれまでのリュウヒョウ陣営での経緯を教えてくれた。
サイボウらが中心となり、リュウソウの兄であるリュウキをも除いた形でのリュウソウの部長代理就任、さらにはそのリュウソウが渋るにもかかわらず決定されたソウソウへの降伏。
先ほどのソウチュウの説明では省かれた部分を詳細に語ってくれた。
「なるほど、サイボウが…」
「リュービさんだけではなく、リュウキ・リュウバン・リゲン・ゴキョといった境界警備の将も蚊帳の外で降伏が決定されてしまいました」
イセキは残念そうにつぶやいた。
「リュービさん、これはサイボウによる暴走です。
あいつを捕らえてソウソウと戦ってください」
「しかし、それはさすがに…」
「イセキさんの言うことにも一理あります。
今、サイボウ・リュウソウを捕らえればリュービさんが南校舎を治める事ができます」
イセキの提案に俺がためらうと、その後ろよりその提案に同意するものが現れた。
目にかかるぐらいの長さの薄水色の髪、まだ幼さの残る愛らしい顔つきの、背が低く、華奢な女生徒。
新たに俺の軍師となったコウメイであった。
「それでサイボウの兵を率いて、リュウバンさんたちと合流し、南校舎に立て籠れば勝機もあるかもしれません」
「コウメイ、すまないが、それは出来ない。
リュウヒョウさんにはお世話になった。
その部を乗っ取るような真似をすれば、彼女が復帰した時、どの面を下げて会うことができるだろうか」
軍師であるコウメイの策なら最良の策であるのだろう。
だが、その策は今までお世話になってきたリュウヒョウの恩を仇で返すような行為だ。
確かに俺はリュウヒョウ陣営から独立することを決めた。
しかし、これは独立ではなく乗っ取りだ。賛成することはできない。
「そうですか。
では、仕方がありません。
ここは逃げましょう」
俺の反応に、コウメイが続けて提案してきたのは逃亡であった。
「おいおい、このまま敵に背を向けて逃げるのかだぜ!」
俺より先に反応したのは激情の義妹・チョーヒであった。
しかし、不満気な様子のチョーヒに対し、コウメイは少しおどおどしながらも説明を始める。
「あのあの、真正面からでは勝ち目がありません…
それに、この教室に籠城しても勝ち目もありませんし…
なので…あの…逃げるしかないと思うのですが…」
コウメイがチョーヒに対し人見知りを発動させている。
何度も話した成果か、俺相手には理路整然と説明してくれるのだが、俺以外の人にはまだ苦手意識があるようだ。
「コウメイちゃんの言う通りだ!
さっさと逃げようぜ!」
コウメイの説明に、チョーヒは上手く反論できずに押し黙っていると、その脇より沈黙を破る一声が響き渡った。
金髪に、片耳からイヤホンをぶら下げていたこの男の名はカンヨー。
俺の悪友で、いつの間にか俺たちの陣営に加わっていたが、戦いとなれば姿を消す、何の役にも立たない男だが、今回ばかりは一足先に逃げることはできなかったようだ。
「カンヨー、お前という奴は…
しかし、コウメイ、逃げるといってもどこへ?」
まあ、カンヨーの逃げ癖はさておき、コウメイの提案は考慮する余地がある。
コウメイは俺の方に向き直ると、また理路整然と説明を始めてくれた。
「はい、リュービさん。
ただ逃げるだけではいけません。
途中で部隊を率いる方々と合流して勢力を増やす必要があります。
今、味方してくれそうなのは東のリュウキ、西のリゲン、南のリュウバン・ゴキョですね」
「この中で一番、兵力があるのは南か…」
南には第二南校舎制圧のための部隊がある。
また、俺はリュウバンやゴキョとも親しくしていたから、協力してくれる可能性は高い。
「そうですね、今から東西に向かっても、すでにソウソウの別動隊と戦いが始まっている可能性もあります。
ここはリュウキさんやリゲンさんにも南下してもらい、南部で合流して連合軍を結成するのが、現状、最良ではないかと思います」
「わかった。
各部隊と連絡を取ろう。
みんなは逃走のための準備を進めてくれ」
俺の指示で、慌ただしく逃げ支度が始まった。
その様子を見て、コウメイはポツリとつぶやいた。
「現状、最良ではありますが…
後もう一手欲しいところですね…」
俺はリュウバンらに連絡を取り、南部で合流することを約束した。
しかし、リュウキ・リゲンは音信不通であった。
「リュービさん、折り返し連絡があるかもしれません。
とにかく、今はリュウバンさんと合流することを優先しましょう」
俺についてきてくれた仲間は、義妹のカンウ・チョーヒ。
武将のチョーウン。
軍師のコウメイ・ジョショ。
補佐官のビジク・ビホウ姉妹。
文官のソンカン・イセキ。
悪友のカンヨー。
黄巾を率いるリューヘキ。
カンウ配下のカンペー・シューソウ。
新将のリュウホウ。
非戦闘員のコウソンサン・リョフ・カコウリン・コウゲツエイ、その他兵二百余名ほど。
「出発する前にリュウソウ君たちのところに挨拶に行こうと思う」
俺の発言に、コウメイが疑問を呈する。
「リュービさん、それは少し悠長過ぎませんか?」
「コウメイ、わかっている。
だが、直接会うのはこれが最後になるかも知れないから…」
少々強引だが、俺たちは先にリュウソウらのいる図書室へ向かった。
ただ、別れの挨拶をするつもりだったのだが、突然の俺たちの来訪に、リュウソウ陣営は震撼した。
「大変です!
リュービが全軍を率いてこちらに向かってきます!」
色黒の男子生徒・チョーインが、息を切らせながら、リュービ来訪をサイボウらに伝えた。
「なんだと!
防御を固めよ!
ソウソウ会長が来るまでなんとしてもこの教室を死守するんだ!
チョーイン、お前は扉の前に行き、リュービの食い止めよ!」
「やはり攻めてきた!
リュービを怒らせてしまった!」
「落ち着くんだ、リュウソウ部長!」
リュービの来訪を侵略と勘違いしたリュウソウは震え上がり、サイボウは急いで防御を固め出した。
「止まれ!
ここから先には一歩たりとも進ませはしない!」
チョーインの部隊が扉の前を固め、俺たちの進行を阻もうとする。
「チョーイン、勘違いするな。
俺は戦いに来た訳じゃない。
ただ、挨拶に来ただけだ」
しかし、チョーインは一向にどける気配はなく、やむなく俺は扉の前から、室内のリュウソウに呼び掛けた。
「リュウソウ部長代理!
今日は別れの挨拶に来ました!
お会いできないだろうか!」
「別れの挨拶?
サイボウ先輩、どういうつもりだろうか?」
「リュービの卑劣な作戦でしょう。
出てきたところを捕らえる気です」
俺の声に返事はなかった。
「出てきてはくれないか」
仕方がないので、俺はこの場で別れの挨拶を告げた。
「弁論部の方々、そして南校舎の方々、今までお世話になりました!
リュウヒョウ部長にもありがとうございましたとお伝えください!」
しかし、それに対しても返事はなかった。
「では行こうか、俺たちは歓迎されないようだ」
俺は後ろのコウメイらに振り返る。
「はい、リュービさん、わかりました」
俺たちが図書室を後に出発しようとしたその時、突如、俺たちを呼び止める者が現れた。
「待ってください!
我々も同行させてください!」
俺たちを呼び止めたのは、かつてイセキを介して話をした、ショートの白髪にメガネをかけた女生徒・ショウロウであった。
「ショウロウさん、あなたがともに来ていただけるなら心強いです。
しかし、我々とは…?」
「リュービさん、こちらにです」
ショウロウが案内で、俺たちは中庭の方へ目を向けた。
「リュービさん、ここにいる皆のことです」
「リュービさん俺たちもついて行きます!」
「サイボウにはもう、ついて行けない!」
「ソウソウに巻き込まれるのは嫌だ!」
「俺も」「私も」「僕も」
そこにいたのは、教室には入りきれないほどの男女合わせた多数の生徒であった
「これは…」
「すげーぜ!
300人、いや400…もっといるんだぜ!」
「リュービさん、ここにいるのはあなたを慕う部員や無所属の南校舎の生徒達です。
どうか我らもともに連れていってください」
義妹・カンウが俺の側に歩み寄り、微笑みかける。
「兄さんは前回の選挙戦以降、南校舎を基盤にここの生徒と接してきました。
それは決して無駄ではなかったようですね」
軍師・コウメイもまた発言する。
「この様子ならまだまだ増えるかも知れません
この方々を仲間にすれば、勢力をさらに拡大させることも可能かもしれませんね」
「勢力の大小でもない、戦争の勝敗でもない、これは選挙戦だ。
支持者をもって優劣とする。
俺はその力をまだ失っていなかったか」
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