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番外編
番外!後漢学園文化祭!その2[演芸]
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最初にたどり着いたのは北校舎の外れの旧部室棟。ここではチョウカクたち黄巾党の面々が出し物をしているという話だったのだが…
黄巾党-かつてチョウカクのもとに集まった不良たちは黄色いバンダナを目印にして学園に反抗したことがあった。(※第1話~4話参照)
だが、今は騒動も落着し、チョウカクたちはソウソウのもとに、妹のチョウホウはリューヘキと名を改め、俺の仲間となっている。(※第41話・56話参照)
「おや、リュービ殿、見学ですかな?」
俺たちに気づいて声をかけてくれたのは、長い白髪に黄色い道士服、手には杖も持った、ヒミコと同じぐらいの背丈の女生徒、黄巾党の主・チョウカクだ。
「チョウカクさん、久しぶりです」
「今回は宝子…君にはリューヘキと言うべきかな。妹を我らのとこで借りて悪かったね」
「いえいえ、今回はチョウカクさんにとっては最後の文化祭なんですし、リューヘキもこちらの方がいいですよ」
「気を使ってくれてありがとう。
カンウ殿にチョーヒ殿も…おや、そちらのお子さんはリュービ殿の子供かな?母はカンウ殿?チョーヒ殿?」
「はい、私と兄さんの愛の結晶なんです」
「いや、オレがお腹を痛めて産んだ子なんだぜ」
カンウとチョーヒが顔を赤らめながらシャレにならん冗談を言い出した。
「なんでそうなるんですか!カンウもチョーヒも悪ふざけしない!
この子はヒミコ、文化祭に遊びに来ていたので一緒に廻ってるんですよ!」
「キャハハハハ
あちしリューちゃんの子供なのだ!」
「ヒミコちゃん、それ絶対他の人に言わないでね」
「ハッハハ、リュービ殿は相変わらず女難に見舞われてますな。
実は我らの出し物は『三国志の演芸』をテーマにした舞台なのですが、公演は午後からでしてな。ただ、これから練習するので見学していかれませんか?」
「そうですね、せっかくなので見学させてください」
さっそく始まった黄巾党のお芝居は、どうも時代劇のようだ。着物のような格好のチンピラ風の青年が舞台袖より現れた。
『俺の名は劉備、今はワラジ売りに身をやつしているが漢の皇帝の血を引くものだ!』
ん?劉備?どこかで聞いた名前だな…
チンピラ劉備は竜に捕まり天上界へと赴いた。
場面変わって天上界ー今度はビキニの水着にマントを羽織った金髪ロングの女生徒・リューヘキが現れた。
ちょっと格好際ど過ぎやしないか?
『私は竜王の娘じゃ。ここまで来た男・劉備よ。お前が私の婿になるなら願いを一つ叶えよう』
『俺が望むのは肝だ。どんな苦しい時でもビクともしねぇ肝っ玉が欲しい』
『ならばお前に巨鬼の肝を与えよう。これでお前は人間界第一の剛胆な男だ』
こうして竜女の婿、人間界一の剛胆な男劉備は地上に戻ると、彼の前に長い髭を伸ばした大男が現れた。
『たった今、天の声をお聞き申した!
劉備殿!!私を!!この関羽をどうか家臣の末席にお加えくだされい!!』
「なんであの髭面の大男が私と同じ名前なんですか?」
次に現れたのは隻眼の大男であった。
『俺の名は張飛!
めぐりあわせじゃあ!!天下が俺を必要としはじめんじゃ!!俺を家臣に加えてくれ!!』
「おい、なんであんなおっさんがオレと同じ名前なんだぜ!」
『俺は家来を持つほどの人間かわからねぇ。
この契りは兄弟の契りとしよう』
『ならばせめて長兄は劉備殿に』
『という事は関羽が次兄で、この張飛が末弟か!まあ、しゃんめいな』
こうしてガレキの中で兄弟の誓いをした三人は黄巾党を討つため立ち上がった。
この三人も兄弟の誓いをするのか。まあ、弟と妹の違いはあるけど…
黄巾党相手に快進撃を続ける劉備たちの前についに黄巾党の主・張角が立ちはだかる。
『黄巾党の張角とは仮の姿、我こそは魔界の幻鐘大王である!』
おい待て、なんだ魔界の大王って。
そこへ竜女扮するリューヘキが現れて劉備に魔界の大王と戦う力を授ける。
『地上は人間のもの!
人間たる俺が守る!!』
激しい斬り合いの果て、ついに劉備の剣は魔界の王を討ち砕いた!
魔界の王を討ち取った劉備のもとに、竜女は人間界に残り、二人はついに夫婦となったのであった。めでたしめでたし。
「キャハハハハ
面白かったのだ!」
「ってチョウカクさん!何なんですかこの話!!」
舞台が終わると同時に俺はチョウカクに詰め寄った。
「三国志の序盤、黄巾の乱の話を時代劇風に脚色を加えて書いてみた。ちなみに監督脚本はこのチョウカクだ。
後、今回出てくる人名は同じに聞こえても別人だぞ」
「んな、無茶な。
劉備、関羽、張飛と聞いたら他人事とは思えませんよ」
「なお、この話はこの後、義兄弟の誓いをした劉備、関羽、張飛の三人が、後漢王朝を支配する董卓や呂布、群雄の曹操、袁紹、袁術、孫策とその弟の孫権、劉表らと戦っていくようになる予定だ」
「そんなに話広げて大丈夫なんです?」
「なに、その時は竜巻でもぶつけてみんな吹き飛ばすさ」
「そんな強引な終わり方でいいんですか…
てか、そもそも俺たち別に黄巾党を倒したわけではないですし…
それにそんな聞いたことあるようなないような名前何人も出されても…」
「そうですよ、あの名前で他人事とは思えません。
それになんであの髭面の大男が私なんですか!」
「オレもあんな大男にしやがって!オレへの背丈に対する嫌味かだぜ!」
カンウ・チョーヒもご立腹だ。まあ、気持ちはわかるが、他にツッコミどころがあるだろ。俺もあんなむさい男たちの兄になるのは嫌だが…
「ハハ、すまんね。確かに脚色はあるがお前たち三人のような配役だな。
それに今回、女優はリューヘキ一人だからな、他は全員男になるのは仕方がない」
「リューヘキといえばあの役はなんなのさ?」
「あたいの役は竜王の娘、不思議な力が使える劉備の嫁さ」
俺の質問に袖から舞台衣装の水着のまま現れたリューヘキが答えてくれた。
「なんでそんな設定の嫁を作るかな。
てか、リューヘキ、その格好は露出が激し過ぎるからやめた方がよくないか」
「なんだリュービ、あたいの体に興奮しちゃったのか?
それならさ、このまま一緒に舞台の裏にふけねーか。
あたいはいつでも準備できてるしさ…」
そこへ舞台で関羽に扮していた大柄の男・キョウトが現れる。
「リュービの旦那、もし子供ができたら俺たちで面倒みやすからご安心くだせい。必ず黄巾党の次代の指導者に育ててみせやす!」
「いらんお世話だ!」
「そうです、なんで兄さんがあなたと子…子作りなんてするんですか!」
「そうだぜ!劇でも勝手にアニキの妻の役なんかやりやがって!」
「ああ、竜女の役はリューヘキの希望で作った」
「てか、なんで黄巾党の主が魔界の大王なんです?黄巾党の芝居なのに完全に悪者じゃないですか」
「はは、これ以上黄巾党に人が入らないに越したことはないから私は悪党でいいのさ。
私もじきに卒業だしな」
「チョウカク…」
「ちなみに中国では古代より祭祀儀礼の場で歌や舞は重要視されていた。これに物語性が加わり、演劇へと発展していったようだ。
三国時代、まだいわゆるセリフ劇というものはなかったようで、この時代の主な演芸は「百劇」と言われる楽舞や曲芸などの雑技が行われていた。
有名な文人であった邯鄲淳を招いた曹植(曹操の子)は、俳優を真似て自ら白粉を塗り、冠を脱ぎ半裸となって、異国の舞踏を踊り、ジャグリングや剣技を披露し、小話を口ずさんだという。
また、魏の宮中では綱渡りや逆立ちしながらの馬乗りといったサーカスのような曲芸が披露されていたそうだ。
しかし、演目の中には物語性の伴ったものがすでに出てきてはいた。
例えば漢代(二世紀頃)の墓室より発掘された画像には各種楽器や舞の他に、伝説の神獣に扮した人や神話的な服装をした人物が描かれている。おそらく伝説の一場面を再現したものだろう。
三国時代、魏の宮中では曲芸などと共に『魚龍曼延の戯』というものが披露されている。これは獣から魚に転じ、最後に龍に変化するという演し物だったようだ。
いわゆるセリフ劇は宋代以降(十~十二世紀以降)から普及していくが、その中身は偉人英雄の鎮魂を目的とした史劇が多く含まれていた。
もちろん、その中には三国志にまつわる劇もたくさんあった。
また元代(十二~十四世紀頃)に演劇が大衆文化として浸透していくと、大衆は自分たちのよく知る歴史・伝承に基づく周知の演劇をいかに脚色されるかに注目が集まるようになっていった。
現代でも、よく知られた歴史物語を脚色して多様な小説、漫画、アニメ、ゲームが生まれているからな。状況は似ているかも知れんな。
以上の観点から、学園を救った英雄である君たちリュービ三兄妹を主人公に、天上界や魔界といった大幅脚色をしたこのお芝居は、中国の演劇に適っていると言えるわけだ」
「チョウカク、ものは言い様だな。てか、この長い説明ってこのお芝居の言い訳だったのか」
「後、この芝居のタイトルは『天地を食べる』という」
「その名前なんかカッコ悪くない?せめて“喰らう”とか…」
その時、後ろの戸が勢いよく開けられた。
「ほお、ここは演劇か。
さて、我輩のお眼鏡にかなう女優はいるかな」
三人の女性・リジュ、カユウ、ジョエイを伴って現れたその男は、長身細身で、髪は七三に綺麗に分けられていたいかにも優等生風の容貌であった。だが、顔は忘れもしない。お前は…
「トータク!!」
「ほお、我輩の名を知っているのか。
我輩がここにいた期間は短かかったが、なかなか存在感を示せたようだな」
「さすがトータク様!見事ですトータク様!立派ですトータク様!」
「クックック フハハハ ワーッハッハッハ!
そう誉めるなリジュよ」
トータクの汚い笑い声が部室棟に響き渡る。
かつてトータクは、交換学生として後漢学園にやってきて、瞬く間に学園を掌握。あわやのところで、俺やソウソウたち反トータク連合が彼の野望を打ち砕き、追い返すことに成功した。(※第5~14話参照)
「この学園を追放されたあなたがなぜここにいるのですか!」
義妹・カンウが拳を構えてトータクの行く手を遮る。
「あなた、トータク様に失礼ですよ!
ここの学園祭は部外者の出入り自由だからわざわざ来たのですよ!」
敵意剥き出しのカンウに対し、トータクの隣に立つ茶髪にメガネをかけた女性・リジュが反論する。
「待てリジュよ。
せっかく乳がでかくて美人の我輩好みの女が話しかけてくれたのだ。
どうだ?向こうで二人きりで我輩の処分について話し合うというのは」
「私を忘れるとはいい度胸ですね!」
「おや、君のような美人とどこかで会ったかな」
「トータク様、こやつはカンウ、反トータク連合で戦っていた女です」
黒い軍服の女性がそうトータクに報告くる。
「そうかカユウ、あの時にいたのか。
あの時はソウソウやエンショウ、エンジュツ姉妹ばかりに目がいって、こんな美人を見逃していたとは、我輩の失態だな」
「やいトータク!これ以上、カン姉に近付くとオレが許さねーぜ!」
今度はチョーヒがトータクの前に詰め寄った。
「お前は…ロリっ娘!!!」
「誰がロリだぜ!オレも同じ高校生だぜ!」
ロリ呼ばわりされて激怒するチョーヒに対し、トータクはトラウマでも呼び起こされたかのような怯えぶりであった。
「近付くな、ロリっ娘!
我輩はあの時の反省からもうロリには手を出さんと決めたのだ!」
お前、あれだけの騒動起こして反省したのそれだけかよ!
「何か知らんが、そろそろ公演準備があるから帰ってもらえんかの」
「ギャアアア!またロリっ娘だ!」
今度はチョウカクを見て取り乱すトータク。
「てめえ、姉さんをロリ呼ばわりしてんじゃねー!」
まだ水着姿のリューヘキがトータクに食って掛かる。
「おお、半裸の女だ。ああ、癒される」
「てめえ、見てんじゃねー!」
「おっさん、子供が怖いのか?」
いつの間にかヒミコがトータクの隣に立っていた。
「ギャアアアァァァ!またまたロリっ娘だぁぁ!」
「ヒミコちゃん、その変態に近づいちゃダメだよ」
「リューちゃん、こいつ悪い奴なのか」
「そうだよ。とっても悪いから無闇に近づいちゃダメなんだよ」
「じゃあ、あちしが退治してあげるのだ!」
「え、ヒミコちゃんが退治?」
「まっかせるのだ!
ヒミコミコミコヒミコミコ鬼道あちしがいーっぱいの術!」
「うわぁぁぁ!」
黄巾党-かつてチョウカクのもとに集まった不良たちは黄色いバンダナを目印にして学園に反抗したことがあった。(※第1話~4話参照)
だが、今は騒動も落着し、チョウカクたちはソウソウのもとに、妹のチョウホウはリューヘキと名を改め、俺の仲間となっている。(※第41話・56話参照)
「おや、リュービ殿、見学ですかな?」
俺たちに気づいて声をかけてくれたのは、長い白髪に黄色い道士服、手には杖も持った、ヒミコと同じぐらいの背丈の女生徒、黄巾党の主・チョウカクだ。
「チョウカクさん、久しぶりです」
「今回は宝子…君にはリューヘキと言うべきかな。妹を我らのとこで借りて悪かったね」
「いえいえ、今回はチョウカクさんにとっては最後の文化祭なんですし、リューヘキもこちらの方がいいですよ」
「気を使ってくれてありがとう。
カンウ殿にチョーヒ殿も…おや、そちらのお子さんはリュービ殿の子供かな?母はカンウ殿?チョーヒ殿?」
「はい、私と兄さんの愛の結晶なんです」
「いや、オレがお腹を痛めて産んだ子なんだぜ」
カンウとチョーヒが顔を赤らめながらシャレにならん冗談を言い出した。
「なんでそうなるんですか!カンウもチョーヒも悪ふざけしない!
この子はヒミコ、文化祭に遊びに来ていたので一緒に廻ってるんですよ!」
「キャハハハハ
あちしリューちゃんの子供なのだ!」
「ヒミコちゃん、それ絶対他の人に言わないでね」
「ハッハハ、リュービ殿は相変わらず女難に見舞われてますな。
実は我らの出し物は『三国志の演芸』をテーマにした舞台なのですが、公演は午後からでしてな。ただ、これから練習するので見学していかれませんか?」
「そうですね、せっかくなので見学させてください」
さっそく始まった黄巾党のお芝居は、どうも時代劇のようだ。着物のような格好のチンピラ風の青年が舞台袖より現れた。
『俺の名は劉備、今はワラジ売りに身をやつしているが漢の皇帝の血を引くものだ!』
ん?劉備?どこかで聞いた名前だな…
チンピラ劉備は竜に捕まり天上界へと赴いた。
場面変わって天上界ー今度はビキニの水着にマントを羽織った金髪ロングの女生徒・リューヘキが現れた。
ちょっと格好際ど過ぎやしないか?
『私は竜王の娘じゃ。ここまで来た男・劉備よ。お前が私の婿になるなら願いを一つ叶えよう』
『俺が望むのは肝だ。どんな苦しい時でもビクともしねぇ肝っ玉が欲しい』
『ならばお前に巨鬼の肝を与えよう。これでお前は人間界第一の剛胆な男だ』
こうして竜女の婿、人間界一の剛胆な男劉備は地上に戻ると、彼の前に長い髭を伸ばした大男が現れた。
『たった今、天の声をお聞き申した!
劉備殿!!私を!!この関羽をどうか家臣の末席にお加えくだされい!!』
「なんであの髭面の大男が私と同じ名前なんですか?」
次に現れたのは隻眼の大男であった。
『俺の名は張飛!
めぐりあわせじゃあ!!天下が俺を必要としはじめんじゃ!!俺を家臣に加えてくれ!!』
「おい、なんであんなおっさんがオレと同じ名前なんだぜ!」
『俺は家来を持つほどの人間かわからねぇ。
この契りは兄弟の契りとしよう』
『ならばせめて長兄は劉備殿に』
『という事は関羽が次兄で、この張飛が末弟か!まあ、しゃんめいな』
こうしてガレキの中で兄弟の誓いをした三人は黄巾党を討つため立ち上がった。
この三人も兄弟の誓いをするのか。まあ、弟と妹の違いはあるけど…
黄巾党相手に快進撃を続ける劉備たちの前についに黄巾党の主・張角が立ちはだかる。
『黄巾党の張角とは仮の姿、我こそは魔界の幻鐘大王である!』
おい待て、なんだ魔界の大王って。
そこへ竜女扮するリューヘキが現れて劉備に魔界の大王と戦う力を授ける。
『地上は人間のもの!
人間たる俺が守る!!』
激しい斬り合いの果て、ついに劉備の剣は魔界の王を討ち砕いた!
魔界の王を討ち取った劉備のもとに、竜女は人間界に残り、二人はついに夫婦となったのであった。めでたしめでたし。
「キャハハハハ
面白かったのだ!」
「ってチョウカクさん!何なんですかこの話!!」
舞台が終わると同時に俺はチョウカクに詰め寄った。
「三国志の序盤、黄巾の乱の話を時代劇風に脚色を加えて書いてみた。ちなみに監督脚本はこのチョウカクだ。
後、今回出てくる人名は同じに聞こえても別人だぞ」
「んな、無茶な。
劉備、関羽、張飛と聞いたら他人事とは思えませんよ」
「なお、この話はこの後、義兄弟の誓いをした劉備、関羽、張飛の三人が、後漢王朝を支配する董卓や呂布、群雄の曹操、袁紹、袁術、孫策とその弟の孫権、劉表らと戦っていくようになる予定だ」
「そんなに話広げて大丈夫なんです?」
「なに、その時は竜巻でもぶつけてみんな吹き飛ばすさ」
「そんな強引な終わり方でいいんですか…
てか、そもそも俺たち別に黄巾党を倒したわけではないですし…
それにそんな聞いたことあるようなないような名前何人も出されても…」
「そうですよ、あの名前で他人事とは思えません。
それになんであの髭面の大男が私なんですか!」
「オレもあんな大男にしやがって!オレへの背丈に対する嫌味かだぜ!」
カンウ・チョーヒもご立腹だ。まあ、気持ちはわかるが、他にツッコミどころがあるだろ。俺もあんなむさい男たちの兄になるのは嫌だが…
「ハハ、すまんね。確かに脚色はあるがお前たち三人のような配役だな。
それに今回、女優はリューヘキ一人だからな、他は全員男になるのは仕方がない」
「リューヘキといえばあの役はなんなのさ?」
「あたいの役は竜王の娘、不思議な力が使える劉備の嫁さ」
俺の質問に袖から舞台衣装の水着のまま現れたリューヘキが答えてくれた。
「なんでそんな設定の嫁を作るかな。
てか、リューヘキ、その格好は露出が激し過ぎるからやめた方がよくないか」
「なんだリュービ、あたいの体に興奮しちゃったのか?
それならさ、このまま一緒に舞台の裏にふけねーか。
あたいはいつでも準備できてるしさ…」
そこへ舞台で関羽に扮していた大柄の男・キョウトが現れる。
「リュービの旦那、もし子供ができたら俺たちで面倒みやすからご安心くだせい。必ず黄巾党の次代の指導者に育ててみせやす!」
「いらんお世話だ!」
「そうです、なんで兄さんがあなたと子…子作りなんてするんですか!」
「そうだぜ!劇でも勝手にアニキの妻の役なんかやりやがって!」
「ああ、竜女の役はリューヘキの希望で作った」
「てか、なんで黄巾党の主が魔界の大王なんです?黄巾党の芝居なのに完全に悪者じゃないですか」
「はは、これ以上黄巾党に人が入らないに越したことはないから私は悪党でいいのさ。
私もじきに卒業だしな」
「チョウカク…」
「ちなみに中国では古代より祭祀儀礼の場で歌や舞は重要視されていた。これに物語性が加わり、演劇へと発展していったようだ。
三国時代、まだいわゆるセリフ劇というものはなかったようで、この時代の主な演芸は「百劇」と言われる楽舞や曲芸などの雑技が行われていた。
有名な文人であった邯鄲淳を招いた曹植(曹操の子)は、俳優を真似て自ら白粉を塗り、冠を脱ぎ半裸となって、異国の舞踏を踊り、ジャグリングや剣技を披露し、小話を口ずさんだという。
また、魏の宮中では綱渡りや逆立ちしながらの馬乗りといったサーカスのような曲芸が披露されていたそうだ。
しかし、演目の中には物語性の伴ったものがすでに出てきてはいた。
例えば漢代(二世紀頃)の墓室より発掘された画像には各種楽器や舞の他に、伝説の神獣に扮した人や神話的な服装をした人物が描かれている。おそらく伝説の一場面を再現したものだろう。
三国時代、魏の宮中では曲芸などと共に『魚龍曼延の戯』というものが披露されている。これは獣から魚に転じ、最後に龍に変化するという演し物だったようだ。
いわゆるセリフ劇は宋代以降(十~十二世紀以降)から普及していくが、その中身は偉人英雄の鎮魂を目的とした史劇が多く含まれていた。
もちろん、その中には三国志にまつわる劇もたくさんあった。
また元代(十二~十四世紀頃)に演劇が大衆文化として浸透していくと、大衆は自分たちのよく知る歴史・伝承に基づく周知の演劇をいかに脚色されるかに注目が集まるようになっていった。
現代でも、よく知られた歴史物語を脚色して多様な小説、漫画、アニメ、ゲームが生まれているからな。状況は似ているかも知れんな。
以上の観点から、学園を救った英雄である君たちリュービ三兄妹を主人公に、天上界や魔界といった大幅脚色をしたこのお芝居は、中国の演劇に適っていると言えるわけだ」
「チョウカク、ものは言い様だな。てか、この長い説明ってこのお芝居の言い訳だったのか」
「後、この芝居のタイトルは『天地を食べる』という」
「その名前なんかカッコ悪くない?せめて“喰らう”とか…」
その時、後ろの戸が勢いよく開けられた。
「ほお、ここは演劇か。
さて、我輩のお眼鏡にかなう女優はいるかな」
三人の女性・リジュ、カユウ、ジョエイを伴って現れたその男は、長身細身で、髪は七三に綺麗に分けられていたいかにも優等生風の容貌であった。だが、顔は忘れもしない。お前は…
「トータク!!」
「ほお、我輩の名を知っているのか。
我輩がここにいた期間は短かかったが、なかなか存在感を示せたようだな」
「さすがトータク様!見事ですトータク様!立派ですトータク様!」
「クックック フハハハ ワーッハッハッハ!
そう誉めるなリジュよ」
トータクの汚い笑い声が部室棟に響き渡る。
かつてトータクは、交換学生として後漢学園にやってきて、瞬く間に学園を掌握。あわやのところで、俺やソウソウたち反トータク連合が彼の野望を打ち砕き、追い返すことに成功した。(※第5~14話参照)
「この学園を追放されたあなたがなぜここにいるのですか!」
義妹・カンウが拳を構えてトータクの行く手を遮る。
「あなた、トータク様に失礼ですよ!
ここの学園祭は部外者の出入り自由だからわざわざ来たのですよ!」
敵意剥き出しのカンウに対し、トータクの隣に立つ茶髪にメガネをかけた女性・リジュが反論する。
「待てリジュよ。
せっかく乳がでかくて美人の我輩好みの女が話しかけてくれたのだ。
どうだ?向こうで二人きりで我輩の処分について話し合うというのは」
「私を忘れるとはいい度胸ですね!」
「おや、君のような美人とどこかで会ったかな」
「トータク様、こやつはカンウ、反トータク連合で戦っていた女です」
黒い軍服の女性がそうトータクに報告くる。
「そうかカユウ、あの時にいたのか。
あの時はソウソウやエンショウ、エンジュツ姉妹ばかりに目がいって、こんな美人を見逃していたとは、我輩の失態だな」
「やいトータク!これ以上、カン姉に近付くとオレが許さねーぜ!」
今度はチョーヒがトータクの前に詰め寄った。
「お前は…ロリっ娘!!!」
「誰がロリだぜ!オレも同じ高校生だぜ!」
ロリ呼ばわりされて激怒するチョーヒに対し、トータクはトラウマでも呼び起こされたかのような怯えぶりであった。
「近付くな、ロリっ娘!
我輩はあの時の反省からもうロリには手を出さんと決めたのだ!」
お前、あれだけの騒動起こして反省したのそれだけかよ!
「何か知らんが、そろそろ公演準備があるから帰ってもらえんかの」
「ギャアアア!またロリっ娘だ!」
今度はチョウカクを見て取り乱すトータク。
「てめえ、姉さんをロリ呼ばわりしてんじゃねー!」
まだ水着姿のリューヘキがトータクに食って掛かる。
「おお、半裸の女だ。ああ、癒される」
「てめえ、見てんじゃねー!」
「おっさん、子供が怖いのか?」
いつの間にかヒミコがトータクの隣に立っていた。
「ギャアアアァァァ!またまたロリっ娘だぁぁ!」
「ヒミコちゃん、その変態に近づいちゃダメだよ」
「リューちゃん、こいつ悪い奴なのか」
「そうだよ。とっても悪いから無闇に近づいちゃダメなんだよ」
「じゃあ、あちしが退治してあげるのだ!」
「え、ヒミコちゃんが退治?」
「まっかせるのだ!
ヒミコミコミコヒミコミコ鬼道あちしがいーっぱいの術!」
「うわぁぁぁ!」
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三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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