学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第3部 群雄割拠編

第26話 対決!リュービ対ソウソウ!

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“リュービ、私を止めたければ全力で立ち向かって来い”

 それがソウソウからの返事だった。

「トウケンさん、デンカイ、やはり駄目なようだ。ソウソウは戦うことを望んでいる」

「やはり戦うしかないんですね」

 髪をアップにした女生徒・デンカイが残念そうに肩を落とす。

「いや、仕方がないことだ。とにかくこの図書室の守りを固めよう。バリケードだ。机で入口を塞ごう」

 一方の文芸部部長・トウケンはそこまでの落胆は見せず、文芸部の部員達に指示を出し始めた。

「いえ、トウケンさん、入口を一つ開けておいてください」

「リュービ君、そんなことをすれば敵がそこから入ってくるじゃないか」

「はい、入口が一つならそこに敵が集中します。しかし、この入口では大人数は入ってこれません。少しずつ中に入れて集中攻撃をするんです」

「しかし、こちらが力尽きたらひとたまりもないぞ」

「どちらにしろ正面から戦えば勝敗は時間の問題です。それならば少しでも敵の戦力を分散した方が勝率が上がります」

「うーむ、ならばリュービ君、君に任せよう」

「わかりました、お任せください。

 よし、カンウ、チョーヒ。俺達が先頭に立って敵を各個撃破していくぞ!」

「はい、兄さん、任せてください!」

「よっし、腕がなるぜ!」



 赤黒い髪に赤黒い瞳を持った少女・ソウソウが、校庭より文芸部のある図書室を睨み付けていた。

「ふふふ、リュービ、まさかお前と戦うことになるとはな。お前の実力しっかりと見せてもらうぞ」

「ソウソウ、突撃はこのソウジンに任せてくれ」

「まあ、待てソウジン。お前は前回の文芸部攻めで活躍しただろ。今回は俺達に譲ってもらうぞ」

「待ってくれ、カコウトン。今回はカンウ・チョーヒと強敵が揃ってる。前回とは状況が違うぞ」

「だから俺も譲れんのだよ」

 「喧嘩するなお前ら。まずは黄巾党を突撃させて様子見だ。

 第一陣黄巾党部隊、文芸部の部室に突撃せよ!」

「攻め込むぜお前ら!」

 頭に黄色いバンダナを巻いた一団が図書室を目指して駆け出して行く。

 その中の、一際足の速い男子生徒が一人、他の黄巾党の一団を引き離して図書室に飛び込んで来た。

「よっしゃ!シューソー一番乗り!

 お、美女が俺の相手か。 こりゃ楽しめそうだな」

「待て、そいつは!」

 黄巾党の一団の中では割りと小柄のツンツン頭の男子生徒は、仲間の制止も聞かず、先頭に立つ長い黒髪の美少女に勝負を仕掛けた。

「あなた、下品ですよ」

「ぐはっ!」

 その長い黒髪の美少女は、相手に反応させる暇も与えず、一撃で失神させてしまった。

「カンウだ!」

「あれが噂のカンウか!」

 一騎当千の義妹・カンウは黄巾党にも広く名が知れ渡っている。知らずに飛び込んできたこの男子生徒が短慮としか言いようがない。

「チョーヒ様もいるぜ!」

 お団子ヘアーが特徴の小柄な義妹・チョーヒも名乗りを上げる。入口から不用意に入ればこの二人の挟み撃ちだ。

「ヒィィ、リョフと引き分けたという噂のカンウ・チョーヒだ!」

「こんなことで黄巾党が怯むな!行くぞ!」

 黄巾党の一団は、多勢を活かした物量戦でじわりじわりと侵攻を拡大させていった。

「アニキ、カン姉、これじゃあきりがないぜ!」

「今だ!黄巾党よ扉を押さえよ!隙間から中に入れ!」

「しまった!」

 入口を守っていた部員も蹴散らされてしまった。こうなっては数で劣る俺達の不利だ。カンウ・チョーヒも目の前に次々湧いて出る黄巾党の相手で手一杯だ。

「キャー!」

 後方よりデンカイの悲鳴が響く。

「へへ、可愛がってやるぜ!」

「やめろ、その手を離せ!」

「なんだ、テメーは!」

「俺はリュービ!カンウ・チョーヒの義兄だ!」

「そんな奴知らねーよ!」

 デンカイと黄巾党の間に俺は思わず割って入ったが、軽く突き飛ばされてしまった。

 カンウ・チョーヒは軽く倒してしまうが、やはり黄巾党の多くは大柄で力も強い。

 だが、ここで退くわけにはいかない。デンカイ達を守らないと!

「兄さん!」

 倒された俺の元にカンウが駆け付けようとしてくれたが、その前にアゴヒゲを生やした眼帯の男子生徒が立ちはだかる。


「カンウ、お前はこのカコウトンが相手しよう!」

「大将格の登場ですか。いいでしょう、あなたの相手は私が引き受けます。

 チョーヒ、兄さんの方をお願いします」

「任せろだぜ!」

 しかし、チョーヒの前には茶色いショートカットにジーパンを履いた女生徒が立ちはだかった。


「おっと、君の相手はこのカコウエンよ!」

「邪魔だぜ!引っ込んでな!」

「このカコウエンを侮ると痛い目見るよ」

 カコウエンが右手を握ると同時に、小さな物体がチョーヒの顔をかすった。

「なんだぜ!パチンコ玉を弾いたのかぜ?」

「あの一瞬で見破るとは流石だね。

  これは玉を指で弾いて相手を攻撃する武術“指弾しだん”! 

 本来はそこまでの攻撃力はないが、この早撃ちのカコウエンにかかれば鉄砲玉も同然さ!」

「へん、ただのパチンコ玉に御大層な解説つけてんじゃねーぜ!」

「御大層かどうかはその肌で感じな!」

 チョーヒは飛んで来る玉をサラリとかわすが、すぐに二発三発と飛んで来る。チョーヒはたまらず拳で弾き飛ばした。

「痛っ!連射かよ!」

「言っただろ、“早撃ちの”カコウエンと」

「どうやらカコウエンは充分チョーヒの足止めをできるようだな。

 カンウ、ここからは我らの戦いだ。

 このカコウトン、女を殴るのは趣味ではないが、相手がカンウとなれば手加減はせん!全力で行くぞ!」

「退きなさい!カコウトン!」

 カンウは得意の投げ技に持ち込もうとするが、カコウトンはその隙を与えず、反対にパンチを浴びせる。

 カンウはそれを防ぐとこちらも負けじと打撃技で対抗した。

「どうやらあなたを瞬殺は無理のようですね。ですが、すぐに勝敗は着けてみせます!」

「そんな大口を叩けなくしてやる!」

 クッ…カンウ・チョーヒは動けないか…文芸部の部員達も倒されていく…ここは俺が何とかしないと。なにか策はないか…

 校庭よりその様子を窺うのは赤黒い髪を持つ少女・ソウソウ。

「ふふ、小手先では覆らぬ物量差を見せてやろう。どうするリュービ?」

 校舎を見据えるソウソウの元に、切れ長の目に眼鏡をかけた女生徒・ウキンが血相を変えて駆け込んでくる。 

「大変です、ソウソウさん!

 チンキュウ・チョウバクが裏切り、部室を奪われました!」

「何?…全軍に撤退命令!急げ!」

 突然の凶報に一瞬、ソウソウの顔が歪む。しかし、すぐに状況を認識し、的確に指示を出す。

 だが、文芸部で戦闘中のソウソウ軍には全く状況の把握できない撤退命令であった。

「カコウエンのあねさん、ソウソウ様より撤退命令です!」

「何だって!…仕方がないね、お前達撤退だ!

 全ての戦闘行為をやめて速やかに撤退せよ!」

「合点です!姐さん!」

「ほら、カコウトン!撤退だよ!」

「撤退だと?何故だ?

 うー、仕方がない。

 カンウ、どうやら今はまだお前の方が武勇は上のようだ。だが、次は俺が勝つ!」

「何度来ようと私は負けません!」

「待ちやがれ!お前ら逃がさねーんだぜ!」

「待てチョーヒ追うな。罠かもしれないし、うちに追いかけるだけの戦力はもうない」

 ソウソウ軍は迅速に撤退していった。荒くれ者の黄巾党の連中も完全に指揮下に置いている。

 対して文芸部は凄惨たる有り様だった。何とかデンカイ達は守れたが、戦闘に参加した部員の多くは負傷し、戦闘継続は困難な状況だった。

「動ける者はバリケードの再構築と負傷者の手当てを。それとソウソウ軍に偵察を出そう」

 完全に俺の作戦ミスだ。これだけの戦力差の前ではあんな作戦では何の役にも立たない。

「くそー逃げられたぜ!」

「カンウ・チョーヒ、疲れたろ。少し休もう」

 多くの部員が満身創痍の中、カンウ・チョーヒはまだ体力に余裕がありそうだ。

「兄さん、ここに伸びてる黄巾党の男が一人います」

 真っ先に飛び出してカンウにのされたツンツン頭の黄巾党がまだ床に伸びていた。

「忘れられたのか。仕方ない、とりあえず縛って捕虜にしよう。

 しかし、なぜソウソウは撤退したのか。これはピンチなのかチャンスなのか…」
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