貴方様と私の計略

羽柴 玲

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Ⅲ.貴方様と私の計略 ~ 婚約者 ~

143.魔王セレスティン②(???視点)

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何が魔族らしくだ・・・



「何をそんなに怒るんだ。手を貸せと言うから、魔族らしく対価を要求しただけではないか」

闇から忽然と姿を現した、魔王クロービスは面倒くさそうに俺を見ている。
魔族らしく・・・確かに、対価の要求は魔族らしいと言えばらしいが・・・

───大半の理由が、俺にやらした方が証拠集めが、楽だからじゃないか・・・

「クロービス様までいらっしゃっていたんですね。ご苦労なことで」

セレスティンが焦ることなく、クロービスへと話しかけている。
己がやって来たことが、証明されるわけがないと思っているのだろう。

「これが、さっき転移して来たときの魔力の記録。で、こっちが麻薬全ての魔力の記録」

俺は、セレミオへと記録石を投げわたす。
この記録石は特殊なもので、魔力の波長を記録することが出来る。
そして、魔力の波長は、魔族固有に近い。同じ波長のものがいないとは言わないが、出会うことは至極稀だろう。

「あぶないですね・・・しかし、確かに魔王セレスティン様の波動のようですね」

「と言うわけだ。セレスティン。お前は、魔王の称号を返上した後、魔吸塔まきゅうとうで幽閉する」

「なんで、僕が魔王を降りて、魔吸塔に幽閉されないといけないんだ」

セレスティンが少し、苛立たしげに反論をしている。

───いや。たちの悪い麻薬製造の罪って俺言ったはずなんだが・・・

「セレスティン様。質の悪い麻薬製造の罪です。
こちらにある秘薬の数々は、製法が発表されていないものばかりかと見受けます。
しかし、出回っているものであり、全ての秘薬から貴方の魔力が検出されています」

セレミオがそう言いながら、記録石を操作し、結果を視覚化している。
セレスティンの魔力の波長と秘薬から検出した魔力の波長が99%の確率で一致したいるようだ。

「そして、対になる秘薬からは、セレスティン様の魔力が一切検出されていません。
また、大半がクロービス殿下が、対の麻薬を作成し、秘薬としています」

対の秘薬から検出した魔力の波長を、さっきの結果へと器用に重ねて視覚化している。
結果としては、100%一致しない結果となっているようだった。

「なっ!そ、そんなデタラメを────」

「見苦しい」

声を荒げたセレスティンの言葉を、クロービスが一言で遮った。

───これは・・・力の差が歴然だな・・・

「そもそも、いくらクロービス様でも一人で魔王の称号剥奪はできないでしょう」

苦々しい表情で、セレスティンは告げる。
確かに、魔王一人では、他の魔王を排斥する事はできない。
そう・・・一人であったならばだ。

「何を当たり前のことを。私ともう一人の魔王が、承認している。ここに、魔王カストロトの署名がある」

クロービスの言葉に合わせるように、セレミオが一つの所管をセレスティンにも見えるように広げている。
それを見たセレスティンは、驚きの表情をしていた。

「わかったか?・・・さて、あちらの受け入れ準備はできたか」

「ああ。出来たようだ。今しがた、連絡が来た」

「そうか。では、さらばだセレスティン。半永久的に魔力の糧として生きるが言い」

「いや!まて・・・・・・っ」

クロービスがそう言うと共に、セレスティンへを指さし、そしてくるりと円を描いた。
その瞬間、セレスティンの姿はかき消えた。

「無事に収容が確認できたそうだ」

魔吸塔からの連絡を受け、クロービスへと伝えてやれば、悠然と頷かれた。

「当たり前だ・・・さて、後はルージュだな」

俺は、クロービスの言葉に頷きをかえすが、感じていた疑問をぶつける。

「魔王の半数が排斥されることになりそうだが問題ないのか?」

「問題はないな」

「ええ。魔王の称号は、剥奪されれば、魔王宮まおうきゅうへと自動で帰ります。
そして、次代の魔王を称号自身が選出し、その魔王の元へ行きますから」

セレミオの説明に俺は唖然とするしかなかった。
魔王は気がつけば魔王だったとよく聴くが、そんなシステムだったとに驚きを隠せない。

───魔王の称号自体に意思があるのか?それにしても、摩訶不思議だな・・・

そんな事を考えながら、一度クロービスの城へと戻り、ルージュ攻略に向けての準備を始めた。
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