136 / 146
Ⅲ.貴方様と私の計略 ~ 婚約者 ~
136.力の差(マルクス視点)
しおりを挟む
油断・・・というよりは、力の差を見せつけられた。それが正しいのだろうな
精霊魔族が説明を求める言葉に、頷きを返しながら辺りを見回し顔をしかめる。
───辺境伯の屋敷からは少し距離があるとは言え、誰も気づいていないだと・・・
そして、木にもたれるように気を失っているヘーゼルに気づく。
───命はあるな。魔力適性故に、生き延びているといったところか?
更に視線を巡らせば、ある球体が目に入る。
───あれは、メビウスか?
衣服がボロボロになり、ほぼ何も纏わぬ状態で球体の中に浮いている姿が確認できる。
目をこらせば、致命傷とも思える傷と一度は吹き飛ばされたと思われる手足が修復しているようだった。
一部の骨が見え、其れ等が少しずつ修復されている光景とそれを包み込むように肉が盛られている。
───生きてはいる?
薄くだが、胸が上下しているのが確認できることから、辛うじて生を繋いでいるのだろう。
「メビウス・・・球体の彼は大丈夫なのか・・・?」
思わずそう問いかけていた。
付き合い事態は、さほど長くはない。
しかし、己が主と仰ぐ彼女が信頼する仲間だ。
「生きてはいる」
「傷は残る。たが、元通り動ける程には回復させることはできる。幸い、欠けたものが無かった。それに、魔力が多いことも」
精霊魔族の回答の意味を考える。
ただ、それは己の範疇を超える話であり、全ては理解ができなかった。
ただ、わかったのは、傷は残るものの元通りになると言うことだけ。
「そうか・・・」
そして、俺はなにがあったのかをノヴァと精霊魔族へと説明を始めた。
「あら?楽しそうね・・・」
そんな言葉と共に、奴は現れた。
現魔王の1柱である、魔王ルージュ。
俺とヘーゼル、メビウスは直ぐに臨戦態勢をとった。
辺りには敵意に等しい、禍々しい魔の気が充満していた。
他の表情を盗み見れば、メビウスの表情は若干青ざめていた。
お嬢を背に庇う旦那も厳しい表情をしている。
おそらくお嬢を除く皆が、現状がおもわしくない事を肌で感じているのだろう。
「何故、あなたがここに・・・」
現在の姿のままで、何処まで対抗できるのか。そんな不安を抱えながら、口を開けば魔王はこちらへと意識を向けてきた。
「あら、あたしを知ってるの?」
小さく小首をかしげる姿は、可愛いのかもしれないが俺の趣味ではない。
整った顔立ちではあるが、女性らしらを感じぬそれは、少々滑稽だと感じてしまった。
「あなたは、魔王ルージュ様でしょう・・・」
油断しているつもりは無かった。
むしろ、全神経で警戒していた。
しかし、
「あら。正解よ・・・でも、あなたに用はなくてよ」
その一言と共に、手をはらわれた動きに反応ができなかった。
不自然のない、自然すぎるその動きに気づいたときには、俺は壁に打ち付けられていた。
「がはっ!」
目の前に一瞬光りがちり、意識が遠のきそうになるのを何とか堪えれば、大きな魔力の動きを感じる。
「他も邪魔よ・・・」
魔王の声と共に、高まる魔力。
咄嗟に、できうる限りの力を旦那へと向ける。
お嬢へは、メビウスの力が流れるのを感じていた。
目に見える光景であるにもかかわらず、どこか遠くのような景色の中でヘーゼルが凄い勢いで吹き飛ばされ、木に激突している。
激突した木の1本は、弾け飛び2本目で折れながらも止まった。
メビウスにいたっては、赤に染まり倒れ込んでいた。
俺自身も膨大な魔の気にさらされ、意識を手放しそうなのを必死に耐え、己の治癒を試みる。
何となく、致命傷とも感じる傷を感知したが、気になどしていられない。
「用があるのはそこのちみっこいのだけなんだけど・・・お前はいいわね。ふふ。それが大事なら抵抗しない事ね」
その声と共に、旦那とお嬢が魔力の渦に飲み込まれ、姿を消した。
そして、それを追うように魔王も姿を消していた。
───まだ、大丈夫だ。旦那へと向けた魔力は消えていない。それに、あの力は多分加護だ。誰の加護かはわからないが・・・だから、大丈夫だ
そう、己に言い聞かせながら治癒を続ける。
視界がぼやけ、体力も魔力も底をつきそうなところで、精霊魔族達が現れた。
そして俺は、説明を終える。
彼らのおかげで、傷も癒え旦那へと向けた魔力を探る。
「あれの加護は彼女の想い」
「彼女の想いの強さだ」
精霊魔族のその言葉に、目線で問いかければ答えはノヴァから返ってきた。
「さやかざり。あれは、いにしえのぎしきみたいなもの。おくるもののおもいのつよさがそのまままもりのちからになるんだ」
───古の儀式か。確かに、古くからの風習だった・・・
「でも、かごといえるほどのちからになることは、ほとんどないんだ。でも、かあさまのあれは、とてもきょうりょくなかごになってる。だからたぶん、あくいでもってきずつけることは、むつかしいよ」
「そうか・・・」
ノヴァの言葉に、少しの安堵を感じながら、これからの行動について考える。
ヘーゼルもメビウスも今は動かせない。動けるのは、俺だけだ。
「どうするの」
「どうするんだ」
俺は精霊魔族の問に頷き、1つの結論を導き出す。
「クロービスの所へ行ってくる。どちらにしろ、あちらで動くには後ろ盾がいる」
「クロービス?」
「魔王の1人だな」
精霊魔族とノヴァの姿を順に見ながら、俺は1つの頼みを口にする。
「厚かましいとは思う。だけど、2人を・・・メビウスとヘーゼルを頼んでも良いか?」
魔王を相手にするのであれば、メビウスやヘーゼルを構っている余裕はない。
高位魔族として力と地位があるとは言え、魔王には及ばない。
「ぼくは、かまわないよ?」
「彼女のためだもの」
「言われるまでも無い」
精霊魔族とノヴァは、軽く頷いてくれる。
けれど、信頼の置ける力強さを感じる。
おれは、「ありがとう」と告げ、魔界へと転移を始めた。
───とりあえずは、まずは魔界の部屋へ
精霊魔族とノヴァに見送られながら、魔界へと転移した。
精霊魔族が説明を求める言葉に、頷きを返しながら辺りを見回し顔をしかめる。
───辺境伯の屋敷からは少し距離があるとは言え、誰も気づいていないだと・・・
そして、木にもたれるように気を失っているヘーゼルに気づく。
───命はあるな。魔力適性故に、生き延びているといったところか?
更に視線を巡らせば、ある球体が目に入る。
───あれは、メビウスか?
衣服がボロボロになり、ほぼ何も纏わぬ状態で球体の中に浮いている姿が確認できる。
目をこらせば、致命傷とも思える傷と一度は吹き飛ばされたと思われる手足が修復しているようだった。
一部の骨が見え、其れ等が少しずつ修復されている光景とそれを包み込むように肉が盛られている。
───生きてはいる?
薄くだが、胸が上下しているのが確認できることから、辛うじて生を繋いでいるのだろう。
「メビウス・・・球体の彼は大丈夫なのか・・・?」
思わずそう問いかけていた。
付き合い事態は、さほど長くはない。
しかし、己が主と仰ぐ彼女が信頼する仲間だ。
「生きてはいる」
「傷は残る。たが、元通り動ける程には回復させることはできる。幸い、欠けたものが無かった。それに、魔力が多いことも」
精霊魔族の回答の意味を考える。
ただ、それは己の範疇を超える話であり、全ては理解ができなかった。
ただ、わかったのは、傷は残るものの元通りになると言うことだけ。
「そうか・・・」
そして、俺はなにがあったのかをノヴァと精霊魔族へと説明を始めた。
「あら?楽しそうね・・・」
そんな言葉と共に、奴は現れた。
現魔王の1柱である、魔王ルージュ。
俺とヘーゼル、メビウスは直ぐに臨戦態勢をとった。
辺りには敵意に等しい、禍々しい魔の気が充満していた。
他の表情を盗み見れば、メビウスの表情は若干青ざめていた。
お嬢を背に庇う旦那も厳しい表情をしている。
おそらくお嬢を除く皆が、現状がおもわしくない事を肌で感じているのだろう。
「何故、あなたがここに・・・」
現在の姿のままで、何処まで対抗できるのか。そんな不安を抱えながら、口を開けば魔王はこちらへと意識を向けてきた。
「あら、あたしを知ってるの?」
小さく小首をかしげる姿は、可愛いのかもしれないが俺の趣味ではない。
整った顔立ちではあるが、女性らしらを感じぬそれは、少々滑稽だと感じてしまった。
「あなたは、魔王ルージュ様でしょう・・・」
油断しているつもりは無かった。
むしろ、全神経で警戒していた。
しかし、
「あら。正解よ・・・でも、あなたに用はなくてよ」
その一言と共に、手をはらわれた動きに反応ができなかった。
不自然のない、自然すぎるその動きに気づいたときには、俺は壁に打ち付けられていた。
「がはっ!」
目の前に一瞬光りがちり、意識が遠のきそうになるのを何とか堪えれば、大きな魔力の動きを感じる。
「他も邪魔よ・・・」
魔王の声と共に、高まる魔力。
咄嗟に、できうる限りの力を旦那へと向ける。
お嬢へは、メビウスの力が流れるのを感じていた。
目に見える光景であるにもかかわらず、どこか遠くのような景色の中でヘーゼルが凄い勢いで吹き飛ばされ、木に激突している。
激突した木の1本は、弾け飛び2本目で折れながらも止まった。
メビウスにいたっては、赤に染まり倒れ込んでいた。
俺自身も膨大な魔の気にさらされ、意識を手放しそうなのを必死に耐え、己の治癒を試みる。
何となく、致命傷とも感じる傷を感知したが、気になどしていられない。
「用があるのはそこのちみっこいのだけなんだけど・・・お前はいいわね。ふふ。それが大事なら抵抗しない事ね」
その声と共に、旦那とお嬢が魔力の渦に飲み込まれ、姿を消した。
そして、それを追うように魔王も姿を消していた。
───まだ、大丈夫だ。旦那へと向けた魔力は消えていない。それに、あの力は多分加護だ。誰の加護かはわからないが・・・だから、大丈夫だ
そう、己に言い聞かせながら治癒を続ける。
視界がぼやけ、体力も魔力も底をつきそうなところで、精霊魔族達が現れた。
そして俺は、説明を終える。
彼らのおかげで、傷も癒え旦那へと向けた魔力を探る。
「あれの加護は彼女の想い」
「彼女の想いの強さだ」
精霊魔族のその言葉に、目線で問いかければ答えはノヴァから返ってきた。
「さやかざり。あれは、いにしえのぎしきみたいなもの。おくるもののおもいのつよさがそのまままもりのちからになるんだ」
───古の儀式か。確かに、古くからの風習だった・・・
「でも、かごといえるほどのちからになることは、ほとんどないんだ。でも、かあさまのあれは、とてもきょうりょくなかごになってる。だからたぶん、あくいでもってきずつけることは、むつかしいよ」
「そうか・・・」
ノヴァの言葉に、少しの安堵を感じながら、これからの行動について考える。
ヘーゼルもメビウスも今は動かせない。動けるのは、俺だけだ。
「どうするの」
「どうするんだ」
俺は精霊魔族の問に頷き、1つの結論を導き出す。
「クロービスの所へ行ってくる。どちらにしろ、あちらで動くには後ろ盾がいる」
「クロービス?」
「魔王の1人だな」
精霊魔族とノヴァの姿を順に見ながら、俺は1つの頼みを口にする。
「厚かましいとは思う。だけど、2人を・・・メビウスとヘーゼルを頼んでも良いか?」
魔王を相手にするのであれば、メビウスやヘーゼルを構っている余裕はない。
高位魔族として力と地位があるとは言え、魔王には及ばない。
「ぼくは、かまわないよ?」
「彼女のためだもの」
「言われるまでも無い」
精霊魔族とノヴァは、軽く頷いてくれる。
けれど、信頼の置ける力強さを感じる。
おれは、「ありがとう」と告げ、魔界へと転移を始めた。
───とりあえずは、まずは魔界の部屋へ
精霊魔族とノヴァに見送られながら、魔界へと転移した。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
シテくれない私の彼氏
KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
高校生の村瀬りかは、大学生の彼氏・岸井信(きしい まこと)と何もないことが気になっている。
触れたいし、恋人っぽいことをしてほしいけれど、シテくれないからだ。
りかは年下の高校生・若槻一馬(わかつき かずま)からのアプローチを受けていることを岸井に告げるけれど、反応が薄い。
若槻のアプローチで奪われてしまう前に、岸井と経験したいりかは、作戦を考える。
岸井にはいくつかの秘密があり、彼と経験とするにはいろいろ面倒な手順があるようで……。
岸井を手放すつもりのないりかは、やや強引な手を取るのだけれど……。
岸井がシテくれる日はくるのか?
一皮剝いだらモンスターの二人の、恋愛凸凹バトル。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
「白い契約書:愛なき結婚に花を」
ゆる
恋愛
公爵家の若き夫人となったクラリティは、形式的な結婚に縛られながらも、公爵ガルフストリームと共に領地の危機に立ち向かう。次第に信頼を築き、本物の夫婦として歩み始める二人。困難を乗り越えた先に待つのは、公爵領の未来と二人の絆を結ぶ新たな始まりだった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる