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Ⅲ.貴方様と私の計略 ~ 婚約者 ~
130.辺境伯の所為
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全部・・・ユミナ様のせいですわ・・・
馬車が屋敷に着いたことを告げる声が外から聞こえる。
そして、其れが合図だったように、ユミナ様からの長く深い口づけが離れていく。
小さな水音とともに、ユミナ様と私を繋ぐ銀糸が見え、そして切れる。
ぼうっとする思考は其れが何であるかを認識できない。
「あー・・・少しやりすぎてしまったな。ミリィ?」
ユミナ様の言葉に、纏まらない思考のままに彼へと視線を向ける。
「?」
「うん。屋敷に着いたけど、一人で歩けるかい?」
その言葉の意味がわからず、立ち上がろうとすれば、足が立たずストンと再度腰を落としてしまう。
其れを不思議に思っていれば、先程までの記憶と彼に何をされていたかを思い出す。
「なっ・・・え・・・」
自分の頬の火照りを自覚しながらも、何が起きているのかを考える。
ユミナ様から与えられた、長く深い口づけによって、今までに感じた事のない感覚を味わっていたことを思い出す。
頤に触れられていた手はいつの間にか、首と頭を支えるように添えられ、指先が首筋を怪しく動いていた。
もう一方の手は、私を安心させるように優しく私の手を握りしめてくださっていたように思う。
深い口づけによる口腔での接触。それによる水音やもれる・・・
ーーーだめっ!それ以上考えたらだめ・・・むり・・・恥ずかしくて・・・
「うん。さっきまでのミリィも可愛かったけど、真っ赤なミリィも可愛い」
ユミナ様からのその言葉に、これでもかと顔が赤くなっている事を自覚する。
「・・・全部ユミナ様のせいです」
ぼそりとそう言えば、少し嬉しそうな声で笑われてしまう。
「うん。そうだね。ミリィが真っ赤なのも歩けないのも私のせいだね」
そうおっしゃり、立てない私をするりと抱き上げられる。
「恥ずかしければ、寝たふりでもしていればいいよ」
その言葉に、えっ・・・と、戸惑っていれば馬車の扉が開く音がする。
私は慌て、片手で抱き上げている彼の首へと抱きつき、顔を隠すように肩口に埋める。
「あれ?ひーさんどうしたの?」
「ん?疲れたのか眠ってしまったんだ。起こすのも忍びないからこのまま連れて入ろうかなと」
「・・・ふーん?」
「・・・ほどほどにしとけよ」
マルクスとメビウスの言葉の意味はよく分からないけれど、ユミナ様が小さく苦笑されているように感じる。
ーーーそれにしても、ユミナ様は細身なのに力持ちですわね。私はそう軽くもありませんのに、片手で幼子を抱くように抱えられてしまっていますわ
「おかえりなさいませ。旦那様・・・そちらは、お嬢様ですか?」
扉を開く音と共に、ハレスさんのそんな声が聞こえてくる。
「ああ」
「どうかされたのですか?お怪我でも・・・」
「いや。眠っているだけだ。先にミリィを部屋につれていくが、テスタメント侯爵家へ抗議文を出す。その準備をしておいてくれ」
「かしこまりました」
ハレスさんとユミナ様のそんなやりとりを聞き、しばらくすれば扉を開かれる音がする。
「ミリィ。直ぐにメルが来ると思うけど、下ろすのはソファでいいかい?」
ユミナ様の言葉に小さく頷けば、そっとソファへと下ろしてくださる。
「私は仕事があるから行くけど、ゆっくりしてて。これからの事は夕食の後にでも話そう」
「はい」
顔の火照りも大分落ち着いてきてはいるが、ユミナ様の顔を見るのは恥ずかしい。そんな思いから、俯いたまま小さく頷けば笑われた気配を感じる。
そして、ふっと影さしたかと思うと耳元で囁かれた。
「さっきのミリィも可愛かったからまた見せてね」
その言葉に驚いて思わず顔を上げれば、優しい顔をされたユミナ様が直ぐ近くにあって・・・
思わず戸惑う私に、触れるだけの口づけを落とされて・・・
「じゃあ、夕食の時にね」
その言葉と共に去られていきました。
残された私は、真っ赤な顔をしたまま暫く固まっていました。
暫くして部屋を訪れた、メルに心配され、ふわっと事情を話せば苦笑を返されてしまった。
「お嬢様。辺境伯様もご健全な男の方です。だいぶ手加減はして下さっていると思いますよ」
更に少し困った人ですね。というような雰囲気でそんなことを言われてしまう。
そして、何故かその横でノヴァがコクコクと頷いていました。
馬車が屋敷に着いたことを告げる声が外から聞こえる。
そして、其れが合図だったように、ユミナ様からの長く深い口づけが離れていく。
小さな水音とともに、ユミナ様と私を繋ぐ銀糸が見え、そして切れる。
ぼうっとする思考は其れが何であるかを認識できない。
「あー・・・少しやりすぎてしまったな。ミリィ?」
ユミナ様の言葉に、纏まらない思考のままに彼へと視線を向ける。
「?」
「うん。屋敷に着いたけど、一人で歩けるかい?」
その言葉の意味がわからず、立ち上がろうとすれば、足が立たずストンと再度腰を落としてしまう。
其れを不思議に思っていれば、先程までの記憶と彼に何をされていたかを思い出す。
「なっ・・・え・・・」
自分の頬の火照りを自覚しながらも、何が起きているのかを考える。
ユミナ様から与えられた、長く深い口づけによって、今までに感じた事のない感覚を味わっていたことを思い出す。
頤に触れられていた手はいつの間にか、首と頭を支えるように添えられ、指先が首筋を怪しく動いていた。
もう一方の手は、私を安心させるように優しく私の手を握りしめてくださっていたように思う。
深い口づけによる口腔での接触。それによる水音やもれる・・・
ーーーだめっ!それ以上考えたらだめ・・・むり・・・恥ずかしくて・・・
「うん。さっきまでのミリィも可愛かったけど、真っ赤なミリィも可愛い」
ユミナ様からのその言葉に、これでもかと顔が赤くなっている事を自覚する。
「・・・全部ユミナ様のせいです」
ぼそりとそう言えば、少し嬉しそうな声で笑われてしまう。
「うん。そうだね。ミリィが真っ赤なのも歩けないのも私のせいだね」
そうおっしゃり、立てない私をするりと抱き上げられる。
「恥ずかしければ、寝たふりでもしていればいいよ」
その言葉に、えっ・・・と、戸惑っていれば馬車の扉が開く音がする。
私は慌て、片手で抱き上げている彼の首へと抱きつき、顔を隠すように肩口に埋める。
「あれ?ひーさんどうしたの?」
「ん?疲れたのか眠ってしまったんだ。起こすのも忍びないからこのまま連れて入ろうかなと」
「・・・ふーん?」
「・・・ほどほどにしとけよ」
マルクスとメビウスの言葉の意味はよく分からないけれど、ユミナ様が小さく苦笑されているように感じる。
ーーーそれにしても、ユミナ様は細身なのに力持ちですわね。私はそう軽くもありませんのに、片手で幼子を抱くように抱えられてしまっていますわ
「おかえりなさいませ。旦那様・・・そちらは、お嬢様ですか?」
扉を開く音と共に、ハレスさんのそんな声が聞こえてくる。
「ああ」
「どうかされたのですか?お怪我でも・・・」
「いや。眠っているだけだ。先にミリィを部屋につれていくが、テスタメント侯爵家へ抗議文を出す。その準備をしておいてくれ」
「かしこまりました」
ハレスさんとユミナ様のそんなやりとりを聞き、しばらくすれば扉を開かれる音がする。
「ミリィ。直ぐにメルが来ると思うけど、下ろすのはソファでいいかい?」
ユミナ様の言葉に小さく頷けば、そっとソファへと下ろしてくださる。
「私は仕事があるから行くけど、ゆっくりしてて。これからの事は夕食の後にでも話そう」
「はい」
顔の火照りも大分落ち着いてきてはいるが、ユミナ様の顔を見るのは恥ずかしい。そんな思いから、俯いたまま小さく頷けば笑われた気配を感じる。
そして、ふっと影さしたかと思うと耳元で囁かれた。
「さっきのミリィも可愛かったからまた見せてね」
その言葉に驚いて思わず顔を上げれば、優しい顔をされたユミナ様が直ぐ近くにあって・・・
思わず戸惑う私に、触れるだけの口づけを落とされて・・・
「じゃあ、夕食の時にね」
その言葉と共に去られていきました。
残された私は、真っ赤な顔をしたまま暫く固まっていました。
暫くして部屋を訪れた、メルに心配され、ふわっと事情を話せば苦笑を返されてしまった。
「お嬢様。辺境伯様もご健全な男の方です。だいぶ手加減はして下さっていると思いますよ」
更に少し困った人ですね。というような雰囲気でそんなことを言われてしまう。
そして、何故かその横でノヴァがコクコクと頷いていました。
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