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Ⅱ.貴方様と私の計略 ~ 旅路 ~
113.辺境伯の戯れ
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うぅ…まだ慣れませんわ。というか、なれる日が来るのかしら…
竜の社から帰還した日の夜。私は、軽く体調を崩してしまいました。
マルクスやメビウスが言うには、普段使わない方法で力を使ったからだと。そう言われましたわ。
そして、寝ていれば治る。とも言われました。
なので私は、おとなしくベッドに入り横になっているのですけれど、何故か側にユミナ様がいらっしゃいます。
心配だからと、椅子をベッドサイドへ運び、そこに陣取られました。
そっと盗み見れば、書類に目を通している彼がいます。
―――何かしら。そこはかとなく恥ずかしい。そして、何をしていらっしゃっても絵になるのは少しうらやましいですわね
そんな事を思いながら、見つめていれば視線に気づいたのか、ユミナ様が書類から顔をあげられます。
「どうしたの?うるさかった?」
そう声を掛けられ、私は違うと首を横に振ります。
「じゃぁ、眠れない?明かりをもっと落とす?」
私の部屋は、私のために明かりが抑えられれています。とはいえ、お互いの表情を確認できる程度には明るいのですけれど。
「そうですね。少し寝付けそうにない気がしますわ。明かりは、これ以上落としたらユミナ様にご迷惑になりますし大丈夫ですわ」
「私のことは気にしなくていいよ。そうだね。もう少し明かりを落とそうか」
そうおっしゃって、部屋で控えているメルに明かりを落とすように指示を出されています。
メルによってさらに明かりが落とされ、お互いの存在は確認できるけれど、表情は確認できない程度に暗くなる。
「ミリィ。手を貸して」
ユミナ様のその声に、首を傾げながらも掛布からそろりと手を出すと彼の手が私の手を取る。
少しだけ驚いて、びくつけば大丈夫だと軽く握り、撫でられましたわ。
「小さな手だ…」
そうつぶやかれ、私の手を彼の方へ持ち上げられる。
何をされるのかしら。そう思っていれば、柔らかく暖かな感触を指先に感じる。
それは、少しだけ強く押し当てられ、話される。様子を見るように何度か繰り返され、やっとそれがユミナ様の唇であることに思い至った私は、恥ずかしさに手を引こうとする。
けれどユミナ様の手によって、軽く拒まれましたわ。
「よく寝れるおまじない。…だめかい?」
彼は私の手を唇に押し当てたまま、話している。そのため、唇の動きを指先で直に感じ羞恥を煽られる。
「そ、そんな、おまじない、き、聞いたことないですうわ」
私は恥ずかしさからか、小さな声でどもりながらもやっとそう伝えると、ユミナ様が笑われた気配を指先に感じる。
「何度か口づけもしているのに、なれない?」
ユミナ様のその言葉に、見えないとわかっていながら、頷きを返せば少し笑われたような気配を感じる。
―――だ、だって。ユミナ様との触れ合いは、慣れる気がしませんもの。ユミナ様に触れられると、こう、ぶわって恥ずかしいとか嬉しいとかごちゃごちゃしたよくわからない感情があふれてしまうんですもの
「恥ずかしがるミリィも可愛いから、私としては問題ないけれど」
そうおっしゃりながら、唇で私の指先をはまれるような感じがして。人差し指から小指まで、全ての指をはまれれば最後に少しだけ強く指先を吸われる。
その感じたことのない感覚に、体を震わせていれば、いつの間にか手は降ろされユミナ様と手を繋いでいる体制になっていました。
「ゆっくりおやすみ、ミリィ」
ユミナ様は空いた片方の手で、私の頭を撫で、優しく私の眼を覆われます。
私はそれに無理に逆らうことなく、目を閉じれば、羞恥を感じながらもいつの間にか意識を手放していました。
竜の社から帰還した日の夜。私は、軽く体調を崩してしまいました。
マルクスやメビウスが言うには、普段使わない方法で力を使ったからだと。そう言われましたわ。
そして、寝ていれば治る。とも言われました。
なので私は、おとなしくベッドに入り横になっているのですけれど、何故か側にユミナ様がいらっしゃいます。
心配だからと、椅子をベッドサイドへ運び、そこに陣取られました。
そっと盗み見れば、書類に目を通している彼がいます。
―――何かしら。そこはかとなく恥ずかしい。そして、何をしていらっしゃっても絵になるのは少しうらやましいですわね
そんな事を思いながら、見つめていれば視線に気づいたのか、ユミナ様が書類から顔をあげられます。
「どうしたの?うるさかった?」
そう声を掛けられ、私は違うと首を横に振ります。
「じゃぁ、眠れない?明かりをもっと落とす?」
私の部屋は、私のために明かりが抑えられれています。とはいえ、お互いの表情を確認できる程度には明るいのですけれど。
「そうですね。少し寝付けそうにない気がしますわ。明かりは、これ以上落としたらユミナ様にご迷惑になりますし大丈夫ですわ」
「私のことは気にしなくていいよ。そうだね。もう少し明かりを落とそうか」
そうおっしゃって、部屋で控えているメルに明かりを落とすように指示を出されています。
メルによってさらに明かりが落とされ、お互いの存在は確認できるけれど、表情は確認できない程度に暗くなる。
「ミリィ。手を貸して」
ユミナ様のその声に、首を傾げながらも掛布からそろりと手を出すと彼の手が私の手を取る。
少しだけ驚いて、びくつけば大丈夫だと軽く握り、撫でられましたわ。
「小さな手だ…」
そうつぶやかれ、私の手を彼の方へ持ち上げられる。
何をされるのかしら。そう思っていれば、柔らかく暖かな感触を指先に感じる。
それは、少しだけ強く押し当てられ、話される。様子を見るように何度か繰り返され、やっとそれがユミナ様の唇であることに思い至った私は、恥ずかしさに手を引こうとする。
けれどユミナ様の手によって、軽く拒まれましたわ。
「よく寝れるおまじない。…だめかい?」
彼は私の手を唇に押し当てたまま、話している。そのため、唇の動きを指先で直に感じ羞恥を煽られる。
「そ、そんな、おまじない、き、聞いたことないですうわ」
私は恥ずかしさからか、小さな声でどもりながらもやっとそう伝えると、ユミナ様が笑われた気配を指先に感じる。
「何度か口づけもしているのに、なれない?」
ユミナ様のその言葉に、見えないとわかっていながら、頷きを返せば少し笑われたような気配を感じる。
―――だ、だって。ユミナ様との触れ合いは、慣れる気がしませんもの。ユミナ様に触れられると、こう、ぶわって恥ずかしいとか嬉しいとかごちゃごちゃしたよくわからない感情があふれてしまうんですもの
「恥ずかしがるミリィも可愛いから、私としては問題ないけれど」
そうおっしゃりながら、唇で私の指先をはまれるような感じがして。人差し指から小指まで、全ての指をはまれれば最後に少しだけ強く指先を吸われる。
その感じたことのない感覚に、体を震わせていれば、いつの間にか手は降ろされユミナ様と手を繋いでいる体制になっていました。
「ゆっくりおやすみ、ミリィ」
ユミナ様は空いた片方の手で、私の頭を撫で、優しく私の眼を覆われます。
私はそれに無理に逆らうことなく、目を閉じれば、羞恥を感じながらもいつの間にか意識を手放していました。
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