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Ⅱ.貴方様と私の計略 ~ 旅路 ~
112.雇われ護衛の覚悟(閑話)
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俺が亡命をしてから、幾月か流れた。
そして、何の因果が再び辺境の地へと向かう事となった。
辺境と隣接する隣国からの亡命者。しかも、名の知れた軍人だった。
そんな俺の心象が辺境の地でいいわけがない。
当たり前だ。隣国との戦線で家族や大切な者を失ったものもいただろう。たとえ、俺が隣国の戦線には亡命を決めた時しか参加していなかったとしてもだ。
そんなことはわかっている。でも、俺は辺境の地へと向かうと決めた。
俺が興味を覚えたひーさん。ミリュエラ・テイラーのために。
彼女との出会いはけしていいものではなかった。
俺の上官にあたる、リヒテンシュタイン少将の愚策ともいえる策略のために攫われてきたのが彼女だった。
村を丸ごと占拠しての作戦中だった。そこへ彼女は魔族に連れてこられていた。
あの時は、何があったかしならなかったが、魔族はひどく苛ついているようだった。
後で、彼女を攫う際に亡くしてしまったのだと知った。
俺は彼女と魔族を引き離し、彼女を隔離した。作戦中の兵は、女に飢えているものも多い。
彼女の身を守るためにはそれが一番手っ取り早かった。愚策とはいえ、切り札として使おうという者をぞんざいには扱えない。それが、たとえ敵国の者であってもだ。
そんな中、俺は彼女に興味を覚えた。捕虜として1人で囚われているにも拘らず、落ち着いているように見えたからだ。
最前線を駆ける兵でさえ、捕虜となれば慌てたり取り乱すものも多い中、彼女からはそんなそぶりを感じなかった。
だから、興味をひかれた。肝の据わった令嬢だと。
そうこうしていれば、彼女の噂を耳にした。氷の毒華と呼ばれていると。無表情が不気味であると。そんな噂だ。
試しに、会話の中でそれとなく脅してみたが、表情は動かなかった。なるほどなと思ったが、彼女を注意深く見ていれば、噂はあてにならないとも思った。
確かに彼女の表情は動かない。というか、わかりにくい。それでも、目は雄弁に感情を映していた。
戸惑いや疑問、思慮深さを物語っていた。そして、終ぞそこに恐怖の感情を見つけることはできなかったが。
そんなある日、彼女を捕らえている小屋で、魔力の流れを感じた。
最初は魔族によるものかと思ったが、そうではないらしい。どうも、彼女が何かをしているようだった。
耳を澄ませたり、盗聴の魔力を使ってみたりとしたが、彼女が何をしているのかはわからなかった。
後で、魔族から貰ったアイテムで、通信をしていたと知った時は驚いた。
その時は、面白そうだからと黙認した。だが、これが1つの誤算を生んだ。魔族の暴走に気づけなかったことだ。
あれは、大佐殿が少将の元へと向かった日だった。ぶっちゃけ、リヒテンシュタインに熱を上げていることによるご機嫌取りだ。
俺は魔力が使われる際の前兆を感じたが、また彼女が何かをしているのだろうと気にも留めなかった。
それが、魔力による転移だと気づいたのは、彼女を連れて魔族がどこかへ転移した後だった。
あの時の迂闊さについては、いまだに悔やみきれない。
転移によって途切れがちな魔力の痕跡をどうにかたどり、彼女の元へとたどり着いた時には、彼女の迎えが既に到達していた。
それは、作戦の失敗を意味していた。まぁ、俺としては愚策だと思っていたし、辺境伯という人を知ってからは、はなから成功の見込みのない作戦であったと思っている。
辺境伯は責務のためであれば、非道にもなれる人であると知った。たとえ、大切な者であろうとも辺境伯として守らなければならないものがあるなら、それを切り捨てる判断をする。そんな、男だった。
そして、彼女もそれを理解し受け入れるだけの度量を持っていた。自分の身は、自分と自分に付き従う者でどうにかするからと。
そして、あの時も彼女に付き従う、ヘーゼルとマルクスが彼女を救っていた。
この時俺は、1つの決断をした。誰にも言っていないが。
俺は、彼女に興味を持った。それは、側で観察し彼女と言う人を知りたいと思った。
短くない人生の中で、これほど興味を惹かれる人はいなかった。
だから、再度ヘーゼルが俺の前に現れた時に亡命を決断した。
そして、情報という取引材料で彼女の側にいることを制約付きではあるがもぎ取った。
再度彼女と会いまみれ、俺はテイラー家に雇われた。彼女の護衛として。
敵であった男を孫娘の護衛にする侯爵の気もわからなかったが、すんなり俺を受け入れた彼女の気も知れなかった。
それこそ、彼女自身よりも彼女の周りの方が俺を警戒していたくらいだ。
ヘーゼルにマルクス、メル。その他大勢の警戒や敵意を感じていた。
気が滅入りそうになって、聞く気もなかったのに彼女に聞いてしまっていた。
「ひーさんは、どうして俺をうけいれたんだ」
そう、独り言のように無意識に口をついていた。彼女は、少し目を見開き驚いているようだった。
「そう…ね。1つは、あなたには王による制約がかけられていること。恐らくですけれど、私を傷つけない制約が。お爺様もユミナ様も私には教えてくださいませんけれど、そうでなければあなたを私に近づけるとは思えません。
あとは…むしろこっちの方が私の気持ちなのだけど、あなたが私に危害を加えるとは思えなくて。捕まっていた時でさえ、あなた自身は怖くはなかったのよ。面白がられているような感じはあったけれど、危害は加えてこない。そんな感じだったから。そして、今も。あなたに私を害することのメリットがないというのもあるのでしょうけど、あなた自身からそういう感情が見えないから」
そんなことを言われた。俺は、その返答に言葉を失うしかなかった。
確かに俺自身、彼女を害するメリットは皆無だし、害する気もさらさらない。どちらかえと言えば、彼女を観察していたいし、彼女と言う人を知りたいと思っている。
だが、彼女とそんな話はしたことはないし、する気もない。
なのにだ。彼女は俺からそれを感じ取っている。そう言われた。驚くなと言う方が無理だろう。
「なんでそう思うんです」
「あなたを見ていてなんとなく?」
思わずそう問うた俺に、彼女は軽くそう返してきた。
そして、恐らく俺は彼女にはかなわないのだろうと思ったし、彼女の側にいたいとそう強く思った。
彼女は、俺が魔力を扱える人間だと知っている。俺が、隣国の将校だったと知っている。
それなのに、感情を逆立てることなく、俺と言う人を受け入れてくれている。
そんなことを気負いなくできる人間は少ない。人として惚れるなという方が無理だろう。
…そう。人としてだ。俺は、無謀な感情に振り回される気はないからな。
だって、そうだろう。普段わかりにくい彼女の感情を表面化させることができるような人物に勝てるわけがない。
辺境伯に会えなければ、わかりやすく落ち込んでいるし、会えた日はとても嬉しそうにしている。
それに、そんな彼女に振り回されている辺境伯を見るのはなかなか面白いしな。
まぁ、だからと言うわけではないが、俺は辺境へ…シュトラウス領へ行くことを決めた。
彼女の側で彼女と言う人を知るために。そして、護衛として彼女を守るために。彼女の側には、腕利きばかりで俺が居なくてもいいかもしれない。そう思うことはあるが、俺だからできることもあるのだと彼らは言う。
それが何なのかはまだわからないが、1つだけ知れたことがある。
竜の社の出来事で、魔力に関して彼でも絶対はないのだと知れた。
魔力を扱ううえで、俺の方が有利なことがあることも知れた。
彼らが敵であったはずの俺の力をあてにしてくれているのも知れた。
だから多分大丈夫だろう。
俺は、シュトラウス領で多くの敵意に触れるだろうが、俺が側にいてもいいと言ってくれるものがいる。
それを知っているから。だから、大丈夫。そう思える。
俺は、彼女のために…いや、俺のために、彼女と共に辺境伯領へ向かう。
そして、俺のできうる限りの力で、彼女を…そして、彼らを守り、支えていこうと思う。
そして、何の因果が再び辺境の地へと向かう事となった。
辺境と隣接する隣国からの亡命者。しかも、名の知れた軍人だった。
そんな俺の心象が辺境の地でいいわけがない。
当たり前だ。隣国との戦線で家族や大切な者を失ったものもいただろう。たとえ、俺が隣国の戦線には亡命を決めた時しか参加していなかったとしてもだ。
そんなことはわかっている。でも、俺は辺境の地へと向かうと決めた。
俺が興味を覚えたひーさん。ミリュエラ・テイラーのために。
彼女との出会いはけしていいものではなかった。
俺の上官にあたる、リヒテンシュタイン少将の愚策ともいえる策略のために攫われてきたのが彼女だった。
村を丸ごと占拠しての作戦中だった。そこへ彼女は魔族に連れてこられていた。
あの時は、何があったかしならなかったが、魔族はひどく苛ついているようだった。
後で、彼女を攫う際に亡くしてしまったのだと知った。
俺は彼女と魔族を引き離し、彼女を隔離した。作戦中の兵は、女に飢えているものも多い。
彼女の身を守るためにはそれが一番手っ取り早かった。愚策とはいえ、切り札として使おうという者をぞんざいには扱えない。それが、たとえ敵国の者であってもだ。
そんな中、俺は彼女に興味を覚えた。捕虜として1人で囚われているにも拘らず、落ち着いているように見えたからだ。
最前線を駆ける兵でさえ、捕虜となれば慌てたり取り乱すものも多い中、彼女からはそんなそぶりを感じなかった。
だから、興味をひかれた。肝の据わった令嬢だと。
そうこうしていれば、彼女の噂を耳にした。氷の毒華と呼ばれていると。無表情が不気味であると。そんな噂だ。
試しに、会話の中でそれとなく脅してみたが、表情は動かなかった。なるほどなと思ったが、彼女を注意深く見ていれば、噂はあてにならないとも思った。
確かに彼女の表情は動かない。というか、わかりにくい。それでも、目は雄弁に感情を映していた。
戸惑いや疑問、思慮深さを物語っていた。そして、終ぞそこに恐怖の感情を見つけることはできなかったが。
そんなある日、彼女を捕らえている小屋で、魔力の流れを感じた。
最初は魔族によるものかと思ったが、そうではないらしい。どうも、彼女が何かをしているようだった。
耳を澄ませたり、盗聴の魔力を使ってみたりとしたが、彼女が何をしているのかはわからなかった。
後で、魔族から貰ったアイテムで、通信をしていたと知った時は驚いた。
その時は、面白そうだからと黙認した。だが、これが1つの誤算を生んだ。魔族の暴走に気づけなかったことだ。
あれは、大佐殿が少将の元へと向かった日だった。ぶっちゃけ、リヒテンシュタインに熱を上げていることによるご機嫌取りだ。
俺は魔力が使われる際の前兆を感じたが、また彼女が何かをしているのだろうと気にも留めなかった。
それが、魔力による転移だと気づいたのは、彼女を連れて魔族がどこかへ転移した後だった。
あの時の迂闊さについては、いまだに悔やみきれない。
転移によって途切れがちな魔力の痕跡をどうにかたどり、彼女の元へとたどり着いた時には、彼女の迎えが既に到達していた。
それは、作戦の失敗を意味していた。まぁ、俺としては愚策だと思っていたし、辺境伯という人を知ってからは、はなから成功の見込みのない作戦であったと思っている。
辺境伯は責務のためであれば、非道にもなれる人であると知った。たとえ、大切な者であろうとも辺境伯として守らなければならないものがあるなら、それを切り捨てる判断をする。そんな、男だった。
そして、彼女もそれを理解し受け入れるだけの度量を持っていた。自分の身は、自分と自分に付き従う者でどうにかするからと。
そして、あの時も彼女に付き従う、ヘーゼルとマルクスが彼女を救っていた。
この時俺は、1つの決断をした。誰にも言っていないが。
俺は、彼女に興味を持った。それは、側で観察し彼女と言う人を知りたいと思った。
短くない人生の中で、これほど興味を惹かれる人はいなかった。
だから、再度ヘーゼルが俺の前に現れた時に亡命を決断した。
そして、情報という取引材料で彼女の側にいることを制約付きではあるがもぎ取った。
再度彼女と会いまみれ、俺はテイラー家に雇われた。彼女の護衛として。
敵であった男を孫娘の護衛にする侯爵の気もわからなかったが、すんなり俺を受け入れた彼女の気も知れなかった。
それこそ、彼女自身よりも彼女の周りの方が俺を警戒していたくらいだ。
ヘーゼルにマルクス、メル。その他大勢の警戒や敵意を感じていた。
気が滅入りそうになって、聞く気もなかったのに彼女に聞いてしまっていた。
「ひーさんは、どうして俺をうけいれたんだ」
そう、独り言のように無意識に口をついていた。彼女は、少し目を見開き驚いているようだった。
「そう…ね。1つは、あなたには王による制約がかけられていること。恐らくですけれど、私を傷つけない制約が。お爺様もユミナ様も私には教えてくださいませんけれど、そうでなければあなたを私に近づけるとは思えません。
あとは…むしろこっちの方が私の気持ちなのだけど、あなたが私に危害を加えるとは思えなくて。捕まっていた時でさえ、あなた自身は怖くはなかったのよ。面白がられているような感じはあったけれど、危害は加えてこない。そんな感じだったから。そして、今も。あなたに私を害することのメリットがないというのもあるのでしょうけど、あなた自身からそういう感情が見えないから」
そんなことを言われた。俺は、その返答に言葉を失うしかなかった。
確かに俺自身、彼女を害するメリットは皆無だし、害する気もさらさらない。どちらかえと言えば、彼女を観察していたいし、彼女と言う人を知りたいと思っている。
だが、彼女とそんな話はしたことはないし、する気もない。
なのにだ。彼女は俺からそれを感じ取っている。そう言われた。驚くなと言う方が無理だろう。
「なんでそう思うんです」
「あなたを見ていてなんとなく?」
思わずそう問うた俺に、彼女は軽くそう返してきた。
そして、恐らく俺は彼女にはかなわないのだろうと思ったし、彼女の側にいたいとそう強く思った。
彼女は、俺が魔力を扱える人間だと知っている。俺が、隣国の将校だったと知っている。
それなのに、感情を逆立てることなく、俺と言う人を受け入れてくれている。
そんなことを気負いなくできる人間は少ない。人として惚れるなという方が無理だろう。
…そう。人としてだ。俺は、無謀な感情に振り回される気はないからな。
だって、そうだろう。普段わかりにくい彼女の感情を表面化させることができるような人物に勝てるわけがない。
辺境伯に会えなければ、わかりやすく落ち込んでいるし、会えた日はとても嬉しそうにしている。
それに、そんな彼女に振り回されている辺境伯を見るのはなかなか面白いしな。
まぁ、だからと言うわけではないが、俺は辺境へ…シュトラウス領へ行くことを決めた。
彼女の側で彼女と言う人を知るために。そして、護衛として彼女を守るために。彼女の側には、腕利きばかりで俺が居なくてもいいかもしれない。そう思うことはあるが、俺だからできることもあるのだと彼らは言う。
それが何なのかはまだわからないが、1つだけ知れたことがある。
竜の社の出来事で、魔力に関して彼でも絶対はないのだと知れた。
魔力を扱ううえで、俺の方が有利なことがあることも知れた。
彼らが敵であったはずの俺の力をあてにしてくれているのも知れた。
だから多分大丈夫だろう。
俺は、シュトラウス領で多くの敵意に触れるだろうが、俺が側にいてもいいと言ってくれるものがいる。
それを知っているから。だから、大丈夫。そう思える。
俺は、彼女のために…いや、俺のために、彼女と共に辺境伯領へ向かう。
そして、俺のできうる限りの力で、彼女を…そして、彼らを守り、支えていこうと思う。
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