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Ⅱ.貴方様と私の計略 ~ 旅路 ~
109.社からの帰還
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彼は何をしているのかしら。虹色の光が手に灯っているようですわ。
目の前の光がはれれば、ヘーゼルとメルの驚いた顔がありましたわ。
「お嬢様!」
メルが叫び私に飛びつてきました。その声は、少しだけ震えているようでした。
「え。どうしましたの?」
戸惑いつつも、メルを抱きしめ戸惑いを口にのせる。ヘーゼルを見れば、安堵したようにこちらを見ていました。
「3日も何をしていたんだ」
「3日?」
私が首を傾げ、ユミナ様やマルクスを振り返ります。
そしてそこには、若干困惑の表情をしたユミナ様と険しい表情をしたメビウス、諦めたような表情のマルクスが居ました。
「ヘーゼル。3日たっているのか?」
ユミナ様が戸惑いのままにヘーゼルへと問いかけている。
「ああ。確かに3日。自分たちはここで夜を明かした」
「これが最後に天竜が言っていたことか」
ヘーゼルの肯定を聞きながら、メビウスが大きくため息をついている。
「なるほどな。招かれたからか。竜の社の様子がわかる」
マルクスは一人で、竜の社を振り返り関心している。目線を追うように指で空をかいている。
そして、ある一点に達したところで、大きく息を吐きだしている。
「ヘーゼル、ここへの人の訪れはあったか?」
「いや。近づくものすらいなかった」
マルクスはその返答になずくと水竜様と天竜様の石像へと歩いていく。
何をするつもりかはわかりませんが、石像の前で立ち止まり魔力を開放しているようでした。
彼の姿が魔族の姿にほど近くなっていきます。
「揺蕩う空と流る水よ。わが魔力を媒介とし永久の時を」
その言葉と共に、マルクスが石像に触れると彼の手と石像が淡く光りだしました。
それは、白から赤へ。赤から橙へと変わり、虹の色順に色を変えているようです。
最後に紫へと変わり、白へと戻る。
「ノヴァ。手を貸してくれ」
「うん。いいよ。まもってくれるみたいだから」
マルクスがノヴァを呼び、彼がそれに応え石像の元へと歩いていく。ノヴァはマルクスと入れ替わるように石像へと触れ、目をつむり小さく何かを呟いている。
「まりょくのじゅんかん。あおとこうのために」
その声は小さく、私の元には届きませんでしたけれど、マルクスには聞こえていたのでしょう。
白く光っていたノヴァの手から光が消えるの見届け、頭を撫でてあげています。
「マルクス。あなたは何をしていましたの?」
「水竜が死んだことによって、魔力の循環に滞りが出てたからそれを調整しただけ。俺だけじゃ足りなかったみたいだから、ノヴァの力を借りたけどな」
そう何でもないように言っていますけれど、メビウスがとても難しい顔をしていますから、規格外な何かをしていたのでしょう。
そもそも、古代ともいえる程前に作られている建造物で竜族の魔力が通っているものに手を入れる方法なんて想像もつきませんわ。
「あの…お嬢様」
その時控えめに、メルが声をかけてきました。少し困惑した声なのが気になりますが…
「どうしましたの?メル」
「その…その子供はどうされたのですか?」
普通の子ではないようですが。そう言外に聞こえる気がする表情で、そう問いかけてきました。
「え。ああ。この子はノヴァ。竜族の子供よ。ノヴァ。私の護衛のヘーゼルと侍女のメルですわ」
『かさまのごえいとじじょ?ぼくはね、のばっていうの。よろしくね」
その言葉にメルは目を見開いて、ユミナ様と私とノヴァの顔を順にみて最後に私へと視線を戻していましたわ。
「竜族の子?かあさま?お嬢様?」
メルは混乱をしているのか、単語のみを口にしていました。
―――まぁ、そうよね。
「何から離せばいいかしら。…でも、ちょっと疲れたから休みたいわ」
「ああ、そうだな。今後の相談もしなければならないし、宿場まで戻ろうか」
ユミナ様のその言葉に、私以外が頷きを返していました。それを見届けたユミナ様は私へと腕を差し出してくださいました。
私がその腕をとれば、ゆっくりと歩きだされます。目的地は宿場。そう遠くはないですけれど。
―――宿場に着くまでには、メルへ説明することを整理できていればいいけれど
そんなことを思いながら、私はゆっくりと宿場へ向けて歩いていきました。
目の前の光がはれれば、ヘーゼルとメルの驚いた顔がありましたわ。
「お嬢様!」
メルが叫び私に飛びつてきました。その声は、少しだけ震えているようでした。
「え。どうしましたの?」
戸惑いつつも、メルを抱きしめ戸惑いを口にのせる。ヘーゼルを見れば、安堵したようにこちらを見ていました。
「3日も何をしていたんだ」
「3日?」
私が首を傾げ、ユミナ様やマルクスを振り返ります。
そしてそこには、若干困惑の表情をしたユミナ様と険しい表情をしたメビウス、諦めたような表情のマルクスが居ました。
「ヘーゼル。3日たっているのか?」
ユミナ様が戸惑いのままにヘーゼルへと問いかけている。
「ああ。確かに3日。自分たちはここで夜を明かした」
「これが最後に天竜が言っていたことか」
ヘーゼルの肯定を聞きながら、メビウスが大きくため息をついている。
「なるほどな。招かれたからか。竜の社の様子がわかる」
マルクスは一人で、竜の社を振り返り関心している。目線を追うように指で空をかいている。
そして、ある一点に達したところで、大きく息を吐きだしている。
「ヘーゼル、ここへの人の訪れはあったか?」
「いや。近づくものすらいなかった」
マルクスはその返答になずくと水竜様と天竜様の石像へと歩いていく。
何をするつもりかはわかりませんが、石像の前で立ち止まり魔力を開放しているようでした。
彼の姿が魔族の姿にほど近くなっていきます。
「揺蕩う空と流る水よ。わが魔力を媒介とし永久の時を」
その言葉と共に、マルクスが石像に触れると彼の手と石像が淡く光りだしました。
それは、白から赤へ。赤から橙へと変わり、虹の色順に色を変えているようです。
最後に紫へと変わり、白へと戻る。
「ノヴァ。手を貸してくれ」
「うん。いいよ。まもってくれるみたいだから」
マルクスがノヴァを呼び、彼がそれに応え石像の元へと歩いていく。ノヴァはマルクスと入れ替わるように石像へと触れ、目をつむり小さく何かを呟いている。
「まりょくのじゅんかん。あおとこうのために」
その声は小さく、私の元には届きませんでしたけれど、マルクスには聞こえていたのでしょう。
白く光っていたノヴァの手から光が消えるの見届け、頭を撫でてあげています。
「マルクス。あなたは何をしていましたの?」
「水竜が死んだことによって、魔力の循環に滞りが出てたからそれを調整しただけ。俺だけじゃ足りなかったみたいだから、ノヴァの力を借りたけどな」
そう何でもないように言っていますけれど、メビウスがとても難しい顔をしていますから、規格外な何かをしていたのでしょう。
そもそも、古代ともいえる程前に作られている建造物で竜族の魔力が通っているものに手を入れる方法なんて想像もつきませんわ。
「あの…お嬢様」
その時控えめに、メルが声をかけてきました。少し困惑した声なのが気になりますが…
「どうしましたの?メル」
「その…その子供はどうされたのですか?」
普通の子ではないようですが。そう言外に聞こえる気がする表情で、そう問いかけてきました。
「え。ああ。この子はノヴァ。竜族の子供よ。ノヴァ。私の護衛のヘーゼルと侍女のメルですわ」
『かさまのごえいとじじょ?ぼくはね、のばっていうの。よろしくね」
その言葉にメルは目を見開いて、ユミナ様と私とノヴァの顔を順にみて最後に私へと視線を戻していましたわ。
「竜族の子?かあさま?お嬢様?」
メルは混乱をしているのか、単語のみを口にしていました。
―――まぁ、そうよね。
「何から離せばいいかしら。…でも、ちょっと疲れたから休みたいわ」
「ああ、そうだな。今後の相談もしなければならないし、宿場まで戻ろうか」
ユミナ様のその言葉に、私以外が頷きを返していました。それを見届けたユミナ様は私へと腕を差し出してくださいました。
私がその腕をとれば、ゆっくりと歩きだされます。目的地は宿場。そう遠くはないですけれど。
―――宿場に着くまでには、メルへ説明することを整理できていればいいけれど
そんなことを思いながら、私はゆっくりと宿場へ向けて歩いていきました。
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