貴方様と私の計略

羽柴 玲

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Ⅱ.貴方様と私の計略 ~ 旅路 ~

102.竜の社④(メビウス視点)

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まったく・・・彼女の周りは、化け物級のやつばっかだ・・・



俺たちの目の前で、辺境伯が白い光に包まれ姿を消した。
彼の思いはわからなくもない。好いた女を守りたいというのは、男として当然の思いだろう。

「大丈夫なのか」

俺は、隣で少しだけ顔を歪めている、マルクスへと視線だけを向けながら話かける。

「何が」

彼は、短く返答してくるが、声には若干の疲労が見え隠れしている。

「いや。無茶するなと思って」

俺は目の前の大扉の魔力の流れが変わらないことを確認しながら、思う。
本当に無茶をすると。
マルクスの魔力量が桁外れであることはわかっている。だが、魔石2つ分の守護を1人で行うなど無茶以外の何物でもない。普通なら、1つ分の守護でさえ1人で行うのは難しいとされているのにだ。
以前、ひーさんに施した守護と今回の辺境伯へ施した守護。若干の守護レベルは違うようだが、それでもかなりのものだと思う。俺はやり方も原理も知らないから詳しいことはわからない。
ただ、魔石の色を対象者の瞳の色に変えるほどの守護は、高位でそうそうお目にかかることのできないものだという事を知っている程度だ。

「ん・・・まぁ、ずっとではないからな。付与する時に大きな力が必要なだけで、何もなければ維持の魔力は大したことない」

マルクスの言葉に、俺は若干眉間をよせる。
───何もなければか。何かあればその限りではないという事じゃないか。

「じゃぁ、俺は、ひーさんにも辺境伯にも何もないことを祈っておく」

そう答えてやれば、彼は目を丸くして驚いている。…解せない。

「お嬢の見る目はそれなりに確かなわけか」

マルクスが何やら呟いているが、俺には何を言っているのかわからなかった。

「これから、どう動くつもりだ?」

だから、そう問えば少しだけ考えている。

「そう・・・だな。とりあえず、正規の訪問ルートをたどるしかないんじゃないか。これ見てみろ」

そう言いながら、大扉の前まで歩を進めていたマルクスが指し示す場所を覗き込む。
そこには、古代文字で何やら書かれているようだった。

「これは、古代文字?時間をかければ読めなくはないが、何が書いてあるんだ?」

文字から目を話すことなく、マルクスへと問えば説明をしてくれた。

「ああ。こう書いてある。そうだな。簡単に言えばこう書いてある。
ここを訪れるものは歓迎する。ただ、扉が封じられている場合は、試練を課す。
招くのは扉の力を見ることができるもの。それをたどれるものに限る。と」

「なるほど。俺やマルクスの様に魔力を見ることができれば、招かれる可能性があるというわけか」

もう一度、魔力の流れを確認すれば、先ほどの流れからは変化がないと思う。

「俺には流れの変化はないように見える。さっきと同じかと。マルクスは?」

「俺も同意見だな」

俺とマルクスは、お互いに頷き天竜側の通路へと歩みを進めた。
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