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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
94.侍女による閑話
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私の名前はメル。メル・ハベスター。没落したハベスター家の令嬢でした。
多くの騎士を輩出していた家系でしたけれど、没落後私は傭兵になることを選びました。
騎士でいる意義も理由も見つけられなかったというのもありますが、何より外の世界へ出たかった。
そうしていれば、紅蓮の鉄壁という、不本意な通り名がつくほどになっていました。
自分では、それほど強いとは思っていませんでしたけれど、当時は私が護衛につけば安泰だと言われているほどでした。
そんな私が、今は侍女をしている。人生どう転ぶかわかりません。
侍女へ転職するきっかけは、お嬢様でした。
護衛対象である令息が参加する夜会に護衛として参加しているときでした。
護衛対象がたまたま参加していたお嬢様へダンスを申し込み、そのうえで面と向かってぼろくそにけなしていたのです。
にもかからず、お嬢様は表情一つ動かすことなく、凛とした雰囲気のままダンスを終え、何事もなかったように去って行かれたのです。
その後ろ姿に、貴族としての矜持や芯の通った心感じたのです。まぁ、表情が動かなかったのは表情筋が死滅しているからだと後で知ったのですが。
契約満了時に延長の申し出を丁寧に断り、私はテイラー侯爵家の門扉をたたきました。
最初、傭兵として護衛として雇ってもらおうと思っていたのですけれど、旦那様に
「君は護衛の他に何ができるんだ?」
と問われ、焦った記憶もいい思い出です。
テイラー侯爵家はただの護衛はいらない。と言われました。
焦っていたからか、苦し紛れに
「では、私を侍女として雇ってください」
と言っていました。自分の経歴を含めハベスター家の令嬢で会ったことも伝えて。
旦那様は、ハベスターという名を聞いて、少し驚いていらっしゃたようでしたけれど、侍女として雇ってくださいました。
そのあとは、お嬢様付きになるまで、ちょっと死ぬかと思うほど侍女について学びました。
ハベスター家はもともと上位貴族ですし、教育もきちんとされていましたけれど、傭兵として生きる間に忘れ去っていたことや侍女の視点で考えることなど多くを学びなおし、新たに学ぶ必要がありました。
お嬢様の侍女として働くうちに、彼女は手厚く守られていることを知りました。
常に、ヘーゼルさんの守護がありましたし、家令のダリオの守護もありましたから。ただの護衛は確かに必要ないのだと実感しました。
お嬢様は、私たち使用人を大事に接してくださいましたし、環境改善も行ってくださいました。
なにより、若くしてテイラー家の女主人としてうごいていらっしゃってとてもすごい方なのだと思いました。
そして、テイラー家の知の侯爵の本当の意味も知ってしまい、お嬢様に謝られたのも大事な記憶です。
そんな大切なお嬢様が、先日シュトラウス辺境伯に手を引かれながら、泣きはらした顔でかえってきて驚きました。
でも、その表情には悲観は感じなくて、温かく幸せそうに感じました。
後からお嬢様にお伺いすれば、辺境伯様との話で勘違いをして泣いてしまったのだと教えてくださいました。
そして、彼と思いを通わせたのだと。
無表情であったお嬢様の表情は、少しだけ幸せそうにほころんでいるようでした。
そんなお嬢様を見て、私もほっこり幸せな気分になったのです。
多くの騎士を輩出していた家系でしたけれど、没落後私は傭兵になることを選びました。
騎士でいる意義も理由も見つけられなかったというのもありますが、何より外の世界へ出たかった。
そうしていれば、紅蓮の鉄壁という、不本意な通り名がつくほどになっていました。
自分では、それほど強いとは思っていませんでしたけれど、当時は私が護衛につけば安泰だと言われているほどでした。
そんな私が、今は侍女をしている。人生どう転ぶかわかりません。
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にもかからず、お嬢様は表情一つ動かすことなく、凛とした雰囲気のままダンスを終え、何事もなかったように去って行かれたのです。
その後ろ姿に、貴族としての矜持や芯の通った心感じたのです。まぁ、表情が動かなかったのは表情筋が死滅しているからだと後で知ったのですが。
契約満了時に延長の申し出を丁寧に断り、私はテイラー侯爵家の門扉をたたきました。
最初、傭兵として護衛として雇ってもらおうと思っていたのですけれど、旦那様に
「君は護衛の他に何ができるんだ?」
と問われ、焦った記憶もいい思い出です。
テイラー侯爵家はただの護衛はいらない。と言われました。
焦っていたからか、苦し紛れに
「では、私を侍女として雇ってください」
と言っていました。自分の経歴を含めハベスター家の令嬢で会ったことも伝えて。
旦那様は、ハベスターという名を聞いて、少し驚いていらっしゃたようでしたけれど、侍女として雇ってくださいました。
そのあとは、お嬢様付きになるまで、ちょっと死ぬかと思うほど侍女について学びました。
ハベスター家はもともと上位貴族ですし、教育もきちんとされていましたけれど、傭兵として生きる間に忘れ去っていたことや侍女の視点で考えることなど多くを学びなおし、新たに学ぶ必要がありました。
お嬢様の侍女として働くうちに、彼女は手厚く守られていることを知りました。
常に、ヘーゼルさんの守護がありましたし、家令のダリオの守護もありましたから。ただの護衛は確かに必要ないのだと実感しました。
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そして、テイラー家の知の侯爵の本当の意味も知ってしまい、お嬢様に謝られたのも大事な記憶です。
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でも、その表情には悲観は感じなくて、温かく幸せそうに感じました。
後からお嬢様にお伺いすれば、辺境伯様との話で勘違いをして泣いてしまったのだと教えてくださいました。
そして、彼と思いを通わせたのだと。
無表情であったお嬢様の表情は、少しだけ幸せそうにほころんでいるようでした。
そんなお嬢様を見て、私もほっこり幸せな気分になったのです。
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