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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
93.侯爵令嬢の小さな微笑み
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私の表情筋は死んではいなかったのですね…
私は、ユミナ様の腕の中にいます。
ユミナ様の問いにうなずき返してから、しばらくたつけれど、ユミナ様は私を開放することなく抱きしめたままです。
そっと、耳を澄ましてみれば、私の早鐘を打つ鼓動とは別に、自身の鼓動よりも心持遅い、けれど早い鼓動が聞こえてくる。
これは…ユミナ様の鼓動?
今、私が鼓動を聞ける距離にいるのはユミナ様だけ。自身の鼓動でないなら、ユミナ様の鼓動であることは間違いないのだけれど…
ユミナ様も緊張されていた?
そう思うとユミナ様の顔を拝見したくなって、少しだけ身じろぎする。
顔だけでもあげれないかしら?
そう思っていれば、ユミナ様の腕が緩み開放される。ユミナ様を伺えば、顔を背けられる。
少しだけショックに思ったけれど、よく見ればユミナ様の耳が少しだけ赤くて、照れていらっしゃるのかしらと思う。
「ユミナ様?」
そう呼びかければ、ピクリと肩が揺れるのが見える。私がユミナ様のお顔を覗き込むより早く、ユミナ様は軽く首を振られ私へと向き直られる。
「ミリィ。ありがとう」
ユミナ様はそう微笑まれ、自然な動作で私の頬へと口づけられました。
一度は引いた頬の熱が、戻ってきて。
「本当はここへしたいけれど。我慢できる自信もないし、時間もないからやめておくよ」
そうおっしゃられ、指の背でするりと唇を撫でられました。
「なっ…」
私が一人でわたわたと慌てていれば、ユミナ様は立ち上がり私へと手を差し伸べられてきます。
「そろそろ戻らないといけないだろう?君を心配する人もいるだろうし。あーでも、私は怒られるかもしれないな」
ユミナ様の手を取り立ち上がりながら、ユミナ様の言葉に首をかしげる。
「ユミナ様が怒られるのですか?」
「うん。今の君を見れば、泣いてたことはまるわかりだから。私が泣かせたと責められる。まぁ、泣かせてしまったのだけれど。
それは事実だし、甘んじて受け入れるよ。良いことがあった後だし」
ユミナ様は私の指へと自身の指を絡ませながらそうおっしゃいます。
「え。でも、泣いたのは私の勘違い…ですし…」
絡められる指に少しの羞恥と嬉しさを感じていれば、ユミナ様は少し笑われる。
「いや。私の言い方が悪かったのだから、私が悪いよ」
ユミナ様にエスコートというよりは、腕を引かれるように歩く。
温室を出れば、護衛をしていたであろう、ヘーゼルとマルクスの二人がいた。
「お嬢の顔大変なことになってるけど、どうしたの」
マルクスが少し心配そうに声をかけてくるが、ユミナ様とつながれた手を見て表情を変える。
「あーなるほど。旦那に泣かされたのか」
「間違ってはいないが、違う」
マルクスが笑いながら言った言葉に、ユミナ様が渋い表情で言い返している。
話の内容はわかりませんでしたけれど、なんとなく不本意なことを言われているような感じですわね。
「ヘーゼル。マルクスとユミナ様は仲がよいのね」
私がそうヘーゼルへと声をかければ、ユミナ様とマルクスが勢いよく振り返る。
その表情は、とても微妙そうな表情で、私は思わずふふっと笑う。
「お嬢が笑った?」
マルクスの驚いたようなつぶやきに首を傾げれば…
「あ。もとに戻ったね」
ユミナ様がそんなことをおっしゃいます。
訳が分からずに、ヘーゼルへと視線を向ければ少し驚いたように説明してくれる。
「今、君は笑っていたんだ。わずかだけれど微笑んでいた。すぐに、いつもの表情に戻ってしまったけれど」
私は、空いている方の手を頬にあて、再度首をかしげる。
「私笑っていたのですか?」
そう問えば、3人はうなずき返してくる。
私自身、自分の表情が動いたのを感じることも見ることもなくなって久しい。
10年以上感じていないし、見ることもなかった。
でも、今私は笑ったらしい。確かに、ユミナ様とマルクスの表情がおかしく感じて、内心笑ってはいましたけれど、それが表情に出ているとは思っていなかった。
「君はもともと表情のない子ではなかったのだから、不思議ではないよ」
ヘーゼルの言葉に、ぎこちなく頷きを返せば、ユミナ様が開いている手で頭を撫でてくださる。
「笑いたければ笑えばいいし、笑いたくなければ笑わなくていいよ。笑った君はとてもかわいかったけれど。また見れれば嬉しいけれど、無理をする必要はないよ。君は君の思うままにすればいい」
そう言い終わると、頭から手が離れていく。
ユミナ様は、私を私として受け入れてくれている。そんな風に感じ、少しだけ嬉しくなる。
彼の前では無理をしなくてもいい。飾らなくてもいい。そんな風に言われた気がした。
それはとてもうれしくて、心が温かく満たされるていく。
そういえば、ユミナ様と出会ってからそんな風に感じることが増えましたわね。
そう思っていれば、ユミナ様にいくよ。と手を引かれる。あわてて、歩き出せば先ほどのように手を引かれて歩く。
違うのは、私たちの後ろを守るように、ヘーゼルとマルクスがついてきていることくらい。
ユミナ様は私を好きだと言ってくれた。本当の婚約者になってくださると言ってくれた。そして、その先を許されるのだと思える言葉も。
今つながれているユミナ様の手はとても暖かくて、大きくて。剣を扱うからか少し豆があってごつごつしている。でも、細くしなやかに見える指先。少しだけ指先に力をこめれば、優しく握り返してくださる。
今までだって、そんなことはあったけれど、戸惑いの方が大きかった。どうしていいかわからなかった。
でも、今はただただ嬉しくて暖かい。
「ユミナ様…ありがとうございます…」
そう、小さく呟けば、返事のように手を握り返される。
ユミナ様に届くような声ではないはずだから、きっと気のせいではあると思うけれど。
私は、ユミナ様に手を引かれながら、ふわふわとした気持ちで屋敷へと歩いて行った。
私は、ユミナ様の腕の中にいます。
ユミナ様の問いにうなずき返してから、しばらくたつけれど、ユミナ様は私を開放することなく抱きしめたままです。
そっと、耳を澄ましてみれば、私の早鐘を打つ鼓動とは別に、自身の鼓動よりも心持遅い、けれど早い鼓動が聞こえてくる。
これは…ユミナ様の鼓動?
今、私が鼓動を聞ける距離にいるのはユミナ様だけ。自身の鼓動でないなら、ユミナ様の鼓動であることは間違いないのだけれど…
ユミナ様も緊張されていた?
そう思うとユミナ様の顔を拝見したくなって、少しだけ身じろぎする。
顔だけでもあげれないかしら?
そう思っていれば、ユミナ様の腕が緩み開放される。ユミナ様を伺えば、顔を背けられる。
少しだけショックに思ったけれど、よく見ればユミナ様の耳が少しだけ赤くて、照れていらっしゃるのかしらと思う。
「ユミナ様?」
そう呼びかければ、ピクリと肩が揺れるのが見える。私がユミナ様のお顔を覗き込むより早く、ユミナ様は軽く首を振られ私へと向き直られる。
「ミリィ。ありがとう」
ユミナ様はそう微笑まれ、自然な動作で私の頬へと口づけられました。
一度は引いた頬の熱が、戻ってきて。
「本当はここへしたいけれど。我慢できる自信もないし、時間もないからやめておくよ」
そうおっしゃられ、指の背でするりと唇を撫でられました。
「なっ…」
私が一人でわたわたと慌てていれば、ユミナ様は立ち上がり私へと手を差し伸べられてきます。
「そろそろ戻らないといけないだろう?君を心配する人もいるだろうし。あーでも、私は怒られるかもしれないな」
ユミナ様の手を取り立ち上がりながら、ユミナ様の言葉に首をかしげる。
「ユミナ様が怒られるのですか?」
「うん。今の君を見れば、泣いてたことはまるわかりだから。私が泣かせたと責められる。まぁ、泣かせてしまったのだけれど。
それは事実だし、甘んじて受け入れるよ。良いことがあった後だし」
ユミナ様は私の指へと自身の指を絡ませながらそうおっしゃいます。
「え。でも、泣いたのは私の勘違い…ですし…」
絡められる指に少しの羞恥と嬉しさを感じていれば、ユミナ様は少し笑われる。
「いや。私の言い方が悪かったのだから、私が悪いよ」
ユミナ様にエスコートというよりは、腕を引かれるように歩く。
温室を出れば、護衛をしていたであろう、ヘーゼルとマルクスの二人がいた。
「お嬢の顔大変なことになってるけど、どうしたの」
マルクスが少し心配そうに声をかけてくるが、ユミナ様とつながれた手を見て表情を変える。
「あーなるほど。旦那に泣かされたのか」
「間違ってはいないが、違う」
マルクスが笑いながら言った言葉に、ユミナ様が渋い表情で言い返している。
話の内容はわかりませんでしたけれど、なんとなく不本意なことを言われているような感じですわね。
「ヘーゼル。マルクスとユミナ様は仲がよいのね」
私がそうヘーゼルへと声をかければ、ユミナ様とマルクスが勢いよく振り返る。
その表情は、とても微妙そうな表情で、私は思わずふふっと笑う。
「お嬢が笑った?」
マルクスの驚いたようなつぶやきに首を傾げれば…
「あ。もとに戻ったね」
ユミナ様がそんなことをおっしゃいます。
訳が分からずに、ヘーゼルへと視線を向ければ少し驚いたように説明してくれる。
「今、君は笑っていたんだ。わずかだけれど微笑んでいた。すぐに、いつもの表情に戻ってしまったけれど」
私は、空いている方の手を頬にあて、再度首をかしげる。
「私笑っていたのですか?」
そう問えば、3人はうなずき返してくる。
私自身、自分の表情が動いたのを感じることも見ることもなくなって久しい。
10年以上感じていないし、見ることもなかった。
でも、今私は笑ったらしい。確かに、ユミナ様とマルクスの表情がおかしく感じて、内心笑ってはいましたけれど、それが表情に出ているとは思っていなかった。
「君はもともと表情のない子ではなかったのだから、不思議ではないよ」
ヘーゼルの言葉に、ぎこちなく頷きを返せば、ユミナ様が開いている手で頭を撫でてくださる。
「笑いたければ笑えばいいし、笑いたくなければ笑わなくていいよ。笑った君はとてもかわいかったけれど。また見れれば嬉しいけれど、無理をする必要はないよ。君は君の思うままにすればいい」
そう言い終わると、頭から手が離れていく。
ユミナ様は、私を私として受け入れてくれている。そんな風に感じ、少しだけ嬉しくなる。
彼の前では無理をしなくてもいい。飾らなくてもいい。そんな風に言われた気がした。
それはとてもうれしくて、心が温かく満たされるていく。
そういえば、ユミナ様と出会ってからそんな風に感じることが増えましたわね。
そう思っていれば、ユミナ様にいくよ。と手を引かれる。あわてて、歩き出せば先ほどのように手を引かれて歩く。
違うのは、私たちの後ろを守るように、ヘーゼルとマルクスがついてきていることくらい。
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今つながれているユミナ様の手はとても暖かくて、大きくて。剣を扱うからか少し豆があってごつごつしている。でも、細くしなやかに見える指先。少しだけ指先に力をこめれば、優しく握り返してくださる。
今までだって、そんなことはあったけれど、戸惑いの方が大きかった。どうしていいかわからなかった。
でも、今はただただ嬉しくて暖かい。
「ユミナ様…ありがとうございます…」
そう、小さく呟けば、返事のように手を握り返される。
ユミナ様に届くような声ではないはずだから、きっと気のせいではあると思うけれど。
私は、ユミナ様に手を引かれながら、ふわふわとした気持ちで屋敷へと歩いて行った。
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