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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
91.辺境伯の来訪
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これは、ちょっと恥ずかしいですわ。嬉しいのですけれど。
私への中傷、第二王子であるデュオ様の問題、王族の派閥問題。多くの問題を残したままではあるのですけれど、ユミナ様が久々に我が家にいらしてくださいます。
朝から入念に準備をしてしまって、クルツとメルに笑われてしまいましたわ。
ヘーゼルとマルクスとメビウスは何も言いませんでしたけれど、きっと内心笑っていますわね。
だって、私自身思い出してみれば、少しおかしいですもの。
マルクスは変わらずユミナ様と共に働いているようですわ。一応私に断りを入れてはいますけれど、ちょっと不思議ではあります。
だって、マルクスはあまり人と共に生きることを選ぶような印象はありませんでしたもの。
私としては、ユミナ様のそばに居られるマルクスがちょっとうらやましくもあるのですけれど。
「お嬢様。そろそろシュトラウス辺境伯様がいらっしゃるお時間になります」
自分の思考に囚われていれば、メルがそう声をかけてきました。
もう、そんな時間でしたのね。
「もう、そんな時間なのね。おかしな所はないかしら?」
メルに今日何度目になるかわからない質問をする。自分でも少し気にしすぎな気がしないでもないですけれど。
「大丈夫ですよ。今日のお嬢様も大変かわいらしいです」
「お世辞だったとしても嬉しいわ。でも、ありがとう」
少しメルの言い方に含みを感じましたけれど、気にしないことにします。
今日もメルの見立てのドレスですもの。間違いはないと思いますの。
私はの今日のドレスは、薄い緑と濃い青を合わせたような少しおとなしめのドレスです。
薄い緑はユミナ様の瞳に近い色。濃い青は私の瞳の色に近い色。ちょっとあれな組み合わせな気もしますけれど、デザイン自体は気に入っています。
「お嬢様。シュトラウス辺境伯様がいらっしゃったようです。サロンへお通ししているそうです」
「ありがとうメル。では、向かいましょう」
私はメルと扉の前で控えていたヘーゼルとメビウスと共に、ユミナ様の待つサロンへと向かいます。
「ユミナ様お待たせいたしました」
「いや。待つというほど待ってはいないよ」
ユミナ様は笑顔で私を迎えてくださいました。今日も素敵です。
私は、ユミナ様の前へと腰を落ち着けます。メルはそつなくお茶の準備をしてくれました。
今日のお菓子は、ユミナ様が気に入ってくださった甘みを抑えたクッキーと珈琲ビーンズチョコレートです。
「今日はどうされたのですか?マルクスからとてもお忙しそうにしていると伺っています」
私はユミナ様を見つめ今日の来訪の理由をお伺いします。
今日は、ユミナ様から来訪するというお手紙をくださっただけで、理由は記載されていませんでいた。
マルクスに聞いても理由を特に知らない感じでしたし、私は理由を知らないのです。
「うん。まぁ、それはもう少しあとで。最近はどうだった?」
ユミナ様は私の近況を訪ねてこられましたので、ここ最近の日常についてお話いたしました。
私の日常は特に変わりはなく、むしろ出かけたりしないので暇を持て余していたので、事業に注力してしまいましたわ。
でも、まだそういえば、事業についてはユミナ様へお話していませんでしたわ。
「そういえば、私ユミナ様にお話ししていないことがありましたわ。令嬢としては少々微妙な話なのですけれど」
聞いてくださいますか。そう問えば、ユミナ様は少しだけ神妙な表情でうなずいてくださいました。
私は、どこから話しましょうかと、私と事業について話始めました。
「私はお爺様に引き取られてからすぐのころは、少しだけ心を壊していましたの。
クルツを守ることでどうにか保ってはいましたけれど、両親の死に立ち合い側で過ごしたことは思っていた以上に心をむしばんでいたのだと思いますの。
それでも、お爺様に引き取られ守られている内に、少しずつ癒えてきたのだとは思うのですが。
そんな中、お爺様に何かやってみないかと言われて、始めたことがあるのです」
私は、そこで話を切りお茶を一口飲みのどを潤す。話しながら、自分が少しだけ緊張していることに気づく。
両親の死を話すことも、事業について話すことも勇気がいることですわね。
「私の異能を生かして、事業を始めたのですわ。香りを扱う事業ですの。最初はポプリを扱っていました。
次は、アロマストーンという香る石を。それから、香水を扱うようになりましたわ。
香水を扱うようになってからは、順調に伸びているのですけれど、それまでは採算が合わないモノでした。
お爺様はそれでも、笑って次はがんばれと応援してくださったのです。
今は、ほのかに香る石鹸の販売を始めましたの。少しずつ売り上げも伸びているのです」
そこまで、話したところで後ろから咳払いが聞こえる。すこし、脱線してしまいましたわね。
「申し訳ありません。脱線してしまいましたわ。そういうわけで、私は事業をしていますの。
利益の半分は侯爵家へ半分は私のポケットマネーに入っていますの。
ちょっと、つまらない話でしたね。私の話は終わりですわ」
そういって、紅茶を飲みクッキーに手を付ける。うん。今日のクッキーもいい味ですわ。
私は、ユミナ様を伺う。少しだけ眉間にしわを寄せているようですけれど、それを読み取ることはできそうにありませんでした。
「君はご両親の死と過ごした記憶があるのか」
そうおっしゃって、体を乗り出し私の頭を撫でてくださいました。つらかったねと。
「ユ、ユミナ様?気になさるのはそこですの?」
私は戸惑い、少しだけ慌てたように早口になる。
「事業については、それほど気にするようなものではないし。令嬢としては珍しいけれど、貴族子息では別に珍しいことではないし。
それよりも、両親の死を話す君が少し辛そうだった方が大事だ」
そう言って、また頭をなでてくださっていて。その手は、優しくて少しだけ恥ずかしくて。でも、私の心の柔らかいところを包んでくれるような。そんな感じがしましたの。
「あ、あの。私はもう子供ではないですし、その。ちょっと、はずかしいですわ」
何とかユミナ様にそう言えば、ユミナ様の手は離れていきました。少しだけ、寂しさを残して。
「ああ。すまない。そうだな。少し庭を散歩しないか」
ユミナ様は少しだけ緊張した表情をして、そう提案してきました。
私への中傷、第二王子であるデュオ様の問題、王族の派閥問題。多くの問題を残したままではあるのですけれど、ユミナ様が久々に我が家にいらしてくださいます。
朝から入念に準備をしてしまって、クルツとメルに笑われてしまいましたわ。
ヘーゼルとマルクスとメビウスは何も言いませんでしたけれど、きっと内心笑っていますわね。
だって、私自身思い出してみれば、少しおかしいですもの。
マルクスは変わらずユミナ様と共に働いているようですわ。一応私に断りを入れてはいますけれど、ちょっと不思議ではあります。
だって、マルクスはあまり人と共に生きることを選ぶような印象はありませんでしたもの。
私としては、ユミナ様のそばに居られるマルクスがちょっとうらやましくもあるのですけれど。
「お嬢様。そろそろシュトラウス辺境伯様がいらっしゃるお時間になります」
自分の思考に囚われていれば、メルがそう声をかけてきました。
もう、そんな時間でしたのね。
「もう、そんな時間なのね。おかしな所はないかしら?」
メルに今日何度目になるかわからない質問をする。自分でも少し気にしすぎな気がしないでもないですけれど。
「大丈夫ですよ。今日のお嬢様も大変かわいらしいです」
「お世辞だったとしても嬉しいわ。でも、ありがとう」
少しメルの言い方に含みを感じましたけれど、気にしないことにします。
今日もメルの見立てのドレスですもの。間違いはないと思いますの。
私はの今日のドレスは、薄い緑と濃い青を合わせたような少しおとなしめのドレスです。
薄い緑はユミナ様の瞳に近い色。濃い青は私の瞳の色に近い色。ちょっとあれな組み合わせな気もしますけれど、デザイン自体は気に入っています。
「お嬢様。シュトラウス辺境伯様がいらっしゃったようです。サロンへお通ししているそうです」
「ありがとうメル。では、向かいましょう」
私はメルと扉の前で控えていたヘーゼルとメビウスと共に、ユミナ様の待つサロンへと向かいます。
「ユミナ様お待たせいたしました」
「いや。待つというほど待ってはいないよ」
ユミナ様は笑顔で私を迎えてくださいました。今日も素敵です。
私は、ユミナ様の前へと腰を落ち着けます。メルはそつなくお茶の準備をしてくれました。
今日のお菓子は、ユミナ様が気に入ってくださった甘みを抑えたクッキーと珈琲ビーンズチョコレートです。
「今日はどうされたのですか?マルクスからとてもお忙しそうにしていると伺っています」
私はユミナ様を見つめ今日の来訪の理由をお伺いします。
今日は、ユミナ様から来訪するというお手紙をくださっただけで、理由は記載されていませんでいた。
マルクスに聞いても理由を特に知らない感じでしたし、私は理由を知らないのです。
「うん。まぁ、それはもう少しあとで。最近はどうだった?」
ユミナ様は私の近況を訪ねてこられましたので、ここ最近の日常についてお話いたしました。
私の日常は特に変わりはなく、むしろ出かけたりしないので暇を持て余していたので、事業に注力してしまいましたわ。
でも、まだそういえば、事業についてはユミナ様へお話していませんでしたわ。
「そういえば、私ユミナ様にお話ししていないことがありましたわ。令嬢としては少々微妙な話なのですけれど」
聞いてくださいますか。そう問えば、ユミナ様は少しだけ神妙な表情でうなずいてくださいました。
私は、どこから話しましょうかと、私と事業について話始めました。
「私はお爺様に引き取られてからすぐのころは、少しだけ心を壊していましたの。
クルツを守ることでどうにか保ってはいましたけれど、両親の死に立ち合い側で過ごしたことは思っていた以上に心をむしばんでいたのだと思いますの。
それでも、お爺様に引き取られ守られている内に、少しずつ癒えてきたのだとは思うのですが。
そんな中、お爺様に何かやってみないかと言われて、始めたことがあるのです」
私は、そこで話を切りお茶を一口飲みのどを潤す。話しながら、自分が少しだけ緊張していることに気づく。
両親の死を話すことも、事業について話すことも勇気がいることですわね。
「私の異能を生かして、事業を始めたのですわ。香りを扱う事業ですの。最初はポプリを扱っていました。
次は、アロマストーンという香る石を。それから、香水を扱うようになりましたわ。
香水を扱うようになってからは、順調に伸びているのですけれど、それまでは採算が合わないモノでした。
お爺様はそれでも、笑って次はがんばれと応援してくださったのです。
今は、ほのかに香る石鹸の販売を始めましたの。少しずつ売り上げも伸びているのです」
そこまで、話したところで後ろから咳払いが聞こえる。すこし、脱線してしまいましたわね。
「申し訳ありません。脱線してしまいましたわ。そういうわけで、私は事業をしていますの。
利益の半分は侯爵家へ半分は私のポケットマネーに入っていますの。
ちょっと、つまらない話でしたね。私の話は終わりですわ」
そういって、紅茶を飲みクッキーに手を付ける。うん。今日のクッキーもいい味ですわ。
私は、ユミナ様を伺う。少しだけ眉間にしわを寄せているようですけれど、それを読み取ることはできそうにありませんでした。
「君はご両親の死と過ごした記憶があるのか」
そうおっしゃって、体を乗り出し私の頭を撫でてくださいました。つらかったねと。
「ユ、ユミナ様?気になさるのはそこですの?」
私は戸惑い、少しだけ慌てたように早口になる。
「事業については、それほど気にするようなものではないし。令嬢としては珍しいけれど、貴族子息では別に珍しいことではないし。
それよりも、両親の死を話す君が少し辛そうだった方が大事だ」
そう言って、また頭をなでてくださっていて。その手は、優しくて少しだけ恥ずかしくて。でも、私の心の柔らかいところを包んでくれるような。そんな感じがしましたの。
「あ、あの。私はもう子供ではないですし、その。ちょっと、はずかしいですわ」
何とかユミナ様にそう言えば、ユミナ様の手は離れていきました。少しだけ、寂しさを残して。
「ああ。すまない。そうだな。少し庭を散歩しないか」
ユミナ様は少しだけ緊張した表情をして、そう提案してきました。
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