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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
90.侯爵令嬢のとめどない思考(閑話)
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私の安心できる場所。そう改めて突き付けらた気がしましたわ。
メイリーナという名前が出た時、私は自分が思っていたよりも動揺していたのでしょう。
お母さまやお父様の死にかかわっているかもしれない人。
私のほの暗い部分に触れてしまう名前。
うまく誤魔化せているつもりでしたの。でも、ユミナ様にはばれていて。
だからというわけではないけれど、ユミナ様にメイリーナと両親の死について説明しましたわ。
でも、それが少しだけつらくて。どうやり過ごそうか考えていれば、ユミナ様が無理はするなとおっしゃってくださいました。
そして、ユミナ様は私を抱きしめてくださいました。
恥ずかしいという感情より、ほっとした感情が勝っていたように思います。今思えば、恥ずかしさを感じるのですけれど。
だから、私はユミナ様の腕の中に安心したようにおとなしく収まっていました。
少しだけ頬に涙が伝のを感じながら、ユミナ様たちの話を聞いていた記憶はありますけれど、気づいたときには私はベッドの中で朝を迎えていました。
ユミナ様の上着をがっちりと握りしめ…いえ、あれは抱きしめていたといった方が正しいかもしれませんわ。あまつさえユミナ様のベッドを占領していましたわ。
ユミナ様自身は、同じ部屋の長椅子でお休みになられていました。
ユミナ様の上着のしわを無駄だと思いながら指先で伸ばしながら、ユミナ様の寝顔を見つめていることしかできませんでした。
だって、どうすればいいのかわからなかったのですもの。
ユミナ様の寝顔はお綺麗で、男の人なのに少しかわいらしくて、でもカッコよさもあって…
こほん。そうではなくて…えっと…
そう!確かにろくに眠れていませんでしたけれど、まさか男の人の腕の中で眠るなんて思ってもみませんでした。
その出来事は、ユミナ様のそばは安心できる場所だと無意識に認識していたことを私に突き付けてきました。
そして、ユミナ様に一時的な婚約の申し込みをされていたことを思い出してしまって。
私は、ユミナ様に関しては、心が揺さぶられ大きく感情が揺らいでしまう。そう、改めて認識する。
最初は、第二王子殿下であるデュオ様よりもましかな。って、そう思っていたはずでしたのに。
気づけば、ユミナ様の隣に立ちたいと彼以外は考えたくないと思うようになっていましたわ。
だから…断られるのが怖くて、気持ちを伝えてもいないのに、お父様から頂いた鞘飾りをお渡ししてしまった。
一度、私の手元に帰ってきたときは、頭ではそういう意味ではないと分かっているのに、戸惑いや悲しみが心をむしばんでいって、結局少し無理をしてユミナ様へ会いに行ってしまいましたわ。
本当は、建前が殿下達へ異能について話に行くことでしたの。
本音はユミナ様と話をすることでしたの。不安で心が押しつぶされそうでしたから、ユミナ様からの確認の伝言は渡りに綱でした。だから、無茶でも無理をしてでも会いに行ってしまったのよね。
今思えば、いろいろと無茶をしたものだと思いますわ。それに、よく陛下も許可証を発行してくださったものだと思います。
お爺様が陛下に耳打ちした後は、なんだが生暖かい目線を向けられていたように感じますから、面白がられていただけかもしれませんけれど。
うん。そうですわね。決めましたわ。
私の安心できる場所が彼のそばというのでしたら。
彼のそばを誰にも譲りたくないのですから。
鞘飾りの意味と私の気持ちを素直に彼に伝えてしまいましょう。
彼の心がわからないから、少しだけ…いいえ、とても怖いけれど。
でも、現状では私の心は満たされないから。
もし…断られたら、ちょっと立ち直れそうにないですけれど、その時は陰ながら彼を支えられればいいと思うことにしましょう。
多くは望むつもりはないけれど、私の望むものは大きく困難なものなのかもしれないわ。
自分の心もままならないのに、人の心が欲しいのですもの。
メイリーナという名前が出た時、私は自分が思っていたよりも動揺していたのでしょう。
お母さまやお父様の死にかかわっているかもしれない人。
私のほの暗い部分に触れてしまう名前。
うまく誤魔化せているつもりでしたの。でも、ユミナ様にはばれていて。
だからというわけではないけれど、ユミナ様にメイリーナと両親の死について説明しましたわ。
でも、それが少しだけつらくて。どうやり過ごそうか考えていれば、ユミナ様が無理はするなとおっしゃってくださいました。
そして、ユミナ様は私を抱きしめてくださいました。
恥ずかしいという感情より、ほっとした感情が勝っていたように思います。今思えば、恥ずかしさを感じるのですけれど。
だから、私はユミナ様の腕の中に安心したようにおとなしく収まっていました。
少しだけ頬に涙が伝のを感じながら、ユミナ様たちの話を聞いていた記憶はありますけれど、気づいたときには私はベッドの中で朝を迎えていました。
ユミナ様の上着をがっちりと握りしめ…いえ、あれは抱きしめていたといった方が正しいかもしれませんわ。あまつさえユミナ様のベッドを占領していましたわ。
ユミナ様自身は、同じ部屋の長椅子でお休みになられていました。
ユミナ様の上着のしわを無駄だと思いながら指先で伸ばしながら、ユミナ様の寝顔を見つめていることしかできませんでした。
だって、どうすればいいのかわからなかったのですもの。
ユミナ様の寝顔はお綺麗で、男の人なのに少しかわいらしくて、でもカッコよさもあって…
こほん。そうではなくて…えっと…
そう!確かにろくに眠れていませんでしたけれど、まさか男の人の腕の中で眠るなんて思ってもみませんでした。
その出来事は、ユミナ様のそばは安心できる場所だと無意識に認識していたことを私に突き付けてきました。
そして、ユミナ様に一時的な婚約の申し込みをされていたことを思い出してしまって。
私は、ユミナ様に関しては、心が揺さぶられ大きく感情が揺らいでしまう。そう、改めて認識する。
最初は、第二王子殿下であるデュオ様よりもましかな。って、そう思っていたはずでしたのに。
気づけば、ユミナ様の隣に立ちたいと彼以外は考えたくないと思うようになっていましたわ。
だから…断られるのが怖くて、気持ちを伝えてもいないのに、お父様から頂いた鞘飾りをお渡ししてしまった。
一度、私の手元に帰ってきたときは、頭ではそういう意味ではないと分かっているのに、戸惑いや悲しみが心をむしばんでいって、結局少し無理をしてユミナ様へ会いに行ってしまいましたわ。
本当は、建前が殿下達へ異能について話に行くことでしたの。
本音はユミナ様と話をすることでしたの。不安で心が押しつぶされそうでしたから、ユミナ様からの確認の伝言は渡りに綱でした。だから、無茶でも無理をしてでも会いに行ってしまったのよね。
今思えば、いろいろと無茶をしたものだと思いますわ。それに、よく陛下も許可証を発行してくださったものだと思います。
お爺様が陛下に耳打ちした後は、なんだが生暖かい目線を向けられていたように感じますから、面白がられていただけかもしれませんけれど。
うん。そうですわね。決めましたわ。
私の安心できる場所が彼のそばというのでしたら。
彼のそばを誰にも譲りたくないのですから。
鞘飾りの意味と私の気持ちを素直に彼に伝えてしまいましょう。
彼の心がわからないから、少しだけ…いいえ、とても怖いけれど。
でも、現状では私の心は満たされないから。
もし…断られたら、ちょっと立ち直れそうにないですけれど、その時は陰ながら彼を支えられればいいと思うことにしましょう。
多くは望むつもりはないけれど、私の望むものは大きく困難なものなのかもしれないわ。
自分の心もままならないのに、人の心が欲しいのですもの。
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