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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
77.伍長から護衛へと
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あれから、いろいろありましたわ。
まずは、戦後処理でしょうか。これは、個人的に謎なことも多かったですわ。
まずは、わが国の意向を隣国に伝える事からでしたわ。
前回の使者の二の舞にならぬよう、ユミナ様率いる数人の護衛と共に使者様を送り出しました。
ユミナ様の希望で、マルクスを伴って行かれましたわ。
マルクスが、面倒だと言いながらも大人しく着いていった事には、少なからず驚きました。
ヘーゼルに、そこまで不思議ではないだろうと言われましたけれど、私としては不思議で驚きの対象でしたわ。
竜騎士の方も行かれたみたいですけれど、もしもの為の連絡要員だと言われていましたわね。
往復一月半程の行程ですから、長旅になるから当分会えないとユミナ様が肩を落としていらっしゃいました。
まぁ、結果としてはとくに問題もなく、こちらが有利に事を運べたようです。
詐称できない証拠の品があったことと、隣国と敵対関係にあった連合国を味方につけれたことも大きかった。
連合国とわが国は、友好国ではあれど同盟国ではないため、腹の探り合いはあった。
その上で、連合国としても大国であるわが国に隣国を取り込まれるよりは良いと判断したのでしょう。
わが国としては、圧政により痩せた土地と体力の衰えた民を抱えるリスクは避けたかった。
痩せた土地の改善と民の意識改革を行わねばなりませんものね。
痩せた土地を肥えさせるには、長い年月が必要になる。痩せ細るのは、数年ですけれど肥えさせるには数十年みなければなりませんもの。
民の意識改革にしてもそう。働いても八割方国に徴収されろくに食べ物にありつけない。
そんな生活をしていた者達に、まともに働くだけの体力があるわけがない。
最初は国として、保障はしますけれど、体力が戻るまでの間に、働くことと自立することを認識していただかなければなりませんけれど、人の心は弱く怠けやすいのですわ。
苦しい境遇から楽をすることを覚えてしまうと、再度働く事が苦痛になってしまう方が多い。
そういう方々は、反国に傾いたり、暴徒と化したり、盗賊等に身を落としたりと頭の痛い方々になり果てる。
哀れだと、可哀想だと同情を禁じ得ない訳ではないけれど、長い目で見ればリスクであり面倒なこと。
だったら、はなから抱え込まない方向に動くこともやむなしですわ。
今回は、連合国の方々に押しつけることができましたから、まぁどうにかなるでしょう。少々、言い方があれですけれども・・・
次は、捕虜になった方々ですけれど、大半は亡命を希望されました。
リヒテンシュタイン少将の魅了魔法の影響が消え、正気に戻った事で、国に愛想を尽かした方々が多かったようです。
亡命を希望しなかったものは、隣国へと送還しましたが、リヒテンシュタイン少将に心酔しきっているようでした。
マルクス曰く、魅了中毒と言われるような状況なのだとか。
言いよどんでいたけれど、恐らく肉体関係にあるものや常に魅了魔法の影響下で長く生活していた者達なのでしょう。
・・・魅了魔法とは、恐ろしいものですわ。
そういう、何故か捕虜にいたメビウス伍長ですけれど、亡命を希望されました。
そして、何故か私の護衛の1人として雇うことに。
亡命の際に、隣国が不利となる情報等を伝えると共に、私との交流を望まれたそうです。
お爺さまやクルツ、ユミナ様は、大変難色を示されていたとお聞きしています。
それでも、私の傍に居るのは、国王の異能による古の血約を行われたからだと、メビウス伍長本人が言っていました。
古の血約は、色々あるようなのですけれど、今回は私に危害を加えない事を命にかけて誓っているようです。
誓いを違えれば、メビウス伍長は命を落とす。
「魔力を扱える俺にもどうすることのできない、強固なものとか興味深いよね。
どうも、魔力とは違う感じがするのに似たような効力とか興味をそそられる」
そう、恍惚としたちょっと危ない感じで、メビウス伍長に語られた時は、どうしたものかと本気で頭を抱えました。
まぁ、そんなわけで現在の私の護衛は、ヘーゼルとメビウス伍長です。
亡命したので伍長ではないのですけれど。
「知の姫は、いい加減諦めて、ハインリッヒって呼んでくれればいいのに。伍長じゃなくて、しがない雇われ傭兵なので」
私の思考に、以前言われた言葉が、メビウス伍長の声で再生される。
それに、眉を潜めれば、護衛として傍にいるはずの、彼から声がかかる。
「ひーさんどうしたの?眉間にしわ寄ってるけど」
「護衛が無駄口をたたくものではないわ」
私は、メビウスの方を軽く見据える。
「それにしても、それがあなたの素ですのね」
捕虜として捕まっていた時とは違い、軽く親しみやすい話し方を彼はしていた。
「まぁ、しがらみが今はそんなにないからね。
俺としては、どっちも俺は俺なんだけど。
あっちが、良ければそうするけど」
私は、ため息一つつき、首を横に振る。
「別にそういうわけではないわ。あなたが、過ごしやすい方で過ごせば良いわ」
それだけ言うと、私は彼の返事を待つことなく、己の思考へと戻っていく。
だから、私は気づきませんでした。
ヘーゼルが微妙な表情で頭を抱えていたことにも、メビウスがとても幸せそうな蕩けそうな笑顔をしていたことにも。
そんなことよりも、来週帰ってくるユミナ様の事を考えることに私は、忙しかったのです。
仕方ないですわよね?
まずは、戦後処理でしょうか。これは、個人的に謎なことも多かったですわ。
まずは、わが国の意向を隣国に伝える事からでしたわ。
前回の使者の二の舞にならぬよう、ユミナ様率いる数人の護衛と共に使者様を送り出しました。
ユミナ様の希望で、マルクスを伴って行かれましたわ。
マルクスが、面倒だと言いながらも大人しく着いていった事には、少なからず驚きました。
ヘーゼルに、そこまで不思議ではないだろうと言われましたけれど、私としては不思議で驚きの対象でしたわ。
竜騎士の方も行かれたみたいですけれど、もしもの為の連絡要員だと言われていましたわね。
往復一月半程の行程ですから、長旅になるから当分会えないとユミナ様が肩を落としていらっしゃいました。
まぁ、結果としてはとくに問題もなく、こちらが有利に事を運べたようです。
詐称できない証拠の品があったことと、隣国と敵対関係にあった連合国を味方につけれたことも大きかった。
連合国とわが国は、友好国ではあれど同盟国ではないため、腹の探り合いはあった。
その上で、連合国としても大国であるわが国に隣国を取り込まれるよりは良いと判断したのでしょう。
わが国としては、圧政により痩せた土地と体力の衰えた民を抱えるリスクは避けたかった。
痩せた土地の改善と民の意識改革を行わねばなりませんものね。
痩せた土地を肥えさせるには、長い年月が必要になる。痩せ細るのは、数年ですけれど肥えさせるには数十年みなければなりませんもの。
民の意識改革にしてもそう。働いても八割方国に徴収されろくに食べ物にありつけない。
そんな生活をしていた者達に、まともに働くだけの体力があるわけがない。
最初は国として、保障はしますけれど、体力が戻るまでの間に、働くことと自立することを認識していただかなければなりませんけれど、人の心は弱く怠けやすいのですわ。
苦しい境遇から楽をすることを覚えてしまうと、再度働く事が苦痛になってしまう方が多い。
そういう方々は、反国に傾いたり、暴徒と化したり、盗賊等に身を落としたりと頭の痛い方々になり果てる。
哀れだと、可哀想だと同情を禁じ得ない訳ではないけれど、長い目で見ればリスクであり面倒なこと。
だったら、はなから抱え込まない方向に動くこともやむなしですわ。
今回は、連合国の方々に押しつけることができましたから、まぁどうにかなるでしょう。少々、言い方があれですけれども・・・
次は、捕虜になった方々ですけれど、大半は亡命を希望されました。
リヒテンシュタイン少将の魅了魔法の影響が消え、正気に戻った事で、国に愛想を尽かした方々が多かったようです。
亡命を希望しなかったものは、隣国へと送還しましたが、リヒテンシュタイン少将に心酔しきっているようでした。
マルクス曰く、魅了中毒と言われるような状況なのだとか。
言いよどんでいたけれど、恐らく肉体関係にあるものや常に魅了魔法の影響下で長く生活していた者達なのでしょう。
・・・魅了魔法とは、恐ろしいものですわ。
そういう、何故か捕虜にいたメビウス伍長ですけれど、亡命を希望されました。
そして、何故か私の護衛の1人として雇うことに。
亡命の際に、隣国が不利となる情報等を伝えると共に、私との交流を望まれたそうです。
お爺さまやクルツ、ユミナ様は、大変難色を示されていたとお聞きしています。
それでも、私の傍に居るのは、国王の異能による古の血約を行われたからだと、メビウス伍長本人が言っていました。
古の血約は、色々あるようなのですけれど、今回は私に危害を加えない事を命にかけて誓っているようです。
誓いを違えれば、メビウス伍長は命を落とす。
「魔力を扱える俺にもどうすることのできない、強固なものとか興味深いよね。
どうも、魔力とは違う感じがするのに似たような効力とか興味をそそられる」
そう、恍惚としたちょっと危ない感じで、メビウス伍長に語られた時は、どうしたものかと本気で頭を抱えました。
まぁ、そんなわけで現在の私の護衛は、ヘーゼルとメビウス伍長です。
亡命したので伍長ではないのですけれど。
「知の姫は、いい加減諦めて、ハインリッヒって呼んでくれればいいのに。伍長じゃなくて、しがない雇われ傭兵なので」
私の思考に、以前言われた言葉が、メビウス伍長の声で再生される。
それに、眉を潜めれば、護衛として傍にいるはずの、彼から声がかかる。
「ひーさんどうしたの?眉間にしわ寄ってるけど」
「護衛が無駄口をたたくものではないわ」
私は、メビウスの方を軽く見据える。
「それにしても、それがあなたの素ですのね」
捕虜として捕まっていた時とは違い、軽く親しみやすい話し方を彼はしていた。
「まぁ、しがらみが今はそんなにないからね。
俺としては、どっちも俺は俺なんだけど。
あっちが、良ければそうするけど」
私は、ため息一つつき、首を横に振る。
「別にそういうわけではないわ。あなたが、過ごしやすい方で過ごせば良いわ」
それだけ言うと、私は彼の返事を待つことなく、己の思考へと戻っていく。
だから、私は気づきませんでした。
ヘーゼルが微妙な表情で頭を抱えていたことにも、メビウスがとても幸せそうな蕩けそうな笑顔をしていたことにも。
そんなことよりも、来週帰ってくるユミナ様の事を考えることに私は、忙しかったのです。
仕方ないですわよね?
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