貴方様と私の計略

羽柴 玲

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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~

43.侯爵令嬢の戦②

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うう・・・何故、私が陛下に、召喚されねばなりませんの。




マルクス達を王宮へと送り出し、しばらく情報の整理をし、一息ついたタイミングで、陛下から召喚がかかる旨を伝えに、ハルカが急ぎ帰ってきました。

「お嬢様。陛下からお嬢様に召喚がかかりました」

「え?何故なにゆえ・・・」

私は、素で戸惑い聞き返しました。

「今回、お嬢様が騎竜であることを改めたことを報告しましたところ、難癖を付けた上位貴族がおります。
古の血族を、懐疑的に思い排除したい一派です。
旦那様とご子息様については、既に証明がされ覆さないため、お嬢様に目を付けたもようです」

ハルカの報告を聞きながら、私は頭を抱えたくなる。

「この非常時になにをおっしゃっていますの?馬鹿なの?」

私は思わず悪態をついてしまう。

「あまり、物事を俯瞰的に考えられる方ではありませんね。
とりあえず、陛下が渋々召喚状をしたためられました。
しかし、女性という考慮から、書状を出される前に早馬を出される許可を頂いたので、今ココに」

私は大きく息を吐き出し、悪感情を切り替える。

「わかりました。登城の準備をします。侍女頭とメイド長にサポートを頼んでちょうだい」

普段であれば、私の専属侍女である、メルが完璧に仕上げてくれますが、彼女は今は王宮。
我が家の侍女とメイドは優秀ではありますが、王宮へ登城するための支度を出来る者は、限られてしまいます。
そのため、年配で重職に就いている者の力を借りざるをえません。
特に現在は、其れ其れの情報網を使い情報収集を頼んでいるので、下位の者達では、恐らく手が回りません。

そういえば、侍女頭とメイド長が後任が育たないと嘆いていましたわね。
今度、出来るかは分かりませんが、力添えをしましょう。


私の準備がほぼ終わる頃、ダリオが召喚状を持ち使者が現れたと報告に来ました。

「後数分お待ちいただいて。もう終わるから」

私の言葉に肯定を示し、ダリオは使者の元へとお戻っていきます。

「それにしても、女の支度の大変さを分からないなんて、貴族としてどうなのかしら。
そもそも、余程で無い限り令嬢の古の血族である証明は要らないし、求めてはいけないもののはずなのだけれど。
本当に頭が痛いわ」

私は、準備を整え、玄関ホールへと向かう。
そこにいらっしゃる方が視界に入った瞬間に、現実逃避がしたくなりました。

「やぁ。テイラー嬢。準備は整ったのかい?」

そこには、王弟殿下おうていでんかの姿がありました。
私は、気を取り直し、王弟殿下の元へと行き、跪礼カーテシーを行います。

「よい。顔を上げよ」

「お待たせしてしまい。申しわけございません」

私の言葉に、殿下は笑顔で気にするなと答えてくださいます。

「かまわない。急な呼び出しだ。むしろ、待たされた時間は予想していたよりも、かなり早い。いけるか?」

「はい。問題ございません」

私の言葉に、殿下はエスコートの為に手を差し出してくださいましたので、少々驚きながらも手を取り馬車へと乗り込みます。

馬車の中で、殿下は私へといくつか質問されて来ました。

「召喚の理由は聞いているか」

「概ね把握しております」

「テイラー家およびテイラー嬢は、謀反を考えてはいない」

その質問には少々驚きながらも、素直に、けれど力を込めて返答しました。

「はい。お爺さまも弟のクルツもその様なことは考えておりません」

「テイラー嬢は、古の血族である」

「はい」

私の答えに、満足したのか殿下の質問が止まりました。

「すまない。試すような事をした」

「いいえ。構いません。たいしたことではございませんので」

私の言葉に殿下は、苦笑をしながら説明くださいました。

「陛下に・・・いや、あれは兄上にだな。私の力による判定をしておいてくれと依頼された。
まぁ、詳しくは話さないが、私は異能の発露者だからな」

殿下のお言葉に、若干目を見開いてると、殿下がまじまじと私の顔を見てきます。

「それにしても・・・わからん」

殿下のお言葉に、こてんと首をかしげれば、苦笑して説明くださいました。

「ユミナに注意深く見ていれば、表情の変化に気がつくとは言われたが・・・わからん。
異能の発露と言った下りで、若干目を見開いたのが辛うじてわかっただけなだな。首をかしげる仕草は、可愛らしいが私には無表情に首をかしげているように見える」

ユミナ様のお名前が出たところで、ピクンと反応しそうになりましたが、何とか抑え王弟殿下へ返す。

「表情通り、何も感じていないかもしれませんわよ?」

殿下はにやりと笑い

「いや?本当にそうなら、そんな事をいわんものだ」

私は、そうですか。と答えながら、思う。
多分、信頼出来る方なのだろうと。
立場もおありだから、全てにおいて味方してくださる方ではないのだろうけれど。

そんなことを考えていれば、馬車は既に王宮の門をくぐるところだった。
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