40 / 146
Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
40.辺境伯の戦②(ユミナ視点)
しおりを挟む
嘘か真か分からないが、彼の逸話を知らぬ者はいない。
時がたつにつれ、あちらとこちら、顕著な違いが出てきた。
しかけてきているあちら側には、余裕があるが、先がわからないこちらは側は、疲弊して焦れてきているな。
それは、そうだろうな。と思う。
ここ、何年も数日厳戒態勢が続いたことはないものな。
私が物心ついてからもない。おそらく、もっと前から無いはずだ。
正規の兵より、雇い傭兵の方が、まだ余裕がありそうか。
私は、傭兵達のまとめを頼んでいる者の所へ足を運ぶ。
「状況はどうだ?」
声をかければ、筋肉が隆起した手足を携えた彼は、私へと向き直る。
隻眼の傭兵。ミラルド。傭兵として名をはせており、彼の逸話を知らぬ傭兵はいないと言われるほどだ。
十数年は家が雇ってるから、それより前の話なんだろう。
目立つ容姿をしているしな。
彼の容姿はとにく印象的だ。
隻眼と赤髪。赤髪は、短く切られてはいるが、燃えるような赤だ。
顔には、髪と同じ色の顎髭を携えおり、左目から左頬にかけて大きなキズがある。
そして、両手と両足の筋肉は隆起し、胸板も分厚い。
嘘か本当かは知らないが、弓矢による狙撃では心臓に矢傷は達しず、剣を突き立てても、致命傷に達するまでに、剣が折れるらしい。
「領主か。あまり、いい状況じゃねぇな」
ミラルドは、外壁から隣国方面へと指を指す。
そこには、こちらを見据えるように野営を続ける軍がいる。
「あくまでも、国境の向こう側で、侵犯をすることもない。
だが、武器を持っていることを示し、常に存在を認識させてくる。国境警備も気を張ってる。
このままだと、こちら側が一方的に疲弊させられる。
それに、正規兵の奴らが、そろそろ限界だろう。
俺たち傭兵ほど、命を危険にさらされ続けることに耐性がない」
それに頷きながら、思わずため息がもれる。
「世話をかけるな」
「いや?今回は、情報が多くて助かるぜ?」
ミラルドは、豪快に笑う。
そうか、情報は心の余裕も生むのだな。
「今回は、知の侯爵がついてくれているからな」
そう、漏らせばミラルドは目を見開く。
「知の侯爵って言えば、テイラー様か?なるほどな。どおりで、魔物の森の情報もキッチリあるわけだ」
「知っているのか?」
私の問に、いや。と、返答をよこしてくる。
「俺たちの要員はさかれない、領主自身も出掛けたそぶりもない。誰が収集してんのかとは、思ってたけどな。
侯爵様のやっぱり情報網ハンパないな。一度、敵方に雇われてたことあるが、勝機を見いだせなかった」
だから、さっさと契約切って、おさらばしたんだけどなー。俺も若かった。
そう、言いながら笑っている。
いや、わりと笑い事ではないのだが?
いくつかの情報の交換と状況の整理をミラルドと行い、領主館へと戻る。
そして、ちょうど同じタイミングで戻ってきた、ヘーゼルとかち合う。
マルクスはどうしたんだ?常にツーマンセルを組んでたはずだ。
ヘーゼルは、私を認識すると慌てたように口を開いた。
「悪い知らせがある」
執務室へと急ぎ、話を聞く。
―――隣国へと赴いた騎竜の首が戻り、使者と騎竜の主である騎士の行方がわからない。
沈黙と共に、嫌な方向へと事が動いた気がした。
時がたつにつれ、あちらとこちら、顕著な違いが出てきた。
しかけてきているあちら側には、余裕があるが、先がわからないこちらは側は、疲弊して焦れてきているな。
それは、そうだろうな。と思う。
ここ、何年も数日厳戒態勢が続いたことはないものな。
私が物心ついてからもない。おそらく、もっと前から無いはずだ。
正規の兵より、雇い傭兵の方が、まだ余裕がありそうか。
私は、傭兵達のまとめを頼んでいる者の所へ足を運ぶ。
「状況はどうだ?」
声をかければ、筋肉が隆起した手足を携えた彼は、私へと向き直る。
隻眼の傭兵。ミラルド。傭兵として名をはせており、彼の逸話を知らぬ傭兵はいないと言われるほどだ。
十数年は家が雇ってるから、それより前の話なんだろう。
目立つ容姿をしているしな。
彼の容姿はとにく印象的だ。
隻眼と赤髪。赤髪は、短く切られてはいるが、燃えるような赤だ。
顔には、髪と同じ色の顎髭を携えおり、左目から左頬にかけて大きなキズがある。
そして、両手と両足の筋肉は隆起し、胸板も分厚い。
嘘か本当かは知らないが、弓矢による狙撃では心臓に矢傷は達しず、剣を突き立てても、致命傷に達するまでに、剣が折れるらしい。
「領主か。あまり、いい状況じゃねぇな」
ミラルドは、外壁から隣国方面へと指を指す。
そこには、こちらを見据えるように野営を続ける軍がいる。
「あくまでも、国境の向こう側で、侵犯をすることもない。
だが、武器を持っていることを示し、常に存在を認識させてくる。国境警備も気を張ってる。
このままだと、こちら側が一方的に疲弊させられる。
それに、正規兵の奴らが、そろそろ限界だろう。
俺たち傭兵ほど、命を危険にさらされ続けることに耐性がない」
それに頷きながら、思わずため息がもれる。
「世話をかけるな」
「いや?今回は、情報が多くて助かるぜ?」
ミラルドは、豪快に笑う。
そうか、情報は心の余裕も生むのだな。
「今回は、知の侯爵がついてくれているからな」
そう、漏らせばミラルドは目を見開く。
「知の侯爵って言えば、テイラー様か?なるほどな。どおりで、魔物の森の情報もキッチリあるわけだ」
「知っているのか?」
私の問に、いや。と、返答をよこしてくる。
「俺たちの要員はさかれない、領主自身も出掛けたそぶりもない。誰が収集してんのかとは、思ってたけどな。
侯爵様のやっぱり情報網ハンパないな。一度、敵方に雇われてたことあるが、勝機を見いだせなかった」
だから、さっさと契約切って、おさらばしたんだけどなー。俺も若かった。
そう、言いながら笑っている。
いや、わりと笑い事ではないのだが?
いくつかの情報の交換と状況の整理をミラルドと行い、領主館へと戻る。
そして、ちょうど同じタイミングで戻ってきた、ヘーゼルとかち合う。
マルクスはどうしたんだ?常にツーマンセルを組んでたはずだ。
ヘーゼルは、私を認識すると慌てたように口を開いた。
「悪い知らせがある」
執務室へと急ぎ、話を聞く。
―――隣国へと赴いた騎竜の首が戻り、使者と騎竜の主である騎士の行方がわからない。
沈黙と共に、嫌な方向へと事が動いた気がした。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
あなたはその人が好きなんですね。なら離婚しましょうか。
水垣するめ
恋愛
お互い望まぬ政略結婚だった。
主人公エミリアは貴族の義務として割り切っていた。
しかし、アルバート王にはすでに想いを寄せる女性がいた。
そしてアルバートはエミリアを虐げ始めた。
無実のエミリアを虐げることを、周りの貴族はどう捉えるかは考えずに。
気づいた時にはもう手遅れだった。
アルバートは王の座から退かざるを得なくなり──。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる