貴方様と私の計略

羽柴 玲

文字の大きさ
上 下
32 / 146
Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~

32.辺境伯様とのお散歩②

しおりを挟む
わたくし、令嬢としての話題選びをもう少し頑張りますわ・・・



私は、しばらくユミナ様を恨めしげに見つめていました。
そして、あることに気付きました。
ユミナ様の肩が僅かに揺れていることに!

「・・・ユミナ様」

あ、思ったよりも恨めしい声が出ましたわね。
私の咎めるよくな言葉にユミナ様は、こちらに向き直られます。

「いや。すまない。反応が可愛らしくて少々意地の悪いことをした」

ユミナ様の言葉に私は素直に思っていることを伝えることにした。

「あまり、いじめないで下さい。それに・・・一人でわたわたしているのは、何だか寂しい気がします」

ユミナ様は、少し驚いたような表情をされ、

「そうだな・・・」

とおっしゃられました。
しばらく、私たちは見つめ合う形でお互いを見ていました。
すると、ユミナ様がすっと私の方へと手をのばされ、触れるか触れないかのタイミングで腕を引かれました。
私は、何がおきたかわからず、頭にはてなマークを浮かべていました。

「お嬢様。お茶をお持ちしました」

急に声を掛けられ、思わず声の方を思い切り振り向きました。
そこには、侍女のメルがティーセットをワゴンに乗せ立っていました。

「あ、ありがとう」

少しどもりながらも、お礼を伝えると、メルはテキパキとお茶の準備をしてくれます。
い、いつの間に居たのかしら?!とゆうか、どこから見られていたの?!
これといって、悪いことをしていたわけではないと思うのに、見られていたらと不安になる。
何故不安に思うのかもわからないが、いたたまれないというか、恥ずかしいというか、そう言った感情が沸き起こる。

「今回は、フレーバーティーをご用意しております。お茶請けは、ハニーバタークッキーになります」

メルの説明を上の空で聞きながら、頷いておく。

「フレーバーティー?」

「はい。普通の紅茶にほんの少しの風味と香りを楽しめるものになります。今回は、りんごのものを用意しております」

私が上の空の間に、ユミナ様の問にメルが答えていました。
ユミナ様は、へぇと関心を示されながら、香りを楽しんだ後に口に含まれます。

「ああ。たしかに、りんごの香りとほんの少しの風味を楽しめるね」

感心したようにカップを眺められています。

「最近は、いろいろなものがあるものだな。ミリィはどんなのが好きなの?」

ユミナ様の問に我に返り、答える。

「フレーバーティーは、あまり好みはありません。
私は、どちらかというとハーブティーにはちみつを入れたものが好きです。
ペパーミントですとすっとした感じを楽しめますし、
カモミールとしょうがのブレンドティーにはちみつを入れても美味しいのですよ」

私は、嬉々としてハーブティーについて語ります。
他にも・・・と、続けようとしたところで、メルにお嬢様・・・と、止められます。

「あ・・・ごめんなさい。少々はしたなかったですわね」

恥じ入ったように、謝罪を述べると、ユミナ様は優しく微笑んでくださっていました。

「別に恥じ入ることはないですよ?私としては、ミリィの好みを聞けたので嬉しいしかないですし」

それから、お菓子はどのようなものを好まれるのですか?と、質問されてきます。

「甘さがしつこいものは、あまり好みません。
チョコレートでしたら、ミルクよりもビターが好みです。
はちみつが好きなので、はちみつを使ったものは好きかもしれません。
最近は、料理長が珈琲ビーンズチョコレートとか言うものを開発しまして、わりとよく食べているかもしれません」

「珈琲ビーンズチョコレート?」

ユミナ様の問に、どう説明したものか迷っていると、メルがそっと差し出してくださいます。

「お嬢様の非常用でよろしければ、ありますよ」

ユミナ様は、非常用?とお顔に疑問を貼り付けながらも、チョコレートを受け取り口に含んでくださります。
噛んで食べるとよろしいかと。というメルの言葉に頷いておられます。

「なるほど。珈琲豆を少し甘めのビターチョコレートでコーティングしているのか。これは・・・普通にうまいな」

普通に好みのお味だったのか、分けて貰えないかとおっしゃりましたので、お帰りの際にお渡しできるように準備をとメルにお願いしておきました。

私は、そういえばと続けます。

「わりと、お話ししていますけれど、食の好みについては話したことありませんでしたわね」

片手を頬に当て、小首をかしげながら、ユミナ様と話した内容を思い返す。

趣味のこと、領地のこと、巷で人気のこと、時勢のこと、時事のこと・・・あら?令嬢の話題としては何か間違っているのでは?

「ユミナ様・・・私と話されていて楽しかったですか?」

唐突な問に、ユミナ様は怪訝な表情をされています。

「唐突にどうしたのですか?」

「いえ。ユミナ様と話していた内容を振り返ってみたのですけれど、令嬢として微妙なのでは?と・・・」

ユミナ様は、ああ。と、頷かれて答えてくださいます。

「ミリィとの会話は、とても有意義でしたよ?私には無い視点の話も多く聞けましたし、楽しい時間です」

ユミナ様の返答に、メルが渋い表情をしていることに気づき、目をそらしながら、令嬢としての話題選びとしては駄目なのだなと思う。
でも、ユミナ様が良いとおっしゃって下さるのだから、ユミナ様との会話はこれでいいのでは。と、思いなおし、

「それなら良かったです」

と、返事をする。
だって、しようがないと思うのですもの。
私の話し相手は、令嬢の皆様よりも、お爺さまやクルツが多いのですもの。
領主や令息よりの話題の方が得意にもなりますわ・・・
でも、ユミナ様に呆れられたくないですから、もう少し令嬢としての話題も頑張らねば!

そう、私は新たな課題として、心に刻みました。

「あまり、無理はしないでくださいね?」

気を新たにした私に思うのとがあったのか、ユミナ様はクスクスと笑われながらそうおっしゃいました。
私は、意味をとりかねながらも、ええ。と、頷いておきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...