貴方様と私の計略

羽柴 玲

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Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~

31.辺境伯様とのお散歩①

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な・・・なななっ!



わたくしが香りの話をした後、お爺さま達の見解を話し、調査結果待ちと言う結論に落ち着きました。
お爺さまは新たに、例の幽霊屋敷の調査も指示されていましたわ。
私が、幽霊屋敷に囚われていたのも驚きでしたけれど、当時の幽霊屋敷の状態にも驚きました。
現在は、正真正銘の古びた空き家ですもの。
当時、持ち主を再度調査したようですけども、結局わからず終いだったのだそうです。
国による監視はしているものの、空き家は空き家として放置され、現在に至ります。

それはそうと、私は今ユミナ様とお庭を散策しております。
我が家は、侯爵家というのもあり、タウンハウスも結構な規模ですの。
庭園もわりと広いですし、温室もあるんですのよ?

「ユミナ様、あれが温室ですわ。今の時期ですと、南国のお花が咲くように調整されているはずです」

庭園の先のガラス張りの建物を指し示しながら、ユミナ様を促します。
ユミナ様は、機嫌が良さそうに微笑みながら付いてきてくださいます。

「南国の花ですか。私は、南国には行ったことがないので、楽しみですね」

ユミナ様の言葉に少し驚きながら、そう言えばそうか。と、思い直します。

「シュトラウス辺境伯領は確か、北にあるご領地ですものね」

ええ。と頷かれ、ユミナ様は温室へと視線を移されます。
それにしても・・・ユミナ様の距離が少し近いような?
別に嫌ではないですけれども、普通にエスコートしていただく時よりもお体が近く感じます。
いえ、けして私の下心で近いわけではないのですのよ?
さっき、そっと距離をとろうとしたら、ちょっと咎められる視線を向けられて、今に至るのですわ。

そうこうして、ユミナ様に温室のお花の説明を一通りし終わったので、一息つくために温室内の東屋へと行く。

「少し名残惜しいな・・・」

ユミナ様から、そんな言葉が聞こえた気がした。
え?っと思っていると、私を先にも座らせて下さったユミナ様が手を離される際に、私の手をぐっと握られて手の甲を指の腹で数度撫でられてから離れて行かれました。

なっ・・・ななななっ!
ユミナ様!何なんですの?!
何でしょう。いたたまれないというか、恥ずかしいというか・・・
取りあえず、初めての感覚であることは間違いないですわ!

ユミナ様の行動にピキリと私は、固まってしまいました。
ユミナ様はと言うと向かいの席へと腰を下ろされて、温室を眺めていらっしゃいます。

私一人でわたわたして、なんだかよくわかりませんけれど・・・
これは、くやしい?いいえ、さみしいに近い気がしますわね。
よくわからない感情を胸に、少しばかり恨めしげにユミナ様を見つめることしかできませんでした。
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