25 / 146
Ⅰ.貴方様と私の計略 ~ 出会いそして約束 ~
25.侯爵令嬢の夢現 ⅳ
しおりを挟む
果てはないものと思っていましたわ。
ここまで来るまで、私は多くの記憶を思い起こしていました。
中には、記憶と結びつくように香りや味を思い出すものもありました。
いくつもの扉を開けては閉めて。
黒く輝く扉は、やっぱり嫌な記憶で。
キラキラ輝く扉は、私の幸福な記憶で。
昔から今までの記憶をなぞるように、扉は存在していて。
そして今、私の前には大きな二つの扉が存在しています。
今までに存在しなかった、透明な扉と黒く輝く扉。
私は、黒く輝く扉をそっとあけました。
そこは、よく行く菓子屋で、目の前にはユミナ様とベルディナル嬢が寄り添うようにいらっしゃいました。
ああ。これは、本当に直前の記憶。
最近で一番心を痛めた記憶。
ベルディナル嬢は、綺麗なしなを作って、ユミナ様の腕にしなだれかかっていますわね。
私にはない技術ですわ。
下町では必要がなかったですし、お爺さまは教えてくださらなかったですし。
個人的にも必要だとは思いませんし・・・
そして、ユミナ様へと視線をうつす。
あぁ。私はユミナ様をきちんと見ていなかったのね。
ユミナ様の表情を思いだすことができませんもの。
この時、どんな表情をしていらっしゃったの?
嬉しそうな表情をしていらっしゃいましたか?
楽しそうな表情をしていらっしゃいましたか?
怪訝そうな表情をしていらっしゃいましたか?
迷惑そうな表情をしていらっしゃいましたか?
幸せそうな表情をしていらっしゃいましたか?
鬱々と考えながら、扉を閉じる。
一人で考えていた所で、答えなど出ない。
ユミナ様に聞いてみないとわからないのだからと言い聞かせるように。
そして、今にも消えそうな、透明な扉へと向き直ります。
この扉は、私に何を見せてくれるのだろうか。
不安を胸に、怖々と扉に手をかけ開く。
まばゆい光が溢れ、私は目を開けていることができませんでした。
どれ位たったのか、わかりませんけれど、光が落ち着いたのを感じ、そっと目を開ける。
そこには・・・
見慣れた天井と
私をのぞき込む心配そうな顔が見えました。
クルツとお爺さまにユミナ様が私をのぞき込んでいました。
ここまで来るまで、私は多くの記憶を思い起こしていました。
中には、記憶と結びつくように香りや味を思い出すものもありました。
いくつもの扉を開けては閉めて。
黒く輝く扉は、やっぱり嫌な記憶で。
キラキラ輝く扉は、私の幸福な記憶で。
昔から今までの記憶をなぞるように、扉は存在していて。
そして今、私の前には大きな二つの扉が存在しています。
今までに存在しなかった、透明な扉と黒く輝く扉。
私は、黒く輝く扉をそっとあけました。
そこは、よく行く菓子屋で、目の前にはユミナ様とベルディナル嬢が寄り添うようにいらっしゃいました。
ああ。これは、本当に直前の記憶。
最近で一番心を痛めた記憶。
ベルディナル嬢は、綺麗なしなを作って、ユミナ様の腕にしなだれかかっていますわね。
私にはない技術ですわ。
下町では必要がなかったですし、お爺さまは教えてくださらなかったですし。
個人的にも必要だとは思いませんし・・・
そして、ユミナ様へと視線をうつす。
あぁ。私はユミナ様をきちんと見ていなかったのね。
ユミナ様の表情を思いだすことができませんもの。
この時、どんな表情をしていらっしゃったの?
嬉しそうな表情をしていらっしゃいましたか?
楽しそうな表情をしていらっしゃいましたか?
怪訝そうな表情をしていらっしゃいましたか?
迷惑そうな表情をしていらっしゃいましたか?
幸せそうな表情をしていらっしゃいましたか?
鬱々と考えながら、扉を閉じる。
一人で考えていた所で、答えなど出ない。
ユミナ様に聞いてみないとわからないのだからと言い聞かせるように。
そして、今にも消えそうな、透明な扉へと向き直ります。
この扉は、私に何を見せてくれるのだろうか。
不安を胸に、怖々と扉に手をかけ開く。
まばゆい光が溢れ、私は目を開けていることができませんでした。
どれ位たったのか、わかりませんけれど、光が落ち着いたのを感じ、そっと目を開ける。
そこには・・・
見慣れた天井と
私をのぞき込む心配そうな顔が見えました。
クルツとお爺さまにユミナ様が私をのぞき込んでいました。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる