8 / 11
拾われた僕と拾った私 参 sideクリストフ
しおりを挟む「俺でいいのか…?」
「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」
そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。
「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」
2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。
アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。
初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。
ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。
ーーー
「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」
ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。
「アリン、一度休もう。」
「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」
「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」
木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。
「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」
「えっ…そこまでしなくていいよ!」
「ダメだ!少し冷やそう、な?」
「う、うん…ありがとう!」
照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。
「ここでいいか…」
サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。
ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。
フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。
なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。
小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。
「アリン…?冷たいタオルだよ。」
「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」
「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」
「うん…!後少しだし大丈夫!」
水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。
しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。
「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」
ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。
「アリン…大丈夫か?」
「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」
「わかった。」
馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。
「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」
まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。
「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」
そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。
「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」
2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。
アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。
初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。
ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。
ーーー
「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」
ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。
「アリン、一度休もう。」
「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」
「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」
木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。
「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」
「えっ…そこまでしなくていいよ!」
「ダメだ!少し冷やそう、な?」
「う、うん…ありがとう!」
照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。
「ここでいいか…」
サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。
ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。
フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。
なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。
小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。
「アリン…?冷たいタオルだよ。」
「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」
「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」
「うん…!後少しだし大丈夫!」
水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。
しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。
「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」
ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。
「アリン…大丈夫か?」
「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」
「わかった。」
馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。
「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」
まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】魂の片割れを喪った少年
夜船 紡
恋愛
なぁ、あんた、番【つがい】って知ってるか?
そう、神様が決めた、運命の片割れ。
この世界ではさ、1つの魂が男女に分かれて産まれてくるんだ。
そして、一生をかけて探し求めるんだ。
それが魂の片割れ、番。
でもさ、それに気付くのが遅い奴もいる・・・
そう、それが俺だ。
ーーーこれは俺の懺悔の話だ。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる