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第5話 黙っていて申し訳ございません!!
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「助けて頂きありがとうございます。この上はモモシャリーさまに忠誠をお誓い致しますー」
「おーほほほほほほほ! 落ちぶれたわね、ララコスティ!」
落ちぶれたも何も以前のわたくしがどんな人物だったのか知らないのです。ただ今は召使い──そう、奴隷階級ですもの。
「私は子供の頃からお前に嫉妬していた。貴族院首席で完璧な淑女、将来はこの国の王妃さまにねぇ。あー、今のお前を見てると気分が最高だわ!」
わたくしが王妃ですって? 何を仰ってるのかしら。きっとおからかいになられてるんだわ。
「もう下がって宜しい」
「はい、失礼致します」
「おい、ララコスティ。ゼアス家の公務室は無論のこと、特にこのお部屋はモモシャリーさまがよく御使いになられる。だからいつも綺麗にしとくんだ。いいな?」
「かしこまりました。サラーニャさま」
***
それから毎日ただひたすら召使いとして働き続けた。ゼアス家の公務室はどのお部屋よりも美しく、モモシャリーさまがお越しになれば粗相のないよう努めたつもりだった。でもある日のこと……。
「お前、騎士団のタカフミィーニと時々逢引してるようだな」
「え⁈ サラーニャさま、逢引だなんて」
「これは問題ですね。モモシャリーさま」
「ララコスティは彼のことが好きなのよ。でもね、騎士団と言えば貴族が作った軍隊。奴隷とは不釣合いではないかしら?」
「は、はい……仰る通りです。モモシャリーさま」
「そう、わかったようね。じゃあ今後、彼と会うことを禁じるわ!」
「……!」
そ、そんな……わたくしの唯一の楽しみなのです。それだけは、それだけはどうかお許しくださいっ!
──と、叫びたかった。でも言えない。
「返事をしろ!」
「……」
わたくしは泣きそうになった。
幾らご主人様の命令とは言え、これは辛いわ……。
「ふーん、顔色が変わったわね。ララコスティ」
「お前っ!」
「まぁまぁ、サラーニャ」
サラーニャさまが凄い形相で睨んでおられる。ぶたれると思った。
「ララコスティ、本音で喋ったらどう? あまりにもしおらしくなって段々つまんなくなってきたの。許すわ、言いたいこと言いなさい」
「も、申し訳ございません。彼はわたくしの病気をご心配なされて……その、励ましてくださって……だからわたくしは……」
「ちょっと待って。病気⁈ なんの⁈」
「あ……」
つい余計なことを。でも彼と会えなくなるのはイヤ、イヤなの! もう白状しますわ!
「わたくし、何処かで頭をぶつけて記憶を無くしてるんです。だから過去のことは何もわかりません」
「なんですって⁈ お前、記憶喪失なの⁈」
「はい。黙っていて申し訳ございません──」
「おーほほほほほほほ! 落ちぶれたわね、ララコスティ!」
落ちぶれたも何も以前のわたくしがどんな人物だったのか知らないのです。ただ今は召使い──そう、奴隷階級ですもの。
「私は子供の頃からお前に嫉妬していた。貴族院首席で完璧な淑女、将来はこの国の王妃さまにねぇ。あー、今のお前を見てると気分が最高だわ!」
わたくしが王妃ですって? 何を仰ってるのかしら。きっとおからかいになられてるんだわ。
「もう下がって宜しい」
「はい、失礼致します」
「おい、ララコスティ。ゼアス家の公務室は無論のこと、特にこのお部屋はモモシャリーさまがよく御使いになられる。だからいつも綺麗にしとくんだ。いいな?」
「かしこまりました。サラーニャさま」
***
それから毎日ただひたすら召使いとして働き続けた。ゼアス家の公務室はどのお部屋よりも美しく、モモシャリーさまがお越しになれば粗相のないよう努めたつもりだった。でもある日のこと……。
「お前、騎士団のタカフミィーニと時々逢引してるようだな」
「え⁈ サラーニャさま、逢引だなんて」
「これは問題ですね。モモシャリーさま」
「ララコスティは彼のことが好きなのよ。でもね、騎士団と言えば貴族が作った軍隊。奴隷とは不釣合いではないかしら?」
「は、はい……仰る通りです。モモシャリーさま」
「そう、わかったようね。じゃあ今後、彼と会うことを禁じるわ!」
「……!」
そ、そんな……わたくしの唯一の楽しみなのです。それだけは、それだけはどうかお許しくださいっ!
──と、叫びたかった。でも言えない。
「返事をしろ!」
「……」
わたくしは泣きそうになった。
幾らご主人様の命令とは言え、これは辛いわ……。
「ふーん、顔色が変わったわね。ララコスティ」
「お前っ!」
「まぁまぁ、サラーニャ」
サラーニャさまが凄い形相で睨んでおられる。ぶたれると思った。
「ララコスティ、本音で喋ったらどう? あまりにもしおらしくなって段々つまんなくなってきたの。許すわ、言いたいこと言いなさい」
「も、申し訳ございません。彼はわたくしの病気をご心配なされて……その、励ましてくださって……だからわたくしは……」
「ちょっと待って。病気⁈ なんの⁈」
「あ……」
つい余計なことを。でも彼と会えなくなるのはイヤ、イヤなの! もう白状しますわ!
「わたくし、何処かで頭をぶつけて記憶を無くしてるんです。だから過去のことは何もわかりません」
「なんですって⁈ お前、記憶喪失なの⁈」
「はい。黙っていて申し訳ございません──」
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